表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/73

第7回

「まあ、妹的な感じに、ずっと一緒にいたいなぁとは思うよ」

「はい…嬉しいです」

「なんかいつもの自分たちらしくないな…なんだこの感じ」

「お酒のせいですよ、きっと」

「酒か、酔ってるつもりはないんだけどなぁ」

「酔ってる人はみんなそう言いますよ」

「そうか?でも、酔ってないぞ!!」

「ふふ」


 そんな感じで二人の話は弾み、まだまだ続いた。

 それから少しして、酔いも冷めたようだと二人は帰ることになった。相変わらず雨は降っている。


「せっかく傘もあるしさ」

「え?」


 想い人はおもむろに、依頼人の傘を掴んだ。


「ほら」

「え、でもこんなの…恥ずかしいです」

「帰り道、そんな誰も会わないだろうしさ。いいじゃん。というか相合傘が恥ずかしいってお前中学生か〜?」

「こ、子供扱いしないで下さい、いいですよ入れて下さい!!」


 こうして二人は歩き出した。


 傘は少し小さかった。二人の身体は収まらないはず。でも、身体の大きい想い人が少し依頼人寄りに傘をずらしているようで、想い人の肩は次第に雨に濡れていた。


「お前のせいで、メッチャ服濡れてるんだけど」

「え~!?なら私なんて放っといて、一人で帰って下さい!」

「そういうこと言うか!?」

「ふ~んだ!うふふ」


 ゆっくりと、ゆっくりと今を噛み締めて歩く二人の姿は、今という幸せよ、終わらないでと。今まででのどんな嬉しかったことよりも、今が幸せであることを感じていた。そこには愛ゆえのよそよそしさがあり、誤魔化し照れ隠しがあった。本気だからこそ、少し臆病になる。茶化し合いつつ距離を縮める二人を見守っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後日。


「…で、依頼人の行方は?」

「霊夢、いいじゃんかよそんなこと」


 なにか悟ったような表情をする魔理沙。


「ダメよ!意味ないじゃない。報酬ももらえないどころか小傘もどっか行っちゃったし」


 あれから依頼主は現れないし。結末がどうなったかも分からない。


「でもまぁ、久々にいいもん見れたよ」

「まあ、そうね」


「でもさぁ」

「うん」


「相手も女だったとはなぁ…」


「そうねぇ…」

「まあ色んな愛があるんだな、幻想郷にも」


 そんな感じで、何かを悟ったかのように私達は人間の里の空を遠く見つめ、適当な茶屋でくつろいでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ