第015話 神木とクロディア
小さな部屋に、ベットで横たわる少女がいた。
今日は、妙に左目が痛いが、未来が見えない。
彼女の左目には、青い予測の義眼が、埋め込まれていた。
予測の義眼は、外れる事が多い未来が見える。
ただ当たる事もあるので、危険回避には、役に立つ。
いつもは、左目が痛むと外れるかもしれない未来が見えるのだが、痛みだけで全く未来が見えない。
何かが起きる予感が、少女の胸を埋めていく。
「敵意はない。今回の来訪は、石化した人を助けにきた」
「お前が、助けるだと?長として信用できない」
偉そうな感じ通りに、エルフの長だったのか。
攻撃しても無抵抗で、平然としている為に毒気が抜かれたのか、会話が出来そうだ。
生命力が、100回死んでる程減っているが......まぁ仕方がない。
「私の名前は、リュウジだ。マギアから依頼を受けて石化を解除しに来た。夜までに戻りたいので、石化した人を連れて来てくれ」
「その、証明はどこにある?マギアは、闇に落ちたエルフであって、本来は、このエデンに立ち入りは許されていない。殺されて当然の奴の連れてきた人物など、誰も信用できない」
グハ!よく見れば、みんなエルフだが、色黒のダークエルフは、皆無だ。
マギアにも、深い話がありそうだな....
出会う人に、普通の人がいない。
ナッチの場合は、真実の義眼のお陰で、すぐ信用してもらえたが、今回は厄介だな。
「何をしたら、信じてもらえますか?」
「大人しく出て行ったら信じてやろう」
「また、来てよいのですか?」
「二度と来るな」
うあァァァ!コイツダメだ。
マギアと内緒の相談を始める。
『マギア!二度とここに来れないかもしれないが、悪役になって石化を解除して、クロディアをさらって、王都に戻ってよいか?』
『誰も怪我をしないなら.....そんな、方法あるんですか?』
『ある!でもイメージは、最悪になるけど...』
『わかりました。お願いします』
『あと、みんな突然眠りだすので、高い所から落ちた人がいたら教えてね』
『!?わ、わかった』
偉そうなエルフの周りのエルフが、バタバタ倒れだす。
無詠唱で、睡眠魔法をかけまくる!
「何が起きてるんだ!!お前らが、なにか.......」
バタン!
偉そうな奴も寝てしまった。
見える範囲の150人ほどを眠らせた。
少しでも見えたらすぐさま眠らせていく。
「マギア、石化の人はどこにいる?」
「25年前は、神木の下に安置されていた」
「案内してください」
神木に辿り着くまでにも、問答無用で30人近く眠らせた
この方法、良いかも!
この世界じゃ無詠唱なんて、知られていないから警戒もせずに倒れていく。
神木の真下に来ると、石化した2人が安置されていた。
「25年前と変わらないな」
過去を思い返して、マギアの悲壮感が凄い。
「ストーンブレイク!ストーンブレイク!」
石化した2人が粉々に砕ける。
「えええええ!」
マギアが愕然とする
「リサステイション!リサステイション!」
蘇生魔法を、状態が石化から死亡に変化した2人に唱える。
粉々になった石化した肉体が、赤みを帯びて生身なり逆再生のように二箇所に集まって、2人の裸のエルフが再構築される。
「ええええええええええええ!」
マギアが、更に愕然とする。
「完了したよ」
「な、なんだここは?石化していた肉体が戻っている!」
「本当だ!石化を誰かが解いたのか?ん?お前、マギアじゃないか!なんか胸がでっけーぞ!!何故黒い?闇落ちしたのか?」
どちらが、どちらかわからないが、マギアの兄のエウラ・リュークドと幼馴染のエキット・ワワムが、真っ裸で復活した。
「ふ、服を着てくれ!!とりあえず、これを着ろ」
いつもの、何処から出しているのか、わからないが、薄い毛布を2枚渡す。
「お!すまんマギア」
「助かったよマギア」
2人が腰に巻いて、こちらを見る。
「「そこの人間は誰だい?」」
いやん!見つめないで....
今まで、何があったかマギアが2人に話し始める。
30年前に石化した2人を戻す為に、冒険者になって世界を彷徨った話から始まり、状態回復の魔法が、闇属性に存在したので25年前に闇落ちして習得した話をした。
しかし、闇魔法の状態回復は、麻痺と毒と盲目だけで、石化解除がなかった事。
闇落ちした為にダークエルフになった為に、エルフの里を追放された事。
追放されても、諦めずに彷徨って、とうとう私を見つけた事。
最後に、誰も傷つかないように、エルフの里の全てを眠らせて、2人を元に戻した事を説明した。
2人が涙を流して、話を聞き終えた。
「すまなかった、リュウジ」
「あのクソガキのムルの奴がエルフの里の長だって、我らの恩人に対する仕打ち許せんな!」
「いや、大丈夫ですよ。街に戻りますがマギアも一緒に行きます?」
クロディアにも会いたかったが、かなり騒がしてしまったので、次の機会にしようと考えた。
「そうだな、これから大騒ぎになりそうだから、一緒に戻るかな。弓矢から身体を呈して守ってくれて、本当にありがとう、リュウジ様」
マギアの僅かに顔が赤い。
「そこにいるのは、まさか孫のエキットなのか?」
神木から、声が聞こえる。
「クロディアばあちゃんか?なんで神木から声が聞こえる?」
「まぁ、石化が解除されたのか?良かった。お前達2人が石化してから10年程経った頃に、神木が枯れ始めたのさ。調べると木の病気だった。治癒しようとしたが手遅れで、私が同化して魔力を伝えて延命中さ。それも、もう限界だね。最後に神木の花を見たかったね....木が死んだら、同化を解くさ」
「クロディアさんですか?」
「お主は、どなたかかな?何故か凄い懐かしい感じがする」
「2人の石化を解除した者です。実は、日本から来た虹色プレートの人物について聞きたいのですが?」
「構わないが、何を聞きたいんだい?」
「名前と何をした人かですかね」
「名前は、ハウスキーパーで、当時の魔王討伐した人だよ」
え??!えええええ!!
ゲームで、私が操作していたキャラの名前は、ハウスキーパーなんだが!
因果関係が、わからん
「その人物って、金髪で赤い瞳に、男なのに腰まで髪を伸ばしていて、白銀のライトプレートを着て、小剣を両手に持って戦う2刀流じゃなかったですか?しかも、虹色のプレートに300以上の数字が描かれてませんでしたか?」
「なんで?知っているの?ハウスキーパー様とお知り合いなのですか?」
いや、本人です。とは言えないな...確かに私が操作していたキャラクターに間違いないようだ。
これは、是非、さらって色々聞かねば。
「神木を復活させるので、神木との同化を解除出来ます?」
「ハウスキーパー様の知り合いなら信じられます。今解きます」
神木の前に光が集まってクロディアが現れる。
青い髪に青い瞳で、髪は、トサカが立ってる??
髪が重力に逆らって真上に垂れている。1m垂れてる。
顔は、絶世の美女とは.....しかし、スレンダーで無駄な肉が全く無い。
細い!!
そして.....全裸だった....またか!!
マギアが、急いで薄い毛布をクロディアに渡す。
神木が、一気に枯れて来た。
回復魔法を試しに無詠唱でやってみるが、一瞬枯れるのが止まるだけで、枯れる様な気配が進行していく。
急いで手に、隼の大剣を装備して神木を力強く切り裂く。
斬り裂かれて場所から、生命力が溢れてくる。
よし!
行けそうだ!
うおおぉぉ!!
叫びながら、斬りつけまくる。
隼の大剣は、非常に軽い上に、レベルも50まで一歩手前まで、来ているので、素早さも大分向上して物凄い速度の乱舞になる。
だが...通常は、剣でダメージを与えると剣のスキルが上がっていき剣のスキル技を覚えたりするんだが、ダメージを与える行為と逆なので、全くスキルが上がらない.....
直接攻撃は、スキルも皆無でゴミ以下だな.....
元、剣士だった自分のハウスキーパーを思い出し寂しくなる。
隼の大剣が、防御力がマイナスの為に、本来は、使えば使うほど刃こぼれして斬れなくなるが、逆でドンドン斬れ味が増していき、修復限界を突破した。
隼の大剣が、凄い光を放ちながら、違うアイテムに進化した。
人物紹介
シハヤ・ノーズル
男性 42歳 人間 身長2m5cm
ネムル法国の宰相
筋肉隆々の茶髪で茶色瞳
髪型は、丸坊主を少し伸ばした感じである
露出が多い白い服装を好んで着ている
聖女以外の人を人と見ていない
聖女様に絶対の愛を捧げている
天使を敵対視している
リュウジと出会ってから価値観が変わる