第001話 ステータス異常初期
短い内容の物語ですが、1話を3000字前後で進めておきました。
感想を頂けると嬉しいです。
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男が、2階の窓から森を見ていた。
「あと、少しというところで!!」
廃屋の前に、3人の武装した騎士が、見えた。
隠し扉を利用して地下室へ移動する。
地下室へ入ると、すぐに魔法を詠唱する。
「ストーンブレイク」
ガラガラ!
地下室への入り口が土魔法で破壊された。
部屋には、魔方陣が薄く光って部屋を照らしていた。
部屋の角にある、机上の本の裏に最後の遺言を刻む。
書き終えてから、男が叫ぶ。
「レイモン公爵め!!奴の最後は、見れないが私を生贄にして、悪魔を呼び出してしまえば、私の勝ちだ」
魔方陣の一部記載が、抜けている部位に、呼び出された存在は、必ずレイモン公爵を殺す運命になるような、記載をして魔方陣を起動する。
魔方陣の光が消えて部屋が、暗闇になる。
『時空を司る我を呼んだのは、お前か?代償はお前の存在だが、お前は悪魔ではないぞ?』
「え?」
魔方陣に記載された、悪魔を生贄で人間を呼び出すと描かれた部位が光りだす。
「あ!!馬鹿な!!人間で悪魔を呼び出すの間違えでございます。今、描いき直します」
『魔方陣の契約は、もう変更できない。お前を悪魔にしてから贄として、人間を呼び出そう』
「そんな、馬鹿な!それでは復讐できない....」
『安心しろ、クロノスの名にかけて、お前の願いは呼び出された人間によって叶えられる。
だが、お前が悪魔になって無事に召喚が出来た場合だけだ。
通常、人間が本当に悪魔になるには、裏返るしかないが、我が時空を司る存在であるがゆえに可能だ。では、開始する』
「そうか、やっと復讐が.....ぎゃぁぁぁ」
男の手の先が、内側から、めくれ上がり裏返しになって行く。
しかし、血が出ず、まるで時間が止まったようだ。
どんどん、裏返って、首まで達する所で一旦停止する。
『な!呼び出す対象が、お前が悪魔になる為に死なないように時間を止めている間に、消えてしまいそうだ。不完全だが、条件を確定し実施する』
実施した瞬間、まさに少しの誤差なく召喚対象が死んだ。
悪魔になりかけの贄で、死んでいる人間を召喚したが、実施する際は、生きていたと言う不確定条件が重なる。
生贄の男の存在が消えて、ボロ雑巾を着た男が倒れていた。
『まさか、死んでいても生きている。無い物が有る物と言う事が起きるのだな!これは愉快だ。虚数の実体化だと。呼び出された人間どうなるか、見えないとは!ああぁ素晴らしい』
そして、時空を司る存在が消えて、召喚された男が残る。
眼が覚めると、魔法陣の真ん中に寝ていた。
最後の記憶は....交通事故でトラックが突っ込んできて、壁に挟まれて潰された筈だ。
体を見てみると、トラックに轢かれた際に潰されてチャグチャになった為に、服がボロ雑巾に様になっていて、かろうじて大事な部位は、隠れている感じで血だらけであった。
私の名前は、取手龍治である。
30歳になったが定職も付かずに、引きこもりである。
最近は、ファシリティと言うファンタジー系MMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)でレアアイテムを産出して、リアルマネートレード(リアル現金でゲーム中のレアアイテムを販売)して生計を立てていた。
ファシリティは、主催している会社がリアルマネートレードに対して、許可を出していたので合法で許されていた。
外見は、身長175cmで痩せ型であり、顔もそこそこハンサムである。
あくまで、自称だがな。
確実に、トラックの圧迫で、体がひき肉になった筈だが、轢かれる寸前と服以外の外見の変化はないようだ。
アイテムを売った際に、手に入れた電子マネーを現金に変える為に、久々に外出したらこれだ。
やはり外の世界は怖いものだ。
周りをみると地下室らしきところで、暗闇の中に薄っすら魔方陣が輝き部屋を照らしている。
この魔方陣に見覚えがあった。
ファシリティの転移する際の魔方陣に似ている。
部屋に扉らしきものが無いが、穴を塞いだような瓦礫の山があった。
で、出口がないぞ?
部屋の角に机と一冊の本が置いてある。
かなり暗いが、なんとか本が読めそうだ。
題名には、ファシリティのゲームで使われている文字で悪魔召喚と書かれていた。
ファシリティは、世界各国で遊べるように各国の翻訳言語版が発売されていたが、コアユーザー専用の言語があり、その言語をマスターしている場合は、どこ世界のユーザーともボイスチャットしながらゲームが出来るため、マニアックなファシリティユーザーは、専用言語をマスターしていた。
もちろん、レアアイテムをゲットするため、のめり込んでいる私は、ファシリティの文字も言語もバッチリ覚えている。
ゲームが配信停止になったら、全く無駄な知識となるが......
日本のラノベの様に勇者召喚でもされて、ファシリティのゲーム世界に入り込んだのか?
まさかと思うが、まずは実験。
「ステータス」
目の前に、冗談のような、いつも見慣れたファシリティのステータス画面が半透明で現れる。
「こ!これは夢か?」
ファシリティは、ユーザーが難しいと感じない様に、単純明快なステータスと、詳細なステータスを表示出来る。
今見ているステータス画面は、単純明解版である。
名前 リュウジ・トリデ
性別 男
種族 人間
状態 正常
レベル1
生命力 ー356/ー39
魔力 ー31/ー31
攻撃力 ー20+0
防御力ー13+0
スキル
なし
装備
ボロ雑巾の様な服(補正0)
ー(マイナス)ってなんだ?これで正常?
考えられる事は、現実で死亡した状態で、召喚されてしまった為か?
そもそも誰もいないし....召喚?
ヒントとなる、ファシリティ語で書かれた本を読む事にした。
悪魔の召喚方法が書かれた本であった。
最後のページに生贄には、呼び出す術者の全てを差し出すとあった。
なるほど、呼び出した術者は、だからいないのか?
本の裏に走り書きで、術者の最後の言葉が書かれていた。
【もう少しで悪魔を呼び出す準備が終わるところで、騎士団にバレてしまった。入り口は、魔法で封鎖したので誰も入ってこれない。生贄用の術者を連れてくるのに失敗してしまった。私の命で呼び出せば良い。私の家族を殺したレイモンに呪いあれ】
勇者召喚などではなく、何か別の召喚に巻き込まれた気がするが、私は悪魔ではない。
魔方陣をみると、ファシリティ語で呼び出す種族の欄と生贄の欄に書かれた種族が逆さまになっていた。
焦って魔方陣を術者が作った為に、間違ってしまったようだ。
本に書かれた内容と比較すると、本来は人間を生贄で悪魔の部分が書き間違いされている。
悪魔を生贄で人間を呼び出す?
実際には、悪魔の様な術者を生贄で人間を呼び出す事になって誤作動召喚したのかな?
元の世界で、やり残したゲームが沢山あったため悔やまれるが、本来なら死亡していただろうと考えれば、徳をしたのだろうか?
隅から隅まで知っているファシリティの世界なのかは、わからないが、まずは試してみよう。
ダンジョン脱出用の出口へ瞬時に移動する魔法を唱える
「リターン」
森の中の廃屋の門に転移した。
この廃屋の地下室にいたのだろうか?
ステータスを見ると魔力がー(マイナス)31から魔力 ー(マイナス)61へ変化していた。
ゲームの仕様は確か、使用する際に魔力が0未満になる魔法は唱えられない筈だが、既に0未満になっている為か、この世界の理に関与しないという事か?
生命力に関しても0未満などなく、0になった時点で死亡になるが既に0未満のために死亡という状態変化が、起きないのかもしれない。
不死って事なのか?
流石に生命力は、試す気が起きない。
ファシリティでは、魔法はファシリティ語で覚えていて詠唱出来れば、魔力があれば使用可能だ。
この条件だとファシリティの全部の魔法を知っている私は、魔力が0未満で0にならない為に、全ての魔法が無制限で使える事になるが......
「何者だ!お前は!」
声をかけられたので振り向くと、完全武装した騎士が3名こちらに向かって剣を構えて立っていた。
良い言い訳は、咄嗟に出なかった。
正直にある程度、話すことにする。
「目が覚めたら出口がない地下室の様な場所にいたので、ダンジョン脱出用の魔法を唱えると、此処に転移しました。過去の記憶は無いです」
「ノームラの手下か?」
「全然関係ないと思います。ノームラって何かも知らないし、此処が何処かすら知らないです」
「怪しすぎる。とりあえず悪魔ではなさそうだな」
「命令は、目撃者も消す事になっていた筈です」
「仕方がない」
「私は殺されるって事かな?」
「すまないが、上の命令には逆らえないのでな」
「殺される前に、せめて何故殺されるか教えてもらえませんか?」
「いいだろう。我らはレイモン騎士団である。この廃屋にレイモン公爵に対して、ノームラという元レイモン公爵に仕える魔導師が悪魔を召喚して、復讐しようとしている情報が入った。
秘密裏に処理するように命令が来ている。
我らが此処にいることを、見てしまったお前の口を封じなくてはいけない」
「なるほど....では、殺して見てください」
何故か死ぬ気がしなかったので、大きい態度に出てしまった。
容赦なく3人の騎士の剣が私を串刺しにする。
生命力を見ると、ー356/ー39からー765/ー39に変わった。
剣が抜かれると、傷口は瞬時に塞がった。
「なんだこいつは!悪魔だったのか?」
「馬鹿な!」
狂ったように3人が斬りつけて来るが、斬られた瞬間に切り口は塞がり、逆に生命力溢れる感じがして来た。
不思議なことに斬りつけるたびに、騎士達の剣の刃こぼれが治っていく。
斬撃が鋭くなっていき、装備品が新品の輝きを醸し出していく。
私を切ることで劣化する筈の剣が、私の防御力や攻撃力がマイナスの為に、回復していっていると考えられる。
この状態...ステータス通りだと、私が防御もしくは攻撃すればするほど、相手が回復するってことだな....
生命力が、ー(マイナス)3458になっていた。
生命力0未満とは、状態変化が0(なにもない)未満の為に、これ以上、体が欠損する事も変化する事もない、という事かな?
3人が剣を振りすぎて、肩で息をし始めた。
「な...なんなんだお前は!」
「突然、殺そうとしたんだ。殺されても文句はないな?」
ファシリティで使用出来る上級魔法の一つを唱える。
使用魔力は最低1万であり、レベル200でも数千の魔力である為、複数の人間が同時に詠唱して、やっと使用可能な魔法である。
「デスノバアラカルト」
目の前に2m程の太陽が現れて、3人の騎士にあたって爆裂する。範囲は、1kmの円形である。
騎士たちが高熱で蒸発していく。
廃屋も燃え尽きていく。爆風と高熱の嵐が広がっていく。
私自身も巻き込まれて、直径2kmのクレーターが出来上がり、なにもなくなった場所の中心に、真っ裸の私だけが立っていた。
想像通り、魔法の攻撃力は、その魔法の使用した魔力によって変化するのだが、0未満の私は、無制限に使用出来るため、最大級の威力で発生させる事が出来るようだ。
しまった.....自分の魔法に巻き込まれて、服もなにもなくなった....真っ裸でどうやって街に入ればいいんだ....
真っ裸で立ち尽くす。
ステータス再確認して見る。
名前 リュウジ・トリデ
性別 男
種族 人間
状態 正常
レベル13
生命力 ー197351/ー673
魔力 ー16319/ー92
攻撃力 ー231+0
防御力ー156+0
スキル
なし
装備
燃え尽きた服の破片(補正0)
騎士を倒した為に、レベルが上昇しているが、元のステータスに対してのパーセントで上昇する為に、マイナスが更に悪化している!
しかも、最大生命力よりも低いので、何処までも低くなりそうだ。
これって、やり込んでいたゲームの様な世界に、バグの状態で転移したという夢を見ているのかな?
とにかく服が欲しい....
人物紹介
取手龍治
30歳 男性 無職
黒髪で黒目の日本人
身長175cmで痩せ型で筋肉もあまりない
顔もそこそこハンサムだと自分で思っているが、目立たず酷くない程の一般的な風貌
彼女いない歴史は30年
大学は出たものの、何処も就職できず、学生時代にゲームのアイテムをお金に換えれる事がわかり、さまざまなゲームを、やり込んでアカウントごと売却したり、レアアイテムを売ったりして生計を立てて暮らしている
性格は温厚だが、打算的な時がある
多少、鬱気味で死に対しての恐怖心がない
普通の人と価値観が多少ずれている。