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友達

前回は「私」のお話でした。

良いことと悪いことは交互にやってくる。これを「禍福は糾える縄の如し」という。

そんなことを先日授業で習った。私はシャーペンをクルクル回しながら、私の人生にもう“福”はないのかな、と考えた。

どうやら、私の人生はそんなに悪いものでもないらしい。

「あ、昨日の先輩だ!こんにちはー」

優しい後輩たちに出会った翌日。いつも通り屋上でお昼を摂ろうとそこに向かうと、ベンチには先客がいた。そう、可愛い後輩ちゃんたちだ。

「未玖ちゃん、やっぱり来たね!」「そうだね」

やっぱりとはなんだ。ミクちゃんと呼ばれた子が、にこりとこちらを見つめた。何年ぶりだろう、こんなに誰かに見つめられたのは。

「あの…私なにかしました?」

もしかして、昨日の感謝が足りなかったから怒ってるのかな?

いじめのこともあって、かなり慎重になっていた私は早くも逃げの姿勢をとる。後輩にもいじめられるなんて流石に格好がつかない。こっそり左足を後ろに引いた時。

「先輩、お友達になりませんか?」

「ふぇ?」

オトモダチ…おともだち……あ、お友達か。なんで?

あまりにも唐突すぎる誘いに動揺し、間抜けな声を後輩に晒してしまったが、当の椿は混乱で気づいていない。故に羞恥心はどこかへ消えている。

いや、椿の内面はどうでもいい。

友達なんて、今の私には喉から手が出るほど欲しいものだ。友達がいれば、いじめのことも少しは気にしないでいられるし、お母さんに心配されることも減るだろう。しかし、昨日のあの情けない行動を見て、どうして友達にしたいと思うだろうか。この2人には悪いが、正気の沙汰じゃない。新手の嫌がらせかもしれない。

一度緩んだ頬を引き締めて女の子たちに尋ねる。

「ええっと…なんでです?」

私の失礼な発言にも2人は、だよね、と顔を見合わせてから小さい子が勢いよく喋り始めた。

「あのね、未玖ちゃんが『昨日の先輩可愛かったね』って言ってたから、私が友達になろうって言ったんだ!」

ん?可愛い?私が?ますます意味がわからない。この子たちの方がずっと可愛いじゃないか。それに可愛いから友達になりたいって、そんな理由あるのか。そんなのご都合主義ワールドっぽくないか?なんかのライトノベルか?

“ミクちゃん”が慌てて小さい方の子を嗜める。愛らしい頬を赤く染めて、ちょっと瑠夏ちゃんー、なんて言って戯れている。“ミクちゃん”はハッとしてからすぐこちらに向き直り、「まぁ…そういうことなんですけど、いいですか?」と私を見つめる。遠慮がちに私を見る目に悪意はない。騙す気もなく、きっと本心で言っているんだろう。

そして、それを断る理由もない。理由が本当にそんなものなのかどうかは怪しいが、友達になりたいと言ってくれるなんてなんと嬉しいことだろうか。

私は視線を上げて「では、なりましょう」と笑った。私の人生の縄に、2つの小さな糸が加わった。

 

大人っぽい子の名前は絹川未玖と名乗った。可愛いものがとにかく大好きだそうだ。小さい子は麻丘瑠夏。好きなことは、絵を描くこと。2人は小学校からの付き合いで、とても仲がいいようだ。

 それから私たちは毎日屋上で弁当を食べた。話すのはたいてい、好きな漫画の話や2人の思い出話。好きな作品が同じだったのはとてもありがたく、特に、2人の思い出は聴いていて全く飽きない。

お互いにあげるお土産が被ったこと、卒業式に瑠夏ちゃんが大泣きしたこと、クラスをどうしても一緒にしたかった2人が校長先生に直談判したこと。忙しなくて、ドタバタな彼女たちの人生は幸せでいっぱいだった。

2人は私に心を許して、過去を話してくれた。

私は、家族のことを何も話していない。


次回はほんわか平和パートです。

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