遺跡内部へ
「デカいね。この門。圧倒される」
遺跡本体の前にある門まで来て見上げる。
門は岩で出来ていて、アーチ状になっており、全体的に幾何学模様が画かれているのだが、上部では横向きの男女の彫像が手を開いて突き出し、互いの手をくっ付けている。またその様子を翼が生えていて右手に錫杖を持った女性が、天辺から見下ろしている。
丹精に彫られている凄く綺麗な彫像なんだけど、なんだろう? 天辺の彫像は見ているとこう、無性にイライラして来ますね! あ~! 破壊したい!
「凄い! 大きな門だね! 男女が手を取り合う姿を見守る羽のある女性。なんか神秘的な物を感じるわね~!」
「ああ。そうだね。どうにか壊せないかな? あの羽がある女性! 全力で魔法ぶっぱなしてみるか?」
おや? 蒼空から念話だ? なんだろう?
『止めてくださいね。マスター? マスターがやると一部崩壊しますから』
まさかの苦情だった! 蒼空さんは一体俺の事をなんだと思ってるんですかね? そんな事するはずないじゃないですか!
『手ですわ』
はっ! いつの間にか魔力が集中していた! 破壊する気なんて微塵もなかったのに! 無いですよ?
『マスターって、やる! って言ったら本気でヤるですからね』
な! 癒し担当の白夜にもそう思われてるなんて! はい。自覚しております。
警戒しながら門を潜ると、目の前には7段ある階段と、その先には5階建てくらいはある大きさの建て物が、3件連なって建てられており、所々風化して崩れているものの、見事! と、言いたくなる味のある出来で、奥に行くに連れて建て物が広く大きくなっている。
階段を上がる。目の前には扉が、左側だけ無くなった状態で出現し、そこから先は闇が広がっていて何も見えない。
「この中に入るんですか?」
不安になったのか、女性が尋ねて来た。気持ちは分かります。どっこからどう見ても、ホラーな感じしかしないですもんね。ホラーが苦手なエレナが黙り込んでいます。
「そうですけど、どうしますか? 明日にしますか?」
「いいえ! 行きます! 一刻も早く取り戻したいので!」
喰わせ気味に言ってきた。それだけ大切なんだな。絶対に取り戻そう。
「分かりました。暗視はお持ちですか?」
「いいえ。無いです。すみません」
「いいえ。一般の人が持ってる方が不思議ですからね。松明を使いましょう」
確か異空間収納に、木の棒があった筈━━お! あったあった。これに魔力流動と纏いで、木の棒の上半分で魔力を止め、付与で魔力を完全移行し、ファイヤーで火を点けるとあら不思議! 簡易松明の完成です。お値段なんと100ゴールドのお手頃価格! どしどし、お電話お待ちしております。
「これをどうぞ。あと蒼空。彼女の側にいて上げて」
「ありがとうございます」
『分かりましたわ』
女性に手渡すと、女性はお礼を言い、蒼空は了承して服から飛び降り女性の側へと駆け寄った。
さて、早速入りたいと思うんだけど、もう一つ了承を取っとかないと行けない事がある。寧ろこっちから取っとくべきだったな。少し後悔。
「シンバ達さ。多分2時超えるけど、どうする? 場合に依っちゃあ朝までコースだぞ? それに成功したって報酬出ないぞ?」
「それでも私は行くわよ。ここまで来たんだから、最後までやるわ」
「俺も同じだな」
「はい。同じく」
そうか。行くのか。上手く転ぶ事を願おう。
異空間収納から、鉄扇真紅と自分で作った鉄扇を取り出す。準備万端です。
「えっ!? なにそれ!」
「鉄扇。こっから真面目に行くから」
「あ、うん。分かった」
俺の本気具合を感じ取ったエレナが直ぐに引いて行った。ここからは失敗する訳には行きませんからね。
「俺が先導して、敵が出たら━━どうしよう? ま、臨機応変でお願いします」
「「「分かった(わ)」」」
扇にファイヤーを掛けて、少し先が見えるくらいで維持する。
別に暗視があるから明かりは要らないんだが、女性に敵が向かうのを出来るだけ阻止する為だ。
「それでは、行きますか?」
「はい」
「「「了解」」」
半分崩壊している扉を潜って中に入る。
最初の建て物は、1棟丸ごと教会になっていた。
動物や天使や幾何学模様が画かれた明かり取りのステンドグラス。多分この教会で祭られていたと思われる、頭や腕が取れていて所々劣化している女神の石像に、その下には六角柱の台座。そしてその前には神父様が使っていたと思われる壊れた机に、その前には3段程の階段がある。そして更に前に行くと、所々穴が空いたり破壊されていて、酷い場合には列ごと無かったりもするのだが、多分参列者やミサの時様の為の椅子が並べられていた。
「教会だな」
「教会ね」
「教会だ」
俺の後に、エレナとシンバが続いて口にする。俺を含めたこの3人は、比較的に感想が漏れるタイプで、残りの2人は感想が漏れないタイプの様だ。ま、どうでもいいですね。この情報。
「蒼空? 場所分かる?」
『一番奥の部屋ですわね』
「分かった。皆、奥の部屋だって、ここは素通りしよう」
俺が提案すると、3人は驚いた表情をする。ゲーマー的にはやっぱり探索したいらしい。
「探索しないのか?」
「しない。次来た時だな」
「う~。そうだね。夜遅くなっちゃうもんね」
「行こう」
俺達は教会の際奥まで行くと、右側と左側に扉があるのを見つけた。
う~ん迷うな。右でいいかな。根拠は無いです。
右の扉を開けると部屋になっていて、更に奥に行く為の通路がある。
構造からすると、通路と部屋の間には扉があったのかもしれないが、今は完全に無くなっている。
通路は直ぐそこに階段があり、階段の前には左側へと通路が続いている。
階段を素通りして通路を進むと、またしてもかつては扉だった物がある。
「先に何か居るな。気配がする」
「どうするの?」
「うん? 行くけど?」
エレナは何を聞いてるんでしょ? 行く以外に選択肢はありません。
「そうだけど、策は?」
「真っ直ぐ行くだな」
「いや、それ策じゃないから」
そうだけど、別に策はいらないと思うんだけどな。
通路を覗いて見る。石のブロックで囲まれていて、天井に近付くに連れて尖っている。
ふむ。石の通路で何かが寝ています。布が見えるからミイラかな? 鑑定してみるか?
ミイラLv26『備考』人間が布で巻かれて地中に捨てられた者がアンデッド化した物。
やっぱりミイラだったか、それが3体、一直線に並んで寝ている。レベルが高く感じるが多分強さ敵にはファイヤーライオンと変わらないだろう。
通路に入る。すると、ミイラがゆっくりと立ち上がろうとしてるけど、先手必勝! 右手に持っていた鉄扇を開き魔力を纏わせて低めから投擲。鉄扇はホップアップしながら真っ直ぐ飛んで行き、順々にミイラの首を跳ねて、反対の扉を付ける為に低くなっている部分に刺さって止まった。
ミイラの頭部分が光の粒子になって消える。━━が! 死体はそのまま残ってる。これ、ほっといたらデュラハン化するのかな? あ、でも頭無いから無理か。
さて、鉄扇を回収したいけど、奥にも何か居るしな。5体ほど。
「どうしたの?」
「鉄扇回収したいのと、この死体を火葬したいんだよね」
「なら回収すればいいじゃん?」
「簡単に言うね。奥に敵が居るんだよ」
「そうなのか? なら皆で倒しに行こうぜ!」
「そうだな。油断するなよ?」
「おう!」
まずは、シンバとルナが次の建て物に入って止まる。敵が起き上がりこちらに走ってきた。
敵はどうやらミイラ5体だ。
「な! ライオン並みに速い!」
「嘘!」
二人は近付いてくる2体に対峙して斬り込むも、2体のミイラはそれぞれ腕に巻かれた布を解くと、ルナの短剣とシンバの剣に巻き付けた。
「くっ!」
「動けない!」
俺は扇に飛び付き、体を振って扇を抜きながら次の建て物の中へと飛び移り、入り口付近で踠いているルナとシンバと、その二人を押さえ込む二体のミイラを飛び越える。
━━狙いはこっち!
後ろからルナとシンバを狙っている3体中2体のミイラの首を、一度バク宙をして魔力を纏った扇で斬り落として着地し、体を捻って走り出す。
並走していた仲間が殺られた事に気付いたミイラが、俺を拘束しようと布を伸ばそうとするが、俺の方が速い。
ミイラの首が飛ぶ。
残り2体。
「ルナ!」
「分かった! バッシュ」
ルナが短剣を放し盾でミイラを殴り付ける。
ミイラはガードしようとしたが、俺の方に気を取られていたのと、ルナが短剣を手放したのでバランスを崩したのもあり、盾を躱す事が出来ずにシンバを押さえているミイラの方にぶっ飛ばされる。
シンバを押さえているミイラは躱そうとしたが、そこにエレナの回復魔法が飛び、一瞬気がエレナに向いてしまう。上手いアシストです。
ミイラ同士が激突した直後にシンバは剣を引くと、ミイラの布が引っ張られ限界を迎えて千切れた。
シンバは駆け出し近くに倒れている方のミイラの首にスラッシュを放つ。
「意外と硬い!」
シンバの攻撃では半分しか切れなかった。
普通ならこれで終わりだけど、アンデッドだからね。切断しないと終わらないみたいです。
「離れて」
ルナの声に反応してシンバが横にずれる。
「バッシュ!」
ルナが起き上がったミイラに飛び込み、盾を頭にぶつける。
軽快な音がしてミイラの首が後ろに直角に倒れる。これ倒したのかな? あ、首だけ消えて倒れた。
もう大丈夫そうなので、女性の隣へ移動します。
戦闘は起き上がったもう1体の気を引く為に、エレナが魔法を掛けて注意を引いているところだ。
「あの、聞いていいですか?」
後1体になったので、後ろから来る敵を警戒する為に女性の横に居たら声を掛けられた。
「どうしたんですか?」
「不思議に思ってたのですが、どうして私の名前を聞かないのですか? 他の人は、私に興味がないのは分かりますが、あなたは別ですよね?」
ああ。その事か。
「それは単純ですよ。あなたが警戒してますからね。警戒が解けなきゃ、名乗っても偽名でしょ?」
「あ、やはり気付いていたんですね。私が警戒している事に」
「はい。道中黙っていたのは、俺達が本当に信用に値するか? 見極めてたからですね」
「はぁあ。そこまでお見通しでしたか? 驚きですね」
何か驚かれてますが、じぃ~っと、疑いの眼差しを向けられていれば気付きます。それよりも重要な事がある。
「こう━━話してくれたって事は、信頼されたと思っていいんですかね?」
そう。彼女から信頼が勝ち取れたかが大切だ。
「はい。大丈夫です。あなたは信頼してます」
彼女は頷いて答えた。
ふむ。あなたは。って事は、あいつらはダメって事か。
「そうですか。分かりました。因みに信頼したのは何故ですか?」
「それはあなたが、何時でも、私を助けられる距離にいたからですね。ある一定の距離より遠くには、絶対に出なかった」
マジか! そこに気付かれるとは、思ってなかった! 正直ビックリです!
「凄い観察眼ですね。気付かれてるとは思いませんでしたよ」
「ふふ。ありがとうございます。私としては、他の事を言われると思ってました。仲間を信用してやってくれと」
「ああ。それは無いですね。言ってどうにかなる物でも無いし、あなたの場合は命が掛かってますからね。俺は住人に死んで欲しくないので」
信頼が欲しいなら、行動で示せ! って昔から言いますからね。ま、詐欺師は、親身になって行動して、信頼を勝ち取ってから騙すから注意が必要だけどね。結局は自分の判断です。
「優しいんですね」
「違いますよ。自分勝手なだけです。何から何まで助ける訳じゃないし、他人ならほっとく時もあります」
「ふふ。分かりました。そう言う事にして置きます」
和んだ所で、そろそろ戦闘も大詰めだ。
ルナがミイラを押さえ付けて、シンバが首にアーツを使わずに幾度も攻撃している。
「そうだ! 名前聞いても良いですか?」
「トータです」
「ミーレア・ステェンです。よろしくお願いします」
彼女━━ミーレアが頭を下げて挨拶をしたら、フレンド登録のインフォが彼女から飛んで来た。
「こちらこそよろしくお願いします」
勿論。登録をして挨拶を返す。また住人のフレンドが増えたな。善き事です。
「丁度戦闘も終わりましたし、合流しましょうか?」
見れば、シンバがスラッシュを放って落としたミイラの首が、光の粒子に変わるところだった。
「はい。そうですね」
俺はそう答えると、心無しか、少しだけ足取りが軽くなった、ミーレアの後を追った。




