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天の声さん

 長めです。これからも長めにしようと思っております。

 4話から前の話を読みやすいように編集しました。投稿したての時に読んで下さった方。よろしければお読み下さい。

 朝の7時に目が覚めて、リビングのドアを開けると、パンの焼ける香ばしい薫りが漂ってきた。


「あ! おにぃおはよう!」

「あ、お兄様。おはようございます。こちらのパンをどうぞ」

「ふわぁぁ~。翔ちゃんおはよう」


 テレビを見ながらパンを食べてた美紀が、元気よく挨拶をし、台所で朝食を焼いている舞衣が、振り返りながら挨拶をして、焼きたてパンを持って来てくれた。そして最後に星ねぇが眠そうに挨拶をした。てか星ねぇ、なんで台所にいた舞衣よりも反応が遅いの?  あ、パンかじりながら寝てるし!


「おはよう。それで舞衣はともかく、なんで二人とも起きてるの? 今日土曜だよ。学校休みだよ?」


 いつもはまだ夢の世界に入るはずの、星ねぇと美紀に疑問を感じたので聞いてみました。一人寝てるけど。


「うん。ゲームが楽しみ過ぎて目が覚めたんだ! たぶん星おねぇちゃんも同じ理由!」


 あんたらは遠足が楽しみ過ぎて早起きする子供か! まったくこいつらは━━うん? なんか二人に違和感? なんだろう?

 あ! 呆れながら二人を見ていて気付いた。もしかして舞衣さんや、自分の朝食くれました? うん。二人とも持ってるし、俺起きたばかりだから確定だな。


「ごめん。舞衣。これ舞衣のだよね?」

「違いますよ。お兄様が起きるのを見越して作りました。━━なんて言えれば良かったのですが、はい。自分用で用意しました。でも、この後にお兄様の、焼く予定だったのでお気になさらずお先にどうぞ。そ・れ・に! 嫌だったら渡しませんよ」


 なんて良く出来た娘さんなのでしょ。ときどき黒いけど。━━あれ? なんか急に寒気が、うん。きっと気のせいだ。

 折角の、優しい舞衣さん。からの気遣いだし、覚めないうちに食べますか。折角、優しい舞衣さん。が譲ってくれたから。

よし。寒気が消えた。そうだよ。もうすぐで夏休みのこの時期に、寒さを感じるなんて、あるはずがない! 風邪もひいてないしね。と、そんなことより早速食べますか。うん。絶妙なマーガリンの量でパンの風味が増している! ごめんなさい。少し盛りました。絶妙なマーガリンの量に間違いないですが、スーパーに安売りされている普通のパンです。


「お兄様。紅茶をどうぞ」

「あ、ありがとう」


 お盆で自分の分のパンと、全員分の紅茶を持って来た舞衣が手渡してくれた。あれ? いつもなら紅茶かコーヒーか聞いてくるのに変なの? あれか、やっぱり舞衣もゲームが楽しみ過ぎて、そこまで気が回らなかったんだな。

 うん。鼻を擽る優しい香り。それでは一杯。━━! すっぱあああああああい! 何て酸っぱさ! それなのに美味しそうな匂いを醸し出すってどんな技術だよ! あ、舞衣のやつ、してやったりって顔で笑ってる。なんてやつだ。


「お兄様。これに懲りたら、善からぬ事を考えないように」


 すみませんでした! 俺が悪かったです!


「それでお兄様、今日の事なのですが」

「うん? 今日の事?」

「はい。大変申し訳難いのですが。私達、午前はβテスで、パーティーを組んでた人と集まる約束がありますので、お兄様と遊ぶのは午後からでいいですか?」


 く! 上目遣いで懇願しないで! 瞳を潤わせないで!


「うんいいよ。午後から一緒しよう」

「やった! ありがとうございますお兄様!」


 断れませんでした。ま、断る気もなかったが。それに━━満面の笑みを浮かべて、小さくガッツポーズをしている舞衣が見れて良かったしね。

 さて、それじゃ午前はどうしよう? 幼なじみーズでも誘いますか?


「あ! 逸夢さんと奈々夏さんも、午前中はパーティー組んでた人と合流するって言ってたよ! 午後から皆でやろうって約束したんだ!」


 むしゃむしゃと一心不乱にパンを食べていた美紀が爆弾発言をした。

 マジかよ! 俺何も聞いてないよ!? しかも逸夢と奈々夏よ、誘って置いて開始直後は無理ってどういうこと!?

 ま、いいか。なら午前は気ままに行動するか。さて、プレイ開始まで部屋で夏休みの宿題を片付けますかな。




『ファンタジアクロニクルアースオンラインへようこそ』


 10時になったので、速攻ベッドに寝転んで、ヘッドギアを付けてログインすると、またしても頭の中に直接聞こえてきた。あ、やっぱり真っ白な部屋なのは、変わらないんだ。


『それでは出発前に幾つか説明させて頂きますが、よろしいですか? 一応は聞かなくてもプレイ出来ますが聞きますか? 勿論聞きますよね? 聞いてくれますよね? むしろ聞いてください。お願いします!』


 え? なに? 懇願されてるんだけど?! 無視すると怖そうなのでここは頷いておきましょ、そうしましょ。


『ぉぉおおお! 流石は私の薦めた不遇スキルと謂われてネットで叩かれているスキルをお取りになったプレイヤー様です』


 ちょっと待て! え? え?! 浮遊って不遇なの!? そんなの薦めるなよ!! しかも! 俺の事馬鹿にしてない!? あ、勝手に話が進んで行ってる!


『━━なので昨日の説明は省きます。まずはレベル5になったら職業について下さい。でないといくら経験値を積んでもレベルが上がりませんのでご注意を。そしてなんと選べる職業は嬉しい3つ! どれを選ぶかはあなたしだい! 選んだ結果でステータスの振り分けが変わります』


 なんかまた怪しい物言いになってきたな。大丈夫かな?


『ここからがお得な情報! なんとプレイヤーの行動で加算ボーナスが入ります。やりましたね! お客様!』


 うん。全く昨日と一緒のセリフだ。不安だ。


『それに戦ってる間もステータスが稀に伸びるから意識して戦って見ようね!』


 とうとう口調が変わりましたか。幻影か? なんかウインクが飛んで来た気がする。


『さぁ、ウインドウを開いて、こちらの装備に着替えて旅の準備を整えましょう』


 言われるがままにアイテム欄から装備を選択して行く。


【初心者の服】防御力+1 耐久ー 重量1『備考』どこにでもある布の服。※この装備は壊れません。


【初心者のズボン】防御力+1 耐久ー 重量1『備考』どこにでもある布のズボン。※この装備は壊れません。


【初心者の靴】防御力+1 耐久ー 重量1『備考』どこにでもあるスニーカー。※この装備は壊れません。


【初心者の扇】攻撃力+1 耐久ー 重量1『備考』木と紙で出来た扇。※この装備は壊れません。


【初心者のポーチ】耐久ー 重量1 収容量200『備考』ただのサイドポーチ。※この装備は壊れません。


『重量はポーチに仕舞った時の重さです。それでは良い旅を!』


 え!? これで終わり!?  チュートリアルは!?


『ありませんよ?』

「ほんと━━」

『ありませんよ?』

『あ、はい』


 く! 食わせぎみに言われたから思わず頷いてしまった。チュートリアルないっておかしいだろ?! なら皆戦闘どうしてるんだ? 特に魔法の使い方。


『現実の世界でチュートリアルなんてありませんので、ないですよ? 魔法に関してはスキルレベルを上げたら覚えます【アーツ】で、発動します。詠唱なんてないです。魔法に関しましては発動して放たれるまでに数秒の時間が掛かります。逆に武器によるアーツでは攻撃のあとにクールタイムがあります』


 へー。そうなんだ。なら、連発は出来ないのかな? ま、それはプレイしてみてからだな。とりま、アーツに付いて聞けたのでよしとしよう。


『あ! 忘れていました。レベル5までは何回死んでもデスペナルティーは、御座いません。嬉しいですね。お客様! ━━ですが! それ以降に死んでしまったら。━━持ち金と経験値の半分を没収致します!! 残念ですね、お客様』


 ちょっと! それ忘れちゃ駄目でしょ!? それに最後のセリフにちょっとイラッときます!


『それと、誰も聞いてくれなかった説明を聞いて頂き、本当にありがとうございました』


 なんだろう? この一言だけで許せてしまう不思議。それに誰も聞いてくれないって、流石に可哀想だから別にいいけどさ。


『それでは良い旅を』


 目の前に、湾曲している光の線が出てきた。ここから行けばいいのかな? てか、もう行っていいのか? このナビゲーターいまいち信用出来ないんですが。ま、何かあったら星ねぇ達に聞こう。それでは出発!


『そうだ! 話しを聞いてくれたお客様にこちらの称号をプレゼント! 運がいいですねお客様!』


 え?! 待って! こんな土壇場で━━。


 そこで俺の意識が暗転したのだった。

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