第027話 初めてのまともなイベント
カブリエルは、存在してから初めて嫉妬を覚えた。
お気に入りのリュウジに、ラファエルが召喚されて、契約による主従関係を結んだのだ。
私とリュウジの関係は、口約束レベルに過ぎない。
なんとか、リュウジを説得して一緒にいるが、ラファエルは、一歩上にいる。
後から来た、リュウジの価値観では後輩の立場にある奴が威張っているのだ。
ラファエルに対して怒りしか覚えない。
ラファエルが、尊敬しているメタトロン様を利用して罠にはめよう。
悪巧みを思いつく。
オメールの街に到着した。
オメールの街は、ゲームでは、最後のダンジョンがある街である。
高レベルプレイヤーの最終到達地点である。
ゲームと同じように、街のど真ん中にデカイ穴があいていた。
記憶にある穴の規模と街がゲームよりでかいな。
ゲームでは、存在していなかった、魔国の王城が街の横にそびえ立つ。
国の概念がなかったので、城があるのに違和感をおぼえる。
オメールの街の中心にあるダンジョンは、地下何階まであるかは不明になっており、エンドレスホールダンジョンと言われている。
設定では、直径1kmほどのはずが、目の前の穴は2kmを超えている大きさだ。
この世界では、ゲームよりも縮尺がデカイな。
穴の周囲を囲む様に街が構築されている。
ゲームでは、ハウスキーパーを使用して地下278階までは、攻略済みであるが、公式にも地下何階まであるは、発表されておらず、穴に落ちると過去に攻略した階まで落下してゆっくり止まる。
各階層ボスを倒すと次の階にいく権利が発生し下へ向かって進んで行くのだ。
帰りは、知っていれば誰でも魔力があれば詠唱できる初級時空魔法の『リターン』で帰ってこれる。
ゲーム内では、ハウスキーパーは、公式順位は、172位で、ハウスキーパー以上のレベル400越えの廃人プレイヤーも多く存在した。
ナッチとネトとカブとメテとラファ(ラファエル)で、まずは、街の中で買い出しを開始する。
「ラファエルだと、長いので今度からラファって呼びますね」
「ご主人様のお好きな様にしてください。天使は実名を呼ばれるのを苦手としますので、助かります」
「ラファ!言いやすい」
ネトが、すぐに反応している。
街中を歩いている人が、とにかくヤバイ人しかいない。
下半身が蠍で上半身が裸の丸坊主の男とか、上半身が蟷螂だが、下半身が人間でズモン履いてたり、尻尾や羽根や角は、もはや当たり前の域である。
服屋に、まともな人間用の服がほとんど置いてない為に苦労して数を手に入れる。
これで、しょっちゅう裸族になる我がパーティーが、少しまともになるはずだ。
食料もヤバイ物ばかり販売されていて、なんの肉かわからないが、色が緑とか紫なんだぞ...喰えねえよ。
ネトは、気にせずバカバカ買い食いを実施する。
腹壊すぞ....
「カブ?ミカエルって何処にいるの?」
「街の何処かに、魔道具工房があってそこにいるか、城の中にある闘技場にいると思うぞ」
完全に観光雰囲気な集団なので、ラファに金貨100枚渡して、引率を頼んだ。
「了解しました」
「リュウジどこかいくのか?」
「一人でどこいくのじゃ、ついていくぞ」
「主従契約があるからついてくぞ」
「私とだけ、一緒に行きましょう」
他の4人がいると騒ぎにしかならん。
ラファが拘束魔法を詠唱した。
「な!」「リュウジの拘束が良いな」「何も感じぬ拘束だな」「石が足に絡みつく。うざい」
ラファの拘束魔法は、使用魔力が低いのか、私の縄で亀甲縛りではなく、足元の土が足にまとわりつき動きを妨げる様だ。
「ご主人様、どうぞ行ってください」
ナイスだラファ!
速攻で、走って離脱する。
魔国は、魔人や、獣人など、人間やエルフ、ドワーフなどの人型ではなく、モンスターや動物の血統や加護を持つ異形の物が集まって出来た国である。
猫耳モフモフもすれ違ったりするとテンションが、上がって行く。
背後から声をかけられる。
「お、お前!人間だな。お金置いていけ!」
ボロボロのナイフを持った10歳ぐらいの猫耳少女が、9歳ぐらいかな?妹と思われる猫耳少女...いや幼女と共に、ボロボロの服を着て、手をプルプルしながら、私を見ていた。
身長も140cm程しかない、可愛い!!
な!なんてファンタジー!!素晴らしい。
猫が人間に体型になって全身モフモフである。
うちの夜中に鉈もって来るような精神的異常っぽい集団と比べたら凄い差である。
「置いて言っても良いが理由を聞かせてほしいな」
「人間は、口が上手いから騙されない。お金置いてけ」
まるで、ゲームのイベントのようではないか!
是非、攻略させてもらおう。
「お父さんかお母さんは、何処に?」
「お父さん病気で死んだ。お母さんダンジョン行ってずっと帰ってこない」
「ムムル!余計な事言わないの!お父さんは、ライオンの獣人で強いわよ!」
あんた、猫にしか見えないぞ...必死だ。
「いくら欲しいんだ?」
「え?ええぇと、一杯よ!全部出しなさい」
「金貨5枚です。ないと僕が今日で奴隷になる」
「ああァァァ!ムムル!!」
だいたいストーリーは、理解した。
僕だと?実は男の子の落ち付きか?
「わかったよ、ムムル」
ムムルに金貨5枚渡す。
「え?いいの?」
「いいけど、おねいさん説得して」
「ムムル!騙されちゃダメよ!」
「ネネムねーちゃん、騙される内容がないよ。ほら!」
金貨5枚を、肉球が付いた手で姉に見せる。
「そ、そうね。行くわよ」
ムムルが、頭を下げていると、姉が手を引っ張って街に消えて行った。
素晴らしいイベントだ!
すぐさま、後を追尾する。
臭うぞ!トラブルの臭いがプンプンするぞ!
姉妹が、とある建物に入っていった。
だが....すぐに権利書っぽい紙を持って出て来た。
紙をビリビリに破いて、捨てる...
無事、イベント終了だと!!
普通は、その金額じゃ駄目だとかに、なるんじゃないのか?!!
「あ!さっきの人間!」
ムムルが、私を見つける。流石、獣人である。
「追って来た?やっぱ、何かあるのね!」
「ネネムねーちゃん?何もないぞ。解放されたし」
「そ、そうね。お礼しないと駄目ね。そこの人間。ついて来なさい」
家まで案内された。
ボロボロで、今にも崩れそうな家だった。
傾いたドアを開けて入ると、10際未満の子供が一杯いた。
猫、犬、牛?、羊、??
何人かは、なんの動物かわからない。
「ネネム返って来た!」
「ご飯あるの?」
「ダンジョン行けた?」
結構、みんな痩せてる。これは、いかんな。
物凄い速度で食料を大量に取り出す。
「ネネムが、食料を持って来たぞ。腹一杯食べていいぞ」
「「「「わぁぁぁ」」」」
ワラワラ食料に群がり食べ始める。
「な?なんなの!!あんた何者?」
ネネムが、混乱する。
「お礼は、情報で良いぞ。ここの状況と、この子供達は、誰か教えてくれる?」
ネネムから、情報を得るのは難易度が高かった。
ネネムは、馬鹿だった....
よって、ムムルから情報を得ることになった。
予想通り、ムムルは、男の子だった....ネネムのお古の衣類しかもらえないからなぁ。必然の男の子であった。
この施設は、孤児院であった。
寄付とネネムのお母さんがダンジョンで稼いだ、お金で運営していたが、昨年からお母さんが行方不明になってしまった。
寄付とネネムのダンジョンの稼ぎでは、食費が間に合わず、質屋にムムルが担保で、金貨3枚を借りたが返却出来ず。
明日にムムルを質屋に渡さなければならなくなった。
利子を含めて5枚で借用書が回収出来るが、全くあてもなく、途方にくれていたら珍しく人間が歩いていたので、襲ったそうだ。
素晴らしい!私がすべき事は、パワーレベリングで、ネネムとムムルを強くして、ダンジョンで余裕で稼げるまで、鍛えれば良いのだな?
「君達!私を師匠と呼びなさい。すぐさま最強の名をあげよう!」
「は?馬鹿なの?」
ネネムが冷たい視線で見る。
ムムルは、出会った時から熱い視線だ。
「で?貴方は誰なの?人間なのは知ってるけど、魔力も生命力も感じないし凄い弱いそうだし、なんで食料を出せるかも、なんでお金持ってるかも全然わからない!」
まぁ、普通の反応だわ!いきなり修羅の国の発想のナッチは、変だったんだな。
「リュウジと言います。目的は観光みたいなものですよ。ちょうどダンジョンの案内を頼める方を探していたんで1日金貨1枚で頼めます?」
「金貨1枚?銀貨じゃなくて?」
「足りませんか?」
「い、いや十分よ!」
「まずは、この建物を新品にするかな」
光の神剣を装備して、建物に斬りつけた。
まるで、逆再生のように建物が出来た当初まで修復される。
余った修復エネルギーは、家具やドアまで新品同様になった。
カブリエル倒したせいで、凄いレベル上昇の為に、一撃での回復や修復の力が桁違いになってるな...
ムムルとネネムは、口を開けて呆然としていた。
即席の私と、獣人の少女と、獣人の男の子のパーティーが結成された。
用語説明
ファシリティのゲームの世界観の説明
※一部設定的ネタバレあり
この世界全体は、ゼロから始まった
(現実社会も本当に、そうである)
光があれば影が出来るように、天界があれば、対応する地獄界がある
天界がプラスならば、地獄界はマイナスで合わさればゼロになる
天界と地獄界が同時にできて、その境界の合間にできた両方の性質を持つ世界が地上界である
思念体だけの塊の住人の国が天界と地獄界であり、物質にとらわれると地上界になる
天界には、天使が住んでいる
地獄界には、悪魔が住んでいる
表裏一体の為、天界滅べば地獄界も滅ぶ
地獄界が滅べば天界が滅ぶ
どちらかが繁栄すれば片方も繁栄し、片方が衰退すればもう片方も衰退する
その為、天使と悪魔の戦いは、地上界の主権を争うにとどまる
現在は、天界支配下である
地上界もゼロから生まれたにで、天界と地獄界の関係にように対になる世界があるが、それがリュウジいた元の世界である
地上界から天界もしくは、地獄界に行くには、思念体で拡散しない精神力が必要
逆に天界や地獄界から地上界に行くには、思念体が入れる器か、思念体が物質化する為のエネルギーが必要




