第017話 身代わりの指輪
王都の王宮内で一番大きい会議場で行われている円卓会議が、稀に見る程に長丁場になっていた。
貴族派の党首であった、レイモン公爵の暗殺の件である。
帝国では、あえて、7人の騎士団は、皇帝派と貴族派に分かれていた。
力も重要だが、政治的な駆け引きや血筋も重要である為、どちらか一方だけに偏らぬように、騎士団団長の派閥を4対3に保つようにしていた。3対3では国が2つに割れる為の対策であった。
現在、黒竜の件で貴族派のロッベンがいなくなり、4対2になってしまった事で、貴族派の騎士団団長を推薦したいが、7騎士団に値する騎士団がいなかったのだ。
「レイモン公爵暗殺の犯人討伐の指揮は、ネネ・カミユに決まった事を承認しよう」
皇帝が最後の決定を宣言した。
「承りました。速やかに討伐いたします」
ネネが、敬礼する。
「まだ、決まってないが...どうする?序列7位が空白も問題だろう」
第三位の貴族派のモクスがバランスを考えて進言する。
「黒竜の討伐でレイモン騎士団の団長が参加して討伐した情報が上がってきている。レイモン騎士団は、どうだろう?」
第二位の皇帝派のアンドエが提案した。
「レイモン公爵の秘蔵の騎士団か?噂だと強いと言う話よりも、恐ろしいと言う話しか聞かない上に、見たものがいない。だが貴族派の騎士団で最強かもしれんな」
第四位の貴族派のワトが、発言に賛同する。
「ちょうど、ネネがレイモン公爵領に向かうのだ。ネネにレイモン騎士団とレイモン公爵暗殺を調査してもらい。ネネが認めたら序列七位に入れよう」
皇帝が言うと会議が終了した。
王都に戻って、マギアを冒険者ギルドまで送る。
「今日は、ありがとう」
深く頭を下げられたが、返事に困って手を挙げて別れた。
すぐに道具屋へ向かう。
毒消しと、麻痺消し、眠気ざましのポーションを店にあるだけ買い占めた。
早く筋肉痛を止めねば....
宿屋の前で、ネトとナッチが待っていた。
「遅い!!」
「リュウジ、満腹なの」
確かに、既に真っ暗で街頭のランプが光っていた。
「心配させたかな?」
「まったく心配してないわよ」
3人で宿屋に入り、ナッチとネトを同じ部屋で宿泊させて、自分の部屋に戻ってベットに横になる。
さて、回復時間だな。
毒と麻痺の状態をポーションで回復する。
そして、全回復魔法を唱える
「エキストラヒール」
うぎゃああああああああ!
絶叫のち...気絶。
目を覚ますと朝だった....
回復ヤバイ!
即死するレベルの痛みだった...実際そうなんだが半端なかった。
痛みで気絶したの生まれて初めてだ。
なんか対策しないと、真剣にヤバイ....
最悪、発狂か廃人になる!
今後の方針は、状態変化無効アイテムの探索と生命力回復時の痛み回避方法を考えるだな。
部屋にナッチが、ネトと一緒に入ってきた。
「おはようリュウジ、昨日、叫び声が聞こえたんだけど、まるで殺された断末期の叫び声だったので、リュウジじゃないわねと思って寝ちゃったけど、なんだったのかしら?リュウジ知らない?」
コイツ!わざとか?真実の義眼があるから、回答の難易度高い!
「知ってますよ。生命力が低い人に回復魔法をかけたら、叫んだ人がいましたよ」
「あら!本当の事のようね。回復で叫びって自殺願望の人を止めたって事かしら?リュウジ優しいわね」
話題をずらさねば...
「今日は、石化を無効にするような魔道具がないか探しに行こうかと思ってます」
「私も、昨日からレイモン公爵の情報が届いて騒がしくなっているので、おさまるまでは暇なので、リュウジの部下として、つきあって良いですか?」
「部下ではなく、友人としてなら良いぞ」
「えええぇ?恋人とか洒落た内容には?」
「ならない」
ナッチの顔が強張る。
真実がわかるナッチが落ち込んでいる。
「いや、嫌いじゃないぞ。ただ、気が早いぞ?」
「本当だ!わかった!!」
ナッチの機嫌が治る。
真実の義眼の無効アイテムも探さないとまずい。
ナッチは、嫌いではないが性格が...怖い。
ネトとナッチを連れて食堂へ入り、食料をアイテムボックスに補充しながら朝食をとるが....
料理長がきて、泣き言を言う。
「お客様、すみません。本日の食材が尽きました...」
ネトとナッチが、大食いの上に、私も出された料理をアイテムボックスに入れていくので、食い尽くしてしまった...
これを、3軒繰り返して、やっとネトの状態が満腹に変わっていた。
使用金貨...12枚だと...
どうにか、安定収入の仕事を探さないと破産しそうだな。
未だに、初心者の服とフルプレートしかないので、下着から何から生活用品を買いまくりアイテムボックスに入れまくる。
ネトとナッチと私が、目立たない普通の服装に着替えて、一通り王都の店をまわる頃には、夕方付近になっていた。
買い物の間、ネトは、常に買い食いをして、大満足。
ナッチは、私と街を買い物できた事が、楽しかったようで終始笑みを浮かべていた。
「リュウジに会ってから、なんか凄く楽しい」
「リュウジにあってから、常に美味しい。凄く嬉しい。ずっと一緒」
2人が喜ぶと私もなんか楽しい気分になる。不思議な感情だなぁ。
買い物中に、睡眠と麻痺と毒の他に、混乱状態回復のポーションが、見つかった。
もちろん買い占めたが、数が少なく5本しかなかった。
最後の道具屋の店主が、装備していた指輪を鑑定したところ、身代わりの指輪が、石化を防ぐアイテムであった。
店主に、詳細を聞いたが、かなり高価なアイテムで、あまり出回っていないらしい。
身代わりの指輪
状態変化を一度だけ防ぎ、防ぐと指輪が砕けて効力をなくす。既に変化した状態は、戻す事は出来ない。
ゲームでは、即死攻撃を一度だけ回避するアイテムであったが、この世界では、状態変化を一度だけ防御するアイテムになっていた。
ゲームでは、フリクション迷宮のリッチが、ドロップするアイテムであった記憶がある。
明日、行ってみようと計画をした。
「ナッチ、明日、迷宮に行こうと思うのですが、行きます?」
「迷宮!!行きます!行かせてください!」
「迷宮は、美味しいのか?」
「ネト!食べ物じゃないですよ。フリクション迷宮って知ってます?」
「え?めちゃくちゃ遠いし、ミワ王国じゃない!そこに行くのに通行許可書が必要よ」
「通行許可証?」
「クルト帝国とミワ王国は、定期的に戦争をしていて、国境に関所があるのよ。
冬期間だけ戦争を休戦して、その間だけ通行許可証で商業目的の場合に限り移動できるけど、今は....春よ...」
「フリクション迷宮に転移できます」
「あ!有名どころには、転移できるっだったわね。でも、どうやって来たか聞かれたら.....ネムル法国経由で来たって誤魔かすしかないかしらね」
「ミワ王国だと、私達がクルト帝国から来たってわかるんですか?」
「ミワ王国は、国民を管理する議会があって、そこが発行してる証明書がないと、不法侵入者で犯罪者扱いよ。通行証がある時は、それが代用品になるのよ。一回、ネムル法国に入って、ネムル法国からの通行許可証を取得すればよいかも?」
「ネムル法国の通行許可証は、容易に手に入るのですか?」
「お布施次第らしいので、お金があれば余裕よ」
「じゃぁ、明日はネムル法国に行きますか?」
「うあぁ!楽しみ!!」
ナッチが飛び跳ねる。
人物紹介
ガブリエル
天使
年齢 ???
金髪で金色の瞳を持ち、髪は肩まで伸ばしている。
超美形の両性具有だが、精神は女性である。
慈愛を重視する為と神として宿った人の精神が邪悪だった為か、正義の方向性を失っている
リュウジと出会って大変な事になる人物