ハプニング
現在朝の8時を過ぎました。
あれから4時まで調べてログアウトしました。結局、未だに手掛かり0だ。
軽く7時まで寝て朝ご飯を食べてから舞い戻りました。
布団から抜け出し辺りを見回すと、クルルとリィーちゃんは既に居なく、ロザが隣の布団で寝ていて、遠くの方から蒼空と白夜の話し声がします。
凝り固まった体を解す為に伸びをする。コキコキっと、耳障りの良い音がし、背中や腕が伸ばされて気持ち良い。
『『マスタ━おはようございます(です)』』
気配で気付いた蒼空と白夜が駆け寄って来て、挨拶をしながら飛び付いて来た。
「おはよう。蒼空、白夜」
2匹に挨拶を返して、蒼空と白夜を同時に抱き止め、わきわきとモフりながら、蒼空と白夜の間に顔を埋めて2匹の天然毛皮を堪能する。このさらさらでいてふわふわの手触りがたまりません!!
5分くらいそのまま毛並みを堪能する。ふぅ~。満足です!!
蒼空と白夜を離して立ち上がると、横の布団からう~ん。と、言う声が聞こえて来た。
「おはようございますトータ」
「おはよう━━」
ロザに返事をしながら振り返る。
━━お前もかあああああああ!!
振り返って見たロザの服装は、青色のネグリジェで、クルルと一緒だった。
もう! なんなのこのゲーム! パジャマ無いの!? それとも俺が過剰なだけですか?
ロザが伸びをし、着痩せする胸が揺れる。
ヤバい! 顔が熱い!! 絶対に真っ赤だよ~!
急いで視線を外して咳払いをして、ロザに挨拶を返す。
「おはようロザ!」
「うん。どうしたの? 焦って?」
「服を着てくれると助かります!」
「あー、うん。直ぐ装備する」
ロザは自分の服装を確認して、今の際どい状態に気が付き着替える。
「うん。もう、こっち向いて大丈夫よ」
俺はロザの方に向くと、革と鉄で出来た軽装備に身を包んだロザがいた。
「ごめん。ロザの無防備な姿見ちゃったけどいいの?」
「別に大丈夫よ。見られたく無い相手なら、私もクルル様も同じ部屋で寝ないから」
真顔で凄い事言われた! これ! どう反応したらいいの!? めっちゃ照れるんですが! ヤバい! 再び身体に熱があああああああ!!
「真顔でそう言う事言うの止めて! マジで照れるから!」
「意外。トータなら大丈夫そうだけど?」
「どう言う事!?」
「何となくだけど、女性のフレンドばかり居そう」
「くっ! 否定出来ない!」
自分のフレンドリストを思い出し、男が二人しかいない事実に愕然とする。しかもその内、方や幼馴染で、方や爺さん。あれ? なんか軟派者の様な気がして来た! そんな事ない! 偶々! 友達になりたい男と会ってないだけだな、うん。
「さて、トータどうするの? この後?」
ロザがこの後の予定を聞いてきた。
「取り敢えず、畑に行ってからパン屋さんに行くよ? ところでクルル達は?」
「クルル様達は、近々行われる、王族主催の闘技大会に付いての話し合い中よ」
俺がクルル達の予定を聞いたら、どこかで聞いた様な話しが出て来た。
「闘技大会?」
「そう。神様からリリィーナ様に御告げが届いたの、異邦人と一緒に闘技大会をしろ! って。御告げでは異邦人にも告げたとおっしゃっていたわよ?」
あー、そう言えば闘技大会が開催される事を、奈々夏から聞いたっけ? 確かエントリー期間が1週間だっけ? 出ようと思ってたけど、イベント中だし無理かな?
「うん。そう言えば聞いた」
「出るの?」
「いいや、ミーレアを助けたいから諦める」
「そっか。トータらしくて良いと思う」
俺の答えが嬉しかったのか? 微笑まれました。心の癒される優しい笑顔です。思わず見とれてしまいました。
「ありがと。そろそろ行こうか? 遅くなるし」
「あれ? 視線を外してどうかしたの? ━━でも、追及したら時間が無くなるし、行きましょうか?」
ロザは言うと歩き出した。
バレたくないから言わなかったのに! 態々バラして放置プレイなんて!
「どうしたの? 行かないの?」
付いて来ない事を不思議に思ったロザが振り返って尋ねた。
「今行く!」
俺は足元で待っていた、蒼空と白夜を定位置に持って行き、急いでロザと合流するのだった。
「ここがトータの畑ですか?」
畑に着くと、ロザが尋ねた。
「そうだよ! 俺の畑なんだ!」
嬉しそうに俺が答えたら、
「何も無いね? 普通3日合ったら何かしらあるけど?」
と、言われました。
「酷い!! 俺の自慢の畑なのに!」
「って、言われてもね? 何の自慢?」
「え? 土?」
「何で疑問系?」
「いや! 自信はあるんだけどね? 色々混ぜて作ったし、━━あ! あそこに薬草がある!」
説明してると、一角に薬草が生っているのを見つけたので、駆け寄る。
「でも、少し変ね? 日陰で森の近くなんて」
まじまじと薬草を見ていると、ロザが近付いて来て話す。
「ちょっと抜いて見ない? 何か分かるかも?」
「分かった。抜くよ? えい!」
葉を持ち一気に引き上げる。
『きやあああああああああ!! な、なに!? なんなの!?』
声が聞こえて来た。頭の中に。
ふむ。嫌な予感がします。
恐る恐る抜いた薬草を持って来ると、葉の下に可愛いい女の子が付いていた。全裸で。
「あ、アルラウネじゃない! やはり可笑しいと思った!」
全裸の少女を見たロザが、驚愕のあまり叫ぶ。
『え? え? 人? 食べないで! 私美味しくない!! うぐうぐ。せっかく安寧の地を見つけたと、思ったのに終焉の地だったなんて!! 酷いです! 神様!! 私が━━』
ずぼっと、黙って土に戻す。
「さ、ロザさん。水撒きして移動しましょう! 早くミーレアに報告しないと!」
「え!? アルラウネは無視!?」
おや? ロザさんが変ですね? どうしたんでしょ?
「アルラウネ? 何言ってるんですか? そんなのが畑に居る筈ないじゃないですか? 嫌だな~。まるでモンスターを飼育してる見たいじゃないですか~」
「無かった事にしたいのね。話し方も敬語になってるし」
「だってしょうがないじゃん! 魔物が繁殖している畑だよ! 持ち主、罰されそうじゃん!」
騎士団に捕まえられて、牢獄に入れられる未来しか見えない。
「別に大丈夫だから落ち着いて? 偶に畑に潜り込んでる事があるモンスターで、畑の持ち主が罰される事はないから」
「本当? なら安心だね」
良かった~。まだ旅が出来ますね。本当に良かったあああ~。
「でも、なんでアルラウネがいるんだろう?」
「分からない。確かに土はいいけど?」
「なら、直接聞いて見よう」
植えたアルラウネを引っこ抜く。
『うわあああああ!! また??』
混乱してバタバタ暴れるアルラウネをこちらに向ける。
「大丈夫? 元気? 話したいんだけどいいかな?」
俺がアルラウネの目を見て話すと、
『えっ!? 人?? やっぱり食べるんだあ!! うん? 話し? 話しって言った??』
最初は暴れていたアルラウネでしたが、俺の言葉が脳に染み渡って、落ち着いたみたいです。
「そうだよ? 話し」
『そうなの? 何を聞くの?』
「どうしてこの畑に来たの?」
『優しい灰が撒かれていて、住みやすそうだったからだよ』
なるほど。あの謎アイテムの所為でしたか。使い道? が分かって良かったです。
「ありがとう。それと土魔法で服とか作れないかな?」
『大丈夫だよ。はい!』
アルラウネの身に、土で出来たワンピースが一瞬にして装着される。とても不思議な光景ですね。
「ロザ。優しい灰を撒いたら、来ちゃた見たい!」
理由を告げながらロザを見ると、岩の様に固まっていた。
「どうしたの? ロザ?」
「な」
「な?」
「なんで話せるの!?」
「あれ? なんでだろう?」
ロザの質問に、今更魔物と話せる事を疑問に思う。
「なんで話せるの?」
『それは私達が、この畑の主と契約状態だからだよ』
はて? 契約になった意味が分からない。
「契約状態だから話せるらしいんだけど、ロザどう思う? 俺的には身に覚えがないんだけど?」
ロザに尋ねると、ロザは色々吟味する様に唸り、そして答えた。
「恐らく畑に入る事で、契約の条件が整ったんだと思う。だけど疑問が残る。普通は魔物が入って来ても契約はされないんだけど、どうしてトータの畑はされたのか? トータが異邦人だからなのか? それとも、トータだから契約されたのか? それが分からないの」
「なるほど、それには確かに疑問があるね。う~ん。検証って事で、保留しよう。先ずは優先して探さなきゃいけない事があるからね?」
「うん。これも調べたいけど、優先順位を間違えると、取り返しのつかない事態になるかもしれないし、私もトータの意見に賛成よ」
俺の意見にロザが賛成する。
なら、ちゃっちゃっと水撒きを終わらして、ミーレアのパン屋さんへ向かいましょう。
はい。現地リポーターのトータです。今僕は人気店パン屋choice! の前にいます。早速突撃したいと思います。
「こんにちは! じゃなかった。おはよう!」
俺が言い間違いをしながら店に入ると、
「異邦人!?」
「何しに来た!!」
「ここはお前等が来るような場所じゃねぇよ!!」
「そうよ! 出て行きなさい!」
との、バッシングを受けました。もうお約束ですね。
「ミーレアいますか?」
俺が気にせずに尋ねると、
「な? ミーレアちゃんに何の用だ!」
「まさか拐う気!」
「この犯罪者め!!」
「皆でやっつけましょう!!」
『おおー!!』
悪者認定されてる! 称号の輪を産んだ者さん? ちゃんと働いて下さい。
さて、どうしよう? 向かって来るけど、ミーレアのパン屋で暴れたくないな。よし降参しよう。
「降参しま~す」
手を上げて降参アピールをしたら、
「うるさい馬鹿野郎!」
と、殴られました。ま、魔力を多く纏ってるので、痛くないんですがね。
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇ! 腕がああああああ!」
殴った相手が痛がってます。
「な、な、なんだ? 何があった!」
「分からない!」
なんか他の人達が戸惑ってますね? そりゃ、殴った方が痛がっているんだからしょうがないか?
「大丈夫ですか?」
「ひっ! 異邦人来るな! あっちに行け! 化け物!」
心配している俺に対してその反応はないと思う。その所為で蒼空ちゃんから怒りを感じます。頭を撫でて抑えてますが、そろそろ爆発しそうです。
「なんの騒ぎですか?」
奥からミーレアが出て来ました。
「ミーレアちゃん! 出て来ちゃ駄目だ!」
「そうよ! 異邦人があなたを狙ってるの!」
「異邦人?」
訝しげなミーレアの瞳が俺を捉える。━━瞬間花が咲いた様な笑顔になった。
「あ! トータ! おはよう!」
「おはようミーレア。報告に来たよ」
「分かりました。上で聞かせて下さい。ルシル店お願い!」
ミーレアが呼び掛けると、ルシルが奥から出て来た。
「おはよう」
「げ! お姉ちゃんの友達の異邦人!」
ルシルが俺の顔を見て、引きつった表情をしてたじろぐ。
「こら、挨拶しなさい。せっかくトータが挨拶したんだから!」
「うっ。分かった。おはようございます」
姉に指摘され、渋々挨拶を返すルシル。
「よろしい」
ミーレアはちゃんと妹が挨拶をしたので、満足そうに頷いている。
「そうだ。今日は友達を連れて来たんだ!」
「友達ですか?」
「そうだよ」
友達を連れて来た事を伝えると、ミーレアは訝しげに首を捻った。
俺は入り口の扉を開けて入る様にロザを促す。
「ミーレアさん。初めまして、ロザです。王室でもchoice! のパンは大人気ですよ? これからよろしくお願いします」
ロザは優雅に挨拶をすると、一礼した。
場を沈黙が支配する。
ロザの登場は皆にとって意外過ぎた。
やがて、沈黙が解けて、住人が一斉に叫んだ。
『━━ロザ様!!』
━━と。




