第10回
「あ!あれ、もしかしてあの有名妖怪な多々良小傘さんじゃないですか?」
「え!?私、そんなに有名??」
「超超!有名ですよ、外の世界でも知らない人はいないっていうか、もう常識。子供から大人まで愛されている妖怪じゃないですか!」
「えへへ、まあそんな凄くないって~照れるなぁ」
ふふ、小傘ったら単純ね。私のことも誰か分からなくなってる。お化けの格好を念のため用意しておいて正解だったわ。
「ぜひぜひ、こちらのお化け屋敷で、その実力をご拝見させて頂きたいのですがダメでしょうか?」
「えー??そうだなぁ、まあどうしてもって言うんだったらいいけどね」
「ぜひぜひお願いします!」
そうして、調子に乗っている小傘をお化け屋敷の中に案内した。
「よし、作戦成功ね」
「こんなにスムーズに行くなんて思わなかったぞ」
「単純なヤツの相手は、チルノの相手で大体慣れてるからね」
「確かに誰かに似てると思ったけど…チルノかぁ」
中からは、先ほど大勢入った客たちが悲鳴を上げている。本日開店というのもあり、お客さんは大賑わいだ。
「霊夢、お前こういう才能あるんじゃないか?」
「確かにね…ここまで一石二鳥どころか一石三鳥みたいな状況は想像してなかったわ」
「で、小傘のことはどう捕まえるんだ?」
「そこももう考えはあるわ」
屋敷の中からは、相変わらず悲鳴が聞こえる。
「(キャー!)」
「(来ないで〜!)」
「(キャ〜!可愛い?)」
「ん!?」
しかし、その悲鳴の中に何か変なものが混じっていた
「今、明らかにお化け屋敷らしからぬ悲鳴が聞こえたぞ…」
「大丈夫、ほっておきなさい」
ふふ、作戦通り。
「(この子可愛い~!持って帰りたい☆)」
「ギャ~!!助けて~~!」
「(あら?迷子?お姉さんが外に連れて行ってあげようか?)」
「(いえ、あの一応お化けだよ…)」
そして……数分後。
「えーん、えーん…」
「すいません、お化け役の人が泣いてたんで連れてきたんですが…」
妖怪としてのプライドがズタズタになった小傘が屋敷から出てきた。知らない人間の人に手を引かれて。
「捕獲よ!」
「あいあいさー!」
まったく抵抗をしない小傘を無事確保できた。




