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双生児の復讐(上)

マナとカナを右側の部屋で寝かせつける。

二人ともそこそこの荷物入れは持っていたが、そこそこの大きさだ。

毛布などの寝具は持っていない。左右の部屋は石が敷き詰められている。

今まで直接石畳の上に直接寝ていたのだろう、よく体が痛くならないものだ。


まぁ、俺も毛布1枚しかないので似たりよったりといえる。

二人の下に毛布を敷く。この部屋の良い所は、室温が最適の温度に自動で変化する点だ。

寒いと思うと上がり、厚いと思うと下がる。だから、眠っている途中で肌寒く感じると

室温が高くなるので、敷物さえあれば、寝具はいらないともいえる。


 子供が寝るにはちょうど良い時間だが、俺が寝るには早すぎる。

入場者全員で闘技場に降りなければ、対戦相手は動き出さない。

今なら置物とかした狼を眺めながら、闘技場を利用できる。

さて、狼対策でも練るかと部屋を出て闘技場で鍛練でもしようとすると、

「行かないで」とハモった声で、双子に呼び止められた。双子の方を見ると、

マナが半身を起こし、カナが寝たまま顔だけをこちらに向けている。

二人とも、目に涙を溜めていた。


 なんとも庇護欲をそそる顔だった。

「だいじょぶだよ」と言って、二人の傍に行く。マナがしがみ付いてくる。

カナがごろんと転がって、マナとの間を空ける。

二人の間に横たわると、カナもしがみ付いてきた。そしてカナはすぐに寝付く。

マナは再度「行かないでぇ」と言って、泣き出す。

「だいじょぶ、だいじょぶだよ、二人を置いてどこにも行かないよ」

と言いながら、マナの頭を撫でて慰める。


 マナは、しばらく「もう、いないのいやなのぉ、いやなのぉ」と泣いていたが、

しばらくすると、静かになり、規則正しく寝息を立てるようになった。

すると、「私も撫で撫でしてぇ」とカナが突然甘えた声を出す。

カナを見ると寝ているのか起きているのかわからない。とりあえず、

頭を撫でてやると、「んふふ」と声を出しながら、満足したのかカナも寝息を立て始めた。


 そういえば、二人の父親はどうしたのだろうか。武器屋の店員によると、

闘士レベル4とのことだった。それならば、闘技場レベル21にうっかり入って

死んでしまったといこともないだろう。だが、マナの寂しがりの様は、亡くしてしまったような

寂しがりようだ。カナもなんだかんだで甘えてくる。

食堂のおばさんが聞き取った時は、わからないと答えたようだが、

二人は食堂のおばさんを嫌っているようだ。正直に答えることもあるまい。

親を亡くしたか、それに近い状況が双子に訪れたのだろう。


 親を無くした悲しみは俺にもわかる。引きこもっていた俺に、これからどうするんだと

たまに聞いてきた父、魔術学校を辞めた時も幼年学校を辞めた時も、ただおかえりと言ってくれた母、

両親のことを思い出す。少しうざいと思うこともあったが、両親のことは嫌いではなかった。

逆に、小さいころから寮暮らしであまり一緒にいなかったから特に好きという感情もないと思っていた。

だが、両親が事故に合い死んだと聞いたとき、俺はどんない親に甘えて生きていたのか、

どんない二人のことを愛していたのか気づかされた。事故の悲しみから立ち直るのに1年以上は有しただろう。


 いや、3年以上経った今でも、悲しみから立ち直っていないかもしれない。

だからなのか、特に別れる機会もなかったが、人恋しさのあまり、

ずるずると双子と一緒にいるのかもしれない。二人の寝顔を交互に見て、俺も寝ることにした。



 双子と一緒に狼と戦うようになって、数日が経った。

俺は闘士レベル2に、双子は闘士レベル3になっている。闘技場のレベルは3のままだが、

狼は3頭同時に出現するようになった。


 結局、狼を見失う理由が頭でわかっていても、すぐには狼の動きにはついていけず、

毎回、誰かが噛み付かれ、噛み付かれた所を一撃で撃退するという流れがしばらく続いた。

あれほど噛まれるのを嫌がっていた双子だが、文句一つ言わずに戦い続けてくれた。

そして、その甲斐あって、俺達3人はあらたなスキルを手に入れた。


3人とも新スキルというよりは派生スキルだ。

双子は二人とも同じスキルで『衝壁』、俺は『操兵造型』である。

『衝壁』は衝撃波を発生する見えない壁を作成するスキルである。

マナが作成した壁に当たれば、たちどころに切りきざまれ、

カナの衝壁に当たれば、でかいハンマーをカウンターで食らったように吹っ飛んでいく。


『衝壁』スキルの難点は、魔力消費量と1回で消滅してしまう点だろうか、

壁設置時の消費量は『衝撃』5,6回分とのことだ。設置中常時魔力を消費しないだけ

まだマシだろう。そして、衝壁は1回、敵が接触すると発動して消滅してしまう。

今は狼だから接触と共に敵を撃退できるのでいいが、飛び道具相手にどうなるか、

矢を1回弾いたら消滅するのでは、魔力の割りが合わないスキルとなる。


試しに操兵を壁のある所に飛ばしてみたが、衝壁は反応しなかった。

衝壁の正確な反応条件は今のところ不明である。


 『操兵造型』は、操兵の形状を変更するスキルだ。

もともと絵心があるなど手先が器用な人間には必要ないスキルかもしれない。

音痴の俺は当然ながら歌はダメであり、そして、そんなに手先は不器用ではないが、

思うように筆運びもできず絵もダメである。だから、いつしか芸術全般を忌避するようになる。

そんな心理が影響してか、操兵の形状を自由に変えることができず、

円錐、球、立方体、直方体の単純な組み合わせでしか形成できなくなっていた。


 だが、このスキルを獲得したことによって、単純な形状からはおさばらである。

おれの皆無に等しいイメージ力は大幅に補完され、盾を持っていて、

狼の突進に耐えれる操兵と、極めて大雑把にイメージするだけで、

頭の中にデザイン候補がいくつか浮かんでくる。


そして、ここの形状は少し変えたいと思うと、バランス悪く一部分だけ変更などに

ならず、全体がバランスよく修正される。自分の中にあったイメージと

かなり異なる物ができあがるが、イメージした物よりより格好よく、

より機能美のある操兵を作り上げてくれるスキルで、非常にありがたい。


 というわけで、対狼用の操兵が完成した。

下半身は、ネコ科を思わせるしなやかな肢体で、上半身は、優雅な女性型の人身である。

腰のくびれが女性を思わせる見事な曲線で、胸はそこそこの大きさだ。

体表自体がある程度の硬度を有するので裸身である。ボッチはない。


 頭をどうするか悩んだが、今回は豹頭にした。

長髪の美女にしたかったが、双子にどう思われるかと意識してしまった。

いっそ、ガチムチの筋肉隆々にしようかと思ったが、その形に魔力を注ぎこむのも

なんだかなぁと考えてしまい。中途半端になってしまった。


 豹頭の半人半豹は、二人にネコ姉さんの愛称で親しまれている。

大きさは頭から前脚の体高が1メルク、胸部から臀部までも1メルク、尻尾は無い。

片手に直径30センほどの円形盾を持たせている。


 今回は武装はない。狼の突進を盾で止めるだけで、かなりのダメージを与えるので、

盾で止め、もう一体の目玉型が熱線でとどめを指している。

俺の最近の魔力総量からすれば、半人半豹ではなく、身長160センほどの人型も作成できたが、

人型だと厚みがたらず、当たり負けしていただろう。4足だからこそ、当たり負けせずに

がっちりと狼の動きを止め、盾を叩きつけて痛烈なカウンターを与えている。


 操兵は俺の『歩法』スキルの知識を生かすことができ、数回の実戦で完璧に狼の動きを

捉えた。また、歩法スキルを使用して狼同様の動きをし、練習相手にもなっている。

おかげで、最近は俺も動きを見切れるようになった。双子にいたっては、衝壁を使用しないでも、

カウンターで衝撃を当てることが可能になっている。


 二人の衝撃波は操兵にダメージを与えないことも確認できた。数回射線上に俺も立っていたが

ダメージはなかった。双子が敵と認識しなければダメージはないのかもしれない。


 こうして、狼が3体となっても、もはや敵ではない状態となった。

修練の神殿の基本の流れが、スキルの獲得、習熟、苦手克服となっているならば、

そろそろ苦手克服時期に入りそうである。


 そして、苦手といえば食堂のおばさんである。双子と暮らすうちに、おばさんが、

双子から、約200本ほどの神酒を奪ったことがわかった。この神酒をなんとか

奪い返してやりたいところだ。子供の証言は証拠とならず、

預け証などの客観的証拠もない。せめて、どの神酒卸に卸したか突き詰めて、

おばさんがどこで神酒を入手したのかと詰問してやりたいところだが、

卸し先もわからず、手詰まりな状態である。


 さてどうしたものか、神酒かもしくは神酒分の銅貨を奪い返せれば

双子も喜んでくれるだろう。

ひー、またまた短い。

書き出すと、なぜか、忙しくなります。

7,8月は、引越し、求職活動が発生。

読んでくれる方がいるうちにしっかりとした物を書いていきたいです。

次回は再来週になるかもしれません。

タイトルはそのうち上下合わせたり変えたりするかもしれませんが

変更時には二度読みが必要になったりしないように

わかりやすくなるようがんばります。

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