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超能力者が出会った霊能力者は肉食系女子で童貞(チェリー)なアイツを責め立てる。  作者: 丸尾累児
第4章「たとえオマエが忘れても、俺は絶対に忘れない」 
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第4節「さよならも言えずに……/その2」


 周囲がシーンと静まりかえる。


 突拍子もない発言だったかもしれない――さすがの早村も俯いて黙ってしまった。

 しかし、俺にはそう言い切れる自信がある。

 それはサイコメトリーで読み取った記憶の断片が結合し、記憶の絵となったことで真実を読み取れるまでに復元していたからだ。


 とっさに後ろから肩を叩かれる。


 反応して後ろを振り返ると、天坂がワケがわからなそうな表情で見ていた。



「どういうことなの、邑神君」


「いままで俺たちが追っても見つからなかった――そのことは、天坂でも認識できているよな?」


「もちろんだけど、でもこの前は見つけられたよね?」


「それはたぶん、俺たちが1番地からの影響を受けやすい場所にいたからなんじゃないかと思う」


「つまり、私たちが探し始めた時点で私たちが影響を受けていたってこと?」


「おそらくはな。そして、その物霊は最初からずっとそこにいたんだ」


「……じゃあいま言った『オマエ自身が物霊』っていうのは……」


「そのまんまの意味だよ、天坂。早村が物霊――いや、もうとっくに死んじまった早村の中にいたからこそ、この妙な現象が起きているんだ」


「え? 早村さんが死んでるっ!?」


「そうだ、早村はもうこの世にはいない」



 さすがの天坂も驚いたらしい。

 俺を合わせていた顔を早村の方へ向け、小さな声で「本当なの」とつぶやくように語りかけた。しかし、早村がそれに答えることはなかった。


 さらに記憶の断片から推測した事柄を打ち明ける。



「ずっと否定はしたかった……けど、記憶の断片の中の早村は徐々に心を病んでいって、結局おかしくなっちまった」


「どうして、そんなことになったの?」


「理由はおばさんの病気にあったんだよ」


「……病気?」


「俺が帰宅途中に立ち寄ったスーパーでおばさんに会ったとき、おばさんは早村のことを『まだ小学生』だと言ったんだ」


「それは聞いた。でも、ここにいる早村さんは……」


「ああ、そうだ。ここにいる早村は、俺たちと同級生のはずだ――にもかかわらず、おばさんの中では、早村は小学生という認識で記憶されちまってる」


「もし、邑神君の言っていることが正しければ、おばさんは物霊の影響というよりも、別のなにかによって記憶が曖昧になってるってことじゃない?」


「……その通りだよ、天坂。なにせ、おばさんは『アルツハイマー』を患ってたんだからな」



 そう言って、早村の方を見つめる。

 しかし、早村は俺の説明にいっさい口を出さなかった。それどころか、俯いたまま黙り込んでいて、まるで聞く気がない様子さえ見せた。

 俺は追及するように早村に答えを求めた。



「早村、もうわかってるんだろ? 自分がもうとっくに死んじまってるんだってこと」



 しかし、早村がすぐに答えることはなかった。

 そこから、わずかに無言の時間が続く。

 ようやく早村がしゃべったのは、それから数十秒してからのこと。けれども、返ってきたのは期待した返答などではなく、クスクスという笑い声。




 一瞬、妙なことを言われておかしくなったのかとも思っちまった。




 けれども、周り空気が肌を切り裂くみたいな冷たさを感じさせたことで、俺は尋常じゃないことが起きていると気付かせた。


 とっさに早村が顔を上げる。



「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ――そうだよ、ボクが物霊だよ!」


「どうして、そんな風になっちまったんだ……。俺はオマエが死んじまってる上に物霊に取り憑かれてるなんて信じたくなかった!」


「五月蠅いよ……。でも、よく気付いたね。ボクも最初は自分でもわからなかったけど、君と一緒にいるウチに全部わかっちゃった」


「もうやめるんだ! 誰かの記憶を消して、自分の存在を完全に失わせるなんて悲しすぎるだろっ!!」


「誰かの記憶を消して、ボクの存在を消す? なにを言ってるんだい、邑神君」


「だって、そうだろ? オマエに記憶がなかったのは、ある一定の時期から死んじまってるからだ。そして、同時に物霊がオマエにとりつき、呪縛霊であるオマエと一体化したことで事態がおかしくなったんだ」


「……だから、なに?」


「結局そうなったのも、オマエが『自分を消したい』という願望からなんじゃないか? 親や友達、すべての人の記憶からも、自分が世の中に存在したということ自体も消したい一心で物霊を自分の中に取り込んだ――そうなんじゃないのかよ?」


「どうだろう? もうそんなの忘れちゃった」


「忘れちゃ駄目だろ……? 少なくとも、オマエが忘れても俺は忘れない」


「フフッ、邑神君はホントに優しいんだね……でも、どうせみんな忘れちゃう」


「どうして、そんな悲しいこと言う? オマエは、俺にすらに覚えていて欲しいって思わないのかよ!」


「……覚えていて欲しいか……」


「頼むから、忘れるなんて悲しいこと言わないでくれ」



 ここまでガンバって、必死に訴えかけても早村の表情が明るくなることはなかった。むしろ、悲観的になにかを悟ったかのように顔をうつむけている。

 さらに早村に近づいて、説得を試みる。



「なあ早村、もういいんだ……。もうこんな悲しいことしなくても、きっとみんなオマエのことを覚えていてくれる」


「……そんな……ことない……」


「俺はオマエの存在を絶対に忘れない――だから、記憶を消してすべてを忘れさせる呪詛を掛けるなんて真似はもうやめようぜ?」


「……イヤだ」


「頼む、早村。俺の言葉をきちんと聞いてくれ!」


「だったら、邑神君……。そんなに都合良く覚えている保証なんてどこにあるの?」


「確かにそんな保証はないかもしれない。だけど、人間がそんなに簡単に大好きな人のことを忘れるはずがないじゃないか!」


「じゃあ、どうしてお母さんは、ボクのことを忘れちゃったのっ!?」



 と、堰を切ったように早村が叫ぶ。


 それは早村の悲痛な嘆きだったのかもしれない。けど、それ以上に早村の周囲からは俺でもわかるほどの禍々しい邪気が放たれている。

 俺は天坂に引っ張られるようにして、十メートルほど後退った。

 そこからでも早村の怒りや悲しみが混じった邪気のすさまじさがわかる。



「やめろっ、早村!」



 俺は早村をなだめようと渾身の言葉を放った。

 だが、あふれ出る邪気は止まる気配すら見せない。それどころか周囲の木々を揺らして、まるで空間ごと飲み込むみたいに景色を真っ黒に染めていく。



(どうしたらいい? どうしたら、早村を助けることができるんだ!)



 そんな思いを巡らせ、茫然と立ち尽くす。

 こんなとき、美百合先輩ならどうしただろう――そのことを考えたら、頭がグチャグチャになった。



「邑神君!」



 不意に目の前が暗くなる。

 それと同時に叫び声がして、身体に強い衝撃が走った。

 一瞬、なにが起きたのか理解できなかった。しかし、すぐに背中をヒリヒリする痛みが走って、誰かに抱きかかえられるようにして押し倒されたことがわかった。


 とっさに顔を俯かせる。


 すると、天坂が俺の腹部に胸を押し当てていた。



「あ、天坂……?」


「ボーッとしないで。いま早村さんに取り憑いた物霊の邪気が飛んできたんだよ?」



 どうやら、ボーッとしていたところを助けられたらしい。そのことに気付かされ、俺はすぐに天坂の身体を退けて起き上がった。

 そして、向かい合って礼を言う。



「スマン。早村を救えなかったと思ったら、なにも考えられなくなっちまって」



 ああ、なんて無様なんだ。

 こんなんじゃ早村も、美百合先輩も、誰1人だって助けられやしない。なんでもできると思っていたガキの頃の俺と同じじゃねえか。


 俺はその苛立ちに焦りを募らせた。



 そんなとき、スッと長方形の薄い紙を差し出される。

 言うまでもなく、差出人は天坂だ。なにかをしろってことなんだろうけど、問題なのはその紙に草書体とおぼしき文字と図形で描かれたなんらかの文様だ。


 なんとなく見当が付いたが、あえて知らないフリをして問いかけることにした。



「天坂、これは……?」


「退魔の霊符だよ」


「……霊符って……まさか……」


「いまから早村さんを浄霊するの。もう、それ以外にはないから」


「ちょっと待ってくれ!」



 予想通りのモノだったことに怒りを爆発させる。


 だって、俺が望んでいるのは、そんなことじゃないんだぜ? もちろん、天坂が野郎としていることの意味はわかる。

 同時に俺がサイコメトリーで記憶の断片をかき集めて、その結果早村が地縛霊であることも、そこに重なるように物霊がとりついていることも、なにもかもわかっていたさ。


 でも、同級生の友達をそんなに簡単に浄霊できるわけねえだろ。



「俺には早村を消すなんて無理だ」



 だから、気持ちのままにそう伝えた。

 対して天坂は喜怒哀楽のないお面のような顔つきでじっと見ている。決して、馬鹿にしているんじゃないとわかっていても、天坂の言動は非情すぎだ。



「無理は承知してる。でも、このままだとさらにたくさんの人に危害が及んじゃう」


「それはわかってるよ! だからって、そんなにアッサリ割り切れるわけがないだろっ!?」


「割り切って……。もう早村さんが死んでるってわかった以上、これ以上は放ってはおけない」


「天坂、オマエは情ってモノがねえのかよ!」


「……あるよ。だけど、いまは非情にならなきゃいけないとき」


「そんな言われたって、俺にはわかんねえよ……」


「あのね、邑神君。記憶がなくなるってことは、人同士の関係だけじゃなくて、社会インフラや記憶を失った後の精神にも影響が出るんだよ。もし、そうなれば町中が混沌のるつぼと化してしまう」


「だから、なんだって言うんだよ!」


「もし、そうなった場合の話だけど……。邑神君はそうした人たちの記憶を取り戻す責任を負わなきゃいけなくなるんだよ?」


「言いたいことはわかる。でも、気持ちすら確かめ合っていない早村を無理に浄霊するなんてこと、俺にはできねえよ」


「邑神君ができないなら、私がやる――本当は邑神君にやってほしかったんだけど」


「なんで俺にやらせようとする? それにまだ早村は助かるかもしれないだろ」


「その根拠は?」


「やってみないとわかんねえだろ!?」


「そんなんじゃ駄目だよ、邑神君。君にやらせようと思ったのは、君が一番早村さんと仲が良かったからというだけじゃない――君が早村さんを一番に理解できる人だからだよ」


「……俺が早村を……理解できる……?」


「そうだよ。だって、君にはサイコメトリーという与えられた力があるじゃないか。そして、それはあらゆる人間の感情に触れるモノでもある。だから、早村さんの心に触れた君ならやれると思ったの」


「……過大評価しすぎだ。俺はそういう評価を過信したせいで、大切な親友の心を傷つけちまった。取り返しの付かないことをした俺にホントにできると思ってるのか?」


「できるよ、邑神君なら」


「なぜそう言い切れる?」


「だって、美百合ちゃんが言ってたもの。『邑神君は私なんかよりずっと強い人だ』って」


「……先輩が?」


「信じられないかもしれないけど、美百合ちゃんは君のことを尊敬してたんだ。美百合ちゃんには霊能力者としての才能がない。互いに自信を失っていたのかもしれないけど、君は早村さんのためになんとかしようと努力したじゃないか」


「それなら、美百合先輩だって!」


「ううん、美百合ちゃんはずっと自信のなさをひた隠しにしてたんだ。その話は、よく私に話をしてくれてた――もちろん、邑神君の話も」


「先輩が俺の話を……」


「だから、君がやって。君が早村さんを天国に導いてあげて欲しいの」


「……そんなこと……突然言われてもどうすりゃ……」



 言葉に詰まる。

 確かに天坂の言うことは間違いじゃない。とはいえ、即決できるわけでもないし、考えているヒマもない……いったいどうすればいいんだよ。

 ええいっ、ここで迷ってる場合じゃない! あんな状態の早村のことを思えば、もうやるしかねえじゃないか。


 俺は自分を鼓舞して、下した決断を伝えることにした。



「――わかった、俺がやる。少しだけ時間を稼ぐから、アイツの動きを止めてくれ」



 短く紡いだ言葉に天坂はどう受け止めただろう?


 天坂は黙って頷いていた。いや、むしろこれでいい。いまの俺にはねぎらいの言葉も、期待されるような言葉もいらない。

 必要なのは、ただ黙って早村を天国に送ってやること――ただ、それだけなんだ。

 だから、無言で受け取った霊符を手に早村の元へ駆け寄って対峙することになんらためらいはなかった。


 そして、三メートル離れた場所で早村と向き合う。



「どうしたの、邑神君……? そんなに怖い形相して、ボクになにかしようって言うのかな?」


「ああ、いまからオマエを浄霊するからな」


「浄霊? まさかボクを消しちゃうの」


「消すんじゃない。天国へ送るんだ」


「どっちにしたって一緒じゃないか」


「一緒じゃねえよ。オマエの幸せを考えれば、いつまでもお袋さんのことでこの世に縛られている方が不幸せだ」


「アハッ、どうしてそれを君が決めるのさ? だいたい君はボクのなんなの?」


「友達だ――友達だからこそ、送ってあげなきゃいけないと思ってる」


「……いらないよ、そんな友達」


「例えオマエがそう思っても、俺はオマエがいなくなっても忘れない。オマエが忘れたとしても俺が覚えていてやる……だからっ!」



 と必死の思いを叫ぶ。

 だけど、早村には届かなかった。



「うるさいっ! ボクのことなんかとっとと忘れちゃいなよ」



 その声と共に周囲のざわめきがさらに激しくなった。

 霊が見えない俺でも、さっきより強く肌を切り裂くような空気の変化がわかる。それぐらい早村の放っているだろう邪気の凄みが増したということなのだろう。

 だからって、それで怯むワケにはいかない――なんとしてでも、早村を浄霊して、みんなの記憶を消すなんてバカな真似をやめさせてやる。




 俺はその勢いに早村に向かって駆けた。




 獣みたいに咆哮を上げ、ただひたすら突進する――そうすることで、迷いも不安も打ち消される気がした。

 けれども、放たれる邪気のチクチクとした痛みに足を止めそうになる。

 さらに追い打ちを掛けているのが、強烈な勢いで吹き付ける向かい風。それらが俺の行動を阻み、早村の元へ行かせまいとしていた。



「早村ぁ~っ!」



 俺は必死に抗って、大声で早村に訴えた。




 刹那、シュッと風を切るような音を耳にする。




 それと同時に小さな物体が左の頬のあたりをかすめていく。俺はすぐにそれに気付いて、物体が飛んでいった先を目で追った。すると、目の前で早村だったモノをまるで毛糸の玉を作るみたいに大量の蜘蛛の糸が絡まっていた。

 途端に風が止み、黒一色に覆われていた周囲の景色が一転して晴れ上がる。

 俺は式神によるモノだと悟り、後ろを振り返って天坂に礼を言った。



「ナイスだ、天坂」


「あまり長くは抑えてられないよ――早く!」



 という言葉が返ってくる。


 俺は天坂の期待に応えようと、すぐさま早村の元へと駆け寄っていった。

 そして、蚕の繭……もとい蜘蛛の糸の隙間から腕を伸ばし、中で縛られているであろう早村の身体に霊符を貼り付けた。



「よしっ、これでなんとかなる!」



 ――はずだった。


 けど、俺の貼り付けた霊符は効果を現すどころか、まるで「残念。ただの値札でした」と言わんばかりに沈黙している。



「……な、なにも起きない」



 確かに天坂の説明通りに早村の身体に貼り付けたはず。

 なのに、何の効果も現れないなんて……。もしかして、俺には見えていないだけで、実際にはもう発動して早村を天国に送っているとか?


 ワケがわからず、天坂に確かめる。



「――天坂。これは浄霊したってことだよな……?」


「そんなわけないよ。きちんと貼ったのなら効果は現れるはずだよ」


「だけど、なんにも起きてないじゃないか!」


「突っ込んだ手の先をよく確かめて。ちゃんと貼られているなら、効果は現れるはず」


「わかった」



 言われるがまま、蜘蛛の糸の隙間から中の様子をのぞき込む。けれども、わずかな隙間では中は真っ暗でなにも見えない。

 もっと見やすくしようと、突っ込んだ手を引き抜く。


 すると――



「邑神君」



 という不気味な低い声と共に充血したような赤い目が露わになる。

 同時に俺はその瞳と目を合わせてしまい、声を上げて半ば腰砕けになった状態でその場に座り込むここととなった。




 とっさに右腕をがっちり捕まれてしまう。




 それから、早村が自分を覆っていた蜘蛛の糸が引きちぎって現れた。まるで何事もなかったかのように笑う早村は、人と言うよりバケモノと現した方がいいような雰囲気だった。

 だが、それよりも気になったのは霊符がどうなったかだ。

 目で追って確かめると、霊符は早村の手前で見えない壁に阻まれたように宙に浮いていた。そして、目の前で突然発火して意図を焼き尽くす。



「邑神君っ!」



 ふと耳に天坂の声が聞こえてくる。

 だけど、早村が手を掴んで逃げられそうにない――正確に言えば、あまりの恐怖に自分から逃げることができなくなっていたのだ。



「さあ邑神君。みんな忘れて幸せになろうよ」



 とっさに早村が俺の腕に絡みついてくる。それから、俺をゆっくりと押し倒して徐々に覆い被さるように身体に抱きついてきた。

 しかも、その顔は俺の目の前にある――赤く血の色に染まった人間ではない目。


 そんな物を見せられて、身体が思い通りに動くワケがない。



(くそっ、頼むから動いてくれ!)



 俺の身体は完全に金縛りに遭ったように動かなくなっていた。

 目の前じゃ早村が襲いかかってこようとしている。さらにこのままじゃ、俺も美百合先輩みたいになにもかも忘れてしまう。



 もし、そうなったとして、俺はいったいどうなる……?



 早村のことも、天坂のことも、美百合先輩のことも、みんな忘れてただ安穏とした生活を送れってのか?

 それとも、なにもかも忘れてしまったことを悲観して死ねってことなのか?



(……そんなのはイヤだ! 俺は誰のことも忘れたくねえ!)



 沸き上がった恐怖に抗おうと必死に身体を動かす努力をし続ける――が、身体は正直なモノで、いったん恐怖に支配されたら、テコでも動かないつもりで身体を強張らせていた。



「……ねえ、邑神君。ボクのこと、ホントに忘れちゃわない?」


「忘れるわけねえだろ……。俺はオマエの友達なんだから」


「だったら、こんな姿のボクでもちゃんと受け止めてよっ!!」



 異形の者になった早村が叫ぶ。

 そんな早村を見て、恐れている俺はいったいなんだ? どうして振り払うこともできず、こんなに身体を強張らさせているんだ。



(美百合先輩、助けてっ!)



 逃れられぬ恐怖心に両目を閉じて、最後の時を待つ。ところが、いくら待てども早村が触れてくる気配はなかった。






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