第034話 最下層
白衣の女性が宝石を見つめていた。
彼の最後に、もらった赤い宝石。
どのような科学分析をしても、この世界の物ではなかった。
質量が無いのだ。しかし、触る事が出来る。
中には暗号化され圧縮したデーターがある事がわかり、解析したところ、世界が一つ詰まっていた。
解凍して仮想空間に解放するとファシリティというゲームが生まれた。
新しいゲームのコンセプトが決まり、プレゼンテーションが成功した。
明日から、国内最高峰の処理速度のサーバーを利用してβ版のテストが開始される。
あとは、サーバーに、この世界と向こう世界を繋ぐ、この赤い宝石を組み込むだけである。
これで、夢に出てきた世界に行けるのだろうか?
魔国に戻ると昼になっていた。
そういえば、ナッチにレイモン公爵事件解決のお知らせをして、街に戻さなきゃな。
城の闘技場へ目指して歩いていると、すぐにメテに見つかった。
「やはり、ご主人様を見つける方法がわかった。遠いと無理だがな」
その方法、どうにかして聞き出さないと、身の危険を感じる。
「ただいま。なんか変わった事は、あったかい?」
少し考える身振りをして、メテが答える。
「ラファエルが、守護の仕事に戻った。メタトロンに何か頼まれたらしくて、初めはカブと戻る戻らないで、揉めてたが、すぐに帰っていた。
ナッチとミカエルとカブが、ダンジョン攻略に行っている。
ネトも、リュウジが留守の間に、白い竜が迎えに来て、『すぐ戻るから、食べ物よろしく』って言って、どこかに旅立った。
これで、ご主人様を独り占め!」
突然、背後に回られ首筋に牙をたてようとしたが、即時に赤いフルプレートを装備して跳ね返す。
パキン!
牙が、装備に防がれる。
バグってるからフルプレート装着時は、直接攻撃では、何をしてもフルプレートが修復されるので、壊せなくなるのさ。
ダメージは、受けるけどね。
「吸血鬼の移転問題は?」
「進んでいるよ。使い魔のコウモリを使って迷宮と話をしていて、魔方陣によるゲートを繋いで、城とフリクション迷宮との通行を可能にしようとリッチが研究中だ。城にも、塔一本ほどの生息地を貰ったので、住むには十分だ」
口元を抑えながら、メテが言う。
「ミカエルの所に行って、ナッチとカブを元の場所に置いて来ますね」
「ライバル消えるのは、望ましい。行って来てくれ」
上機嫌でメテが、別れて城の方へ移動して行った。
エンドレスホールダンジョンへ向かう。
穴かけられた橋の中央に着くと、相変わらず冒険者ギルドの係が、仕事をしていた。
「また来ました!」
前の係の人と同じ人であった。
「あ!!お疲れ様です!!地下250階以降は、無料になってますどうぞ!」
飛び降りる所に案内される。
「ミカエルは、何階まで行ったの?」
「今日の朝には、300階と言っていました。」
結構行ってるな。聞いてみよう。
ゲームでは、秘密チャットだが、この世界では念話のようなもので会話を試みる。
『ミカエル!聞こえるか?』
『うお!誰だ!』
『リュウジだ!』
『リュウジ???聞いた時がある気がするが....あ!』
『!!?』
『思い出せないけど、なんとなく知ってる。で?』
『リターンで迎えに来れないか?』
『おお?上にいるのか?』
『はい』
『わかった!』
しばらくして、カブがやってきた。
装備が、露出度が高い皮の鎧??いやボンテージになっていた!
「お帰り!あなた!!」
神速度で接近され、羽交い締めにされ、キスされそうになるが、フルプレートでフェイスも覆っているから無駄だ!
「な!なに!この鎧硬い!!」
思いっきり締め付けて鎧破壊しようとしているようだが、直接攻撃では、絶対に壊れないよ。鎧がドンドン修復されていき、私はドンドンダメージ蓄積が....
このまま、穴へ飛び込んだ。
「今、何階なんですか?」
「地下323階だよ」
「速いよ!!」
地下323階で止まる。
「待ってたぞ!顔見たら思い出した!250階のリュウジか!」
覚え方が.....
「リュウジ、お帰り!」
ナッチが、くっついているカブに蹴りを入れてカブを私から引き剥がす。
「先輩は、暴力的だなぁ」
蹴られた顔面をさすりながらカブがいう。
「レイモン公爵事件終わったから街に送るぞ?円満解決したようだ。事故扱いになったよ」
「うむ.....名残惜しいが....」
ナッチがミカエルを見る。
ミカエルダンジョン攻略で親密になったようだ。
「行ってこい!リュウジが来たから楽勝だ!ガハハ」
ミカエルがナッチの背中を押す。
「では、行ってくる。リュウジも旅が落ち着いたら、また来いよ!」
「おう!」
ナッチに触って、ケラスの街へ転移する。
戻ろうとすると、ナッチが首に手を回してくる。
「しばらくお別れだ。最後に顔ぐらい見せろよ」
フルプレートの装備を解除すると、思いっきり熱いキスをされてしまった。
タコか!!引き離せない...
サキュバスのスキル??!!
5分ぐらいしてやっと、口を離した。
「リュウジ、実は私は人間じゃない!レベルが低い奴には隠蔽が効くが、リュウジは、もう私よりレベルが高いだろう?隠してもバレそうだから早めに言っとく。リュウジも人間離れしてるし、付き合えると思うんだが!どうだろうか??」
顔を真っ赤にして告白された。
既にサキュバスなのは知っていた。
ここは、男としては最低だが、保留だ!
「まだ早い!今度会った時に話そう」
「わかった!」
ナッチが、にやけている。
「またな!!」
「おう!!」
手を挙げあって別れた。
泣かれると流石に別れづらいな...
戻った途端に、カブに捕まってキスされる!!
フルプレートを脱いだ事が失敗だ....
慣れては来たが、本当に喰われる感じなんだ...この人達...
「お前ら、そんな関係なのか?天使は、みんながみんな兄弟みたいなもので、そんな感情湧かないものなんだが、男嫌いのカブリエルが、そんな事するとはなぁ」
誤解です。カブは....ヤバイ...色っぽいが....出会いが男だったから...キツイ...
「ミカエルも、リュウジを知ればこうなるさ」
ならなくて良い!!!
「それは、楽しみだ!行くぞ!」
ダンジョン攻略へ戻るのであった。
私とミカエルとカブのパーティーは、この世界最強ではなかろうか?
湧き出るモンスターを物ともせず降りて行く。
ミカエルが特攻で斬りまくり、カブリエルがサポートして、私が範囲魔法で雑魚一掃....ずっと走ってる気がする。
コカトリス10匹を落雷の範囲魔法一撃で倒すとミカエルが褒める。
「凄えなリュウジ、殲滅速度が俺の剣より速いな。一回、お前と本気で勝負したくなってきたぞ」
お断りします。ミカエルは、バトルマニアっぽいな。
「ミカエル、このダンジョンに囚われてる知り合いって誰ですか?」
「......ルシファーだ...」
ん?
あまり深く聞かない方が良いかな?
行けばわかるな。
「ミカエルとルシファーは、仲がいいからな。また喧嘩したいだけでしょう」
カブが、話に入ってくる。
「まぁ、そんなところだ」
ミカエルが、照れ臭そうに言いながら剣を振り回して前進して行く。
そんな調子で地下349階の階層ボスの巨大なドラゴンゾンビを倒すと地下350階への階段が現れる。
階段が現れてから、ミカエルとカブリエルの表情が険しくなる。
「こりゃ地下350階以降は、やばそうなだ」
「まだ降りてないのに、凄い瘴気と魔力を感じる」
ふふふ....私全く感じない......痛みも感じないし鈍感になってしまったなぁ。
やはり、生命の危機を感じるほど鋭敏になるのだろう。
私は、もう感じる事が出来ないのかな?
しかし、何故私は、こんな聖戦の前哨戦みたいなのに、参加してるんだろう?
まぁ、成り行きか?
350階に降りると、穴まで一本道があり、穴に到着すると落下した。
「あれ?穴にフロアボスが、いなかったですね?」
私が言うと、ミカエルが真面目な顔で答えた。
「あそこでダンジョンが終わりだな。こっから先は地獄への道だ」
「え?」
凄い速度で穴を落下する。
これ地面に、当たったら死ぬんじゃないか?
ミカエルとカブリエルが、背中から白い翼を出して羽根を広げた。
「え?マジか?」
ズドン!!メキメキ!
私だけ地面にフルプレート状態でめり込んだ。
この地面は、ダメージ計算除外なのか.....地面は修復さず、50cm以上めり込んで、抜けるのが大変....
地面から抜け出すと、物凄いデカイ、気持ち悪い模様が入った門が壁にあって、そこの前に10m程の巨大な一つの体に三個首がある犬が寝ていた。
「門に666って、厨ニ病かよ....」
模様が数字の666に見えた。
「リュウジ、厨ニ病ってなんだ?」
カブが聞いてくる。
説明に困る。
「思想・行動・価値観が過剰に発現した病態なんだが、お前たちみたいなのがそうなんだが...」
「それは、興味深いな」
カブが興味深々である。
横でミカエルが、青ざめている。
「やばいなぁ、ここまでとは....俺でもケルベロスを倒せないな。ラファエルとウリエルを連れてこないと無理だぞ」
ミカエルが、犬を見て弱気になる。
どれどれ鑑定して見よう。
名前 ケルベロス
性別 なし
種族 底無し穴の霊
状態 睡眠
レベル8325
生命力 217365/217365
魔力 162738/162738
攻撃力 48235
防御力 4010+666
スキル
闇魔法 レベル3256
重力魔法 レベル5237
噛みつき レベル3121
切り裂き レベル2109
雄叫び レベル1321
先読み レベル2101
全魔法耐性 レベル1697
装備
冥界の首輪 (補正+666)(即死効果無効)
うあぁ!強さのインフレ凄いな。
生命力が20万超えてる!攻撃召喚のメタトロンでも2発で沈まないかもしれない....
大天使の方が、弱いって問題じゃねか?
種族的に霊体なんだな、倒してもほっとけば、倒されて拡散するが再度集まって復活する類だな。
「ミカエル、この犬を倒すと門が開くの?」
「いや、門は内側からしか開けられない」
「犬を起こさないでコッソリ入ればいいんじゃないかな?」
「な!!その手があったか!」
マジかよ!それで良いのか!!
「内側にだれかいるのか?」
「天使やリュウジのように、肉体を持っている奴は、ここからしか入れないが、悪魔なら転移や召喚などで、地獄へ行き来できる。今、アスタロトに連絡してみる」
ミカエルが特攻呪文を唱えると空中に小さな魔法陣ができる。
通信用だろうか?
「アスタロト聞こえるか?」
「ミカエルか?」
「地獄門の前にいるが、門を開けてもらいたい」
「構わないが、ケルベロスは、どうした?」
「寝てる...」
「寝てる?それも問題だな。しばし、待て」
魔方陣が消えた。
ケルベロスを起こさないように、こっそり門の入り口まで行く。
門の大きさは、高さが15mで横が10mぐらいに見える。
中心で二つに割れて開くようだが、完全に開くとケロべロスに当たってしまうな。
門が、少しづつ開いていく。
人が通れるほどの隙間ができた所で止まった。
歌舞伎に出てくるような派手な衣装で、顔には、さまざまな模様を描いてある180cmほどの男が出てきた。
髪は爆発してるような髪型で真っ赤であり、瞳は目を閉じていてわからない。
この男が、アスタロトかな?
「ミカエル久しぶり。カブリエルも来たのか?その弱そうな男は、誰だ?」
「リュウジだよ。私のいい人だ」
「カブリエル?いつから女になったんだ?前は男前だった気がするが?」
やっぱり!カブリエルは、男なのか!?って両性か...
「リュウジは、めちゃくちゃ強いんだよ。ミカエルですら足元に及ばないよ」
「カブリエルは、リュウジを高く評価しすぎだ。一緒に戦ったが、魔法以外は無能だぞ」
負けず嫌いでミカエルが、ちょっと怒気を含んで反論する。
確かに、魔法以外は、死なないだけだな。
「話してないで、中に入ろう。早く門を閉めよう」
ミカエルが催促する。
門が閉まり始める、アスタロトとミカエルが門に入って、カブリエルが突然振り向いて、私をケルベロスの方へ吹っ飛ばす。
「アスタロト、ミカエル!リュウジを馬鹿にした発言を訂正しろ。いまケロべロスを彼が倒す」
ちょっと待て!!
カブリエルが門に入ると..
バタン!
ケロべロスを起こすような、激しい門が閉まる音が聞こえて、ゆっくりケロべロスが目を覚ます。
念話のようなもので、カブリエルに文句をいう。
『カブ!!!貴様!!』
『リュウジなら余裕だよ!大丈夫、門の向こうで待ってるから。
いま、アスタロトがそっちを見れる魔方陣を書いてる。戦闘もちゃんと見守るよ』
うぁぁ!カブリエル!!
転移して、戻ろうかな...なんか成り行きで居るだけだしな。ただ、ミカエルの友人が気になるんだよね。
戦闘を見られると、私の事が色々とばれそうな気がするので、見られる前に倒そうか...
ケルベロスが、私を前足でいきなり吹っ飛ばした。
少し起伏した地面の出っ張りに叩きつけられる。
誰もいないし被害が出ない。上級魔法で範囲魔法使いたい放題でる。
万が一があるので、範囲の前に、上級魔法の単体魔法で最大ダメージのクリスタルスターライトをいきなり無詠唱で唱える。
目の前に、結晶化した光の塊が出現してケルベロスに向かっていく...余裕で避けられる...
地面に刺さって、直径15mの光の玉ができて、収束して消えるとクレーターができていた。
単体で攻撃力が最大20万程度ある魔法であるが...当たらなければ無意味だ...
やはり避けられない、攻撃範囲が広い範囲魔法だろうなぁ...
と考えていると、頭から喰われた。
まったく動きが見えなかったよ...レベル差が凄いので、素早さ全然違うもんなぁ..
ケロべロスの胃の中でそう思った。
この世界に来て初めて使った魔法なら二発で行けそうだな。
消化されてケロべロスの前に、裸で再構築された私がダメージ計算した。
ただ、ケロべロスのスキルにある魔法耐性で、どこまでダメージが減るかわからんな。
「右手に、デスノバアラカルト。左手にデスノバアラカルト。避けてもむだだよ」
手を挙げた、右手に、2m程の太陽が現れる。
次に挙げた、左手にも、2m程の太陽が現れる。
ケロべロスに、両方投げつける。
余裕で避けるケロべロス。避けた後に私をもう一度食べようと迫ってくるときに、太陽が爆裂する。
範囲は、1kmの円形である。
全てが高熱で蒸発していく。私も蒸発していく。
ケロべロスも巻き込まれていく。
地面すら液化して爆風と高熱の嵐が広がっていく。
半分表面が溶けた門の前に、広大な扇上のクレーターができた。
門には結界があったのか、門の付近から被害が少なくなっており、半円の形だ。
再構築された裸の私と、虫の息のケロべロスがいた。
マジか!こいつ生きてる!魔法耐性凄いな、計算上は倒せているはずなんだが...
「おまえ、何者だ...ハーディス様より強い?」
しゃべった!話せるなら初めに対話...いきなり殴られたな....
「すまない、戦うつもりはなかったんだが、知人にはめられてしまって、回復するから見逃してくれないか?」
「あは!あははぁぁぁ!お前面白い!
きっと、俺よりお前の方が弱い。
俺、気配と感で、相手の強さわかる。
だけど、お前は俺を倒せるし、俺は、お前を倒せない。
俺、相手の先が見える。
お前、ハーディス様と同じ匂いする、見逃す」
お!あとは門を開けてもらおう。
結果を悟っていたので、先読みのスキルなのかな?
「エキストラヒール」
わかるように詠唱してケロべロスを回復する。
「回復のお礼は、いつかする。名前教えろ」
「リュウジだよ、犬っころ」
「犬っころってなんだ?」
「名前は、ないのか?」
「ハディース様には、ポチって呼ばれてた」
ん!!「ポチ?」
「ワン!ワン!ワン!」
突然ケロべロスが吠えた。
「すまん、条件反射だ....名前呼ばれると勝手に...また眠る...」
ケロべロスが、寝てしまった。
なんか、ハーディスって異世界転生か転移者かもしれないな、ポチって...
『カブ!終わったから門あけて!』
『は??いま、アスタロトがそっちを見れる魔方陣構築おわったよ!』
『だから!開けろ!!!』
『騙されないぞ!!そんなに簡単に倒せるわけないだろ!!』
『あ!見えた!.....え?あ!!...地面が!門溶けてる...えええええええ?でもケロべロスいる!騙したな!』
『違う!!倒して回復してあげたら、納得して、また寝た!』
『また!嘘だろう!門は倒すまで開けないぞ!』
この問答は..数十分継続するのだった...
用語説明
人工頭脳
学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピュータシステム
サーバー
クライアントからの要求に対して何らかのサービスを提供する機能を果たす側のコンピュータシステム




