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11.オークション編 金貨


「護衛についていただけだろ、ジラルド。その白き大地の民は、本物だと証明できるのか?」


「てめぇこそ護衛についていただけだろ、黒曜の霜刃さんよぉ。それで、お品物はおひとつですかな?」


 ジラルドと呼ばれた大男が、ガハハハと馬鹿にするように笑う。カウンターを今にも破壊する勢いで叩いていた。セフィライズはすっと立ち上がり、静かに怒りを灯らせた瞳で睨みつける。


「なにが黒曜の霜刃だ、ばかばかしい。噂に尾ひれがついてるだけじゃないのか? 貴様が持ってきた商品よりなぁ、俺様のほうが高く値が付くんだよ!」


 ギルドの中にいた幾数人かの冒険者の中には、そうだそうだ! とヤジを飛ばすものもいた。

 ジラルドはこのコンゴッソのギルドの中でも古株で、豪傑無敵の大男だ。それに比べ突然現れ、黒曜の霜刃などと呼ばれるようになったセフィライズを、よく思わない冒険者も沢山いる。


「俺様が護衛についていたら、貴様との格の違いを見せてやれたのに残念だぜ。ガハハハ!!」


「そのくらいにしたらどうかな、ジラルド」


「おう! ギルバートじゃねぇか!」


 野次馬冒険者の間からギルバートと呼ばれた男が前へ出た。茶色よりのブロンドの髪は綺麗に整えられ、高身長かつ端正な顔立ちに清潔に整えられた衣服を纏っている。


「黒曜君はかなりの手練。このギルドでも必要な逸材だよ。古参の君がその態度だと、折角の逸材に逃げられてしまう」


「フン、こんな奴、さっさといなくなればいいんだよ。調子に乗んなよ!」


 セフィライズを睨みつけながらジラルドは立ち上がり、わざとらしい程に大きな足音を響かせながらギルドから出て行った。それと同時にギルバートが「ほら解散!」と声をかける。野次馬達も空気感が変わったのを察してかいそいそと解散していった。いつもの喧騒のような活気が、ギルドに戻り始める。


「やぁ黒曜君、いつでもジラルドに絡まれてるんだから」


「ギル……」


 ぽんぽんっとギルバートがセフィライズの肩を叩く。それをセフィライズは少し嫌そうに手で払うも、慣れた様子だった。再びギルドのカウンターに体を預け受付へと迫る。


「金貨十枚だ、それ以下は譲れない」


「ですから…」


「黒曜君に支払ってやってほしい、その金を惜しんで逃げられたら困る」


 ギルバートは爽やかな笑顔でセフィライズを見ていた。しかしセフィライズはなるべく黒い前髪で自身の表情を隠そうと俯く。ギルドの受付が「相談します」と奥へと入っていくのをちらりと見た。


「しかし、相変わらず愛想がないなぁ」


 ギルバートは黒髪のセフィライズをゆっくりと見つめ、その後に床にうずくまるスノウを一瞥(いちべつ)した。するとセフィライズはさらにギルバートに背を向けるように動く。どうやら、ギルバートがセフィライズの顔を覗き込むようにしゃべるのが気に入らない様子だった。


「何度も一緒に仕事をしたのに、黒曜君はいつまでたっても名前を教えてはくれないし。本当に君は、何を考えているのかわからないよ」


「……好きに呼べばいい」


 セフィライズはこのギルドに名前を登録する時、何か適当な名前を書いたがもう忘れてしまっている。気が付いたら黒曜の霜刃と呼ばれ、もうそれでいいと思ったのだ。


 程なくして、奥に下がっていたギルドの受付が麻袋を持ち現れた。セフィライズが顔を上げると、別の男が少し顔をだして頷いている。カウンターの上に、ずっしりと重そうな音を響かせながら麻袋が置かれた。


「金貨10枚。ご確認ください」


 セフィライズは麻袋の紐を引き、中を覗く。

 周りの冒険者は横目でそれを確認し、つばを飲むものもいた。金貨が支払われる仕事などほとんど無い。それが10枚ともあれば、悪い意味でも目を引くものであった。


「間違いない」


「では、またお願いします」


「これは貸しだよ、黒曜君」


 しかしセフィライズはギルバートを無視した。それにギルバートも慣れているかのように小さく笑っている。セフィライズは床に黙って座るスノウの出を掴み立ち上がらせると、受付へと背を押した。奥から数人の男が現れ連れていかれる彼女に背を向け、麻袋に入った金貨を片手にギルドを出る。





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