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緊急事態!

「ふぁ~」

「どうしたの? 珍しく眠そうね?」


 欠伸をしたら奈々夏に訝しまれた。


「鍛冶してたら寝るのが遅くなっただけ」

「へぇ~。ならもう武器出来た!? 見たいんだけど!」

「今度な~」


 始まりの街にいないし。

 うん? 奈々夏が不満げに眉をしかめた。面倒そう。


「え~! 今日は??」

「無理。それにお前ら今日遠征だろ?」


 余談だが逸夢は今遠征の話しの為に席を外しています。てか、お前もそっち行けよ! 遠征の話しなんだから!


「嫌よ! 面倒臭い!」


 お前が面倒臭いは! それと心を読むな!


「なによ! 私のどこが面倒臭いのよ! それに翔は表情に出やすいのが悪い!」

「うっさい! ほっとけ! そう言う体質なの! それにお前もメンバーだろ? なんつったけ? なんとかって言うパティーの」


 ダメだ! 興味が無くて奈々夏達のパーティー名忘れた。


「ホーリースターよ」


 そんな名前だったっけ? まっっっっったく! 覚えていません。が、ここは勿論。


「そうそれ!」


 乗りで押しきるのです!


「その反応覚えてないわね? ま、それはどうでもいいわぁ」


 いいんかい!


「ハッキリ言って、私メンバーの事良く知らないし。逸夢がβの時に連れて来ただけだから、パーティーは組んでるけど、それだけなのよね。今では私と逸夢の追っかけになってるしね」


 愚痴が始まった! 俺から言えるのは、美男美女の自慢話にしか聞こえない! って事!


「そうだ! 翔入らない? 内のパーティーに!?」

「やだ」

「はやッ! 即答で返さなくても!」

「だって7人揃ってるだろ? 奈々夏達のパーティー。それに奈々夏達とじゃ、ゲームの楽しみ方が違うから」

「楽しみ方?」

「そう。奈々夏達はトップ目指してるだろ?」

「そうよ」

「俺は━━世界を楽しみたい」

「世界?」

「そう住人が生活する世界を━━」


 今となってはこれこそが、俺がゲームを続けてる理由だな。


「住人達、かぁ。その発想は無かったなぁ~」


 でしょうね。ゲームをプレイしてると思っている内は、浮かばない発想だから。


「もしかしたら何か変わるかもしれないわね。ねぇ翔? 今度1週間くらい一緒にプレイしない?」

「今度な」

「やった! 約束だからね!」

「はいはい」


 何がそんなに嬉しいのか、奈々夏が満面の笑みで万歳してる。あ、逸夢だ。


「お? どうした? 奈々夏が随分とご機嫌じゃん」

「な!? そんな事ないわよ!」

「いや、奈々夏、バンバイしてるって、相当だぞ?」

「うっさい!」


 奈々夏が逸夢の肩を叩いてじゃれ合っている。このまま俺寝ていいなか?


「寝るな!」


 痛い! 頭叩かれた! まったくもう。


「で、じゃれ合い終わったか?」

「じゃれ合ってない!」

「え?! じゃれ合いだよね!?」


 ほら! クラスメイトが全員が頷いてるよ。

 奈々夏が噛み付かんばかりに迫って来た。


「違う!」

「分かったから。乗り出してくるな。で、お前らのパーティーの話しは終わったか?」

「終わったよ。取り敢えずは各方面に行って見ようと思う」

「ふ~ん。そっか~。あ、後俺今日速攻で帰るからよろしく」


 何てったって時間がありませんからな。やりたいことが目白押しです。


「なんで━━」

「ほら席着け! ホームルーム始めるぞ!」


 担任がやってきた。よし、今日の学校終わりだ!




 ログインしました。

 家に着いてからお茶漬けで簡単に昼を済ましてゲーム開始です。

 寝袋から出て寝袋を畳み、隅に置いて鍛冶場を出ると爺さんが弟子に教えていた。


「おはよう。爺さん! 寝袋ありがとな!」

「おお。起きたかトータよ」

「爺さんこれ受け取ってくれ、最終的に出来た鉄扇だ」


 爺さんに鉄扇を手渡す。


「ふむ。どれ━━な! これトータが打ったのか!?」


 な、なんだ? 爺さんが顎が外れそうなくらい驚いてる。


「そうだけど?」

「うむ。━━よし決めたのじゃ!」


 あ、なんか爺さんからトレード申請が来た。中には炉から槌と言った鍛冶道具が一式入っている。なぜか草もあるけど。


「爺さんこれって?」

「トータが使っていた鍛冶道具一式じゃ。お主に託す」

「いや! でも! 貰えないって!」

「よいのじゃ。もう使ってないしの、わしが若い頃使ってた物じゃ。お主に託したい。じゃが、それだけではお主は納得しないだろうから、最高の鉄扇が出来たらわしに見せるのじゃ」


 でも、やっぱりタダで貰う訳には━━あれインフォだ? イベント【想いを継ぐ者】を開始しますか? だって。うん━━これは受けなきゃ行けない気がする。


「分かった。貰うよ。だけど、俺の鉄扇も受け取ってくれ」

「なるほどのう。そう来たかぁ。なら鋼のを貰おう。それでどうじゃ?」


 む? そう来たか。なかなか手強い爺さんだ。


「分かった。それでいい」


 トレード欄に鉄扇を入れて了承を押す。

 トレード成立しました。イベント【想いを継ぐ者】を開始します。とインフォが流れた。ところでこの柔軟草ってなに?


「それはのう。お主が浸けていた桶あるじゃろ? それに水をいれて柔軟草を10枚擦ったのを入れて混ぜると、柔金属液になるのじゃ」


 なるほど。鉄扇を作るのに重要な物ですね。


「爺さん! ありがとうな! 世話になった。俺行くよ。最高の出来たら持って来るよ。じゃあね爺さん!」

「うむ。楽しみにしとるのじゃ!」


 挨拶を交わして、鍛冶場を後にする。早く鉱山に行かなくては!


「翁。本当に渡してしまって良かったのですか?」

「うむ。よいのじゃ!」


 翁と呼ばれた爺さんは、扇を開き天に翳して見詰める。


「それにしても翁嬉しそうですね」

「うむ。いい扇じゃ! 面白いのが見れそうじゃわい!」


 翁と呼ばれた爺さんは愉快そうに笑いながら、その手に持たれた鉄扇をいつまでも見続けた。




 やって来ました。坑道入口へ。

 今日は不思議とモンスターに会いませんでしたね。もしかしたらまた、何かが出たのかもな。

 では、俺の可愛い従魔を呼び出しましょう。


「召喚」


 淡い光が立ち込め消えると、そこには蒼い狼と真っ白な兎がいた。

 勿論蒼空と白夜だ。


『いいですか白夜━━あらマスターじゃないですか! おはようございますマスター』

『きゅ! マスターおはようです!』


 白夜が跳躍して抱き付いてきたので、もふる。うん。心地よい手触り。


『何してたんだ?』


 白夜を地面に置き、蒼空を撫でながら尋ねる。


『戦闘の心得を教えてましたわ』

『なるほど。確かにある程度は必要かもな』


 蒼空を懐に入れ白夜を抱っこして坑道に入りながら答える。今日も張り切って採掘しましょう!


『ですわね。他に仲間が入ればいいのですが、1人と2匹では、もしもの時に守れないですわ』

『そうだな。白夜、ちゃんと蒼空に教えて貰うんだぞ?』

『はいですマスター。蒼空姉さんが、援護してくれるから覚え易いです』


 一見すると蒼空って、1匹狼に見えるけど、なんだかんだで面倒見いいよな。ま、身内のみかも知れないけど。家の星ねぇ見たいに。星ねぇ、他人には恐ろしく冷たいんだよね。あんなふわふわな感じだけど。


『そっか~。蒼空も白夜もいい子だな~』


 と、採掘ポイントだ。なにが出るかな~と。お、魔鉄が3個に鉄が5個だ幸先良いスタート。


『そう言えば2匹共、変わった事無かった?』


 ちょっと、道中何も出なかった事が気になり、昨夜から外で行動している蒼空と白夜に異変はないか尋ねた。やっぱ、何かあってからじゃ嫌だしね。


『あんまりモンスターがいなかったです。そんなに遭遇しなかったですよ?』


 ふむ。今見たいな状態が昨日から続いてるって事か。


『そうですわね。近場のモンスターが遠くへ逃げて行くのを感じましたわ』


 おや? なら何者かもモンスターを追っかけて行っちゃたかもな。ま、警戒はするけどね。一応。


『あ、マスターそこに何かありそうですわ!』


 お! どれどれ? 本当だ! 薄く光ってる! やっぱり採掘のお供は犬科の動物だね!


『ありがとう蒼空! それに白夜も情報ありがとうね』

『『はいです(わ)』』


 そんなやり取りをしながら採掘していると、とうとうツルハシがお釈迦に! 無念です。

 さてと、時間を確認してっと、げ! もう13時30分! やば! 間に合わない! ここから街の入り口まで1時間掛かる! どうする!?

 マップを開いて現在地の確認。

 何か手は無いか? 何か!

 マップをガン見して手掛かりを探すも良い案が浮かばない。

 取り敢えずクルル達には街の外で待っていて貰えるようにお願いしました。

 時間だけが無情にも過ぎていく。


『どうしたんですの? マップとにらめっこして?』

『待ち合わせに遅れそうなんだ』

『確かにあの街、崖に囲まれてるから帰るの大変です』

『それだ!』

『キュウ?』


 俺が思い付いた策は至ってシンプル。

 崖から飛び降りるだけ。

 幸い命を繋ぐ為の浮遊がありますからね。

 いや~このスキル意外と役立ちますね。なのに何で不遇なんだろ? 謎です。

 確か街の出口の崖は━━? あった! ここから走って50分には着くな!

 全速力で走り出す。ゴールに向けて。

 草木を避け、岩を飛び石の要領で駆けて行く。

 見えた! もうすぐ着く。と思ったその時━━。



『おねぇちゃああああああああああああん!!』



 と、叫ぶ悲鳴が街から聞こえて来た!


 今のはリィーちゃん!? ━━急がないと!!




 時はトータがメールした時点まで遡る。

 騎士団員達はホテルのチェックアウトをして、馬に荷物を繋ぐ作業をしていた。


「トータからメールだ」

「おにぃちゃんからメール?」

「ふむ。採掘から帰るところだから、街の外で待っていて欲しいだとさ」

「なら、このままもんまでいって、かえるじゅんびするの!」

「そうだな。手続きの書類も書かないと行けないしな」


 クルルは騎士団員の確認をする。どうやら作業は終わったようだ。


「では行くぞ!」

「「「「「「「「「「「おー(なの)!」」」」」」」」」」」


 クルルは団員の声を聞くと、馬を歩かせて街中を進み、門まで移動した。


「では、手続きしてくる。先に出ててくれ」

「わかったの!」


 クルルが騎士団退去の際に書く書類を記入していると、外で騎士団の怒声が聞こえてきた。

 不思議に思い外を見てみると、団員が黒と灰と銀のしましまカラーの巨大な怪鳥に襲われていた。

 この怪鳥。兎に角大きく、2階建ての家ぐらいの大きさで、しかもそれが2羽いて、更に一回り大きな怪鳥が1羽いる。

 良く観ると、怪鳥の下には血を流して倒れた団員が数名確認出来、リリィーを必死で守ってる数名を確認出来た。

 クルルは考えるより早く剣を抜いて駆け出した。


「はっ!」


 裂帛の気合いを乗せて、近くにいた怪鳥に切り掛かる。

 怪鳥は羽ばたいて躱す。


「サンダーボルト!」


 クルルは団員達が倒れてる怪鳥に、幾重にも無数に走る稲妻を放ち、リリィー達の近くの怪鳥に切り掛かった。

 魔法を放たれた怪鳥は、透明なシールドで稲妻を防ぐと大きく飛び、クルルが切り掛かった怪鳥は翼で剣を防ぐ。すると、空に響くような甲高い金属音が鳴り響いた。

 クルルは悟った━━。このままでは勝てない。っと。


「私が引き付ける! 今のうちに逃げろ!」


 せめてリリィー達だけは逃そうと声を出す。


「でも━━」

「いいから行け!!」


 団員は反対をしようとしたが、クルルの切羽詰まった声にどうしようもない敵だと悟り駆け出すも、門の前に1匹の怪鳥が阻むように降り立った。


「くっそ!」


 リリィーを守る団員達は後退して距離を取る。飛び込めば待っているのは死だ。

 怪鳥と見合ってると、街の衛兵が援軍として出て来たが、怪鳥の羽ばたきを受けて、門に叩き付けられ、呆気なく動かなくなった。

 クルルは剣で翼を流して、援護しに行こうとしたが、もう1匹の怪鳥が弾丸の様に飛来してきて、慌てて転がり躱す。

 クルルが相手している間にリリィー達との距離を詰めた怪鳥に因って、一人また一人と護衛が倒されて行った。


「く! リリィー」


 思わずクルルが視線をリリィーに向ける。

 それが行けなかった━━。

 怪鳥はここぞとばかりに風の刃を飛ばす。


「はっぁ!」


 クルルは迫って来た風の刃に対し、剣を盾にして防ごうとするも、防ぎきれなかった風の刃に因って、頬や腕等に無数の裂傷を受ける。

 ただ━━怪鳥はその間も待ってはくれない。

 風の刃を放った怪鳥は距離を詰めて翼を振るう。

 クルルはなんとか剣で受けたが。


「ぐはあああッ!」


 何時の間にか空高く飛んでいて怪鳥の、急降下から急上昇をする、嘴と翼を使った攻撃によって、足に刺さりそうになった嘴は避けたが、翼での切り裂きは受けてしまい、鎧と共に左腹をごっそりと切り裂かれた。


「おねぇちゃああああああああああああん!!」


 リリィーの悲鳴が晴天の下で響き渡る!


「危ないリリィー様」


 見事に隙を付いた、リリィー達の前に居た怪鳥の攻撃に因り、最後の護衛が怪鳥の嘴に貫かれる。


「ロザちゃんんんんんん!!」


 リリィーの悲鳴も虚しく、怪鳥は刺したロザを嘴を振るい、投げ捨てた。


「リ、リィー、さぁ、まッ」


 まだ辛うじて生きていたロザが這ってリリィーの元に進もうとするも、そこへ、風の刃が追い討ちで飛来し、彼女の意識を刈り取った。

 防衛が無くなったところに、他の怪鳥より一回り大きな怪鳥が、リリィーの前にやってきた。

 怪鳥は恐怖で動けないリリィーを足で掴むとそのまま飛び立ち、他の怪鳥は倒れてるロザとクルルの元へ向かう。


「リ、リィーィい!!」


 クルルには、連れて行かれるリリィーをただ見てる事しか出来なかった。

 絶望のどん底で、それでも最後の抵抗とばかりに怪鳥を睨み付けるクルルの瞳に、白い光を発しながら回る何かが映る。

 何かは怪鳥の斜め下から飛来し、思わず退いた怪鳥の真横に、まるで瞬間移動の様に人が現れ、怪鳥の足目掛けて何かを振るうと、怪鳥がリリィーを離した。

 人はリリィーを優しく抱き、ふわっと、地上に降り立った。

 その人の顔を見た瞬間。思わずクルルは泣きそうになった。抱かれたリリィーは、わんわん大泣きして髪を撫でられてあやしてもらっている。

 クルルは思う。私とリリィーはなんだかんだで彼の世話になっているばかりだな。けど、それを伝えたら、彼の事だからそれで良いんじゃない? 俺も世話になってるし、持ちつ持たれずで。って笑いながら軽く答えそうだ。と。

 ほら今も私の心配をしながらポーションをゆっくり優しく飲ませてくれた。


 ━━トータ。君に出逢えて良かった。


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