第7回
「まあ、妹的な感じに、ずっと一緒にいたいなぁとは思うよ」
「はい…嬉しいです」
「なんかいつもの自分たちらしくないな…なんだこの感じ」
「お酒のせいですよ、きっと」
「酒か、酔ってるつもりはないんだけどなぁ」
「酔ってる人はみんなそう言いますよ」
「そうか?でも、酔ってないぞ!!」
「ふふ」
そんな感じで二人の話は弾み、まだまだ続いた。
それから少しして、酔いも冷めたようだと二人は帰ることになった。相変わらず雨は降っている。
「せっかく傘もあるしさ」
「え?」
想い人はおもむろに、依頼人の傘を掴んだ。
「ほら」
「え、でもこんなの…恥ずかしいです」
「帰り道、そんな誰も会わないだろうしさ。いいじゃん。というか相合傘が恥ずかしいってお前中学生か〜?」
「こ、子供扱いしないで下さい、いいですよ入れて下さい!!」
こうして二人は歩き出した。
傘は少し小さかった。二人の身体は収まらないはず。でも、身体の大きい想い人が少し依頼人寄りに傘をずらしているようで、想い人の肩は次第に雨に濡れていた。
「お前のせいで、メッチャ服濡れてるんだけど」
「え~!?なら私なんて放っといて、一人で帰って下さい!」
「そういうこと言うか!?」
「ふ~んだ!うふふ」
ゆっくりと、ゆっくりと今を噛み締めて歩く二人の姿は、今という幸せよ、終わらないでと。今まででのどんな嬉しかったことよりも、今が幸せであることを感じていた。そこには愛ゆえのよそよそしさがあり、誤魔化し照れ隠しがあった。本気だからこそ、少し臆病になる。茶化し合いつつ距離を縮める二人を見守っていた。
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後日。
「…で、依頼人の行方は?」
「霊夢、いいじゃんかよそんなこと」
なにか悟ったような表情をする魔理沙。
「ダメよ!意味ないじゃない。報酬ももらえないどころか小傘もどっか行っちゃったし」
あれから依頼主は現れないし。結末がどうなったかも分からない。
「でもまぁ、久々にいいもん見れたよ」
「まあ、そうね」
「でもさぁ」
「うん」
「相手も女だったとはなぁ…」
「そうねぇ…」
「まあ色んな愛があるんだな、幻想郷にも」
そんな感じで、何かを悟ったかのように私達は人間の里の空を遠く見つめ、適当な茶屋でくつろいでいた。