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方針

 カップ麺を食べてトイレを済ませて、ログインしました。


「戻りました」

「おや。早かったな。もう少し掛かると思っていたぞ」


 相変わらず縄でぐるぐる巻きにされています。ま、これ切らなきゃ動けないだろうけど。


「で、これの解除方って何かあるの? 9が億個、連なってるんだけど?」

「普通にやっては無理だな。1も削れない」


 え? それって不可能じゃありませんか? 削れない物は壊しようがない。詰んでますね。はい。


「これ、話しは最後まで聞け」


 確かにごもっともですね。はい。


「やれやれ。さて、まずはこれを切る条件を教えよう。まず完璧なタイミングでのチェイン攻撃を千回で0になり、最後に全身全霊の一撃を入れれば破壊出来る」


 うん。チェインってなんだ?


「連続攻撃だな」


 ああ! なるほどね。現実世界でもある、連続で攻撃を与えると意識が刈りやすくなるあれか。


「そうだ。それと同じだと思っていい。ただしシステムが有効と見なす範囲内での連続攻撃だ。手の抜いた攻撃や一拍置いた攻撃は無効になるから気を付けろ」

「うん。わかった。やってみる」


 扇を装備し、異空間収納からもう1つ取り出し左手に持つ。


「ほう二刀流か。スキルには載ってなかったから素で使えるのか。やるな」


 息を大きく吸い吐き出す。今!!


「はあ!」


 裂帛の気合いと共に、右手に持った閉じたままの扇を左下から切り上げ、手を返して開き、その内に振り上げていた左手の扇を閉じたまま右斜め下へと振り下ろす。


「くっ!」


 そして最後に、開いた扇を縄のど真ん中に振り下ろした。


「おお! 見事な扇裁きだ! っと褒めたいところだが、僅かだが攻撃のタイミングがズレているぞ? もっとも自分で気付いているようだがな━━」


 そうなのだ。2撃目でわかった。自分の理想の動きと誤差がある事が。これでは連続千回なんて到底無理だ。

 しょうがないその都度修正を入れて行くしかないか。

 では、やりますか!




 ハアハアっ。はあはあはぁ。どれくらい時間が経ったのだろうか? あれから幾度となく修正を入れて連撃を繰り返すも、コントロールが上手くいかず途中で途切れてしまう。くそ! 最高で漸く半分かよ! まだまだ先は長い。


「な? そろそろ諦めたらどうだ? 明け方近いぞ? それに掌から血が出てるぞ?」


 あ、本当だ! 痛みがなくってわからんかった。あ? やばい体力がああああ。ポーションポーション! ふぅ。危なかった。少し休憩しよう。


「そうだな。それがいい。しかし、まだやるのか? 助けを求めた私が言うのもなんだがしつこいぞ。もう7時間もぶっ通しじゃないか。別に今度でいいのだぞ?」


 うっせい。ほっとけ。諦めたら死ぬような生活を幼少期から送っとんのじゃ。これくらいでめげてやれっか。


「そ、そうか。別に私は気にしないから心行くまで居ればいい」

「そうさせてもらうわ」


 もう朝5時か~。休んでたら疲れてきたな。あ、そうだ。なんで封印されたか詳しく聞いてなかったな。


「む? 聞くか? ゲームの核心に触れるぞ? それでもいいのか?」


 どうしよう。ゲームが楽しめなくなるなら聞きたくないかな。でも、めちゃくちゃ気になるしな。


「ま、楽しめなくなるかどうかは自分自身の問題だな。基本はエンドなんてないからな。ま、さっきも言ったが自由に楽しめ」


 そっか~。そうだな。なら聞いてみるか。


「わかった。なら、話そう。実はな━━、この世界が最悪の結末に成ったらどうするか、話してたのだ」

「そう言えば想定していた事態ってなんだ?」

「ああ。それはなプレイヤーと住人同士での━━殺し合いだな」

「そんな事が起こるのか?」

「わからん。だがもし起きたらどうするか? で話し合った結果口論になってな。そのまま封印されたんだ。因みにそうなった場合私は傍観派で、妹が破壊派だな」


 とんでもない発言来た。てか世界が破壊されるような事態に成ったら運営が止めるだろう?


「ああ。普通はそうだな。でも、ここの社長イカれてるからな。パッケージにもリアルな展開! ※どんな結末でも運営は保証しません。て書いてある。きっとモニタリングしてるのも居ないだろうな」


 マジかよ! NPCからイカれてると言われる社長どんだけだよ! それにそんなの見てないぞ! って、そうか。私βテスだから2個あるから上げるって言われて、ソフトだけ幼馴染に貰ったんだった。見てないはずだ~。


「ふむ。奴のイカれ具合は追々分かるさ。それと少し妬けるがいい幼馴染じゃないか、大切にしろよ。それにその娘βテスだったのか? ならもし仲の良い住人が居たら気付くかもな。あれからこの時代は千五百年の時が経ってる事に」

「どういう事?」

「ふむ? そうだな。運営はこの世界が出来て1万年と、大雑把に設定してリリースした。たが私には、その間の歴史はちゃんとあり、観てきた記憶があるのだ。詰まりは流れが存在する」

「βテストからそんなに時が経ってるのはなぜ? 現実世界で1ヶ月前の話だよ?」

「誰かが運営主催のイベントの為に、時間加速の実験をしたんだろう。その為に現実とゲームの世界で齟齬が出来てる。なんせあの時は、私はまだ自由に動き回っていたしな」

「え? 元からここで捕まってたんじゃないの? 千年って運営の設定だよね?」

「いや。リアルな時間だよ。そもそも運営がした私の設定はここではない別の場所になっていて、本来なら自由に動き回っているはずだからな」

「そうだったんだ。あれ? じゃあこの場所は?」

「本来ならここはただの古代遺跡で、宝探しイベントが起きる場所であった。━━女神と会うなんてなくな。ま、姉妹喧嘩の所為で、遺跡諸ともそのイベントも無くなったがな」

「なんちゅう傍迷惑な。あれ? ちょと待って! イベントが無くなるの?」

「無くなるぞ。世界の進行の仕方次第で。逆に言えば進行の仕方次第でイベントが発生するとも言える。ま、運営主催でやるイベントは別だがな」


 う~ん? どこからが運営の設定で、どこからかNPCの行動かいまいち分からないな。そもそも━━今の状況すら設定内で起きているものかもしれない。


「別に深く考える必要はないさ。選択権は自分にある。自分が信じたい方を選べ」


 それもそうか。そんなの気にしても楽しめないしな。なら設定じゃなくリアルに動いている方を信じよう。え? 理由? 俺的にそっちの方が楽しめそうだから。


「ふふふ。そうだ。それでいい。だいたい今の状況がイレギュラーだからな。序盤で普通なら、こんな場所にこれる筈がない。これも波瀾万丈なんて与えた馬鹿の所為だな」

「あっ。やっぱり序盤じゃ起きないイベントなんだ」

「これイベントじゃないぞ? イベントなら、イベント何々を開始しますって、インフォが流れる。クエストもしかりだな」

「そうなんだ~。うん? あれ? オペレーターの天の声さんの事知ってるの?」

「うん? なんだ気付いてなかったのか? あれ私に近い存在だぞ? 私のイベント始まるまで私動けないので、暇潰しにオペレーションやりますって、立候補してたぞ」


 ほおう。そうか。天の声さんゲーム内でも出てくるのか。出会ったら覚えておけよ? アイテム無しの無一文で放り出したあげく、変な称号まで付けた怨み晴らしてやる!!


「それは災難だったな。ま、地道に頑張れ」


 神様って、最初に貰えなかったお金とアイテム補填してくれないかな?


「ない。そもそも神が、金やアイテムを持ち歩く筈ないだろう」

「いや、そこは神様だから無から有を生み出すとか」

「別の神に頼め。製造あたりの。私は慈愛の神だぞ? お門違いだ」


 ごもっともです。はい。


「で? どうする? まだ続けるか?」


 おう。少しの休憩のはずが、もう6時近いのですね。よし。続けますか! と、言いたいとこだが、体の違和感が取れないとどうしようもなぁ。


「うん? 違和感てなんだ?」

「現実との動きとリンクしないんだよね。ステータスの所為で動きが悪くなってるのとは違う根本的な部分で」

「なるほど。考えられるのは保護システムが邪魔してるだな」

「保護システム?」

「そう。プレイヤーが痛みを負わないようにするシステムさ。因みにこのシステム住人と喧嘩したりすると、喧嘩中は無効になるぞ」

「そんなのあるの?」

「ああ。ウインドウ開いて設定に入ると、痛覚設定ってあるだろ? それを100にすると、痛みと引き換えに現実と同じようになる。そもそもその違和感は、攻撃を受ける時にシステムが攻撃に備え、痛みを無効化する為に起こる違和感だ。修正しようにも攻撃のパターンが無いこのゲームじゃ、修正なんて不可能だよ」

「なるほど。そうだったのか。確かにこのゲーム、モンスターの動きが複雑だったからな」


 話しながら痛覚設定を弄る。最初の設定は0か。どうもこのゲーム、デホルトは0から始まるみたいだな。さて痛覚を100にして。お!? 違和感が消えた! これで大丈夫。


「にしても━━、その違和感を抱えながら五百チェイン出すとは、トータお前、武術の達人かなんかか?」

「うん? ほどほどです」

「胡散臭いな」


 なんか疑われてますが、これで大丈夫。千チェイン終わらします!


「やッ!」


 裂帛の気合いと共に右手の扇を開き、下から振り上げそのまま手首を返して左下へと振り下ろす。同時に振り上げに合わせて閉じた状態の左手の扇を縄の真ん中に突き、少しの手首の振りだけで開き、そこから手首を返して左上へと振り上げ、右手の振り下ろしに合わせて左下に振り下ろす━━と、止まる事なく直ぐ様左上へと振り上げるのと同時に、体は回転を始め、まず流れの中で右手を右上へと振り上げると同時に、左手を右手があった場所へとセットし、右手が完全に伸びきったら左手を同じ軌道で振り上げ、回し蹴りも入れて飛び、風車のように右と左の扇で連激を入れる。

 扇を開いては閉じ、たまにブーメランのように投げ、動きに合わせてキャッチし、蹴りを入れる等の行為を一切の淀み無く縄の中心の一点のみに当て繰り返す。


「ッああああああ!」


 百、二百、四百、八百と絶え間なく重ねてラストの一撃を閉じた左手の扇で雄叫びと共に突き刺す。

 硝子が割れる様な破裂音が辺り一面へと広がる。

 第一関門突破だな。

 続いて第二関門の全身全霊を掛けた一撃だな。多分、婆さんに教わったアレが出来るはずだ。

 目を閉じて自分自身を探る。


 ━━あった!!


「ファイヤー、ウォーター」


 同時に叫ぶと火と水が現れる。


 扇に纏って━━。


 右手の扇は火に包まれて、右手の扇は水に包まれた。


「なに!? 魔力変動と魔力流動に、纏いだと!? なぜ出来る!?」


 女神がめっちゃ驚いてるけど気にしない。う~ん。このままじゃ火力不足か? だったら、ありったけの魔力を込めるだけだ!

 今出せる魔力を全て扇に乗せると、右の扇は激しく燃え上がり、左の扇は勢いよく水が滴る。

 両手を上げて扇をくっ付けると、火と水は相殺するどころか渦を巻いて合わさる。


「いっけええええええええええええええ!!」


 叫びと共に縄に向かい振り下ろす。と、縄は一瞬にして消え失せた。


 あ! やばいインフォの嵐だ!


 スキル《二刀流》《蹴り》《投擲》《舞》《魔力感知》《魔力流動》《魔力変動》《纏い》《チャージ》《集中》《開封》《解呪》を手に入れました。

 称号【救世主】【神の封を解きしもの】【絶望への挑戦者】を手に入れました。


 と言うインフォが、一つ起きに流れて来ました。流石に多い! では早速気になる性能を見てみましょう。


「トータよ。色々聞きたい事だらけだが、寝てきたらどうだ? 凄く眠そうだぞ?」


 今まで自覚が無かったが指摘されたらなんか眠くなってきた。こう言う事ってよくあるよね。誰かに指摘されたら段々とその通りになっていく事。これも一種のマインドコントロールかな? 知らんけど。


「そんなどうでもいい事考えてないで速く行って来い。体は見ていてやるから」


 あ、そろそろ本格的にダメだ。集中力を使い過ぎたみたい。頭がくらくらする。これはお言葉に甘えて落ちよう。 


「と、その前にフレンド送ったから頼む」


 はいは~い。許可許可っと。ではごきげんよ~。

 うん? あれ? なにか凄い事言われた気がする? ま、いっか。きっと大した事じゃない。

 では、ログアウト。

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