第019話 天使カブリエル
悪食を治させる為に、黒竜と喧嘩して島を追い出した白竜は、心配になってきた。
長い間一緒に過ごした双子の黒竜が、帰ってこない。
竜王に相談するか、探しに行くか、今日も迷うのであった。
「こんな、容易に治るものなのですか?」
聖女のネビウが、自分の手足を見て驚愕している。
顔も元どおりになっていて、驚きで目を大きくしている。
「なんで、そんな身体になったのですか?」
当然の疑問を聞いてみる。
「ある日、天使様が現れて、隣国の疫病を治すには、私の足を求めて来ました。
法国の凶作を防ぐのに両腕を求めて来ました。
シハヤが重い病で死にかけた時には、私の顔を求めて来ました。
地震で死者が1万人出るところを眼球を差し出す事で地震を止めていただきました。
目が見えないのは不便だと言って、耳を差し出して義眼をもらいました」
その天使って悪魔?!
ひとりの犠牲で多くが助かる価値観の押し付けだな。
「シハヤは、どうにか私が元に戻れる様に、様々な試みを行いましたが、無理でした。ならば、自分が悪役になって、自分を超える勇者が現れれば、きっと救ってくれると冤罪で多くの人々を殺め始めました。天使様に聞くと、それは、数万人を助けれる人を助けるのであれば、正しいことだと教えられました」
その天使は、本気でそう思ってるから、真実の義眼でも見抜けないってオチか....
狂信者の正義ほど、恐ろしいな。
「まさか、こんな一瞬で治癒させてしまうとは!私の願いは叶いました。しかし、多くの罪なき人を殺めました。丁重に埋葬していますが、責任は、取らねばならないでしょう。その前に貴方様のお名前を伺ってよろしいですか?」
シハヤが、かしこまって聞いてきた。
「私の名前は.....」
「空蝉の鏡で聖女を見ていたが、酷いな!素晴らしい慈愛が台無しだ!!誰だよ、お前!」
名乗る前に、祭壇の入り口から、超美形の人物が入って来た。女なのか男なのかわからないが、凄い整った顔にスタイルも良い。胸の膨らみも微妙で判定が付かない。
金髪で、瞳が金色であった。髪は、肩まで伸ばしている。
「天使様、また聖女様を騙しに来たのですか!!」
シハヤが、凄い形相で侵入者を睨んでいる。
「シハヤは、疑い深いな。騙した事など無い。真実の義眼も、予測の義眼も私があげたではないか?曇りなき目で、真意を確かめれば良いではないか?
それより、その男は、誰だ?」
「私の名前は.....」
「まぁ、どうでもいいや。死ねよ。ブラックホール!」
私の目の前に、黒い点が現れ、全身が潰されながら、その点に吸い込まれる。
ちなみに、死ぬほど気持ち.....やばいなぁ...マゾじゃないぞ!
「さて、聖女の代償で頂いた体が戻っている。これは、約束が違うよね?どうしようかな?そもそも、どうやって戻ったの?さっきの男からは、魔力は、全く感じなかったから、そこの少女が、治したのかな?」
「なんだ?金髪。リュウジを何処かに隠したのは、お前か?」
ネトが、少し怒っていた。
「へぇ、あいつは、リュウジと言うのか?あんなカスを気にしているのかい?君の生命力と魔力は、人間ではないね。そんな存在が、何故、あれに従っていたのかな?」
「お前、リュウジ知らない時の私と一緒。リュウジきっと世界一強い」
ネトが、得意げに言う。
「は?もういないけど!?」
鼻で笑う様に、金髪が呆れる。
先程に吸い込まれた魔法のブラックホールが閉じると、逆再生の様に、私が現れる。
「カスで、悪かったね。話を聞いていると、お前の理論が間違っている。聖女の体は、私が与えたものだ。お前が奪った物を戻した訳ではない。よって約束は、守られている。聖女さん、いや、ネビウ・メロウ!真実の義眼で真意を確かめろ」
「.......嘘ではないです....何故、私の名前を?」
ネビウの眉間に皺が寄ってる。
「な!何言ってるのさ!失う代償が戻ったら代償じゃないじゃないか?」
「お前が言っているのは、屁理屈だ。クソ、カブリエル!」
「な...なんで私の名前を!!!」
金髪の名前は、カブリエルで慈愛の天使だったな。
殺したはずの魔力を感じない男が、全くピンピンしてる上に、自分名前を当てられて、カブリエルが動揺していた。
まぁ、無詠唱の鑑定魔法でステータス見放題だからねぇ
名前 カブリエル
性別 両性
種族 天使
状態 混乱
レベル2386
生命力 53290/53290
魔力 33117/34278
攻撃力 12440+713
防御力 9237+796
スキル
光魔法 レベル2210
重力魔法 レベル1276
装備
詠唱の指輪(補正791)
天使の羽衣(補正713)
身代わりの指輪(補正5)
あら!この子!チーターさんだ!!
何をどうすればレベルが、2000超えるんだよ!
ゲーム中でも私が、レベル300超えるだけで地獄だったぞ!
それより、カブリエルが混乱してる。
戦闘せずに口だけで勝たせてもらおう!
チーターと言っても、純粋なバグには勝てないよ。
「今、私が本気で戦うと、この国がなくなります。カブリエルの全てを知っていますが、確実にカブリエルより私の方が強いです。カブリエルは、記憶に無いと思いますが、過去に四大天使のミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの4人は、私1人で全員消滅させた時があります」
ゲームで四大天使を倒して、限定アイテムゲットするイベントがあった際に、倒しているので、本当の事である。
だが、この世界ではない上に、倒した天使のレベルは、150だったけどね。
「......し、信じられませんが...真実です....天使様の上の存在??」
「嘘だ!!聖女よ!!お前は嘘を付いている!!何故こんな男に!!騙されている!!」
「リュウジ、人間フリするの上手い。金髪に本当姿見せるの。そうすれば、納得する」
ネトが、爆弾発言する。
「....真実です......」
「ほう!まさか人間に化けているのか?もしも、私を上回る存在であれば、お前に従ってやろう」
いや、従わなくていいです.....なんか、また同じパターン気がする。
攻撃力が、高くて範囲が狭いとなると、選択肢としては、また最上級の攻撃召喚魔法になってしまうな。
考えたら、カブリエル!お前も攻撃召喚出来るんだけど??
四大天使を倒すイベント手に入るのが、まさに4人の召喚だった。
まぁ、今度機会があったら召喚してみよう。
今回は、一択かなぁ。
「死んだら生き返らせてやるが、試すかカブリエル?」
挑発してみる。
「生き返らせる?君は気が狂ってる様だね。そんな事出来るわけないだろう?」
「....本当の事です....天使様....」
「はぁ?君の義眼は、壊れている!私が出来ない事を、こんなカスが出来る訳が......」
「メタトロン!!」
私が、36対の翼を持つ天使の姿に変わっていく。
神殿の空間に無数の目(36万5000)が発生する。
全ての目が、カブリエルを見る。
「な...なんだと!!玉座に侍る者か?そんな馬鹿な」
右手を差し出して、手を開く。
カブリエルの背後から巨大な手が出現する。
手から逃げようとするが、無数の目から逃げれない。
巨大な手がカブリエルを捕まえる。
数が違うのだよカブリエル!
私が手を閉じて行くと、巨大な手も同じようにカブリエルを握り潰して行く。
必死に抵抗するカブリエルを、ゆっくり潰して行く....
「ありえない!ありえない!ぐぶ....」
手が閉じて開いた後には、ダイヤが出来ていて、床に落ちる。
あまりの圧縮の為に、原子レベルで圧迫され炭素がダイヤに変わってしまった様だ。
そして、元の私の姿に戻る。
地味な最上級の攻撃召喚魔法だが、威力は、単体の敵に対して最大級なのであった。
「リュウジ、天使だったのか?」
ネトが、首をひねる。
「いや、人間だよ」
「....本当ですね....人間でどうすればそのような力を...」
聖女のネビウが、何か代償を払っているのかと勘違いして、切なそうな顔をする。
用語説明
この世界でのスキルに関して
(ゲームとは、多少異なる)
スキル
その属性、もしくは系統の行動を取ると稀に習得する。
習得時は、レベル1であるが、同一の属性および系統を使い込むとレベルが上がっていき、一定レベルで閃きを持って新たな魔法や技を開花する
ゲームでは、閃く必要はなく、勝手にレベルが上がれば表示された為に、その属性や系統の魔法や技は、レベルにあった物が全て使えた。
きっかけとなる初級魔法は、魔力があれば、指導を受けると誰でも使用可能であるが、習得は個人差が出る。
ゲームでは、一度覚えた魔法および技は、スキルが消滅しても使用できる為、必要な魔法や技を覚えたら神殿に行きスキルを合成や、上位互換させて違うスキルを覚える事ができる。この世界で同一の事が出来るかは、まだ不明
主人公のリュウジは、スキルが無いのだが、全て使えるのは、今後の話にて.....