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超能力者が出会った霊能力者は肉食系女子で童貞(チェリー)なアイツを責め立てる。  作者: 丸尾累児
第4章「たとえオマエが忘れても、俺は絶対に忘れない」 
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第3節「信じること、すべきこと」


 翌朝、俺は登校前に御影堂に向かって歩いていた。

 目的は美百合先輩を見舞うためである。



(……美百合先輩、いまどうしてるだろう……?)



 そのことばかりが頭をよぎる。

 どうにかして、記憶が戻ってくれたらと願いたいところだが……こればっかりは、俺たちの頑張りにかかっていると言えるよなぁ~。


 俺は考えに耽りながら、御影堂までの道のりを歩いた。


 ところがその半途、驚くべきモノを見てしまう。

 なぜかって? だって、驚いたことに美百合先輩が通りがけの公園の中にいたんだぜ……しかも、ブランコの音をキイキイ鳴らして、一生懸命漕ぎ続けてるし。



 そりゃあ驚くに決まってるじゃん。記憶以外、どこも異常がないとはいえ、まさかこんなところで出会うなんて思ってもみなかったわけだしさ。


 俺はすぐさま美百合先輩の名を叫んで近づいていった。

 でも、目の前まで来た途端、



「あれ? 確か君は……」



 と、そんな言葉が美百合先輩の口から漏れる。


 それで俺は、「ああそうだ、この人は俺のことなんか全然覚えちゃいないんだっけ」なんてことを考えちまった。

 スゴく胸が張り裂けそうな気分になった。だけど、それでも、美百合先輩に笑顔で「なにをしているのか」と聞かなくちゃいけない。


 俺はどうにか心の痛みをはぐらかして、美百合先輩に訊ねた。



「こんなところで、なにやってるんです?」



 しかし、そう訊ねても、美百合先輩からは返事はかえって来なかった。それどころか、不安そうな顔でうつむき加減になにかを考えているみたいだ。

 おそらく、記憶がないことをずっと不安に思っていたのかもしれない。そうじゃなかったら、こんなところでブランコなんか漕いでいないはずだ。


 俺は優しく語りかけた。



「なにか心配事があるなら、遠慮なく言ってください」


「……なんでもいいんですか?」


「はい、もちろんです。先輩は覚えていらっしゃらないと思いますが、俺と初めてであったときに俺が持っている人には理解できないサイコメトリーの力を『信じる』って言ってくださったんですよ」


「私、そんなことを言ったんですか?」


「ええ、ですから今度は俺が先輩を信じる番です」


「……君が私を信じる番?」


「そうですよ。だから、なんでも言ってくださっていいんですよ。俺、先輩の話だったらなんでも聞きますから」


「どうして、そこまで親身になってくれるんですか?」


「当たり前じゃないですか――俺は先輩の記憶が絶対に戻るって信じてますから」



 俺がそう言うと、立ち所に先輩の口が止まった。


 まだなにかをためらっているんじゃなかろうか? 美百合先輩は、なんだか話すべきかどうか自体を迷っているようにも感じられる。

 もし、このままなにも話してくれなかったら……いやいや、ここで俺が信じないでどーすんだよ。


 そう思っていたら、とっさに先輩の顔が上がる。なにを言い出すかと思って見ていると、先輩は戸惑った様子でおもむろに口を開いてきた。



「あの……実は気付くと、心の奥底から自分はこの世に不要なんじゃないかって気持ちが沸き上がってくるんです」


「先輩が不要?」


「どうしてだかはわからりません。おそらく、本当の私がずっと胸に抱いていたことなんだと思うんですけど」


「……ホントの……先輩が……そんなことを……」



 知らなかった。

 いつも笑顔ではぐらかして、いっさい弱い部分を見せようとはしなかった美百合先輩。

 なんとなく察することはできたものの、ここまで深刻なことだなんて……。記憶がないとはいえ、こんなにも苦しんでたなんて思ってもみなかった。


 だから、今度は強く応援する気持ちで話しかけた。



「ネガティブになっちゃいけませんよ。先輩が不要な人間であるワケないじゃないですか」


「でも、私は記憶も取り柄もない女です。きっと本当の私は昔っからなにやっても上手にできなかったんじゃないと思うんです。だから、その結果が生んだのが記憶がないいまの私なんじゃないかって」


「大丈夫ですって。それでも、先輩は十分素敵な先輩です。それに記憶がないのは、いずれ時間が解決してくれます」


「……私……素敵なんかじゃない……」


「自信を持ってください。美百合先輩の記憶がどんなになくなったって、俺は先輩のことを忘れません。だって、俺にとって先輩は――」



 と言いかけた直後、急にケータイが鳴り出した。


 まったく間が悪いったらありゃしない。せっかく美百合先輩に大切なことを伝えようと思っていたのに。

 苦々しく思いながらも、画面に表示された「天坂」の名前に気付いて電話に応じる。



「――もしもし、天坂か?」


『邑神君、いまどこにいるの?』


「どこって、御影堂に行く途中にある公園だけど……?」


『いますぐ学校に来て。大変なことになってるの』


「大変なこと? いったいなにがあったんだ?」



 そう問いかけると、不意にケータイ越しにパリンッという激しい物音が聞こえてくる。同時に「キャー」という悲鳴も聞こえてきて、なにやらただならぬ様子になっているように思えた。


 俺はいまの物音の正体を天坂に問い詰めた。



「おい、いまのなんだっ!?」


『ゴメン、ちょっとマズい状況になったかも……。とにかく来ればわかるよ、急いで』


「よくわからないが、すぐに行く!」



 なにやら向こうでなにかが起きているらしい。天坂の声からは切羽詰まった様子が感じられたし、なにより怪しげな悲鳴が気がかりだ。

 俺はケータイを切るなり、美百合先輩の方を向き直った。



「先輩、俺ちょっと学校に行きます」


「なにかあったの?」


「俺もよくわかりませんが、危険ななにかがあったのは確かみたいです」


「……危険な……なにかって……」


「とにかく俺は学校に行きます。先輩も出歩くのは構いませんが、あまり無理をせずに大人しくしていてくださいね」



 それだけ言うと、俺は囃し立てる胸騒ぎに学校までの道のりをひた走った。






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