君を忘れない
忘れている君をどうすればいい、どうせ俺のことなんて覚えていない。この姿を見たらあいつらは笑うだろう、無知無能無謀、計算もなく突っ込んでくるただの阿呆、この場が物語っているだろう。
そう自分でも思う。
土埃を浴び薄汚れた顔には擦り傷、額から頬をつたる己の血、疲弊しきった脚には焼けるような苦痛が襲う。体が、脳が、本能的な制御をかける。それでもただ走る姿がそこにはある。
おびただしい臓物、まだ赤みを帯びているそれらにはまだ艶がある。重厚感も、僅かにある体温のようなものも、先程までそのそばにいる人と生まれてからずっと一緒だったものだ、正しくは“獣人”だろう。それ以外にも爬虫族、俗にいうリザードマン、鳥人など、都市のように様々な人種が集まっていた。
それらには都市で見せるような、あるものは希望を持ち輝かせる目、野望を持ち瞳の奥底で燃える決意の目、誰もが生気を持って輝く何者にも縛られないそれぞれの“願い”を持っているものではない。
生きようとする体はすでに活動を止め、抉られ、裂かれ、手足は欠けて四方にちらばって、死に既にたどり着いている。
苦しい、、、
吐きそうだ、、、
なんのために?
誰のために?君のために?
君は望むだろうか、君が捨ててまで救った俺の命を再び俺は殺そうとしているかもしれない。
君は怒るだろうか、『来ないで』って言っていたのに君の所に行こうとする俺を。
君は喜ぶだろうか、どうしょうもなくアホな俺が考えたことを見て。
青年は脚を止める。この場では命取りとも言えるその行動は自分でも狂気、イカれていると思う。虚ろになる思考、銀粉舞う視界、身体的限界がもう目の前に来ている。曇天に満ち空からは雨が降り注ぐ。それでも迫撃による火薬と焦煙、戦場を這う錆びた鉄の血の匂いは依然存在を示す。
「何迷ってんだよ俺、ほんと馬鹿かよ!大馬鹿かよ!!」
青年はうつむいて言う。
「泣いているあの子を救うことに迷う必要なんてないだろ、指の先まで届く範囲は限界まで救うってあの子は俺を救った時に教えただろ!!」
その先にいる者を救うため、青年は再び駆け出す。
咲月 遥はひたすらに走った。嫌われたって構わない。怒られたって構わない。
ただ君を救いたい。
待っていてくれリセ、たとえ君が
俺を覚えていなくても
おはこんばんにちは!作者のチーハン≒ブンブンです!このたびは僕の作品を読んでいただきありがとうございます!まだまだ文章等が至らない処女作ですがよろしくお願いします!!