第012話 黒竜と陰謀
へリュークは、焦っていた。
レイモン公爵が、暗殺された際にすぐに街の門を閉鎖したため、犯人は逃げれない、はずであった。
だが、何処にもいないのだ。
殺された場所を調査すると、全くどの様な魔法で殺されたのかわからない。
透明な巨人が、踏みつけた感じで馬車が平らになっている。
レイモン公爵と側近の死体を、取り出す事も出来ないほど圧縮されていた。
この街には、10歳以上で呪印をしていない人はいないのだ。
呪印がされている人は、レイモン騎士団に嘘を言えなくなる。
10歳未満で、今回の事を実行出来るとは思えない。
急がねば、王都から調査の騎士団が来てしまう。
へリュークは、犯人を探して逃すつもりであった。
何しろ、レイモン公爵を殺してくれたのだから。
目の前に、黒髪で黒目の12歳ぐらいの人間の女の子に見える人物が、全裸で薄い毛布にくるまっている。
やな予感がするが、予想が当たれば.....
『なんで、これで会話が出来るのに、喋らないのですか?』
『人の体で、発音するのに、慣れてない』
『元の姿に戻れます?』
『元の姿に戻ると、凄く、お腹がへる。お腹がへったらいつも人の体になると、空腹が収まる』
『お腹いっぱいになったら、元の姿に戻れます?』
『ご飯あるの?』
凄い可愛い仕草で首を傾げる。
ナッチが、それを見て息づかいが、荒くなっていた。
マギアが、気色悪いナッチに少しひいていた。
アイテムボックスに入っていた街で買い出しした、食料を全て取り出して、女の子の前に並べていった。
「なんて量の収納?リュウジの収納のアイテムは、なんなの?」
マギアが、あまりの量に目を丸くする。
『これ!全部、食っていいのか!』
『良いよ、そのかわり元の姿を見せてね』
『わかったの!』
物凄い勢いで食べ始める。
20分後.....小さい体に、40食以上の食料が収まった。
「胸焼けしそう。凄いわね、この子!」
大食いのナッチも驚いていた。
「リュウジ、結局この子は、なんなの?」
マギアが話しを聞きたがる。
『やくそなの』
女の子が突然消えた瞬間、全長10mを超えると思うほどの黒いドラゴンが現れて、大きな翼を広げた。
「元の姿に戻ったぞ、人間!」
ドラゴンになれば、発音出来るのね。
予感的中だな。
流石に、この子を討伐するのは、気がひける。
どうするかな?
「な!なんだと!黒竜だったのか!人に化けるとは卑怯な!仇をうたせてもらうぞ!」
マギアが、大ハンマーを構えて臨戦態勢を取る。
ステータスを見ると、これって、マギアが勝てる相手じゃない気がする。
名前 ネト・ハミル
性別 女
種族 ブラックドラゴン
状態 空腹
レベル142
生命力 3024/3024
魔力 1512/1512
攻撃力 1036(+249)
防御力 972(+635)
スキル
噛みつき レベル14
切り裂き レベル9
ファイヤーブレス レベル32
飛行 レベル23
装備
ドラゴンの牙・ドラゴンの爪(補正249)
ドラゴンの鱗(補正+635)
あれだけ食って、まだ、状態が空腹だと!
「たかが人間が、我に逆らうつもりか?」
竜の形態になると性格が、変わるのかな?
「ネト・ハミル!お前を討伐に来たが、その前に、この付近の人間や家畜を襲った事があるか?」
「何故、我の名前を知っている?我は、この付近のサイクロプスを食べていただけで、襲われた記憶はあるが、襲った記憶はない」
「ナッチ、本当か?」
ナッチに確認してもらう。
「.....本当の事....という事は、冤罪で討伐されそうになってるって事かしら?」
「襲われた時に、何か人間は、話していたか?」
「我の身体は、高く売れる。名誉が欲しい。合法に討伐するために、周囲の家畜をさらったなど、言っていた」
「....本当の事ね。話をまとめると、ロッベン騎士団が黒竜の存在を知って、合法的に討伐出来るように自作自演で周囲に被害を出して、討伐に来たら返り討ちにあったって事かしら?」
「そ、そんな馬鹿な!ロッベン騎士団のメイトやロンベルやテククは、そんな事のために殺されたという事か?」
マギアが、持っていたハンマーを地面に叩きつける。
「私は、誰も殺していない。人間ごとき追っ払うだけで事が足りる」
「あらま!本当の事のようね。真犯人は、別にいるって事ね」
ナッチが、考える仕草をしながら、真実の義眼の判定を教えてくれる。
目立ちたく無いのだが、すぐに事件に巻き込まれるなぁ。
ナッチが、期待の眼差しで私を見ている。
「リュウジなら、すぐに解決出来るんじゃ無いの?」
「本当かリュウジ?」
「買いかぶりすぎです。無理ですよ」
「嘘つき!!めっちゃ左目が痛いんですけど!!」
ナッチが、左目を押さえて私を睨む。
真実の義眼は、私の天敵かもしれん。
「わかりました、解決しましょう。ネト・ハミルよ、この付近で人間の死体を見なかったか?」
「人間ごときが我に命令するだと?聞けぬな」
「倒したばかりのサイクロプスの死体8匹で、どうですか?」
「な!なんだと」
口からヨダレを垂らして、黒竜が少し考える
「先払いなら、教えよう」
「了解」
アイテムボックスに入れたサイクロプスの死体を、装備しようと考えると右手から出てくる。
8回繰り返して並べた。
「なんと!お前は、人間か?何処に、しまっているのだ?」
「約束は、守れよ」
「しばし待て......バック!!バリバリ!!」
身長3mサイクロプスを、ドンドン喰っていく。
一瞬で食べ終わり、状態が空腹から満腹になっていた。
状態表示って、正常の上に満腹なんて表示があるんだな。
「お前から人の姿の時に、もらった食料の方が美味かった。約束だ、連れて行く背中に乗れ」
3人で背中に乗ると、空へ舞い上がる。
「「「捕まるところがない!」」」
3人同時に叫ぶ。
必死に、首に捕まるが、首が太すぎて捕まるというか張り付く感じだ。
少しして、何もない岩山に辿り着く。
「そこに、ある骨が、そうだと思うぞ」
よく見ると、ボロボロの布と鎧と白骨が3人分あったが、サイクロプスに喰われたのか、散乱している。
「サイクロプスが、犯人なのかな?」
ナッチが推理している。
鎧を見ると、剣の切り傷や布も斬撃で切られた様な跡があった。
それを見て、マギアが.....震えていた。
「これは、3人は、人間に殺されたようだな....だが、証拠もないので、私の推測だけでは、手出しが出来ない」
「リュウジ、諦めて助けてあげたら?」
ナッチめ!!ポンポン私の事をバラしまくる。
初めに仲間の選択を誤った感が強い。
考えたら、殺されそうな出会いだったしなぁ。
「マギア、私は、目立ちたく無い。私の存在を隠し通すなら、全て解決するが、どうします?」
「解決してくれるなら、誓おう」
マギアが即答する。
「リサステイション」「リサステイション」「リサステイション」
3連続で蘇生魔法を唱える
白骨が、逆再生されるように、人の形を作っていく。
全裸のメイトとロンベルとテククが、蘇生する。
「な!なんだとおおおぉぉ。ありえない!!リュウジは、何者なのだ!」
「マギア!!約束!!誓ったでしょ!!静かに!!」
「あ!すまない。わかった」
生き返った、メイトとロンベルとテククが、周囲を見て唖然としている。
「俺たちは、殺されたはずじゃぁ?」
「なんで、全裸なんだ!」
「うお!黒竜がぁ!」
メイトとロンベルとテククに、アマギが事情を聞いた。
貴族派のロッベン騎士団は、特に成果を挙げていなかったので、最近は帝国の会議での、発言力が低下して来たと団長のロッベンが感じていて、カルラ山に黒竜がいる噂を耳にして、自作自演の討伐を計画したが、腹心の数人の団員と付近の家畜をさらっているのを、新人騎士のメイトとロンベルとテククに目撃されてしまた。
箝口令と言われていたが不安になったロッベンが、証拠隠滅の為に、黒竜討伐の際に背後から襲われて殺されたという事だそうだ。
マギアと生き返った3人に、辻褄合わせの打ち合わせを話す。
「ナッチと私が黒竜と戦って、善戦したら黒竜が和解。ここから黒竜が出て行く事になって、黒竜の不思議な力で、3人を生き返らせた!って事でお願いします」
ナッチが左目を押さえて睨んでる。
「おお!そうだったのか黒竜!助かったぜ!」
「こんな良い黒竜を倒そうとしていたのか?」
「黒竜すげぇ!」
「.......秘密だったな......わかった、そうしよう。では、討伐ではなく、撤去の成功という事で良いのだな?」
「それで、良いですよ」
マギアが、依頼書に終了サインして懐にしまった。
「あとで、冒険者ギルドに来てくれ。報酬を渡すよ」
「この事件は、どうなるんですか?」
「証拠も証人もいるので、大丈夫だ。知り合いの騎士団序列2位である、アンドエ騎士団に、報告して対応する。黒竜は、本当にこの場合を移動するのか?」
「断る。何故、我が、人間のいう事を聞かねばならない」
黒竜が、否定した。
「誰のいう事なら聞くんですか?」
「私より、大きく強き者であれば、聞くが、お前ら小さいし弱い」
丁度良い、黒竜を見てから試したい魔法があったので試す事にする。
「ならば、私の真の姿を見よ!」
「なんだと!お前も人に化けているのか!?」
黒竜が、ハッタリに慄く。
いや、思いっきり人間ですよ。
人物紹介
ネト・ハミル
黒竜で112歳
人化形態の時は、12歳ぐらいの黒髪の黒瞳の女の子
ドラゴン時は、頭が良いが、人化すると力が低下する、そして、頭も悪くなる
身長138cmで、美人ではないが可愛い
髪は、腰まで伸ばしているので、お化けの様な髪型になっているが、ナッチに出会ってからは、ナッチが髪留めを購入して髪をセットしている
大食漢で、歯応えがあるものが大好物
大きい存在が、最強だと思い込んでいるが、リュウジと出会ってから考えを改める。
ドラゴンが住む島で、暮らしていたが、ドラゴンの姿でバリバリ獲物を食べるのが好きだった為に、他のドラゴンが人化して、消費エネルギーを下げて生活していたのに、1人で島の食料を食べまくる行為を繰り返し、他のドラゴンによって島から追い出された




