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36.夜の街編 作戦


 食事を終えて皿を片付ける。スノウは食べさせてもらってばかりではいけないと思い、洗い物をやりたいと申し出た。外から引かれてくる水はとても冷たい。

 彼女が皿洗いをする中、セフィライズとシセルズはこれからの話をはじめた。

 ガラスの小瓶を渡してきたという初老の男性に、なんとか接触しなければいけない。二人が飲んでいたのは、セフィライズとスノウがお昼を一緒に食事をした店だったらしい。その話を聞いて、シセルズはまた茶化してやろうかとも思ったが、ここも黙っておく事にした。

 最初にタナトス化した男性も、兵士も、エリーもリリベルも、聞き取った内容によると最近疲れていたと言う。


「疲れたふりしたおとりを置いて、話しかけてきたところを捕まえればいいんじゃね」


 シセルズの提案に、セフィライズも少し考える。確かに、それで引っ掛かればありがたい限り。だが、問題はそのおとりを誰がやるのかという話だった。


「俺やお前は顔が割れてるだろうな。特にお前はな」


 シセルズが弟を指差す。セフィライズも、自分の髪を触って確かにという顔をした。


「髪を染めればいける?」


「いや、どうだろう」


 自身の銀髪の裾をつまみながら、セフィライズは答えた。話しかけられたとして、上手にできる自信もない。この場合は、もう少し相手に合わせて話ができる人物の方が適任だろう。セフィライズは自分ではないことは痛いほどよく理解していた。


「あの……わたし、行きましょうか?」


 洗い物を終え、布で手についた水分を拭いた後、スノウが小さく手を上げる。それを見て、シセルズは名案だという顔をしたが、セフィライズはあからさまに渋い顔をした。


「危険だから、今回はこの辺で」


「何言ってんだよ。スノウちゃんとか小柄だし、対話力もあるし、いいじゃん!」


 セフィライズは心底嫌そうな顔をする。全身から、スノウをこの件にもう関わらせたくないというオーラがでていた。

 しかし、シセルズはこれ以上ない適任だと思っているようで、スノウの方を見て悪い笑みをして見せる。その笑顔の意味を彼女は理解したようで、頷いて返事をした。


「わたし、やります。やらせてください」


 真っ直ぐセフィライズの目を見つめて、できるだけはっきりとした声で伝えた。

 セフィライズは、これはどれだけ断っても永遠に言ってくるであろう言い方なのは、察しがついていた。額に手を当て、大きなため息をつく。


「決定ということで」


 セフィライズの隣で勝ち誇ったような顔で言っている。彼は少しだけ、兄を睨みつけた。

 おとりなんて危険だし、もし何かあってからでは遅い。特に彼女は特段戦闘力があるわけでもない。もし、無理矢理にでも小瓶の液体を飲まされるような場面があったら。すぐそばにいても、守りきれないかもしれない。


「早速今晩いこう。スノウちゃん私服に着替えてきてくれる?」


「え、っと……」


 困った。彼女は一着も私服を持っていない。今着ているのは、制服のシャツの部分が二枚重ねに、セフィライズのカーディガンだ。シセルズに、服を持ってないことを伝えると、彼は素っ頓狂声を出して驚いていた。


「お前、なんか持ってないのか?」


「女物なんて、持ってるわけない」


 確かにそうだとシセルズは思う。制服で行かせるべきか、少し悩んだ。仕方ないから誰かに借りてきてもらうしかない。スノウに借りれそうな心当たりをきいたところ、なんとかいけそうだった。

 彼女の服問題は解決したとして、シセルズはセフィライズの髪を見る。わざとらしく引っ張ると、彼は痛いと文句を言った。


「店内で帽子はまずいし、この色でいたら相手もまず警戒するだろ。今晩だけ染めてこい」


 彼は引っ張られた髪を奪い返すように兄の手をを払い除けた。


「お前、たまに黒くして遠方にいくじゃん。それで」


「兄さん」


 シセルズの言葉を、セフィライズは遮った。それ以上は言われたくなかった。

 シセルズの方は何故止められたかわからなかったが、しかし理由があるとすれば一つ。きっとスノウだろうと思った。どうして、と理由を聞いても良かったが、スノウを巻き込んで不機嫌な弟をこれ以上不機嫌にさせたらやりにくそうだと、これもまた黙っておくことにした。


「じゃー、魔術でパパッと変えてこい。なんでも使えるだろ。俺と違って」


「……わかった」


 セフィライズは立ち上がり二階へと向かう。シセルズは、スノウにも着替えを借りてくるよう指示を出す。集合は二時間後、正門前の橋の中央に決めた。




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