第007話 目立つ二人組
何もない、岩しか見えない。
稀に小さな森らしきところがある。
空を飛んで上空から下を眺めていたら、緑の一つ目の小さなモンスターを発見する。
すぐに、降下して頭からバリバリ食べる。
自分は、大きなドラゴンだった。
もっと食べて、もっと大きくなったら、追い出した仲間を食べてやろう。
眼が覚めると、赤い豪華なドレスを着たナッチが、私の寝顔を見ていた。
「うお!ど、どうした?」
「朝に、メイドが来て、昨日依頼した服が届いたって事で無理やり着替えさせられたのよ。リュウジのは、これ」
ナッチが指さす方向を見ると、真っ赤な鉄鎧が置いてあった。
それと、豪華な装飾が付いた大剣がある。
「宿屋の親父が、姫さまと護衛の逃避行か、お忍びと勘違いしたみたい。それに合う服を用意したって事ね」
私のやつは、鎧で服じゃないし....
とりあえず装備すると、外見だけの貴族用で、めちゃくちゃ薄い金属でできている。
鑑定してみる。
見掛け倒しのフルプレート(赤) 補正+1
外見は、立派に見えるが実際は、限界まで金属を減らした鎧
見栄をはるためのアイテムで、光り輝く様に塗装に力を入れている
フルプレートで最軽量、防御力が僅かに増える
派手な大剣 補正+0
偽物の宝石をちりばめた、豪華に見える大剣
刃の部分も中身が空洞の上に、ナマクラで何も切れない
大剣で最軽量、攻撃力は全く増えない装飾品
ある意味、超レアアイテムじゃないのか?
見掛け倒しだが、軽いのは良いことだ!
結構気に入ってしまった。
全身鏡の前で、剣を振るポーズをして、ニヤニヤしているとナッチが、目を細めて馬鹿にしたように見ている。
「今日は、何をするの?」
「お金を稼ぐ手段でも探そうかと思ってます」
「付き合うわよ。修羅の国では、何をしてお金を増やしていたの?」
「何故か、発生する世界を救うようなイベントをクリアーすると、お金がもらえたり、城の中でデスマッチをして生き残ると、賞金をもらえたり、モンスターを探して奪いあって倒して、お金を稼いでましたよ」
「世界?城内殺し合い?モンスターを取り合い?ありえない.....目が痛まないので、全部、本当の事なのね....修羅だわ...強いわけだ」
ナッチが、唖然とする。
嘘ではないが、真実ではない事を教えた方が、よいかもしれない。
「昨日、聞かれてから考えておいたけど、リュウジの強さがあれば、冒険者ギルドで高額な依頼を受けるか、騎士の大会に参加して有名になって、高給で貴族の下で働く感じかしら?」
「大会は、賞金とか無いんですか?」
「名誉だけよ。相手を殺したら失格よ」
今のままだと、魔法の調整が出来ないので、殺さずって所が難易度が高そうだ。
「冒険者の方面で行ってみますか。その前に溶けた大剣を少し貸してください」
「良いわよ」
赤いドレスのスカートをまくって、スカートの下部位から、大剣を取り出した。
え?大きさが合わないのだが....大剣を持ってドレス!?
ナッチは、アイテムボックス持ちなのか?
ナッチから渡された溶けた大剣を、派手な大剣で叩き始める。
予想通りだと、私の攻撃力がマイナスなので、溶けた大剣が修復され、防御力がマイナスなので、本来は、刃こぼれしていくはずの叩いている方の派手な大剣も、磨かれて、いくはずである。
「大剣が、治っていく?」
叩けば叩くほど、溶けた大剣が磨かれていく。
新品同様になっても叩いていたら、突然、剣が光った。
アイテム鑑定
無名の名剣 補正+255
過剰に強化された大剣
強度および耐久度が通常の3倍
クロウデスの紋章が刻まれている
スキル 渾身の一撃が使用可能
隼の大剣 補正+45
軽量に作られた金属を強化して、通常レベルの大剣の強度にしたもの
非常に軽く、相手に向けると軽い突風を引き起こす
埋め込まれた宝石は偽物でイミテーションだが、余程の鑑識能力がなければ見破れない
うああぁ!両方ともアイテムが進化した!
特殊効果まで、付加されてる。
この世界の原理が全くわからん。
「す、凄い!大剣がドワーフが修理したみたいになってる!!魔法?鍛冶屋やったら儲かるんじゃないの?」
鍛冶屋か!良いかもしれない。
少し考えておこう。
ナッチが、自分の大剣を振り回しながら感動している。
大剣で演舞中に手が滑って、私の身体に......わざとかな?
大剣が私の右肩に物凄い速さで迫ってくる。
パキン!!
何かが割れる様な音がして鎧と大剣がぶつかって止まった。
凄い音で耳鳴りが凄い。
「え!なんで避けないの!!」
「避けれるかボケェ!!」
「リュウジが強いから余裕かと」
「不意打ちすぎる!」
ナッチ!危険人物すぎる!
「でも、なんで、リュウジはダメージが無いの?」
ステータスを見るとちゃんと減っていた。
生命力 ー1159/ー673
結構、減ってるので普通の人なら死んでるんじゃ無いか?
壊れるはずの鎧は、逆に輝きを増した。
殴られまくってると、見掛け倒しの鎧も違うアイテムに変化しそうだ。
音の原因は、これ以上、修復出来ない無名の名剣で、私を斬った事で、さらに修復しようという力が、行き場を失って音になったのかなぁ?と想像してみる。
「思いっきり生命力が減ってますけど!!」
「斬った瞬間に殺してしまったかもって、ヒヤッとしたけど、全然、変化がないから、リュウジの最大生命力が凄い高いのね!!
こんな攻撃は、ちょっと、ぶつかったレベルなのね!
流石!修羅の国の人は違うのね!」
えらい勘違いしとる...
呪印を解除する際に、溶かしてしまった大剣も修復が出来たし、ドレスになったが服も弁償したので、2人で王都の冒険者ギルドへ向かった。
街に出ると超恥ずかしい。
道行く人が全て、私とナッチをみる。
物凄い磨かれて、いかにも強うそうな、赤いフルプレートを装備している上に、伝説の武器の様な外見の大剣を装備して、鎧の重さを物ともせずに、普通に歩行している騎士と、王族の舞踏会から抜け出した様な美しい赤いドレスを着た美女が、街中を歩いているのだ。
「鎧で顔を隠しているから少しは平気ですが、目立って凄い恥ずかしいんですが...」
「大丈夫よ!絡まれても武器持ってきてるから」
勘違いした回答が返ってきた。
仮にも団長だから目立つ事に慣れているようだ。
基本的に引きこもりの私には、目線が恥ずかしい。
フルプレートを用意してくれた宿屋の主人には感謝だなぁ。
突然、横に豪華な4頭立て馬車が止まって、馬車から2人の騎士と冴えない貴族の服装をした男が、現れた。
「これは!美しい!どこのお嬢様でしょうか?貴方の前では全てが、霞む」
「まぁ!!」
さっきまで平然と歩いていたナッチが、顔を真っ赤にする。
真実の義眼の為に顔が半分爛れていたから、今までこんな状況になった事がなかったのかもしれない。
「美しさに見とれて、申し遅れました。私は、ヘンゲル・モスと申します。こう見えてもモス家の党首でございます」
「ご丁寧に、ご紹介ありがとうございます。私は、ナッチ・クロウデスでございます」
「クロウデス!レイモン公爵の御息女ですか!驚きました!レイモン公爵様には、過去に奴隷の売買でお世話になっており、恩返しの機会を得た所存です。どうでしょう?お食事など、ご一緒に?」
全身を舐めるような視線でナッチをヘンゲルがみる。
ナッチが左目を抑えた。
「これから、用事がございまして、またの機会にいたします」
「それは、残念ですが仕方がないですね。私の屋敷は、ここから近いので、屋敷の者に伝えておきますので、お時間があれば、お遊びに来てくださいね」
お辞儀をして騎士と馬車に乗り込んで去っていった。
「左目が痛んだのか?」
「美しいと褒めている所までは、本当の事だが、その後の会話は、かなり痛んだ....あいつは、やばそうだ」
「知り合いなのか?」
「情報だけなら知っている。モス家は、奴隷商人を扱っている貴族で、呪印で縛られた奴隷をよく買い付けに来ていた記憶がある。」
「それって、今はレイモン公爵がいないので、呪印が解けてるのでは?」
「それは無い。死ぬまで呪印は無くならない。ただ新たに命令が、できないだけだ。
リュウジは、呪印が解けるが、それは例外だ」
話しているうちに冒険者ギルドへ到着する。
用語説明
貨幣
貨幣は、クルト帝国と魔国とミワ王国とネムル法国で共通に使える
主に、ネムル法国が中立的な国家であり、ほとんどの貨幣を生産しているが、石貨は、魔国が生産している
各金属の価値が、ほとんど貨幣と等しい為に偽造しても利益がないので、偽物は、ほとんど出回っていないが、白金貨だけは金貨50枚程で作成可能の為に、ネムル法国が魔法で偽造防止を付加している
白金貨
日本円で白金貨1枚1千万前後の価値観
金貨100枚で白金貨1枚と変えることができる
大型取引のみに使用され一般流通はしていない
金貨
日本円で金貨1枚10万円前後の価値観
銀貨10枚で金貨1枚と変えることが出来る
銀貨
日本円で銀貨1枚1万円前後の価値観
銅貨10枚で銀貨1枚と変えることが出来る
銅貨
日本円で銅貨1枚1千円前後の価値観
石貨100枚で銅貨1枚と変えることが出来る
銅貨以下の貨幣は、あまり使われない
石貨
日本円で石貨1枚10円前後の価値観
ミワ王国の商業都市リカルと魔国の首都リクシで流通しているが、他の場所では、あまり流通していない。