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終転  作者: 久枠
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去る彼の手記

人が自らいなくなろうと言う時には、それは人それぞれ融通が必要になる。

そもそもがいなくなると言うこと自体、何を以ってそう断定出来るのかが難しい。


或いは国から、人種から、家庭から。

そう言った、いわゆる取り巻く環境から忽然と姿を消す事なのかも私には分からない。

なぜなら、それこそ煙の様に只々宙に浮かんでいられるものなどはそうそういない訳で、いなくなるという行動自体にどこか張り巡らせてしまった根っこの様なものを感じざるを得ないではないか。

それは只の移動で、いなくなると言うのにはとても足りるものではない。


意識的にその環境からエスケープするものの大半がその環境に残されたものの反応であったり、行き過ぎた感性のものであれば無反応でさえを期待し、裏切ると言った気持ちと嗜虐心を以ってその場をかき乱すと言う心持ちでそうするのでは?


 


でも私は違った。

完璧にそうした。

私が思うにここまでの居なくなるを実行できた者は今までも、そしてこれからも居ないであろうと言う程完璧にこなした。

居なくなった彼女を羨んだ時もあったが、それ以上を私は成し遂げた。


環境に残された者が反応はもちろんの事、無反応さえ許されないのだから。

これは完璧と言わざるを得ない。


所詮、人は人に認知されて初めてそこにいる訳で。

例えば誰もまだ通ったことの無い道が砂漠にあるとして、そこに住む一人の乾いた老人は確かにそこに居たとしても、それはもう居ないのだ。


私はそう言う事態に陥りたかったのだ。

私がパンを噛み、パサパサとしたそれを喉に通す為に唾液を口に行き渡らせる。

それでも足りなかった時の為に用意した水を流し込み、立ったまま食事をとっていた事を思い出し、地べたに腰を下ろす。

それを見る者も想像出来る者もどこにもいない。


次の日も、その次の日も。


そうやっていれば、誰にも何も見られなければ。なんだかずっと生きていけると思ったのだ。

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