第4回
さて、冥界に来るのは久々だ。今日も静かだ。
ここには閻魔から成仏を命令された幽霊が滞在する場所である。冥界の管理は幽々子がやってるらしいけど、割りと最近は騒ぎも起きないし真面目に仕事しているのだろう。
「その方は、たまにこの『白玉楼』の屋敷に現れるのです。ぜひお話でもと思って何度も伺ってるのですが、恥ずかしがっているのかすぐに姿をくらましてしまうのです」
その人が本当に住んでいる場所は知らないらしく、ここに遊びに来るという情報を頼り罪袋さんは日々通い続けているらしい。既にこの罪袋さんの愛しの人が、見当が付いている私にとっては、すでに傘の効果などよりもその相手を"からかえないか"という好奇心でいっぱいになっていた。
罪袋さんは愛用している巨大な望遠鏡を覗きながら何キロ先にもある白玉楼を見ている。さっきから感じてはいたが、この人ヤバイ…本人は自覚あるのだろうか? この行動力は明らかに異常。絶対相手は恥ずかしがってるんじゃないと思うわよ。
「うーん望遠鏡では今日は見えませんね」
「まあ、行ってみないと分からないし、行ってみましょう」
「めんどくさいから私が中を見てくるわ」
「え…だ、大丈夫ですか?」
罪袋の不安そうな声を無視し、ひとっ飛びで冥界を駆け抜け白玉楼に到着。
私は屋敷のふすまというふすまを開けまくった。
「おっす、久しぶり」
「……霊夢さん、チャイムぐらい鳴らしてくださいよ」
妖夢がお茶の準備をしていた。
「ごめんごめん、でさぁ」
「はぁ……」
「紫来てない?最近」
「うーん、私自身はあまり八雲様が遊びに来られるのを拝見したことが無いので…なんとも言えません」
「幽々子は?」
「幽々子様は、今お昼寝中です」
「そか…」
おじゃましました~!パタッとふすまを閉め、私は魔理沙たちのところまで戻った。
「ど、どうでした?」
「いなかったわ」
「しょぼん…」
落ち込む罪袋さん。そこに魔理沙がつぶやく。
「…ってかその前に雨、降ってなくね?」
確かに……私達は呆然と立ち尽くした。