同士
「いたあああああああ!!」
「えっ! なに!?」
俺が叫びながら近付くと、座っていた女性がビクっと震える。
「こんにちは、アメジア」
女性の正体は、売ります買います。でお馴染みのアメジアです。
最初に出会った時に、扇の他に種が置かれていたのを思い出し、会いに来ました。
「ちょっとトータ! 普通に近付いてくれる!? それと何事も無かった様に挨拶しないで! 叫んだ私が変な人に見えるから!」
ん? なんだろう? なぜか怒られた。普通に挨拶しただけなのにね? 不思議だね?
「種ありますか?」
「何事も無い様に話し進めるし!」
「あ! 後、如雨露もお願い」
「あーもう! 分かったわよ! 本当にこの姉弟は、話し聞かないんだから!」
失敬な! あの姉と一緒にしないで欲しい! あの人よりは聞いてるよ!
「で、種とジョウロだっけ?」
「そそ」
「ジョウロは木製のがあるわ。種は何がいい?」
「薬草のと、柔軟草のがいいな~」
「柔軟草ってなに?」
この質問をされたって事は、まだ出回ってないんだな。残念。
「金属を柔らかくするのに使うんだよ」
「へぇー。そんなのがあるのね? 誰か持ってないかな? 現物見てみたいわ~」
「どうだろう? 住人なら持ってるかもね」
「そっか。住人なら持ってそうね。うん? 住人??」
アメジアが不思議な顔をした。NPCって言わなかったから分からなかったのかな?
「もしかしてトータも、フレンドに住人がいる人?」
「うん。居るけど、アメジアもなの?」
「そうよ! 私もよ! まさかトータがこちら側だったとは思わなかったわ!」
俺も初めて住人とフレンドになった人と会った! 感激です!
「まさか、初めて住人と仲良くしている人と出会って、しかもそれがフレンドだったなんて、二重に驚いたよ! どうやって出会ったの?」
「私はギルドで、商人を紹介してもらって、それで会いに言ったの、そこから弟子入りさせてもらって、話してる内に仲良くなってフレンドになったんだ」
なんか人の出会いを聞くのは新鮮だな。実はこう言うのやって見たかたんだよね。これからも、多くのプレイヤーと出来る事を祈ってます。
にしても、ギルドって、紹介とかもやってるのか。これは絶対行った方がいいな。世界が広がりそう!
「トータは? どんな出会いをしたの?」
アメジアの瞳が、キラキラと光っています。期待値が半端無いです。そんな面白い話しじゃないのに。
「普通の出会いだよ? 大雑把に説明すると、迷子になっていた幼い女の子を、はぐれた姉に会わせる為に探し回ったんだけど、見付からなくて、屋台の前で困っていたら姉が俺の事を誘拐犯と間違えて斬り掛かって来たんだけど、妹の一言で見事に撃沈して、武器を落としたんだよ。そして誤解を解く為に、それを拾って渡そうとしたんだけど、フレンドしか持てない設定でさ、弾かれた時に正気に戻っちゃって、また襲われそうになったんだけど、妹の鶴の一声で綿菓子買いに行かされてたんだ。これが初めてフレンドになった住人との出会いだね」
思い出に浸かりながら、アメジアに聴かせる。うん。思った以上に長い説明になってしまった。メンゴです。
うん? あれ? アメジアが唖然としていますね? どうしたんでしょ?
「あれね。良く親しく成れたわね。それにもっと普通な、どこどこで出会って話してる内に意気投合したって、出会いだと思ってたわ」
ああ。なるほど! そう言う事か!
「幼女と最初に出会った場所は、教会の前だったな~。必死に涙を拭ってたっけ。で、姉とはベンチで色々話してフレンド登録した。妹とも」
「うん。態々話してくれたとこ悪いんだけど、凄く違う。それにまさか、そんな出会いなのに、数分の内にフレンド登録してるのも驚きだよ」
む? これも違うのか? もう分かりません! スルーで!
「ま、なにはともあれ、同士に出会って嬉しかったよ。じゃあ、またね!」
俺は立ち上がり手をシュタッと上げて去ろうとする。
『種忘れてますわよ?』
話しに夢中で忘れてました。蒼空さんナイスです。
「危なかった。種忘れるとこだった。ある?」
「あ、そうね。種を買いに来たんだっけ? 薬草は10個ワンセットで100ね? 他に種はいる?」
と、訊かれましても、他にどんな草があるか知らないし、うん。薬草の種だけでいいや!
「薬草のだけでいいや。50セット下さい。と、腐葉土ある?」
「星3までならあるよ? 星はランクね」
「値段は?」
「1個が1000で、2個が5000で、3個が2万ね? どれも10K単位での相場ね」
ふむ。腐葉土って言ってもピンきりなんですね。星3欲しいけど買えないな。なら、星1を多く買うか? 星2を混ぜて買うか? ですね。如雨露の値段聞いてからにしよう。
「分かった。如雨露はいくら?」
「街の相場と同じで1000ね」
思ってたより高いけど、仕方ないかな。
「なら、星2を1つに、星1を2つ頂戴。と、如雨露も」
「これで全部?」
「うん」
「分かった。全部で1万3000だけど、1000ゴールドおまけして、1万2000でいいわ」
「本当? ありがとう!」
トレード申請が来たので、1万2000ゴールド入れて了承をすると、無事にトレードが成立した。
「ありがとう! またね!」
「こちらこそ、いつもありがとうね。また来てね!」
俺が挨拶をして手を振ると、お礼の言葉と共に可憐なウインクを頂きました。いつ見ても惚れ惚れします。
さて、買い物も終わったし、畑に向かいますかな。
枯れた草に、荒れた土。石だらけの我が畑にやって来ました。
出掛ける前と変わりありませんね。当たり前だけど。
そうそう。本当に従魔が入れるかどうか分からなかったので、設定を開いたらモンスター可になっていて、無事に入る事が出来ました。最初に確認して措くべきでしたね。気を付けないと。
『ここが畑ですか? マスター』
『枯れてるです!』
『それに、まだ荒れてますわね』
畑に放して早々、蒼空と白夜から鋭い指摘が入る。く、相変わらず的確に俺の急所を狙ってきますね。大ダメージです!
『これからいい畑を作るの! 最高ランクの畑を!』
『大丈夫です?』
『任せろ白夜! 白夜の好きな薬草をいいいっっっっっぱい! 作るからな!』
『別にわたし薬草好きじゃないですよ?』
あれ? でもしょっちゅう食べてましたよね?
『マスター? 不思議そうにしてるですけど、ケガしたから食べてただけですよ? 出来れば食べたくないですからね?』
なんて事だ! あんなにむしゃむしゃ食べてたのに、好きじゃないなんて! ま、嫌そうに食べてたから気付いてましたけどね。
『そう言えば白夜? 最近ケガ減ったね?』
『蒼空お姉ちゃんが鍛えてくれたですからね!』
そんなに強くなったのか? 後で見ようと思ってたけど、先に見ちゃおう。
どっちからにしようかな? まずは白夜からで!
[白夜]種族 白兎。(レア個体) 性別 雌。身長23。Lv11。絆211/400
ステータス 総体力1490 総魔力2000
スキル《光》《体力上昇》《体力自然回復上昇》《魔力上昇》《魔力自然回復上昇》《力上昇》《速度上昇》《防御力上昇》《精神上昇》《かじる》《頭突き》《体当り》《蹴り》《ダッシュ》《跳躍》《気配遮断》《気配察知》《跳躍察知》《聴力察知》《聴力上昇》《看破》《耐熱》《信愛》
随分と強くなってる! 風に見えるけど、なんで格闘系スキルがあるんだろう? それに光覚えてるけど、あれブレスだけだよね? しかもブレスは1発が限界っぽいし。まさか蒼空さん? そのネタの為に、格闘系覚えさせてレベル上げしてないですよね? ヤバい! あり得る!
では、次にそんな残念兎を作ったお姉ちゃんのを見ましょう。
[蒼空]種族 雹雷狼。炎風狼の特質種。(ユニーク個体) 性別 雌。身長173。Lv12。絆265/400
ステータス 総体力19560 総魔力41130
スキル《雹雷》《氷》《雷》《体力上昇+》《体力自然回復上昇+》《魔力上昇++》《魔力自然回復上昇++》《力上昇+》《速度上昇+》《器用上昇+》《精神上昇+》《切り裂く》《噛み砕く》《叩く》《怒り》《気配遮断》《隠密》《奇襲》《気配感知》《嗅覚感知》《聴力感知》《視力感知》《視界上昇》《嗅覚上昇》《看破》《隠蔽》《俊敏》《跳躍》《麻痺・感電無効》《寒さ・凍傷無効》《耐熱》《耐毒》《耐魅了》《耐怯み》《小型化》《威圧》《遠吠え》《魔力流動》《回避》《見切り》《予想》《信愛》
壊れてますね。ちゃっかりこちらも、レベル2つ上げってますしね。職業様々ですね。
さて、時間も無くなりましたし、やりますか!
異空間収納からクワを取り出し、石を退けながら1つ1つ丁寧に耕して行く。
ふと、思ったんだが、最初から耕した状態で譲ってくれればいいのにね。ゲームの畑なんだから! と、思うのは、私だけですかね? はい! 文句言わずに耕します!
せっせっと、耕す事3時間! 漸く終わりました! 昨日以上に疲れましたね。でも、まだ終わりじゃありません。
異空間収納から腐葉土を取り出し、畑全体に撒く。因みに一番端の畑を星2の腐葉土にしました。
次に腐葉土と土を混ぜる為に耕したい所ですが、異空間収納に優しい灰と言う物が入っているのに気付いた。なんか使えそうなので鑑定して見ます。
優しい灰 効果・自然を豊かに出来る。『備考』元人間だったモンスターを火葬し祈りを捧げた印し。
むむ? どうしよう? これを畑に撒くかどうか悩みますね。どうしても、元人間、が引っ掛かります。う~ん。いいや! 撒こう!
腐葉土の上に、ドロップした優しい灰をあるだけ撒く。でも少し怖いので祈っときます。
続きまして混ぜる作業です。
クワを使い軽く混ぜます。この作業は蒼空と白夜も手伝ってくれたから、直ぐに終わりました。
では続きまして種撒きです。
1セット取り出し、土の上に投げます。この作業を種が無くなるまで繰り返し、最後に水を撒きます。
『泥水は嫌なので、外で待ってますわ』
『分かった』
蒼空はそう言うと、白夜を銜えて外に出た。
異空間収納から如雨露を取り出す。あ、本当に木で出来た如雨露なんだ。なんだか新鮮ですな。
「ウォーター」
如雨露に水を入れて、畑に撒いて行く。地味に時間掛かるなこの作業。しかも魔力も意外と消費します。直でやりたい。
約1時間掛けて3フロア、全ての畑に水をやり終えました。疲れた~。
これで、明日には沢山の薬草がなってる筈です。楽しみだな~。
「蒼空、白夜、一度落ちるけどどうする?」
『寝ながら待ちたいですが、汚れそうなので外で待ってますわ』
そうですよね。汚れるのが嫌で外に出ましたもんね。
「分かった。じゃあまた!」
『『またです(わ)マスター』』
蒼空と白夜に挨拶もしたし落ちます。
ログアウトっと。




