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超能力者が出会った霊能力者は肉食系女子で童貞(チェリー)なアイツを責め立てる。  作者: 丸尾累児
第4章「たとえオマエが忘れても、俺は絶対に忘れない」 
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第2節「最後のヒトカケラ」


「一度、状況を整理してみようよ」



 天坂に言われたのは、美百合先輩が記憶を失った翌日。

 俺は放課後の自習室で、今後のことについて話し合っていた。

 今後というのは、もちろん戦線離脱した美百合先輩抜きでどうやって物霊を対峙するかという話である。




 ところが当の天坂はどこ風吹くことなく、人に見つかっても「別に構わない」という様子でいた。故に教室で話すつもりでいたみたいだけど……さすがにちょっとなぁ~。




 だって、内容がオカルトチックな話だし、俺たちの関係性を疑われる可能性だってあるんだぜ? それを考えたら、自習室で勉強という建前の方が誰彼に見つかることなく話せるってもんじゃないか。

 なので、天坂には自習と称してカギを借りてきてもらった。そして、現在机を2つ並べて向かい合って対話中。



「――で、なにをどう整理するんだ?」


「まず今回の物霊が現れた時期についてだね」


「時期って……。俺たちが気付いたときには、もうすでに現れてたんじゃないのか?」


「確かにそうかもしれないけど、正確にいつ現れたのかまではわかってないよ」


「それじゃあ確認しようがないじゃないか」


「でも、だいたいどれぐらいの時期に現れたのかを知ることは重要だと思うの」


「どのくらいねぇ……」



 天坂の言葉に腕を組んで考える。

 確かに相手が霊だけにいつ現れたのかも、いつからいたのかも俺には想像できねえ。しかも、霊が見えないからなおさらだ。

 でも、ホントにヘンだと思ったのは……そうだ、先輩が俺の名前を思い出せなかったときだ! あのとき、なぜか頭の中がボンヤリとして、美百合先輩の名前が思い出せなかったんだよな。


 俺はそのことを天坂に告げた。



「俺が最初に不自然な現象に遭遇したのは、美百合先輩に借りたハンカチを帰しにいったときだな。そこから考えると、俺としてはその前後ってことになるかな?」


「それって、いつ頃の話?」


「2、3週間前だな」


「他に思い当たる不審な点はなかった?」


「不審な点っていうと、早村のおばさんが早村のことをまったく覚えていなかったことだ」


「それは初めて聞いたかも」


「ただおかしなことが1つだけあるんだ」


「おかしな点……?」


「ああ、おばさんは先輩が俺のことを覚えていなかったのとは違って、早村を小学生だって勘違いしてる点なんだ」


「確かにそうだね。物霊なら、なにかが劇的に変化するし……」


「だろ? なにかおばさんの忘れ方には不審な点があるんだ」


「なるほど。他には?」


「他にはって……。あのな、そういう天坂はどのぐらいの時期に現れたと思ってるんだよ?」


「――私? 私はそれよりずっと前なんじゃないかって思ってるよ」


「その根拠は?」


「まず基本的に物霊は人の残留思念を元に成長していく霊だって話は知ってる?」


「ああ、それは少し前に美百合先輩から聞いたぜ」


「つまり、邑神君が言うように2~3週間前の時点でそういう事象が起きてたってことは、それより以前に発現していて成長途上だったんじゃないかと思うの」


「でも、それだと早村の記憶だけがどうしてすっぽり抜けてしまっているのか、まったく説明が付かなくなるんじゃないか?」



 と、説明に対する矛盾点を指摘する。


 さすがの天坂も思わぬ指摘に驚かされたんだろう。不意に目を見開いたと思ったら、すぐに難しい顔をして俯いてしまった。

 そんな天坂にあることを聞いてみた。

 それは内々に思っていたことで、いままで見たサイコメトリーや天坂たちと経験してきたことの中から感じてきたことでもある。



「なあ、こうは考えられないか?」


「どういう推理……?」


「つまり、最初から力を持っていた……ってことだよ。悪霊として生み出された時点で力を持っていたなんてことになれば、早村の記憶が失われてるのにも説明が付くだろ?」


「そりゃあそうだけど、まずあり得ないよ。通常であれば、物霊は雪だるまを作るための小さな雪玉みたいなモノだからもの。最初から大きな力を持っているとなると、なにか強力な触媒が必要になるんじゃないかな」


「強力な触媒って?」


「呪詛を生み出す源って言えば、邑神君でもわかるかも。とにかく大きな力を動かすには電池のような電源でもない限りは動かすこともできないもの」


「なら、その触媒ってヤツがあれば活動できるんだな?」



 と、意味ありげな言葉を述べる。

 当然、天坂は俺の言葉に不思議そうな顔つきで見ていた。



「どういう意味?」


「あ、いや確証があるわけじゃないんだ。だから、天坂に言っても、これは俺の当てずっぽうなカンだからさ」


「構わないから、邑神君の思ったとおりに言ってみて」


「言えねえよ。そんな当てずっぽうなこと言って、物霊退治に支障が出たんじゃ美百合先輩に合わせる顔がないし」


「美百合ちゃんは、そんなこと気にしないと思うけどな」


「そ、そ、そんなことよりさ……美百合先輩の様子はどうだ?」



 とっさに出た言葉でお茶を濁す。




 まあ、これは俺の憶測だからなぁ~。

 あまり邪推しすぎて、物霊探しに混乱を来すようでは仕方がない……のだが、天坂は完全に不審がって、不敵な笑みと共に怪しげな視線を向けてきている。




 ……それほど不審がってたってことなんだろうな。




 俺は誤魔化すように質問の答えをせかした。



「……なあ、どうなんだ?」



 すると、さすがの天坂も諦めたらしい。次の瞬間には、「まあいいか」という独り言をつぶやいていた。



「しばらくは学校に来れないと思う。親御さんには、ウイルス性の病気だから家に帰すよりもウチで預かった方がいいって話をしてあるから……もちろん、学校にもね」


「そうか。とはいえ、いつまでも同じ誤魔化しは通じないよな?」


「……だね。一刻も早く美百合ちゃんの記憶を取り戻さないといけないね」


「あのさ、ウチっていうのは天坂の家のこと?」


「ううん、違うよ。お兄ちゃんのとこ」


「えっ!? お兄ちゃんのとこって……大介の野郎のところなのか?」


「大丈夫だよ。お兄ちゃんは邑神君が思ってるようなことはしないから」


「そう言われたって、いつ本性を現すかわかったもんじゃないじゃないか」



 男なら誰だって目の前に美少女が眠ってたら、襲いかかりたくなるもんじゃないのか?




 眠りの森の姫然り、白雪姫然り。




 突然やってきたイケメンとも限らない野獣王子が、見ず知らずの女にキス以上のことしたなんて国際問題だろ……んまあ、美百合先輩と大介の野郎は親戚だけどな。

 だから、どうしたって美百合先輩のことが気になっちまう。


 そうした思いから、俺はあることを訊ねることにした。



「明日の朝、登校前に美百合先輩の様子を見に行ってもいいか……?」


「別に構わないけど、急にどうしたの?」


「いや、別にどうしたってワケじゃないんだ。ただ、やっぱり少しでも美百合先輩の不安を和らげられたらなって思っただけだ」


「それって、単に邑神君が美百合ちゃんの側にいたいだけなんじゃ?」


「そ、そ、そんなことはねえよっ!」



 ……ぶっちゃけ、ホントのところはそうなんだが。



 だが、それを口にしてしまうと、天坂に茶化されそうで言えねえよ。だから、俺は黙ってることにしたのに……。

 あ~天坂のヤツ、また面白そうなことを見つけたって顔してやがるな。


 俺はその場で席を立ち、本音を誤魔化すようにしてて咳払いをした。



「とにかくだ。明日の朝は御影堂に立ち寄らせてもらうからな」


「わかった。お兄ちゃんに言っておくよ」


「おう、頼むよ。ムカつくヤツのところへ行くのはシャクだけど、美百合先輩がいるんじゃあどうしようもないよな」


「フフッ、もう喧嘩しないでね」


「善処する」



 そう言うと、俺は鞄を持って帰宅の途に就くことにした。


 ところが部屋の扉を開けたところで天坂に呼び止められる。振り返ると、天坂の身体は影に重なって見えづらくなっていた。

 日がだいぶ西に落ちてしまったせいだろう。

 東側にあるこの部屋の窓からは、かなり採光しづらくなっているようだ。

 俺も眩しさにまともに目を開けてられないし、そんな中での天坂の姿はまるで遠くにいるみたいで、近寄っていくのも一苦労しそうな感じだった。



「美百合ちゃんのこと、お願いするね」



 と天坂が言う。


 その淡々とした口調からは、ほのかな優しさが感じられる。

 いままでは思いもしなかったけど、天坂ってヤツは感情を表に出さないんじゃなくて、ただ単に表に出すのがヘタなだけなんじゃないだろうか。その証拠に不敵な笑みを浮かべたときは、自分の中でなにか面白いことを見つけたときだってわかった気がするし。


 俺は天坂に「ああ」と短く返事をすると、扉を閉めて自習室を後にした。






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