第010話 カルラ山
馬が、走っていた。
王都に向かうために、馬の限界を超えて走っている。
馬が、泡を吹いて倒れた。
投げ出された乗っている人物は、空中で体制を整えて軽やかに着地する。
「今回の馬は、もった方だな。つぎの村まで早駆けで半日ぐらいか?レイモン公爵がいなくなった事で国が動くだろうな...」
倒れた馬から必要な物だけを、外して自分で持つと、次の村まで、走り出した。
王都テトモスの入った際の門の前で、マギアをナッチと待っている。
よく考えたら、どこの門か言ってなかったなぁ
王都テトモスには、東西南北の4つの門があり、北門は王城へ繋がっていて、東西南の3個の門は、街の外へ出ている。
私達がいるのは、南門である。
息を切らしてマギアがやってきた。
「お前ら!!北の山脈は、東門の道でいくだろう!なんで南門なんだよ!東門で待っても来ないから、人に聞いたら南門で見たって聞いて、急いで来たぞ」
「南門で入ったので、南門でしか出れないからですよ」
「出てから城壁沿いに東門へ来れば良いだろう!」
だいぶ怒っているが、道知らないし....
「しかも!赤いドレスに赤いフルプレート?!お前たち、本気で討伐に行く気があるのか?食料や手荷物は、どこにあるんだ!ドレスで、どうやって戦うんだ?フルプレートで旅をするのか?」
マギアは、露出度が少し高いが、軽くて丈夫な革製の鎧と背中に武器の大型ハンマーを背負って、手に食料道具などが入った鞄を持っていた。
「「大丈夫ですから、行きましょう」」
ナッチと私が、ハモって答える。
「本気か?!」
マギアが呆れ気味でため息をついた。
3人揃ったので、南門から外に出て、城壁沿いに歩いて東門に着いた。
「この道を馬車で3日いくと、グアバ街に付いて、そこから馬車で2日でネルシャツ村に着いたら、山脈まで森を歩いて3日ぐらいに所のカルラ山に黒竜がいるはずだ。あと数時間後に乗合馬車が来るので、それに乗るぞ」
マギアが引率してくれる。
実は、ゲーム中にレアアイテムのストーンオブキリングをカルラ山にいる、サイクプロスが稀にドロップするので、取得する為に、結構な回数通っていた為に、転移出来る場所として記憶にある。
ストーンオブキリングは、指輪アイテムで、装備すると相手に与える致命傷の確率が、数パーセント上がるアイテムであり、リアルマネートレードで1万円前後で売れたので、稼がせてもらった。
「マギアさん、これから起きる事は、内緒に出来ますか?」
「........黒プレートを見た瞬間から、内緒にする自信がなくなった。誰かに喋りたくてたまらない。内緒にしても良いが....何をするんだ?空を飛べますって、内容でも驚かないよ」
「転移魔法でカルラ山に転移します」
「は??」
ナッチが、背後から私を抱きしめる。
「さっさと行きましょう」
既に知っているナッチは、つかまってくるが、苦しい...
「マギアさんも、私につかまってください」
「いや、ちょっと待って、転移魔法って良く、地面の中に転移して窒息死や空高く転移して墜落死など、実験で死んでる人の話を聞くぞ、大丈夫なのか?」
「失敗しても、生き返るから大丈夫よ!」
思わず、ナッチが口走る。
「ナッチ!!!」
「あ!今のは、ものの例えよ。嘘だからね」
「え?え??どういう事?」
やばい、バレる....ナッチも嘘が下手すぎる。
「早くつかまってください」
「わ、わかった」
マギアが、ナッチの真似をして、正面から私を抱きしめる。
苦しいよりも顔が近い。マギアの顔が少し赤い。
「なに、くっついてるのよ!」
さらにナッチの抱きしめる力が上がる。
本気でダメージ受けてる気がする、苦しい。
カルラ山を連想して転移魔法を無詠唱で発動する。
一瞬でカルラ山のふもとの草原に、3人で現れる。
「おおおおお!転移した!!地上での転移は、初めてだ!!って詠唱した??無詠唱?!」
「目立つのが苦手なので、秘密でお願いします」
薄眼をしてマギアが私を見る。
「秘密にしても良いが、リュウジが何者か教えてくれないと、その約束は出来ない。あまりにも、おかしすぎる。ギルドマスターとして、もう見逃せないレベルを超えている」
うむ...まずい事になった。
ナッチに説明してもらうのが良いかもしれない。
「ナッチ、私の事を説明してあげて」
「え、教えていいの?」
「私の出身とかの話です」
「そ、それね!リュウジは、遠い国で、いつもデスマッチしてる修羅の国からやってきた人よ。めちゃくちゃ強くて私も一瞬で倒されたわ!それで、一目惚.....いや、そええで...」
支離滅裂になってる!!
自分から言うより、一緒にいた人からの方が、信じやすいと思って振ったのが、間違えであった。
「遠い国で転移したら失敗して、レイモン公爵領に転移してしまって、その際に全く知らない土地だったので、困っている所を、ナッチに助けてもらったので、恩返しで犯罪者のノームラを一緒に追っている最中に、路銀が尽きたので一稼ぎと思って、今に至ります」
「ほう!ならその遠い国の名前はなんだ?」
「日本と言います」
日本と聞いた瞬間、マギアがキョトンとする。
「日本と言ったか?」
「はい」
「なるほど....辻褄が全て合わさった。それならば秘密にしても良い」
マギアが、納得したような感じになっている。
「どういう事ですか?」
「見たことは無いが、過去に虹色のプレートを持っていた伝説の人物の出身は、日本と聞いたことがある」
私以外にも、こちらに来た人がいるのか?
「名前とか、わかります?」
「すまない、私の出身地にいるハイエルフのクロディアなら知っているかもしれないが、かなり昔の事なのでそこまで記憶にない。
リュウジが、あまりに特殊な人物だったので、悪魔などの悪い方の想像をしてしまったが、過去に伝説などと言われてる勇者の様な人物と同じ系列であると納得した。」
良い情報をもらった、黒竜で稼いだらマギアの故郷に行くのも悪くないな。
「納得してくれた所で、山頂を目指します?」
目の前に、カルラ山がそびえ立つ。
ゲームでは、丸坊主の岩山だったが、この世界では、あちこちに森のような所もあり、ゲームでは、数時間で山頂まで行ける大きさだったが、目の前の岩山は、1日かけても山頂に着く気がしないほどデカイ。
王都を観ても思ったが、外見と地名は、ゲームとほとんど類似しているが、ゲームよりも、この世界の方が縮尺が大きいようだ。
3人で、黙々と岩山を登っていく。
「山頂迄は、平らな道とかないの?」
岩だらけで足場も悪く、ナッチが疲れて愚痴を言い始めた。
「昼飯にしますか?」
私が提案する。
「食べれるような獲物は、いないようだが?」
マギアが、周囲を見渡す。
ナッチが、スカートから食べ物を取り出した。
「な?前から気になっていたが、ナッチのスカートの中は、どうなってるんだ?」
「リュウジだったら見せても良いわよ」
少しモジモジしたような感じで、スカートを捲くると、太ももに小型の鞄がバンドで付いていた。
パンツは....履いていなかった...
「駄目!」
すぐさま、マギアに目を押さえられて見えなくなる。
ちょっと待て!この世界では、パンツ履かないのか?
私の疑問は、マギアが答えてくれた。
「モンスター討伐に、ドレスで来る事自体、あり得ないでしょう!スカートの下には、下着は履かないけど、討伐で捲れる可能性もあるのだから、履いて来なさい!
しかも、その鞄は、物凄い貴重な収納の魔道具じゃない!なんで持ってる?どれぐらい入るの?」
「1日分ぐらいの食料と武器一式が入るわよ」
私を誘惑したかったのか、マギアに妨害されて少し怒り気味で答える。
手に食料を装備するイメージをして、アイテムボックスに入っている食料をどんどん取り出して、マギアの前に並べる。
何個かは、出来たてで、湯気すら出ている。
「う!どう言う事だ!何もないところから、なぜ食料が出て来る?やはりリュウジは....伝説の人のレベルなのか?ついていけない...」
「マギアは、深く考えすぎなのよ!修羅の国では、当たり前なのよ!早く食べちゃいましょ」
体のサイズに合わない、暴食が始まった。
ナッチは、よく食べる。
アマギは、もう何が何だか分からないような、顔をしながら出来たてで、まだ暖かい食べ物を食べる。
「この討伐は、服装もそうだが、装備も出鱈目で、普通に食堂で食べる昼飯迄出て来るし.....異常だ。それにしても、このスープが美味い!」
ゲームでは、匂いの概念はなかったが、この世界ではあるようだ。匂いにつられて、数体の影が接近して来ていた。
用語説明
冒険者ギルド
人口が1万人を超える街には、ほぼ何処の国でも支部がある
ギルドの中では、商業ギルドの次に大きいギルド
ギルド本部は、ミワ王国の首都ベルドルにある
ギルドマスターの審査が通れば、誰でも加入可能である
冒険者の主な仕事は、日雇い仕事と傭兵の仕事であり、ギルドは、現代で言うと職業安定所と派遣会社の中間位置する
内部にギルド員に対する警察の様な部署があり、冒険者の素行を監視していて、悪いものは陰で消されて行く