表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

半鐘




 その夜遅く、どこかで半鐘が鳴っていた。

 辰之助と深い関係になってから、毎晩のように抱き合っていた。


「どこかで火事があったな」


 辰之助は、伊織を貫いた状態で淡々と云った。

 辰之助に組み敷かれ、熱い胸板の下で伊織は声を出すまいと、奥の歯を食いしばっていた。

 小刻みに震えながら、手を伸ばして辰之助の背にしがみついた。

 部屋の中は手折ってきた金木犀が微かに匂っている。

 もう何度達したのか夢中になりすぎて、刻が経つのも忘れてしまった。

 小さな声で喘ぐと、辰之助が屈んで伊織の額の汗を唇ですくった。


「どこまで我慢できる」

「た、辰之助…」

「ん?」


 伊織は耳元で囁いて懇願した。辰之助は口に滴る汗を舐めると、承知した、と答えた。

 膝裏を押し上げられさらに深く繋がった。くらくらするようなめまいに襲われる。

 伊織の体からふっと力が抜けると、本格的に腰を嬲る動きが始まった。伊織の体は待ち構えていた快楽に愉悦する。


「辰之助っ」

「なんだっ」


 伊織は腕を伸ばし、辰之助の首をかき抱いた。さらに結合が深くなり、びくりとして、辰之助が目を合わせた。


「伊織……っ」


 深い口づけを与えられる。

 唾液まで貪るように、伊織は辰之助の舌を吸い上げた。

 腰の動きは激しくなり、口づけすらままならず、加減できなくなった声を消すため辰之助が唇を手のひらで塞いだ。

 声にならない叫びが手の中で跳ね上がった。

 伊織の目からはらはらと涙がこぼれた。しっかりと互いの指を絡める。


「辰之助が欲しい…」

「云われなくとも…」


 かっと怒ったような顔で、辰之助が本気になった。

 伊織は心からそう願い、辰之助を求めた。

 気がつけば、半鐘の音は止んでいた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ