第5回
「ま、またの機会にやりましょう」
罪袋さんには悪いが、今回は諦めてもらった。
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さて私達はまた人間の里に戻った。次の依頼人を探すためだ。相変わらずこっちでは雨が降っている。
「次は、さっきのみたいに変なやつじゃないやつにしよーぜ」
「そうね」
次の相談者が現れた。今度は人間の女の子だ。
「は、はじめまして…、な、名前は匿名希望です。」
匿名希望らしい。サングラスをして目元も隠している。
「では、恋のお悩み、教えてもらいましょうか?」
さっきの慣れない敬語みたいなのはやめて、自分らしくストレートに聞く。
「実は、好きな人がいて…」
話を聞くと仕事中に仕事先(店とかではないらしい)の先輩らしい。普通に接する分には話せるんだけど、意識し出すと全然喋れなくなってしまって困っているらしい。なんとか傘の力で恋心を伝えたいそうだ。
「最初は優しくて、もしかしたら私の事好きなんじゃないかな?って思ってたこともあるんですけど、それは『妹みたいで可愛いから』って理由で可愛がってくれてたみたいで、恋愛感情じゃないみたいなんです。その人がお酒を飲んでた時にぽろっと言われまして、そこから急に自信が無くなっちゃったんです…」
「な、なんか私達には遠い世界の話だな」
「そうね…」
「最初は、遠くで見ているだけでいいやって思ってたんです、でも次第にそれだけじゃ足りなくなって来たんです。それも全部その人が悪くて、あっちはなんにも私のこと想ってないから単純に優しいっていうか。ひとつひとつの行動の距離が近いっていうか、大胆なんです…もう少し意識してくれてもいいと思うのですが///」
「なんだか、ノロケ話みたいになってきたな…」
「我慢よ…これも今日のご飯のため」
「なんかもう、一日中頭の中がその人のばっかりになって。いっぱいすぎて急に前あったことでイライラしたり、ゴメンなさいって急に謝りたくなったり、最近なにか考えることも全部その人がきっかけだし、その人のためだったりするし、その人がもう頭に住み着いてるみたいで。全部その人のせいって嫌いになりそう、でもなれない。ズルいんですよ!!その上…」
「(おぃ、れいm…)」
「事情は分かったわ!行きましょう」
話が終わらなそうでなので、切り上げて妖怪の山へ向かった。