三食ラーメン
「ふぅー……目が疲れた」
本を閉じて、時計を見る。
「そろそろ母さんも帰ってる頃か」
俺は図書館を出て、そのまま家へ向かった。
「ただいまー」
「おかえり、弥彦」
家に入ると、母さんの声がした。
「今日は誰と出かけてたの?」
少し心配そうな顔で聞いてくる。
「いつも通り田井だよ」
「そう。なら安心ね」
ホッとしたように笑う母さん。
「高校生だからって、夜遊びとかしないって」
「心配しすぎだよ」
「……そうよね、ごめんなさい」
少し気まずくなった空気を変えるように、母さんが言った。
「夕飯、もうすぐできるけど食べる?」
「食べる。今日なに?」
「――醤油ラーメンよ」
「……え?」
思わず聞き返した。
「職場の人にもらったの。たまにはいいでしょ?」
朝はカップラーメン。
昼は天海の塩ラーメン。
――そして、夜もラーメン?
「……ラーメン、嫌だった?」
不安そうに母さんが覗き込んでくる。
「いや、全然!」
「ちょっと珍しいなって思っただけ」
慌てて首を振る。
「そう?ならよかった」
母さんは安心したように笑った。
「じゃあすぐ作るから、ちょっと待ってて」
「……うん」
キッチンから聞こえる調理音をぼんやり聞きながら、考える。
朝、ラーメン。
昼、ラーメン。
夜も――ラーメン。
「……三食ラーメンって、さすがにどうなんだ」
少しだけ、妙な違和感が胸に引っかかった。
「お待たせ〜。醤油ラーメンよ」
目の前に置かれた一杯。
立ち上る湯気。
香ばしい醤油の香り。
「……いただきます」
箸を取り、麺を持ち上げる。
「ふー、ふー」
そして――すする。
「ズズッ……」
その瞬間。
あの音声が流れてきた…




