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雲一つない夏空の下。山中、耳を聾する蝉しぐれの中を奇妙な一行が進む。
最高水準の医療技術を持つ医師の努力も虚しく瀕死となった少年と、それを救おうとする祖父と母。
毛布に包まれ土気色の顔を力なくうなだれる少年を抱き上げる男は彼の父には非ず、彼らの先頭を歩く少女もまた、祖父、母、孫の係累ではない。
麦わら帽子に白いワンピースの裾をふわりと揺らして立ち止まり、祈りの気持ちも顕わに見つめる老人へと目を向けたのは一人の『巫女』だ。
彼女こそが瀕死の少年に残された唯一の希望。
古の昔からこの日本に存在しつつ権力者らに秘匿された卜部の末裔にして、長い歴史を持つ卜部氏宇良部の中にも片手の指に数える程しか存在しなかった人の死をも覆す力を持つと言う『異能の巫女』───