第二話 クソゲー
布団の上で横になったまま、ニートは天井を見ていた。
特にやることはない。
考え事をするほどの元気もない。
だからといって、寝るほど眠くもない。
「……暇すぎるだろ」
独り言を言って、スマホに手を伸ばす。
SNSを開いて、閉じる。
動画アプリを開いて、閉じる。
どれも、もう見た気がする。
「……あ」
そういえば、と思い出したようにゲーム機の電源を入れた。
いつものオンライン対戦ゲームだ。
別にハマっているわけじゃない。
暇つぶし以上の意味はない。
ログインすると、すぐにマッチングが始まる。
「……はいはい」
開始。
操作する。
避ける。
当てる。
――終わった。
「……え?」
画面には、勝利の文字。
ノーダメージ。
パーフェクト。
ニートは少しだけ眉をひそめた。
「……相手、動いてた?」
リプレイを見る気にもならない。
次の試合に進む。
今度はランクが高い相手らしい。
装備も派手だ。
「さすがに次は――」
開始。
避ける。
当てる。
終わる。
「……はい?」
また圧勝だった。
チャット欄が騒がしい。
『は?』
『チート?』
『意味わからん』
「……いや、知らねぇよ」
独り言で返して、次の試合へ。
何戦やっても同じだった。
強い相手でも、複数相手でも、条件が悪くても。
負けない。
というより、苦戦しない。
ニートはコントローラーを膝に置いた。
「……これ、作業じゃん」
面白いはずの駆け引きがない。
緊張感もない。
勝つか負けるか、という前提自体が存在していない感じがする。
「……クソゲーだな」
ぽつりと呟いて、ゲームを終了する。
ランキング画面が一瞬表示されたが、
見る前に電源を切った。
どうでもよかった。
布団に倒れ込む。
「……勝っても意味ねぇな」
そう言って、天井を見る。
外からは車の音がする。
遠くで子どもの声がする。
世界は今日も普通だ。
「……つまんね」
そう呟いたとき、
なぜか一瞬だけ、
外の音が遠くなった気がした。
気のせいだと思う。
だいたい、世界が静かになる理由なんて、
自分には関係ない。
「……まあ、いいや」
ニートは目を閉じた。
自分が
どんな相手にも負けない理由も、
なぜゲームが成立しなくなるのかも、
考える気はなかった。
だって――
知らない方が、楽だから。




