第006話 王都
冒険者ギルドの執務室でプロボーションが良い女が、書類に目を通して判子を押していた。
ドアが急に開き、息を切らした冒険者がやってきた。
「マスター!!騎士団の奴らが失敗したらしい」
「なんだと!20人の騎士団だろう!そんな難易度だったか?」
「想像以上の強さだったらしい。3人が殺されたとの事」
「な!だ、誰だ?」
「新人としか聞いてない」
「死体は?」
「回収出来ていないそうだ」
「ありえないだろう?仮にも7騎士団の一つだぞ!」
怒りながら王城へ向かって走り出す。
目の前に巨大な城が見える。
城の下には、城下町の王都が10m程の高さの城壁に囲まれて存在している。
ゲームで見た物と似てはいるが、ゲームで見るのと、実際見るのとでは全く違う。
大き上に、リアルだ!
私が持っていたパソコンは、あまり性能が良くないので、3Dの表示を荒くして処理落ちしないようにしていたが、今は細部まで綺麗に見える。
モニター越しと肉眼でここまで違うのだな。
夢の説は、ない気がして来た。
その場合は、リアルで何者かが、この世界を模倣してプレイ出来るゲームを作り、私を呼んだ事になる。
呼んだ犯人は、ノームラだと思うが....
異世界なんて物が実際にあるのか?
横を見るとナッチも、巨大な王都を見て感動していた。
「初めてレイモン公爵の領地を出たが、凄い大きさだ!世界は広いのだな!」
「早速、城下町街に行って見ましょう」
もう、日が落ちる寸前である。
夕焼けが真っ赤に王都を染めていた。
街に入る門の前に、門番が結構な人数立っていた。
出入りが激しく対応に追われていた。
既に日が落ちて真っ暗であるが、門の前に多くのランプが設置されていて明るく照らしている。
出入りしている馬車にも、ランプが付いていて、かなり明るい。
「あのランプは、魔法ですか?」
ナッチに聞くと、そんな事も知らないのかと、呆れた顔をされる。
「光の魔石が入っているだよ。発光させる魔方陣の中に魔石を置くと光りだすのさ。魔方陣から出せば、あかりは消える」
親指と人差し指で輪を作り、そこから私を覗く。
「この大きさで、一日中発光している。光らなくなると、ただの石になって終わりだ」
「魔石は、何処で手に入れるんですか?」
「魔石屋だ」
う!話が食い違う!
「.........魔石屋は、何処から手に入れるんですか?」
「魔石ギルドだ」
ええ!!!
「魔石ギルドは、何処から手に入れるんですか?」
「大体が解体屋だと思うが、持ち込みも多いらしいな」
.....私の質問が悪かったのか?
「解体屋は、どうやって手に入れてるんですか?」
「冒険者ギルドからだな」
回答に辿り着かない......
転売されまくりなので、かなりの中間リベート取られて高価そうだ。
出どころを知りたいんだが....
「そこのお前たち!街に入るなら身分証明を見せて街に入る目的を言って、ここにサインしろ。街を出る際は、この場所で再度サインをする事になっている。
街に入る税金は、王族と貴族と騎士は無料だが、その他は、1人銀貨1枚だ。奴隷は銀貨3枚」
門番がめんどくさそうに、話しかけて来た。
「私は、露天商人のリュウジです。明日から商売をしようかと思って、やってまいりました。
銀貨がないので、金貨でも良いですか?」
金貨を1枚渡して、ケラスの街で作った身分証明を見せる。
ナッチが左目を押さえている。
まぁ嘘だからなぁ。
「よし、いいぞ。ここにサインして入って良い。荷物はどうした?」
「今回は仕入れなので、荷物を買い付けですよ」
ナッチが左目を押さえて、私を睨む。
しょうがないじゃないか!本当の事を言ったらすぐに連行されちまう。
「そこの、少し焦げてる女は?」
そういえば、焦げたままで行動していたな。
「私は、レイモン騎士団団長のナッチ・クロウデスだ。レイモン公爵領で、罪を犯したノームラを追っている。街にいる可能性もあるので、調査しに来た」
ナッチも嘘ついてる!睨まれたのは何故?
「レイモン騎士団の方でしたか........クロウデス?!
まさか、レイモン公爵の御息女では?」
「いかにも、レイモン・クロウデスの娘だが、なにか問題でもあるかな?」
ナッチが、溶けた大剣に刻まれたクロウデスの紋章を見せる。
あら!その剣!溶かしちゃったよ!
あとで治してあげよう.......
「いえ!大変失礼いたしました!どうぞお通りください。サインも不要です」
「いや、サインはさせてもらう。ルールは守らないとな」
お釣りの銀貨9枚をもらって、サインをして街の中に入る。
「リュウジが嘘を言うから左目が痛いなぁ。私が先に名乗れば、嘘を言わずに入れたのになぁ」
わざとらしく、言われる。
それで睨んでいたのか?と言うよりレイモン公爵の娘?
やはり、ナッチの過去はドロドロしてそうだ。
無理して聞かないように、きおつけよう。
「お詫びで、晩御飯と宿代は奢りますよ」
「助かるよ。実は無一文なのだよ。まさかこんな事になるとはな」
ゲームでは存在していなかった、食堂を見つけて入り晩御飯を食べる事になった。
2人席に、付いたがメニューがない...何処にも書いてない....
「どおやって注文するのですか?」
ナッチに聞くと、ナッチもキョロキョロしている。
「わ、私もいつもは、屋敷か騎士団の食堂で食べているんでわからない!」
蓋を開けたらナッチは、貴族の箱入り娘なんではなかろうか?
女性店員らしき人に適当に頼む事にした。
「ここで、晩御飯を食べようと思うが、金貨1枚分で2人分持って来てくれ」
「え!?金貨?2人分???わ、わかりました!!」
厨房に金貨を握って走り込んでいった。
金貨の価値観を間違っちゃったかな?
ものすごい勢いで料理が運ばれてくる。
ナッチが、凄い勢いで食べまくる。
体のどこに、しまわれていくんだ?
食べた量と体の大きさがおかしい。
出てくる料理は、肉料理ばかりで、魚料理はなかった。
なんの肉かわからないが、豚肉や牛肉に近い味で、白米はなかった。パンはあるようだが、物凄い硬い....
不味くはないが、美味くもない....微妙...
飲み物は、ワイン一択かい!
「水をもらえますか?」
店員聞くと、悲しそうな顔をして聞かれた。
「水は、うちのような店では、扱っていなくてすみません」
飲み水は!高級品って事かな?
肉串のお土産までもらって、次は宿屋を探す。
大分立派な宿屋に入る。
カウンターの執事にようなおじさんが、話しかけてくる。
「なんのようだ?押し売りなどは受け付けてないよ」
考えたら、ちょっと焦げてる冒険者者風の女性と、ラフな格好の初期装備の安っぽい外見の男が来たら客だと思わないかもしれない。
「宿泊したいんですが?」
「え?うちは高級品宿屋だよ。最低でも一泊金貨1だよ」
「部屋を2つで5日ほど、宿泊します」
執事のようなおじさんからの舐めるよな視線を感じる。
「いやぁ、今は一泊金貨3枚の部屋しか空いてないねぇ。他を当たってくれ」
ナッチが左目を押さえる。
嘘だな.....少し頭にきた。
「一泊金貨3枚でよいので、5泊で前金で払います。あと、金貨20枚ほどで、私と彼女に合う服を何着か見繕って持ってきてくれ」
金貨50枚をカウンターに置く。
ナッチが剣の紋章を見せる。
おじさんが、絶句する。
「ま、まさか貴族のお方とは、知らずに申し訳ございません。すぐさまご用意いたしますので、ラロ!リラ!お客さんだぞ!失礼がないように対応してくれ」
奥からメイド服を着た女性が2人現れる。
2人に案内されて、部屋に分かれて入る。
ナッチが首を傾げて言う
「何故、別々の部屋なのだ?」
何を言ってるんだナッチは?
無視して別れて、部屋のベットに倒れ込む。
これで、財産が半分になった。明日から稼がないとな。
とにかく、金貨の相場がわからない。
『ナッチ、聞こえるか?』
『お!またリュウジの声が』
『ある程度、近くにいれば、私に話しかけようとすれば会話できるぞ』
『いやはや....ありえないから...リュウジと出会ってから常識が覆される...』
私的には、真実の義眼や貴方の立場に驚かされてるよ。
『これから、どうするんだい?』
『まぁ、レイモン公爵領には、戻る気は無いかな。副団長が責任を取らされた場合のみ帰ろうと思っている。リュウジはどうするんだい?』
『ナッチと同じ考えかな、私が犯人なので、その原因の冤罪で誰かが罰せられるのは、気分が悪い』
『それまでは、一緒だな』
妙にウキウキした口調だな
『お金を稼ぐ良い方法を知らないか?』
『知らん!騎士団でしか働いた事がないからな』
ナッチは、実は箱入り娘説が正しいようだ。
『今日は、疲れたので寝ますね』
『わかった。起きたらリュウジの部屋に集合で良いのか?』
『そうしますか』
『今日は、本当にありがとう』
最後だけ、しおらしくなっていた。
まだ、異世界で1日たってないと思うと、色々ありすぎてパンクしそうだ。
明日からの情報収集方法を考えないとな。
そう考えているうちに、寝てしまった。
用語説明
奴隷制度に関して
奴隷には、2種類あって犯罪奴隷と金銭奴隷
奴隷は、特殊な金属で作った首輪をされる
脱着に特殊な器具が必要である
奴隷になった瞬間から、所有者の物品として扱われ人権は皆無である
犯罪奴隷
犯罪者を収容する留置所はあるが、監獄はない
犯罪者は、最高で死刑だが、死刑以外は、犯罪奴隷として刑期を過ごす
万引きなどで最短で3日
殺人などで最長は一生
長期の場合は、炭鉱や農園および戦闘の最前線に送られる場合が多い。
金銭奴隷
お金で縛られている奴隷で、人により値段が異なる
値段以上の価格で解放することも可能
100ゴールド未満の金銭奴隷は、自力で解放することあるが、100ゴールド以上の金銭奴隷は、他者からの身受けがないと生涯、奴隷の場合が多い