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出立

 昼。今日の授業も無事に終わた。

 これから部活なのか、教室でお弁当を食べ始めるグループや、また、これからどこか食べに行こうだとか遊びに行こうと、話し始めるグループで教室中がざわめき初めている。

 にしても、午前中の授業最高! 遊ぶ時間が沢山ある。なんならもう来い夏休み! あ、宿題は少なめでお願いしますです。はい。


「翔掲示板見た?」


 おや? 掲示板見ろってメール送った本人じゃなく、奈々夏の方が声を掛けて来たよ。て、メール送った本人は、入り口で他のクラスの奴等に捕まってるよ。


「見たよ」

「そう。ならさ、分かるよね?」


 ま、長い付き合いですからね。大体は解るさ。


「最弱王の事でしょ?」

「そうそれ。私達が手伝うから見返さない?」


 と、来ると思ってました。長い付き合いだから俺がこういう時なんて返すか分かってるでしょうに。


「俺がなんて返すか分かってるでしょ?」

「うん。答えはNoよね?」

「そう言う事」


 やっぱりちゃんと解ってたか。流石は伊達に幼少期から一緒にいる訳じゃないな。


「でもさ。悔しくないの? あんな呼ばれかたして」


 て言われましても、何か不利益になった訳じゃないし。10回死んだ事も事実だし。称号でも最弱王って貰ってるし。そうそう最初掲示板で最弱王って見た時は、称号がバレた! って焦ったけど、そっちじゃなくて良かったよ。そっちだったら取り方教えろ! って、来るかもだったから。━━いや、不名誉過ぎてないか。


「えっと、特には」

「あんたね!」

「そんな言い方じゃ駄目だぞ。奈々夏」


 おっと真打ち登場か?


「逸夢。でもさ」

「翔にはそっちじゃ無理だ。動かない」


 ━━ほう。言うね君。なら聞かせて貰おう! 君の正解を!


「うっ! でも、そっちはちょっと。ね?」


 なに!? 逸夢だけじゃなく奈々夏も別の答えがあると言うのか!?


「ちょっと、なに?」

「うっ! 恥ずかしい」


 うん? 恥ずかしい答えなの? なんだろう?


「簡単だろ? 私の為に戦って! なんて」

「出来るかあああああ!! 言えるはずないでしょ! そんな恥ずかしいセリフ!」

「出来るかああ! て、裏を返せば心の中では思ってるって事だよな?」

「な!?」


 なるほど。そっちか! 確かに俺が最弱王って呼ばれる事で、こいつ等が嫌な思いをするならどうにかしたいけど、今日から2日間クルル達に同行するからな。今は無理だな~。

 ところで奈々夏、動揺し過ぎじゃね? 友達の為に言うのって、俺的にはいいと思うんだけどな~。


「ふむ。奈々夏の気持ちは分かった」

「わわわわかったてなにがぁあ!?」

「幼なじみが馬鹿にされて怒ってるんだろ?」

「えっ?」

「うん?」


 あれ? 違うの?


「あ~。そう! そうなのよ! だから見返そう!」


 え?! なんなの!? どうしてそんなに乗り出して来るの!? 近いから! 顔めっちゃ近いから!


「でね! 今日とかどう?」

「ごめん。今日無理。予定が入ってる」


 ま、ゲームの中で、ですけどね。


「なら、いつならいいんだ?」

「明後日なら大丈夫だと思うよ。多分」

「う~ん。明後日か。奈々夏、遠征行こうって言ってた日、変えられると思うか?」


 おや? 何か問題があるのかな? なら、そっち優先でいいのに。


「無理ね。一人頷かないわ」


 奈々夏がため息混じりに答えた。何か思う事があるのかもな。


「俺は何時でもいいから、暇が出来たら誘ってくれ」

「分かった。そうする。奈々夏もそれでいいよな?」

「しょうがないから納得する」


 おお! 凄い不満そうだな。トップパーティーでも色々ある見たいだな。と、そうだ! 昨日のボスチャレ、どうなったか聞いてなかったな~。


「負けたけどなにか?」

「うん? 家の姉妹のどっちに先を越されたの?」

「違うわよ。負けたの。全滅。分かった?」


 え!? 嘘! トップのパーティーが負けたなんて! なら家の姉妹はどうなったんだろ?


「ちなみに、星羅姉さんとこと、舞依と美紀のとこも負けたわよ?」

「嘘でしょ!? 星ねぇのパーティーってみんな強い人ばっかりだよね!?」

「全員アザ名が付けられてる唯一のパーティーだな」

「それが負けたのか?」

「負けたよ。星羅さんが、あれはまだ無理ね。多分順番が違うんだと思うって言ってたから」


 なるほど騎士が守るエリアは伊達じゃないって事か。


「ふ~ん。あ! その為の遠征か!」

「そう言う事よ」


 みんな色々と考えてプレイしてるんだな。参考になる。え? 俺? 俺は完全に行き当たりばったりですがなにか?


「そうだ! 後一つ気になる事があったんだ!」


 なんだろう? 珍しく逸夢のテンションが上がったな。こいつのテンションが上がるネタ、かなり気になります。


「掲示板でさっき上がってたんだけどさ! 西の平原に青色の狼と白い兎が一緒にいるんだって! しかも仲がいいらしんだよ!」


 そのネタ凄く知ってる! 私事です!


「ああ! その掲示板私も見た! 何でも誰も近づけないって話でしょ? 警戒範囲が異常だって書いてあった! 見てみたいな~。何でも凄く可愛くてもふもふらしいよ!」


 大分観られてるんですね。あの娘達。と、ヤバい! もう12時だ! 急いで帰らないと!


「げ! やばい! ごめん! 1時から予定があるから先帰る! またな二人とも!」


 立ち上がりながら鞄を持ちダッシュで帰る。


「あ、ちょっと翔!?」

「ちょっと待て!」


 二人の慌てた声が聞こえたがしょうがない。こっちは電話する事も出来ないからな。

 このゲーム、遅刻したらどうなるか分かったもんじゃない。下手したら置いていかれないしな。





 無事にログインしました。ご飯中、なんでそんなに慌てて食べてるのか、姉妹から不思議がられましたけどね。

 さて、アメジアがログインしてるか確認しないと。お、いたな。

 場所を確認したら西の通路口って書いてあった。ここから少し離れたとこだな。急ごう。

 人の行き交う中を縫うように交わしながら走る。

 メイン通りを越え、裁縫屋ら武器屋が並ぶ通りを抜け、またメイン通りに戻り走ると、売ります買います。と、書かれた見覚えのある看板が目に入った。


「こんにちは、アメジア」


 相変わらずピンクの敷物の上に武器や雑貨が並べられている。


「あら、トータじゃない。どうしたの?」

「今日は売りに来ました」

「そう? 品物は?」

「これです」


 トレード申請を出して、要らないアイテムを入れる。


「どれどれ? って、多! どんだけ狩ったの!?」


 そうかな? 出したアイテムなんて、熊の毛皮が20の、爪が35で、牙が14本の、熊肉が32個で、蛇革が47だけですよ。あんまり多くないよね?


「え~と計算すると、え~と一個、毛皮が200の爪が50で、牙が200の肉が30で革が100だから、合計1万4210ゴールドね」

「おお! なかなかの値段! あ、ポーションありますか? あったら欲しんだけど」

「あるけど高いわよ? 一つで250するわ? 買う?」


 高い! この前より100上がってるな。もしかしてまだ上がるのか?


「上がるわよ。500までは確実ね」


 尋ねたらアメジアから衝撃な回答を頂いた。そんな高くなるなら今の内に買っとこう。


「今の内に欲しいんだけど売ってくれる?」

「いいよ。だけど今、多くの人に届ける為に、点数制限掛けてるんだ。だから一人10個まででお願い」


 残念。買い溜めしたかったけど出来ないか。ま、決められてるんならしょうがないかな。


「それでお願い」

「お! 素直だね! お姉さん素直な子は好きよ? サービスして2300でいいわよ」

「やった~。ありがとう」

「うん。じゃあポーションと差額の1万1910ゴールドを入れてトレードと」


 トレードが成立しました。とインフォが入った。よし! 持ち金が1万ゴールド越えた! リッチです。

 と、もう直ぐ1時だ! 急がねば!


「ごめん! 約束あるから行くね! またね!」

「うん。ありがとうございました。また来てね」


 おお! 可憐な笑顔で綺麗なウインクを。少し照れますな。と、だから時間ないんだった。いざ! 約束の地へ!

 これ、一回言ってみたかたんだ。夢が叶った。




 なんとか時間前に着く事が出来たけど、騎士の鎧を装備した集団が無表情で立ってるのを見たら、入る気がなくなったんだが。

 帰りたい。無性に帰りたいです。私。でも、ここで帰る訳にはいかないから声掛けますけどね。


「ごめん。遅くなったクルル。時間大丈夫か?」

「ああ。大丈夫だ」


 クルルは一つ頷くと大声を上げた。


「みんなこいつが昨日話した同行者のトータだ。よろしく頼む」

「初めましてトータです。以後お見知り置きを。といけない。召喚」


 俺がそう言うと、両サイドから小さい蒼い狼と小さい真っ白い兎が出現する。はい勿論お馴染みの蒼空と白夜です。蒼空は縮小形態で行動してる見たいですね。小さいです。

 ざわめきが起こる。もしかしたら召喚士は少ないのかもな。ま、厳密に言えば違うけど。


「紹介します。狼が蒼空で、兎が白夜です。こちらもお見知り置きを」


 うむ。ざわめきが大きくなったな。でも質問がないって事は、団長に止められてるのかもな。もしかしたら無闇にステータスに関する事は聞かないって、この国のルールがあるのかもだけど。

 騎士達が顔を見合せている。


「さて左から紹介していこう。ロザ・ティーリスにセンシル・ルータス。続いてジョン・カリウトとジルクト・ダスク。レナ・トルーニにレオナルド・ルニットソン。後はデリシア・オールコットとデオルト・ナビスタにサナガ・ルート。そしてミミカ・ブレイドだ。ま、覚えなくてもいい。基本は私がトータの相手をするからな」


 だってさ。正直助かります。絶対覚え切れません。

 容姿はどうしよう? 軽く説明しますか。えっと、ロザが金髪の女性、センシルが赤髪の少女で、ジョンが金髪男子でジルクトが厳ついおっさん、レナが小顔少女で、レオナルドが左頬に傷のある青年で、デリシアは金髪美女の、デオルトは爽やかイケメン。サナガは少年でミミカは三つ編み少女。だな。


「では、そろそろ出立しよう」

「どうやって行くの?」

「馬だ! あそこにいる」


 そう言うとクルルは、詰所の横の納屋を指した。

 本当だ。馬番見たいな人が馬を出してる。


「どれでも好きな馬に乗ってくれ」


 ふむ。そもそも問題がある。


「俺馬乗れないけど?」


 ━━だ。


「な!? どうしよう? てっきり乗れる物だとばかり! そうだ! 私の後ろに乗るってどうだろう!?」


 おお! 合法的にくっ付ける素晴らしい提案だ! だが━━。


「この娘達どうしよう?」

「━━あ!」


 この獣達を抱えたまま抱き付くって無理があるよ。う~ん。どうしたものか? あ、置いていって後から召喚するのは無しです。出来るだけ一緒にいたいので。


「ま、いいか。乗って見るから大人しい馬用意して」

「うむ。分かった」




 おかしいな、あれから2分経つのに出てこない。あ、戻って来た。一人で。


「すまん。馬が出たがらないんだ」


 は! まさか!?

 俺は蒼空をみる。あ、そっぽ向いた!


『蒼空。気配消してくれない?』

『また服の中に入れてくれたら消しますわ』


 なんて奴だ! 可愛いので許可!

 蒼空を昨日と同じように抱えると、蒼空が襟元からひょっこっと顔を出した。可愛いな、撫で撫で。

 は! しまった! 思わず撫で始めてしまった。クルルが羨ましそうにこちらを凝視しております。


「な、なあ。触らせて」

『ヤですわ!』


 嫌みたいです。あ、伝えたらシュンとなった。


「な、ほら馬行こうよ? ね?」


 地面にちょこんと座っていた白夜を抱え上げ、この世の終わりのように落ち込んでるクルルの背中を押し、納屋まで移動する。あ、両手塞がってても蒼空は落ちません。何でも氷で服と貼り付いてるらしいですよ。気配消しや吸着とか色々使えて便利ですね。氷魔法。

 納屋からは馬の鳴く声が聞こえてきた。おや? まだ蒼空が気配消して無いのかな?


『違いますわよ。ただ馬が騒いでるだけです。騒々しい』


 あらら、蒼空が迷惑そうに服の中で尻尾を一回振った。どうでもいいんだけど、尻尾が擽ったいです。


「こいつが一番大人しい馬だ」


 クルルが茶色い毛の馬を連れて来た。


「どれどれ」


 クルルが連れて来た馬の眼を見る。うん。行けそうだな。

 試しに頭を撫でて見たら抵抗しなかったので、背中に股がって見たら無事に乗れた。一安心ですね。


「おお! 乗れたか。そのままお腹を軽く蹴れば歩き出す」


 白夜を鞍の上に置きクルルに言われた通りに軽く蹴る。

 お! 本当だ。もしかしてら手綱を強く引いたら止まるかな?


「止める時は腰を張って停めるんだ!」


 腰を張るか。なるほど張った時に軽く手綱が引かれるのか。で、止まると。あ、止まった。


「よし。大丈夫そうだな。各自馬に乗れ! 出発するぞ!」


 俺が無事に馬に乗れた事を見届けると、クルルが全員に指示を出す。


「では、私とトータを先頭にして進む。出立!」

『おおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 クルルの号令に合わせ、隊員が声を張り上げた。


「では行くぞ? トータ」


 クルルは俺にだけ声を掛けると馬を走らせた。

 ちょ! クルルさんや俺まだ走らせた事ないんですが! ええいままよ!

 見様見真似で馬の腹を少し強めに蹴ると、馬が猛スピードで走り出した。

 俺━━大丈夫かな?

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