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決意!

 4時間半掛けて街に到着!

 やっと帰って来れましたね。遠かった。

 砂漠での戦闘も慣れた物で、ホーリースターの連携が冴え渡ってました。

 南門を通り、街中に入る。


「皆さん。ありがとうございました」


 ミーレアが頭を下げ、数秒後に顔を上げた。あれ? 何か違和感?


「それと、一つ伝えておきますね」

「うん? なに?」

「異邦人の方って、随分と住人から嫌われていますよ? このままでは物を売買して貰えなくなりますから、注意してください。ではまた」


 ミーレアは頭を下げて歩き出す。


「「「あ、はいまた」」」


 ミーレアの声にシンバ、エレナ、ルナが戸惑いながら反応する。


 イベント【想い出のペンダント】(難易度B)を終了しました。お疲れ様でした。と、インフォが流れた。


「クリアのインフォが出て嬉しいんだけど、最後の言葉が気になるな?」

「うん。売ってくれなくなるって、言ってたけど、どういう事?」

「良く分からない」


 ミーレアの発言に戸惑っているホーリースターを尻目に、蒼空に指示を出す。


『蒼空追って』

『分かりましたわ』


 蒼空が服から飛び降りて、音もなくミーレアを追い掛ける。なんか嫌な予感がするんだよな。


「エレナ達って、これから話し合いだっけ?」

「そうなんだけど。今の言葉が引っ掛かるのよね?」

「ああ。ゲームなのに物を売って貰え無くなるってなんだ? このままでは、も、気になる」


 なるほど。単純に天の声の話しを聞かなかった弊害が出てるのか。


「あんな。天の声の話しで、ちゃんと言ってたぞ?」

「なにを?」

「住人にも感情があります。最悪の場合は殺される事も有りますって」

「マジでか!? プログラムだろ!?」

「そう思いたければ思えば良いんじゃないか? 決めるのは自分だろ?」


 あれ? 俺今ルミリシアと同じ事言ったな? どうやらこのフレーズ、俺の中でメッチャ気に入ってるらしい。非常に残念だが!


「うん? 何を決めるんだ?」

「住人が、心のある人か、はたまたただのプログラムか? ━━を」


 シーンっと、静まり変えりお互いの顔を見合せている。出来れば自分達で気付いて欲しかったんだかな。


「ね、トータ? リアルに作られていても、所詮はプログラムなのよ? 与えられた行動意外は取れないわ」


 諭す様にエレナが言って来たが、一つ間違いがある。


「なら、全ての行動に許可が出されていた場合はどうなるんだ?」

「え?!」

「縛る物がなければ、それはどう行動する?」

「それは━━、分からない」


 俺のした質問に、エレナが反論しようとして止まる。良く考えた結果、答えがないのに気付いたんだろう。どうプログラムされているかも分からないしね。


「そう言う事だ」


 もういいかな? さ、追い掛けよう。


「でもな? ゲームとしては━━」

「だあああああ! もう自分で決めろ! そのくらい! 結果は行動した先にあるだろ!」

「確かに」


 まだ言い募ろうとするシンバを遮り叫ぶと、ルナが頷いて同意を示した。


「単純に後悔しない方を選べばいいんだよ! ミーレアからの忠告をどう使おうが、それは自由だ!」


 このくらい言えば、もう充分だろう? 流石にこれ以上は本気で怒りそうだ。


「なんで名前知ってるの?」


 俺の一喝で、シンバとエレナが黙り込んでいる中、ルナが声を掛けて来た。二人も気になったのか顔を上げる。


「信頼されたから教えてくれた」


 信頼を入れて言ったら、3人が衝撃を受けた様に呆然としている。あ、ルナは顔色が変わらなかいから分かり難いけど。


「じゃあ、俺達が名前、教えて貰ってないのは、信頼されてないからって事か?」

「そうだよ。信じられないからだって、言ってた。私に興味が無いとも」


 3人共思い当たる節が合った為、辛そうに俯いている。あ、ルナは相変わらず変化無いが。


「ずっと見られてたんだ? 私達」

「ああ。そうだな」

「悔しいなぁあ。なんか! ただのNPCだと思ってたのに、あの人の方が人間らしいなんて!」

「ああ! そうだよな! 分からないけど、負けた気がした! 俺はもっと! この世界を必死に生きる!!」

「うん!」


 あれ? 滅茶苦茶熱くなってるけど、これ焚き付けた俺の所為? 正直ここまでのは望んで無かったのに。


「あーうん。そだね。楽しくプレイする事も忘れないでね?」

「と、そうよね。楽しく必死にプレイするわ!」


 少し引いている俺の言葉を受けて、エレナが気持ちを新たに頷いている。


「頑張って。ところで時間は大丈夫?」

「いけね! 待ち合わせの時間になっちまう! 今の含めて話し合うよ! じゃあな!」

「またね! トータ」

「うん! また!」


 慌ただしくシンバ達が掛けて行く。


「あ、うん。また」


 大分遠くまで行っちゃったけど、俺の声届いたかな? ま、いいや。俺も行こう。




「ごめん。待たせた!」


 蒼空に念話したら、裏路地にいるって言うので、急いでミーレアが曲がった場所まで行くと、そこで蒼空とミーレアがこちらを覗いていた。


「ごめん。もうちょっと早く来る積もりだったんだけど、話しが縺れちゃって、遅くなった」

「別に良いですよ? 異邦人と住人の未来に関わる事ですしね」

「そう言って貰えて助かるよ」


 困った表情で答える俺に、ミーレアはクスクスっと、可笑しそうに笑う。


「それで、用件はなんですか?」

「何かしようとしてるでしょ? 難しいようなら手伝うよ?」

「何故それを!?」

「瞳を見れば、分かる。哀しみの中に、強い光を称えた瞳をしてるよ? その瞳の人は、命を賭して、大切な人を残してでも、何かをしようとするから、心配で来た」


 ミーレアの質問に俺が答えると、ミーレアは俯いた。

 暑い日差しがジリジリと照らす中、通りを行き交う人々の喧騒が、耳に入っては消える。

 やがて、夏らしい爽やかな風が吹くと、ミーレアは顔を上げて答えた。


「分かりました。お話しします。私に付いてきて下さい」

「はい」


 先導するミーレアの後ろを追い掛けて、街を右へ左へ移動する。


「ここです」


 広い通りを進み、花屋を過ぎたところでミーレアが立ち止まった。


「ここ?」


 花屋の隣には花屋と似た感じの、3階建ての素朴な家があり、1階と2階の間には、choice! っと、書かれた看板が設置されていた。


「どうぞ。お入り下さい」


 ミーレアが懐から、鍵を取り出して開け、入るように促した。

 なんのお店! って、ツッコミたくなるのを堪えて、店の中に入る。

 あー、なんのお店かは直ぐに分かった。真ん中と壁際に等間隔にスペースを開け、更に3段に設置された棚。何より入って来た時に香って来た、小麦粉の匂いで楽々分かる。パン屋だ。


「こちらへどうぞ?」

「えっ? いいよ、そこの食事が出来るスペースで」


 厨房奥の階段へと促すミーレアに、俺は店内の隅っこに置かれた食事スペースを指差し答えた。


「ダメです! 大事な私のお客さんですから、上で話します!」

「あ、はい」


 ミーレアは店の鍵を締めると、俺の手を取り2階へと上がって行く。なんか連行されてる見たいで、落ち着きません。

 2階に上がり、一番広い部屋に通された。


「ただいま」

「お姉ちゃん! どこ行ってたの!? 心配したんだからね!」


 ミーレアが台所の方に声を掛けると、ミーレアを少女に戻した様な女の子が怒鳴りながら出て来た。

 しかし、本当に似てるな。違いと言ったら髪を盛っているのと、目元が鋭いのと、あ、後身長が低い事だな。


「異邦人!? なにしに来たのよ! そもそも何で家に入れるの!?」


 なんか嫌われてるね。俺って言うより異邦人全体が。

 他の人達は住人に何してんだか? 迷惑な限りです。


「私のフレンドだもん。当然でしょ?」

「な?! な!? な! なにしてんのぉおおおおおおお! 異邦人なんかとフレンドになって!!」

「む。私が選んだ人に対して失礼ね? 大丈夫よ? 良い人だから」

「信じられないよ! 異邦人がしてきた数々の振る舞い、忘れたの! あんな奴ら消えればいいんだ!!」

「そんな言い方無いでしょ!? ちゃんとトータを外しなさい!」

「イ、ヤ! よ!!」


 姉妹喧嘩始まった! 仲裁しなきゃダメかな? 火に油を注ぐだけな気がする!


「こら! ルシル! トータに謝りなさい!」

「イー、ヤあ!!」

「ルシル!!」

「ミーレアいいから、何を覚悟したか? 話して」


 終わらない気がしたので流す事にしました。無難な選択です。


「本当にいいのですか?」


 俺は無言で頷いた。これ以上言い合いを見たくありませんからね。


「分かりました。ルシルには言いたい事がありますが━━」


 ミーレアは一度止めて妹を見ると、


「ふん!」


 妹はそっぽを向いて答えた。反抗的だな。


「話しますね?」

「はい。お願いします」


 心の準備を整えて、準備万端! どんな話しでも来い!


「でも、その前にそちらの椅子に腰をお掛け下さい。飲み物を入れて来ますね」

「あ、はい。分かりました」


 出鼻を挫かれるなんて、良くある話し、良くある話し。

 椅子を引いて座り、白夜を膝の上に乗せる。あ、もう既に蒼空は懐の中にいます。はい。


「何を企んでるの? 異邦人だからどうせ何か企んでるんでしょ?! お姉ちゃんを騙して!」


 はぁ。何で俺絡まれ易いんだろう? 波瀾万丈めぇえええ! お前の所為だろう!? ま、流石にもう慣れましたけどね。


「何とか言いなさいよ!」


 言っていいのかな? なら遠慮なく言わせてもらおうかな? ミーレアの妹とは言え他人だし。


「妹の癖に姉を信用出来ないのか?」

「はあ!?」

「妹ならミーレアの長所くらい分かるだろ?」

「あんたに言われ無くても分かってるわよ!!」

「それなのにミーレアが信じた人を信じられないか?」


 さて、次の返答で今後の接し方が決まるな。


「信じたいわよ! でも自分勝手に行動する異邦人だもん! どうやって信じればいいのよ!」


 信じたい気持ちはあるのか。なら後は行動を見て貰おう。


「なら、異邦人としてじゃなく俺個人として見てよ? それで判断してくれればいいからさ」


 ミーレアの妹の時間が止まる。多分どうしたらいいか、考えているのだろう?

 やがて━━。


「何で笑ってるのよ」


 と、言われてしまった。

 おっといけない。ニシシっと、頬が緩んでしまっていた、気を付けなければ!


「分かった。行動を見て決めるわ。あたしがあなたを信じられるかどうかを」


 これで一安心ですね。にしても、ミーレア遅いな? あ、今目が合いました。しかもニコッと微笑まれました。確信犯だ!


「お待たせしました。どうぞ?」


 アールグレイの様な香りが鼻を擽る。このお茶が、なんの紅茶か分からないけど。

 じゃなくって! ミーレアの奴! 抜け抜けと言いやがったよ! こっそり見てた癖に!


「お茶も入りましたし、では話しますね?」

「いや! 覗き見━━」

「お猿さんを倒した後ですね」


 何事も無く話し始める気だ! 言っても無駄ぽいので黙って聞きます。


「遅い時間帯だったので、安全な場所で眠りについたんですよ? そしたら夢を見ました。小ぢんまりしてますが、夜なのに活気がある街に、静まり変えった林道。そこから外れた場所にある大きな岩場は洞窟になっていました」


 ミーレアはそこで一息吐き、入れたお茶を飲む。

 俺も釣られる様にお茶を飲む。あ、美味しい香り高い風味が、鼻を抜けていく。

 ミーレアはカップを置くと続きを話し出す。


「その洞窟に入り進むと、やがて、暗い広い所に出ました。そしてそこで━━死んだ旦那を見たんです! その後起きたら、直ぐに消えましたけど、旦那のペンダントが光ってたんです!」


 ミーレアは身を乗り出し告げる。


「私もまさかとは思っているんです! ですが! 夢を見た場所が遺跡の神殿だったのと、不思議なペンダントの光を見て、もしかしたら! っと思い、探して見る事に決めたんです!」

「分かりました。同行しますね?」


 そんな不確かな物なのに止めないのかって、止めませんよ? そもそもが、単独行動をさせない為に来たのであって、今話しを聞いた理由は、何をすればいいのかを知りたかっただけだしね。


「はい。お願いします」


 二つ返事でミーレアが答える。あ、インフォだ。イベント【想いは宇宙へ】(難易度??? ※難易度は条件により異なります。制限期間1週間)を受理しますか? 受理しました。って出た! 早いパターンの奴! しかも1週間ね期限付きだって! 畑行ってからさっさと調べよう。


「あたしは反対よ! 何かあるか分からないじゃない!」


 確かに心配する妹の気持ちは分かる。だけど!


「ごめんなさいルシル。もう決めた事だから」


 そう。ミーレアの固い意思は、揺るがない。


「でも━━」

「ごめんなさい」


 言い募ろうとする妹に、深々とミーレアは頭を下げて、一刀両断する。


「分かった━━。ならあたしも行くわ! それなら許す!」

「なに馬鹿な事言ってるの! そんなの許さないわよ!」

「だったらお姉ちゃんもだよ!」

「でもね!」


 妹の同行をミーレアが必死に断ろうとするが、俺が妹に助け船を出す。

 だって、瞳が姉と似た、決意を秘めた物になったんだもん。


「ミーレア。許可して上げなよ? 心配なのは分かるけど、止めても勝手に付いて来るでしょ? ミーレアの妹なんだから」

「それを言われちゃ弱いわね。分かりました。トータ? 妹もよろしくお願いしますね?」

「分かった」


 その後、後日会う約束をして、ミーレアの家を後にした。

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