迷子と少女と道案内
「すいません。どうしました?」
予定を変更してその少女に話しかける。
その少女は黒髪を腰まで伸ばしていて眼鏡を掛けていた。まあ、俺から見ればみんな黒髪だけど。印象は落ち着いて真面目そうな感じがする。その少女は俺を見るとほっとしたような顔をした。自分では手に負えなくなってきて、協力者がいて助かったのだろう。
「この子迷子みたいなんです。お母さん買物と中にはぐれちゃったみたいです。私は初めてここに来たので土地勘が無くて探そうにも分からなくて。」
少女は困った風に首を傾げる。土地勘が無ければ動けないだろう。迷子が増えるだけだ。
「なるほど。姉弟かと思って通り過ぎそうになりましたよ」
「やっぱりそう見えますよね。それが原因で今ままてかけて貰えなかったんだと思います。と言うことは会話が聞こえたんですか?」
「いや、お母さんって単語をその子が言ったのが聞こえただけです。」
少女はそうですかと納得顔で男の子に向き直る。俺と話すために立ち上がっていたが男の子の目線に合わせるため、しゃが見込む
「おねーさんその人だれ?」
男の子は俺に指を指すとそう言った。少女は
「え?えーとそのー」
困ったようにこっちを見る。誰?と聞かれても互いに初対面だしな。あとこの人がアドリブ下手なだけか?俺は男の子に目線を合わせて
「通りすがりのお兄さんって所かな。」
と笑顔で答える。男の子は残念そう下を向き、悲しさを思い出したのか、泣き始めた。さてどうしよう。意見を求めるべく少女に目を向けると
「どうしましょう。泣いちゃいました。ほら、泣きやんでください。お願いしますよ。ほらあめさんいりますか?」
見た目に反する慌てぶりだった。慣れてるのかと思ったら全くそうじゃない。むしろ逆だった。さっきまで落ち着いてたのはあそこまでひどく泣いてなかったからだろう。ここまでくると自分で何とかするしかい。俺はこの男の子が着ている日朝のヒーローアニメのプリントTシャツを着ているのをみた。それを見るとバックを下ろしてから、男の子を俺の目の前に座らせた後にスケッチブックと2本の鉛筆を出す。
「ここに2本の鉛筆と紙があるな。よく見てろよ?」
まるでマジックを始めるかのような前置きを始める。男の子は一瞬紙に視線を移したが、すぐにそらしてしまう。まあ、いいさ。マジックの始まりだ。俺は男の子が着ていたプリントTシャツを描き始める。少女は何を描こうとしてるのか興味深々みたいだが、男の子は示さない。だが、どんどん形が出来ていくうちに、男の子の顔は驚きに染まる。
「すげー。」
「そうだろ?」
男の子が言った一言に手を止めず話しかける
「マスクナーガ知ってるの?」
マスクナーガはさっき言った日朝アニメだ。男の子は嬉々として俺に話しかけるが残念ながら徹夜明けでたまに見るくらいだ
「んー。たまに見るくらいだな。」
「え?どうして描けるの?」
俺は男の子のTシャツを指してそれを覚えて描いたと答える。
「おにーさん凄いね」
「おうよ。おにーさんはすごいのだ。そんな凄いおにーさんは君のお母さんを探せるかも知れないぞ?」
「ほんと?」
「可能性としてはね。お母さんを見つけるまではそこのおねーさんもいっしょに居てくれると思うぞ」
「おねーさんもほんと?」
俺の突然のフリに少女は柔らかな笑顔で
「大丈夫だよ。いてあげるよ。」
「だから、どこでお母さんとはぐれたか行ってごらん。」
俺はそう言うと男の子は話し始めた。車でショッピングモールに来たお母さん。買い物をし帰って来る途中に買い忘れに気づいたお母さん。近くの駐車場に車をいれ男の子に荷物番を頼むも帰ってこなく、心配になり出てきたらいつの間にか迷子、今に至ると。
「どうしましょうか?一度そのショッピングモールに行った方がいいですかね?」
少女は俺に聞くが……ここらへんでショッピングモールね。ここから30分くらい歩いたところに集中している。駐車場はこの周辺に店に隣接してるのだとそれなりにある。現時点で分かるのはこの男の子はここらへんの住まいなのだろう。もう少し判断材料が欲しい。新たな質問として
「ねぇ。近くにお店はあった?」
男の子は首を横に振る。これで駐車場はわかった。ここは駐車場だけのところは3つ。うち2つはここからショッピングモールにある。その間に車は止めて無いはずだから、車は10分もしないところにあるだろう。
「取りあえず、車の止まってる駐車場に行こうか。ショッピングモールだと入れ違いになるかも知れないし」
「そうですね」
少女は頷くと立ち上がりスカートをはたく
俺も道具を片付けるために、立ち上がり地面に当たった部分を軽くはたくと鉛筆とスケッチブックを片す。片付け終わると少女と男の子の方を見て
「よし、いきますか。」
「そうですね。」
そう言うと男の子の手を握り、歩く。10分位なので、男の子の話に耳を傾け、日朝アニメの話やらお母さんの話やらを聞く。そうしているうちに駐車場に着く。そこには1人の女性がいて、男の子を見つけると走ってきた。男の子を抱きしめると頭を下げお礼を言ってきた。
「うちの子を面倒見てくれてありがとうございます。こら、車から出ちゃだめでしょ?。買ったお菓子を食べたら、ゲームしていいっていったのに。」
親はそう言って叱っている。少女は男の子を擁護するように
「まあまあ、その子も心配だったんですよ。」
少女は言うが親にイラっときた。この親何言ってんだ?
「子供が1人で車の中に居たら、例えお菓子やゲームで気を紛らわせでもって寂しいと思うのは当然でしょう。すぐ戻ってくるのならともかく長時間居なければその男の子があなたを探しに行くのは当然です。一番の原因はその男の子の事を考えなかったあなたです。」
母親は面を食らったように俺を見ると目を伏せ
「確かにそうね。私が悪いわ。気づかせてくれてありがとう。」
親は素直に頭を下げ礼を言ってくる。物わかりの良い人で助かった。ここでふざけたこといったらちょっとヤバかった。しかし
「いえ。何かすいません」
人の家庭だ。本来俺が言うことではない。遂に言ってしまった。
しかし親ばか首を振り
「誤る必要はないわ。あなたが正しかったのだから。」
「そう言っていただけるとありがたいです。」
「礼儀正しい子ね。そこの女の子もありがとう。」
母親はまた1度礼をすると子供と一緒に車に向かっていった。途中で男の子は振り向き
「おにーさん、おねーさんありがとう!」
そう言って手を振ると車に再び向かっていった。
「よかったですね。」
少女は俺に向かって微笑むとまた、親子を見た。
「そうですね。親子はああでないと。」
俺もまた少女と共に親子を見る。
「あの……」
そうしてると少女は恥ずかしそうに笑いながら
「迷子を送ったついでに道案内をお願い出来ませんか?。」
「道順覚えてないんですか?」
「あの男の子に気を取られちゃって……」
「地図は?」
「………いつの間にか別の方向に」
「ああ方向音痴」
納得したように呟く。
「違いますよ!」
少女はいきなり顔を少し前に出して興奮気味に言う。そう言うことなら
「なら、地図を書けば大丈夫ですね。」
「はい、方向音痴です。」
しょぼんと下を向く少女は面白い。落ち着いて話してるかと思えば、予想外の口撃があるとうろたえる。案内しても構わないけど俺にも予定がある。つまり言えば
「でもどこに行きたいかによりますね。俺は桜坂の方に用事があって行くつもりなんですけど」
「私は駅の方に行きたいんですけど」
「それなら途中までは同じですね。」
「それではお願いします。あっ自己紹介がまだでした。橘 美雪です。」
ぺこりと軽くお辞儀をする。
「黒崎 麻白です。」
「黒崎麻白さん?黒崎さん?」
確認し覚えるように二度呟く。
「それでは黒崎さん道案内お願いします。」
「あの、言い忘れてたんですけど寄り道を挟みますけどいいですか?」
「いいですよ。」
効率重視で近いところから行くことにする。順番で行くとフェアリースイーツ、ゲームラボ、川見文具、見島本屋である。桜坂は最後に行き、軽い下書きを済ませて帰ることにする。歩きながら歩くとさっき俺がやった絵の事が出てきた。
「あの男の子に描いた絵。すごかったです。あんな短時間に描くのは私無理です」
少女はさっきの事を思い出し、宙にペンを走らせる。が途中でウーンと唸る
「あれは慣れで……。ついでに両利きなのも色々と便利なので」
「慣れであれが出来る物なんですか?」
「年単位で練習ですね。」
「無理ですね。地道に練習します。」
「橘さんも絵描くんですか?」
「そうですね。イラストとかを」
「なるほど」
そんな中フェアリースイーツに到着。カメラを出して写真を撮ろうとすると中から店長が出てきた。
「黒崎くん。久しぶり。この前はありがとう。ポスター助かったよ。はい、お礼のケーキ。」
「おぉ。ありがとうございます。張り切ってやったかいがありました。今は用事があるんで帰りにまた来ます」
「わかったよ。でもポスターの報酬が家のケーキってそれでいいの?」
「だったらもう一個下さい。ここの凄い美味しいんです。甘いのならいくらでも食べれます。甘いの好きなのは店長も知ってるでしょ?」
「確かに。それじゃもう一個つけておくね。今後もご贔屓に。」
「勿論。あっ。店の写真撮らせて貰っても?」
「いいよ。どうぞ」
「ありがとうございます。」
早速真っ正面から店全体を撮る。ちゃんと撮れているのを確認してカメラをしまい橘さんの所に戻る
「店主さんと知り合いなんですか?」
「あの店に通ってるうちに話すようなったんです。週3ペースで通ったことがあるんでそれで顔を覚えられました。」
「それは流石に覚えられますよ。」
くすくすと笑いながらカメラを指差し
「この写真何に使うんですか?」
「部活に使います」
「美術部とかですか?」
「まあ、そんなところです。」
「この辺の中学の美術部ってどんな感じですか?」
単純な好奇心の目。他には何もないことがわかる。今この人。中学っていったよな?これもしかして俺高校生と思われてない?確かに身長はこの人より数センチ低いけど。だからと言って俺が中学生って思う?そもそもこの人は高校生か?でも疑問より先に答えを返さねば。俺のいた中学の美術部はそうだな
「まあ、緩い感じですね。手を動かしながら話す感じです。」
途中から幽霊部員だったがこんなかんし
「私も美術部だったんだけど、中学になったら文芸部があると思ったんだけど無かったから美術部に入ったの。」
「そうですか。」
なるほど。だったか。つまり中学は卒業してる。1つしたか。とそんなこんなでゲームラボに到着。店の近くに自転車を止め一眼レフを取り出し、人が居なくなった一瞬にシャッターを切る。駿はいつもこんな事をやるのだろうなと考えながら、川見文具に行く。さっき同様に自転車を止めようとしたら店主に声をかけられた
「よっ。白坊。また鉛筆買いに来たのか?」
坊主頭の気のいいおっさんでここの店主である
「違いますよ。建物を描く練習です。」
ここで新入生を呼ぶためとは言わないようにした。こうした方が後々面白そうなことになりそうだからである。そこで理由をでっち上げる。あながち外れてはない。
「それでそこの嬢ちゃんは?これかい?」
といって小指を立てる。この人は何で毎回こうなのだろうか
「違いますよ。道案内してるだけです。」
「なんだ。つまらん」
「あーあー次からはショッピングモールの方に行くかな」
「ああ。悪かったって。怒るなよ。」
「はいはい。店撮ります。いいですね。」
「おういいぞ。このすばらしい俺の店を存分に題材にしてくれ」
そう言われたので真っ正面から一枚。さすが一眼レフ素晴らしい。素人でもこのクオリティ
「終わりました。ありがとうございました。」
「あれ?もう終わり?最もとってもいいんだぜ?」
「いや……真っ正面から一枚撮るだけですから」
「そうか。そうなのか。」
寂しい表情をしながら店に戻ってしまった。何かごめんなさい。多少の罪悪感を感じながら最後の見島書店に行く
「麻白さん。久しぶりね」
見島書店の店長さんである。あれを見つけ外に出てきた。
「そうですね。1ヶ月ぶりです。あれ?なごみは居ないんですか?」
「今日はバイト入ってないのよ。最高戦力だから入ってくれると嬉しいんだけど」
なごみと言うのは俺の幼なじみである。ここでバイトをしていてラノベの特設コーナーを持ちここのオアニオタには地味に知られてる。地味にと言うとあいつは怒るが
「今日はどうしたの?もしかしてうちでバイトする気になった?なごみさんと麻白さんがいれば家のラノベコーナーと漫画コーナーは百人力なんだけど……」
そしてこの人は何故か俺を雇いたがる。すいません仕事は足りてます。これ以上働くと過労死します。そう考えるといつの間にか橘さんがファイリングされたよくラノベの間に挟んであるあのチラシみたいなのに目を撮られていた。それを始めためぐりが見たら計画どうりと笑っただろう。
「………あぁ。画集欲しい。この作品も買ってない。どうしよう。」
どうやら完璧にこちらの人らしい。それも割と重度そうだ。もしかしたらなごみと気があうのでは?
「麻白さん。あの子は?」
「道に迷ったのを拾ったんです。」
2回目なので多少説明が雑になる。間違ってないからおけー。
「そう……」
つぶやくとこっそり笑って計画どうりと呟く。ちょっとあなた考えてないでしょ。
「それで今日はどんなようです?」
「建物を描く練習でここの写真撮らせてください」
「どうぞどうぞ。」
真っ正面から一枚撮る橘さんの所に行く
「橘さんほら、ここは終わりです行きますよ。」
「後少し待って下さい。」
「却下です。行きますよ」
「はい……」
見島本屋を抜ければすぐに分かれ道になる
「ここを左に曲がれば後は駅です。寄り道はしないでくださいね」
「分かってます。流石に見知らぬ人について貰って道案内は怖いですから」
「俺もそうだけど。」
「黒崎さんの場合は良い人って分かりましたからね。あの男の子の件で」
「そうですか。」
そんなもんなのか?基準が分からない。
「それでは来年会えたらあいましょう。ありがとうございました」
「いえいえお元気で」
そう言って橘さんは帰っていった。俺はそこから桜坂に向かいベンチに座ってからスケッチブックと鉛筆を出して下絵を始める。2時間たって4時半になった所で帰り支度をし桜坂から帰る。フェアリースイーツでケーキを貰ってから家に帰り、駿に今日撮たデータを送り現像して貰い明日受け取ることにする。
その後はご飯を作り7時には寝ていた。睡眠は重要です。切実に




