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全知全能なんだけど 自分の能力を理解していないから アホニートなんです。  作者: GT☆KOU


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第三話 今日は外が静かだな

目を覚ましたとき、ニートは最初に違和感を覚えた。

音が、少ない。

まったく無いわけじゃない。

耳を澄ませば、遠くで車の走る音もするし、どこかで人の声もする。

ただ――いつもより、少ない気がした。

「……?」

布団の中で少しだけ体を動かす。

耳が目覚めていないだけかもしれない。

そう思って、あくびを一つ。

カーテンを少し開ける。

朝の光はいつも通りで、天気も悪くなさそうだ。

「……気のせいか」

そう結論づけて、顔を洗いに行く。

洗面所の水の音は普通だ。

冷たいし、ちゃんと出ている。

異常はない。

部屋に戻り、窓をもう一度開ける。

やっぱり、静かだ。

うるさくない、というより、

音が遠い。

「……今日は外が静かだな」

独り言だった。

誰に聞かせるつもりもない、ただの感想。

その瞬間、

――少しだけ、間が空いた。

なにかが止まった、というほど大げさなものではない。

時計は進んでいるし、外の景色も変わらない。

ただ、

世界が一拍、呼吸を止めたような感覚。

ニートは首をかしげた。

「……まあ、朝だしな」

理由を考えるのが面倒になって、思考を切り上げる。

テレビをつける。

ニュースキャスターが、

一瞬だけ言葉に詰まった。

「――えー、本日も、特に大きなニュースはありません」

ニートは気にしない。

よくあることだ。

パンをかじり、スマホをいじり、時間を潰す。

通知は相変わらず少ない。

しばらくして、ゴミを出しに外へ出る。

廊下に出た瞬間、

空気が少しだけ重く感じた。

隣の部屋のドアが開く。

会社に行く隣人の女性だ。

「おはようございます」

「……どうも」

彼女は一歩踏み出して、立ち止まった。

「……静かじゃないですか?」

「え?」

言われてから、ニートは考える。

「……まあ、静かっすね」

それ以上の感想はない。

女性はなにか言いたそうに口を開き、

結局、閉じた。

「……そうですね」

それだけ言って、階段を下りていく。

その背中を見送りながら、

ニートは少しだけ考えた。

――静かだから、なんだっていうんだ。

別に困るわけでもないし、

静かな方が楽だ。

部屋に戻る。

ドアを閉めた瞬間、

外の音が少しだけ戻った気がした。

車の音が近づき、

人の声がはっきりする。

「……気のせいだな」

そう呟いて、布団に倒れ込む。

考えるほどのことじゃない。

世界がどうだろうと、

自分のやることは変わらない。

今日も、

何もしないだけだ。

ただ――

どこかで、

世界が必死に普通を保っていることを、

彼だけが知らない。

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