良い物を目指して
ふぅ~。ヘッドギアを外してベッドの上に置く。あの後が大変でした。
宿に戻ってから蒼空と白夜に念話したら、明日出掛けた時に呼んで欲しいと言われたので、そのまま夕食を食べる事に決め、テーブルに着いて料理を待っていると、クルルとリィーちゃんが階段を下りて来て、一緒に夕食を食べる事になりました。
そして丁度いいので情報交換。
俺からは、坑道での出来事とその後の熊の死体に付いて話し、クルルからは一連の事件に関係ありそうな、街の住人の切断された死体の事や、街付近のモンスターからも同様な死体が何件も出た事を聞きました。ちょっと心配です。
そうそう明日は、街を昼の2時に出るようです。残された時間はあまりないようですね。
階段を下りてリビングに入る。
「あら~翔ちゃん。ほら私の胸に飛び込んで来なさい~」
なんか星ねぇが立ち上がり両手を広げているのだが、飛び込みませんよ?
「あ、おにぃだ!」
テレビを見ていた美紀が振り返ったので、髪を優しく撫でてやる。唯一の良心的な妹だ。
それを見た星ねぇが腰に手を当て怒る。
「ああああああ! 美紀にだけずるい! お姉ちゃんにはなにもないの!?」
無いです。
「お、おにぃ? そろそろ、ね?」
おお。珍しく恥ずかしそうに、もじもじしてる。うんうん。可愛いな~。おっと、そろそろ星ねぇが不機嫌になって来たから止めるか。
美紀の髪から手を離す。あ! あう。って言って俯いた! 顔が真っ赤です。
「ところで舞依は?」
「知らない!」
俺が尋ねると星ねぇが、頬を膨らませてそっぽを向く。ヤバイ。かなり不機嫌になってる。
「ここです! お兄様!」
シュッタと、舞依が突然お玉を持て現れた。忍者かお前は!
「抱き付きながら撫でて貰えるって聞いて! 只今馳せ参じました!」
「ないわ!」
「えええええええええええ!? 嘘ですよね!?」
え? そこ驚くとこなの? なんなのこの妹。
「せめて! せめて髪だけでも!」
「なにその名前だけでも的な乗り」
「く、手強いですね。でもこちらにも策があります!」
いや、もう引こうよ。お願いだから。
「撫でてくれなきゃご飯無しです!」
「くっ!」
な、なんて事を! 恐ろしい娘です。舞依は!
「ふぅわぁあああ~。ありがとうございます。お兄様!」
ええ。撫でましたけど、何か? 背に腹はかえられないのです。あ! 痛い! 冷たい視線が突き刺さる。
「ふーん。舞依にも撫でるんだあ? 私にはしてくれないのにぃ?」
「そ、そんな事は━━」
「ふーんんんんんん!」
ふむ。決めました。はい。勿論撫でる方を選びますよ。弟は立場が弱いのです。
「えへへ。ありがとう翔ちゃん。愛してるわ」
星ねぇがとろけそうな笑顔を浮かべる。
「あ、うん、ありがとう?」
「私には?」
「?」
「私には無いの?」
「何が?」
「星ねぇ愛してる! て」
あー。誰かに似てるな? って思ったけど、このやり取りで思い出した。女神に似てるんだ。ルミリシアに。
「もう。やだ~! 女神だなんて」
うん。言ってない。心を読むんならせめてちゃんと読んでくれ。ま、何も言わなければ終わりそうなので、今回は! ツッコまないが。
「そう言えば、おにぃは鍛冶取ったの? 取ったんならサブウェポン作って欲しい! 短めの槍!」
お、美紀が復活した。まだ顔赤いけど。
「いいぞ。槍な?」
「うん。お願い!」
「あら? なら私もお願い。近接用に使える杖が欲しかったのよね~。そこらへんは、翔ちゃんなら心得てるしね。任せるわ」
「了解。使い易いの作るよ」
「ならわたくしもお願いします! 小太刀風の!」
舞依よ。そんなに無理して台所から言わんでも、仲間外れにはしないのに。
「分かった! 小太刀風な!」
「はい! よろしくお願いします! お兄様!」
その後、なんか大盛で晩御飯が運ばれてきた。いや、舞依さん? サービスしても装備の出来は変わりませんよ?
因みに今日の夕飯はアジの開き定食でした。ふわふわのアジに、落ち着く味噌汁。最高です!
さて、味わって食べて、風呂入ってから戻るかな。
ログインしました。現在爺さんの工房に来ています。
さて、鋼を空間収納から取り出して炉に入れ、お復習がてら爺さんから聞いた手順に鉄扇を作って行く。そして、出来たのがこちら。
【鉄扇 (鋼)】銘 タートル 攻撃力+40 耐久250/250 重量50『備考』鋼で出来た鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
が出来ました。全く一緒ですね。あ、インフォ。《鍛冶》を習得しました。だって、何でこのタイミング? う~ん。もしかしたら【教えを請う者】の効果と、その後爺さんの教え通りに実戦したからかな? 今度実験して見よう。
次々と鋼で鉄扇を作っていく。あ、鋼が無くなった。
最終結果はこちら。
【鉄扇 (鋼)】銘 タートル 攻撃力+43 耐久270/270 重量45『備考』鋼で出来た鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
微妙にですが良くなりました。納得は行かないが。
「ほうほう。やっとるの。ふむ。段々とじゃが良くなってるの」
「ありがとう。まだまだだけどね」
「ふむ。鋼を使い切ったか。なら次は、溶かして使うか、銅に移るか、じゃな」
「え? 溶かして使えるの!?」
「使えるぞ。ただし溶かしたら半分になるがな。ま、どっちかを━━もう溶かしてるのじゃ!?」
あれ? 何か驚かれてるけど、なんでだろう?
「普通は迷う物なのじゃぞ? 売って金にすればいい金額になるんじゃぞ?」
なんだ。その事ですか。
「いいよ別に。稼ぐ目的で鍛冶を始めた訳じゃないからね」
「そうじゃたな。じゃが騎士に借りた金はどうするのじゃ?」
「倒したモンスターの素材を売るよ」
溶けた鋼を冷ましてインゴットにする。
「そうかの」
「うん。さ、やるぞ!」
「まあ、待つのじゃ」
インゴットを火にくべようとしたら爺さんに止められた。
「なんだ?」
「全ての動作に魂を込めてやるのじゃ」
「魂?」
「ま、想いじゃな」
想い、か。爺さんが言うんだし試して見よう。
「それとな、素材をインゴットに入れて叩いたりすれば、特殊効果が付くぞ」
「それはインゴットを作る前に聞きたかった!」
「ほほほ。それは悪かったのじゃ。では頑張りなさい」
愉快そうに笑いなが爺さんが出ていく。それにしても魂か? あ、ちょっと閃いたかも。
【鉄扇 (鋼)】銘 タートル 攻撃力+47 魔力増加+22 魔法攻撃+15 魔法防御+15 耐久280/280 重量43『備考』特殊な作り方をされて出来上がった鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
やったああああああ! 成功した!
何をしたかと言うと魔力三大奥義を使って作りました。
え!? またインフォ!? 《鍛冶の心得》を習得しました。だって。まだ覚えられるとは思ってませんでした。
やっぱり住人の教えは素直に聞くべきですね。では、もう1つ、魔法も乗るか試してみます。
「ファイヤー」
目の前に出た火を槌に纏わせて叩く。
【鉄扇 (鋼)】銘 タートル 攻撃力+48 魔力増加+24 魔法攻撃+17 魔法防御+17 火属性+10 耐久280/280 重量43『備考』特殊な作り方をされて出来上がった鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
無事に乗せる事が出来ました。これで後は繰り返すのみ! 頑張ります!
あれから出来た鉄扇を溶かしては打ちを最後の1つになるまで、繰り返して結果。
【鉄扇 (鋼)】銘 タートル 攻撃力+57 魔力増加+29 魔法攻撃+25 魔法防御+25 火属性+20 水属性+17 耐久310/310 重量33『備考』特殊な作り方をされて出来上がった鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
までの物が出来上がり、新たにスキル《付与》と《耐熱》を覚えました。
素材が無くなり、続いて銅に移る時に、インゴットに素材を混ぜようか悩みましたけど、今は止めました。失敗しそうな気がしたので、始まりの街に戻ってからやる事に決めました。
そして普通の銅のインゴットで作った最終的な出来はこちら。
【鉄扇 (銅)】銘 タートル 攻撃力+65 魔力増加+22 魔法攻撃+23 魔法防御+23 火属性+21 水属性+20 耐久600/600 重量42『備考』特殊な作り方をされて出来上がった銅の鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
てのが最終的に出来上がりました。俺の熟練度もそうだが、素材によって伸びる箇所と減る箇所がバラけるんだな~。勉強になります。
ふぅ。もう23時か。明日学校だけど、鉄で最高の作りたいな~。このまま続けますか。
鉄を取り出し、インゴットにして熱する。━━よし今!
火の入り方を見極めて打つ。打つ。打つ。
そして水に浸け、次のインゴットで要を作り、残りを熱して打つ。
もう何百と叩いて来たので大分慣れたが、爺さんの教えに従い、全身全霊を賭けて叩く。油断はしない。
出来たのを柔金属液に浸け、丁度いい浸かり具合になるまでの間に、要を熱して骨組みに取り付けて、水に浸け冷やす。後は、扇面が柔らかくなるのを待つばかり。
暇なので待ってる間、炉で燃えてる火を見詰める。
そう言えば、炉って幾らするのかな? 高くないといいけど。でも置く場所もないか? なら責めて専用施設とか解放されてたりしないかな? 今度街で探して見よう。
そんな事を思いながら柔らかくなるまで待ち、仕上げの工程に入る。
骨組みの先を熱し、同時に扇面も熱っして、赤くなったら骨組みの先に1つ1つ端正に着けて行き、最後に水に浸けて熱を冷まして完成!
【鉄扇】銘 タートル 攻撃力+40 耐久200/200 重量50『備考』良く出来た鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
初めての鉄で作った割には、良い出来です。では、このまま、魔法と魔力を入れながら作って行きましょう。
次からは教わった手順に魔法と魔力を付与しながら一心不乱に作って行き、最終的に出来たのがこれだ。
【鉄扇】銘 タートル 攻撃力+60 魔力増加+30 魔法攻撃+37 魔法防御+36 火属性+28 水属性+27 耐久280/280 重量39『備考』特殊な作り方をされた鉄扇。製作者を示す亀のロゴがある。
でした。まだまだ満足行かないけど、嬉しい仕上がりだ。お陰でスキルもめっちゃ上がった。
《鍛冶Lv17》《鍛冶の心得Lv16》《付与Lv13》《耐熱Lv8》《火Lv43》《水Lv43》《魔力感知Lv26》《魔力量上昇Lv32》《魔力自然回復上昇Lv32》《魔力流動Lv22》《魔力変動Lv22》《纏いLv30》《隠蔽Lv22》
だった。この上がり方と上がっているスキルを観るに、特殊な打ち方が、【絶望への挑戦者】を発動させたっぽい。俺的には出来ると確信してたから、絶望でも何でもないただの作業だけど。
さて、今何時になったかなぁっと。げ! 3時過ぎてる! 早く炉を消してログアウトしなくては!
鉄扇を空間収納に仕舞い炉を消そうとして気付く。この鍛冶場の入り口に寝袋がキレイに畳まれて置いてある事に━━。
爺さんが持って来てくれたのかな? ほんと世話になってばかりだな~。
優しさを感じながら炉から火を消すと、真っ暗闇になった。良かった暗視があって、無かったら手探りで寝袋まで行かないといけないところだった。
寝袋を開き中に入りチャックを締める。
明日帰るのか~。早い旅だったな。
ま、後1日あるし、出来る事をしよう!
ではログアウトっと。




