パルクール選手の場合
「ラビットさん、捕まりましたね」
「……捕まりましたね」
「では、気を取り直して。最後の逃亡者となりました! 彼女は紅一点! しかしその美しさは、ハンターには通用しないでしょう!」
「ああ! 彼女は!」
「やはりご存知でしたかトテモさん!」
「彼女の名前はアッチコッチ・ダッシュ! パルクールの世界ランカーですよ!」
「パルクールとは?」
「フランスの軍事訓練を起源とするスポーツです。障害物競走のもっと凄いやつとでも言いますか」
「なるほど! 彼女には期待できますか?」
「むしろ真打と言えるでしょう! そうそう捕まったりしませんよ!」
「つまり、疲れたから捕まったりしないと!」
「捕まらないでしょうね。どこかのスタミナ雑魚とはわけが違う!」
「失礼だろ!」
「ともかく、彼女は確実に賞金を取るでしょうね」
「このそうそうたるメンバーに俳優が混ざってたらしいですよ?」
「なんで僕呼ばれたんでしょうね……?」
「あっと! そうこうしてるうちにハンターとの遭遇です! アッチコッチさんも気がついたらしく、凄い速度で逃げ出しました!」
「足の速さだけが彼女の武器ではありません! その本質はすぐにわかることでしょう!」
「おっ! そちらには逃げ道がない! 行き止まりだ!」
「逃げ道ならありますよ! 彼女の道はアスファルトだけではありません!」
「なんと!? ブロック塀を踏み台に屋根の上へと飛び乗りました! 障害物をものともしません!」
「これがパルクールです! 自分の身一つで街中を駆け抜ける彼女に、障害物なんてものはありません!」
「これは凄い! ここまではハンターも追ってはこれません」
「ただ速ければいいだけじゃない! こんな逃げ方だってあるんです!」
「なお、屋根の上に登るのは危険行為であるため失格とします!」
次で終わり