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第一章・第二十五話 ソルニアの風景

淡い光は、境界標を越えた瞬間だけの歓迎じゃなかった。


歩いても、歩いても。


肩に、髪に、まつ毛に。


雪みたいに、降り続ける。


粒はすぐ消えるのに、降っていたことだけが残る。空気の匂いが、ほんの少しだけ甘くて、水っぽい。


踏みしめる土が柔らかいのも、気のせいじゃない気がした。


「……これ」


カムイが、空を見上げたまま呟く。


その目は、警戒というより――確認に近い。


「ずっと、降ってるのか?」


アルティナが先に答えそうになって、口を開けて閉じた。


尻尾が「そんなことありえるわけないでしょ……」と揺れたのに、本人は珍しく慎重だった。


リトリーが歩きながら、肩をすくめる。


「ずっと、らしいよ」


「えぇ!?」


アルティナの尻尾がぴん、と立つ。


「らしい、って」


「年に何回か止むことはあるんだって。数日だけ、とか」


リトリーは指先で、降ってくる粒を軽く払う。


払っても払っても、同じ場所に落ちてくるから、やめた。


「でも当代の聖女さま、歴代でいちばん魔力量が高いらしくてさ。昼も夜も関係なく、ほぼ降らせっぱなし」


「……昼夜問わず?」


カムイが、短く息を吐いた。


「うん。聞いた話だけどね」


アルティナが、その場で立ち止まりそうな勢いで振り向く。


「ソルニア全土を!? この光で!?」


また尻尾がぴん、と立った。


それだけで、びっくりの温度が分かる。


リトリーは頷きながら、呆れた顔を作る。


「ね。やばいよねー」


同情というより、頭を抱えたくなるやつだ。


「大変だろうな……本人が」


ぽろっと落ちたその一言は、私のものだった。


言ってから、自分で少し驚く。


光は軽いのに、その軽さを保つための重さが、どこかにある気がしてしまった。


リトリーが私の顔をちらっと見る。


「そりゃ大変でしょ、国ごとなんて。影霊の心配がないっていうのは、いいことだけどさ」


アルティナが両手を広げて、空を受け止めるみたいにする。


「ほんと……すごい」


粒が掌に落ちて、すぐ溶ける。


溶けたところだけ、肌が軽くなる。


私も手を伸ばす。


光は私の手のひらに落ちて、消えていく。


――冷たさが、まだ奥にある。


でも、表面が少しだけ柔らかくなる。


握っても握っても、冷たさが形になる感覚が、ほんの少しだけ薄まる。


それだけで、息がしやすかった。


△▼△▼△▼△


国境から半日ほど歩くと、道が整ってきた。


石が敷かれている。割れ目は少ない。水が溜まらないように、わざと少し傾けてある。


街道脇には低い白壁が続いて、壁の上に、薄青の布が結ばれていた。


風が吹くたび、布が揺れる。


遠くに、塔が見えた。


丸くて、白くて、空に溶ける形。


塔の周りを、光の粒が渦みたいに回っている。


「……街だ」


アルティナが声を落とす。


わくわくと、同じくらいの戸惑いが混ざった声。


門と呼べるほどの門はなかった。


低い境界の石と、控えめな柵があるだけだ。


――影霊が出ないから、なんだろう。


代わりに、入口の上に彫られた紋様が、静かに見張っている。


白い石に、薄青の線。


光の粒がそこに触れるたび、彫りが少しだけ浮いたように見えた。


門番はいる。でも、こちらを睨まない。


目が合うと、軽く頷いてくる。


その顔が、妙に穏やかで、逆に落ち着かない。


街に入ると、音が変わった。


人の声が、柔らかい。


足音も、布の擦れる音も、どこか丸い。


建物は白い石造りが多くて、屋根は青灰色。


窓枠には花が置かれている。花の匂いが、風に乗って漂う。


道の端には細い水路が通っていて、透明な水がさらさら流れていた。


光が水面で砕けて、きらきら散る。


アルティナが目を見開いて、子どもみたいに首を左右に振る。


「綺麗……! え、なにここ、ずるい……!」


「ずるいって何」


リトリーが笑いながら言って、でも自分も足を遅くする。


カムイは黙っている。


ただ、視線が忙しい。


敵を探す目じゃないのに、いつもの癖で周囲を確かめてしまうみたいだった。


私は――眩しさの中で、影を探していた。


建物の下、荷車の隙間、誰かの足元。


濃い影は、ある。


でもそれは、光が強いから自然と濃く見えるだけ。


嫌な冷気が、湧かない。


それが当たり前になりそうで、怖い。


「まず宿だね」


リトリーが、さっと視線を看板に走らせる。


街は観光客も多いのか、宿の看板がいくつも下がっていた。


白い鳥の絵。


灯りの絵。


……そして、見慣れない文字の上に、やたら可愛い横顔の刺繍。


「あ」


アルティナが指差す。


「見て! あれ、聖女さまじゃない?」


看板だけじゃなく、店先の布にも、壁の飾りにも、同じ横顔がある。


水色の髪。小さな輪郭。柔らかい笑み。


見ているだけで、目が痛くなるくらい“綺麗に整ってる”。


リトリーが頷く。


「アンリミ・ソルニア。当代の聖女さま」


名前が、光の粒の中にすとんと落ちた。


私はその音を、胸の奥で転がす。


アンリミ・ソルニア。


まだ二十歳にもいってないと聞く。


――そんな年で、国ごと降らせっぱなし。


自分の手のひらの冷たさが、また少しだけ疼く。


「……宿、どこがいい?」


私が言うと、アルティナが「清潔そうなとこ!」と即答し、尻尾がぶんぶん揺れた。


「ティーナ、いつもそれだな」


カムイが呟く。


呟きなのに、ちゃんと返すあたりが、いつも通りだ。


「だってさ、汚いと落ち着かないじゃん。あと、ベッドがふかふかのやつ」


「野営してたやつが言う?」


「野営は野営! 宿は宿!」


リトリーが笑って、適当に良さそうな宿の前まで先導した。


白い壁に、青い灯りのマーク。


入口の前に小さな花壇があって、花が揺れている。


……その花壇の横で。


何かが、どん、と音を立てた。


人だ。


人が、ぶつかった――いや、殴った?


声が上がる。


「だから言ってるだろ! 聖女さまの魅力は“微笑み”に集約されるんだ!」


「違う!! 髪だ!! あの水色の髪こそが、我々の魂を浄化するんだ!」


「微笑みだ!」


「髪だ!!」


次の瞬間、拳が飛んだ。


殴り合いだ。


周りに人が集まっているのに、止めようとしない。


止めないどころか、煽ってる。


「そうだそうだ、微笑みだ!」


「髪派を舐めるな!」


「いや、瞳だろ!」


「声だろ!」


「歩き方だって言ってんだ!」


意見が増えるたび、拳の勢いも増える。


アルティナが口をぽかんと開けた。


「え……なに……?」


リトリーが、私の横で肩を落とす。


「……聞いてはいたけど」


カムイは目を細めて、殴り合いの中心を見たまま低く言う。


「止めるべきか?」


その声は真面目だった。


真面目だから、逆に困る。


殴り合ってる理由が、“聖女のどこが最高か”の議論だと分かった瞬間、正しい対応が消えた。


私の頭に、唐突に例えが浮かぶ。


丸いパンがいいか、角ばったパンがいいか。


そんな、どうでもいいのに、なぜか熱くなる二択。


なのに目の前のそれは、二択どころか増え続けて、拳まで飛ぶ。


「……離れよう」


私が言うと、アルティナがすぐ頷いた。


「う、うん。なんか、触れない方がいい気がする……」


尻尾が、珍しく下がっている。


リトリーがため息をつきつつ、私たちを宿の入口から少し遠ざけた。


「この国、影霊はいないけど……別の意味で危険かもね」


「同意だ」


カムイが短く返す。


短いのに、重い。


私たちは喧嘩を視界の端に残したまま、別の宿へ向かった。


背中に飛んでくるのは拳じゃなくて、熱い主張の声だったのが、いちばん怖かった。


△▼△▼△▼△


二軒目の宿は、少し路地に入ったところにあった。


看板は地味で、白い木に「灯りの庵」と彫ってあるだけ。


入口の鈴が鳴ると、中から女主人が出てきた。


白い布のエプロン。髪をきちんと結っている。


笑顔が、疲れていない笑顔だった。


「いらっしゃい。旅の方?」


リトリーが頷いて、部屋を頼む。


女主人は、私たちの顔と装備をちらっと見て、それ以上は詮索しない。


その距離感が、ありがたい。


「上の階が二部屋空いてるよ。光が強いのが苦手なら、窓を少し閉めるといい。……まあ、この国でそれ言う人は少ないけどね」


最後の一言だけ、少し困ったみたいに笑った。


――苦手な人、いるんだ。


私はそれを、胸の中でそっと握る。


階段を上がった踊り場の窓から、街が見えた。


夜のはずなのに薄明るくて、光の粒だけが相変わらず降っている。


カムイが窓を少し開け、外気を確かめるみたいに言った。


「……夜も、こうなのか」


「たぶんね」


リトリーが答える。


「さっきの話がほんとなら」


アルティナが眉を寄せて、尻尾をだらんとさせた。


「寝てる間も、ずっと……? 落ち着かなくない?」


「慣れてるやつもいるんだろ」


カムイが短く返し、視線だけでもう一度空を見た。


光は軽い。けど、軽すぎて、目が疲れる。


リトリーが当たり前みたいに言う。


「じゃあ、部屋割りね。私とシルア。カムイはアルティナと」


あまりに自然で、拒む理由がどこにも浮かばない。


私はただ、小さく頷いた。


△▼△▼△▼△


私とリトリーの部屋は、白い壁で、床は木。


寝具は清潔で、ベッドが二つ並んでいる。


ふかふかの枕の形が、妙に“やさしい”。


廊下の向こう側の部屋から、アルティナの声が聞こえた。


「しあわせ……」


それにすぐ、カムイの呆れた声が重なる。


「早いだろ」


私は思わず、口の端だけで笑った。


リトリーは荷物を下ろしながら、窓の外をちらりと見て息を吐く。


「ねえ、シルア。ここ、ほんとに“明るい”ね」


「うん」


“明るい”の中身が、ただの光じゃない気がして、返事が少し遅れた。


△▼△▼△▼△


荷物を置いて一階に集まると、アルティナが顔を上げた。


尻尾がもう元気に戻っている。


「じゃ、観光しよ! せっかくだし。綺麗な街、見たい!」


リトリーが頷いて、私を見た。


「シルアも、ね」


私は小さく息を吸って、頷く。


「うん」


“うん”の音が、少しだけ軽かった。


△▼△▼△▼△


街の中心に近づくほど、光の粒が濃くなる気がした。


実際に濃いのか、気持ちの問題なのか分からない。


でも、建物の白さが増して、飾りが増える。


旗。花。布。刺繍。


どれも同じ色合い――白と薄青。


そして、あちこちに、聖女の横顔。


市場に入ると、匂いが一気に押し寄せた。


焼いたパンの香り。香草。果物の甘さ。


その中に、薄い香の匂いが混ざっている。


人が多いのに、押し合わない。


声は高いのに、怒鳴らない。


……でも、会話の内容が、だいたい同じ方向へ流れていく。


「昨日の光、少し強かったよね」


「聖女さまがご機嫌だったのかな」


「いや、慈悲が増したのだ」


「今日の横顔の刺繍に新作が出たぞ」


「買うべきだ」


アルティナが干し肉の串を買いながら、目だけは泳いでいる。


「ね、ねえ……この国、大丈夫だよね? なんだか不安なんだけど」


「大丈夫大丈夫」


リトリーが笑って、果実水の屋台を覗く。


屋台の主人が、果実水を注ぎながら言った。


「旅の方? いい時に来たね。今日は聖女さまの祝福が特に柔らかい」


……果実水の話じゃない。


リトリーが曖昧に笑って受け取る。


私も受け取って、一口飲む。


甘い。冷たい。喉が潤う。


でも飲んだあと、なぜか胸の奥が“満たされすぎる”感じがした。


腹じゃなくて、気持ちの方が、先にいっぱいになる。


「シルア、大丈夫?」


アルティナが覗き込む。


「顔、ちょっと……」


「平気」


またその言葉を使う。


平気、は便利だ。


でもここでは、平気が少しだけ嘘くさい。


市場を抜けると、大きな広場があった。


中央に、白い像。


水色の石が埋め込まれていて、光を拾って淡く光る。


聖女の像――だと思う。


顔は、ちゃんと見えないように作られていた。


見えないのに、周りの人たちは見えているみたいに手を合わせる。


「……像に向かって、みんな……」


アルティナが小声で言う。


「ね。すごいね」


リトリーも声を落とす。


カムイは像を見上げたまま、眉だけ動かす。


「信仰、か」


その言葉の重さが、ここでは少し形を変える。


神じゃなくて、人。


人を崇めることの熱さ。


熱さが、殴り合いに変わる。


さっきの喧嘩の拳の音が、広場の静けさの裏に残っていた。


「見て見て!」


アルティナが、露店の一角を指差す。


そこには、小さなぬいぐるみが並んでいた。


水色の髪。白い衣。丸い目。


「可愛い……!」


「それも聖女さま……だね」


リトリーが言う。


店主が、待ってましたとばかりに身を乗り出す。


「旅の方々! これは最新の“アンリミ様”だよ。髪の刺繍が違う。違いが分かる人は、人生の光が増す!」


「人生の光ってなに」


リトリーが半笑いで呟いた。


アルティナは本気で悩み始めている。


「買う? 買わない? ……でも可愛い……」


「ティーナ、落ち着け」


カムイが言うと、アルティナは「うぅ……」と唸った。


尻尾が揺れて、買う方向へ傾きかける。


結局、リトリーが首を振って、手を引いた。


「今はいい。荷物が増えちゃう」


「正論……!」


アルティナが悔しそうに言う。


広場の先には、さらに大きな建物が見えた。


白い大聖堂。


扉は開いていて、中から歌声が漏れてくる。


歌声は綺麗なのに、少しだけ怖い。


整いすぎていて、人の揺れがない。


私は足を止めた。


入りたい、とは思わない。


でも、目を逸らすのも怖い。


自分の手のひらを、そっと握る。


冷たさはまだある。


だけど、光が落ちるたび、冷たさの“輪郭”がぼやけていく。


それが、救いなのか、麻痺なのか、分からない。


「……シルア」


リトリーが、私の歩幅に合わせて声を落とす。


「無理しなくていいよ」


「うん」


私は頷いた。


無理、の定義が、まだ分からない。


この国は優しい。


優しすぎて、胃にもたれる。


そんな感じ。


△▼△▼△▼△


夕方になると、街の灯りがついた。


灯りがついても、空からの光は止まらない。


だから、夜が来るのに、暗くならない。


薄い明るさがずっと続く。


影が伸びても、濃くならない。


路地でさえ、怖くない。


……怖くないことが、怖い。


道を歩いていると、突然、人だかりができていた。


また喧嘩かと思って身構えたけど、違う。


男たちが、道の端に整列している。


整列、という言葉が似合うくらい、揃っている。


その真ん中を、一人の少年が走ってきて叫んだ。


「聞いたか!? 今日は聖女さまが窓を開けたらしいぞ!!」


「……窓?」


アルティナが呟く。


次の瞬間、人だかりがざわっと波打つ。


「窓だと……!」


「光が、直接……!」


「尊い……!」


尊い、という声が、いろんな方向から飛ぶ。


それが祈りみたいで、でも祈りより生々しい。


リトリーが、乾いた笑いを漏らした。


「……聖女さまでお腹いっぱいになる」


「分かる」


アルティナが真顔で頷く。


尻尾が、元気なのに、ちょっと疲れてる。


カムイは少し遠い目をして、短く言った。


「……疲れるな」


宿へ戻る道の途中、パン屋の前で人が言い合っていた。


「今日の聖女さまの加護は“眩い”」


「いや、“透き通ってる”だ」


「お前は分かってない!」


言い合いは、拳にならない。


代わりに、真剣すぎる目が怖い。


私たちは、なるべく関わらないように歩いた。


綺麗な街を見に来たはずなのに、見えるものが全部、同じ顔をしている。


聖女の横顔。


聖女の刺繍。


聖女の像。


聖女の話。


影霊がいない代わりに、街、国全体が一つの影みたいに――


そう思って、私は慌ててその考えを振り払った。


影、なんて言葉にしたくない。


ここは光の国だ。


光が強すぎる場所ほど、影は形を変える。


だから私は、余計に黙ってしまう。


宿の前に戻る頃には、胃が物理的に重くなっていた。


食べたのは串肉とパンだけなのに。


食べたのは、言葉だ。


尊い、可愛い、加護、奇跡。


口にされるたび、胸に詰め込まれていく。


△▼△▼△▼△


部屋に戻ると、リトリーがベッドに転がって呻いた。


「……おなかいっぱい……」


「あまり食べてないのにね」


私が言うと、リトリーは枕に顔を押しつけたまま、ふっと笑った。


それから起き上がって、窓際に腰を下ろす。


外は夜のはずなのに、薄明るい。


光の粒が、まだ降っている。


「ねえシルア」


リトリーが窓の外を見たまま言う。


「ソルニアって、思ってたより“重い”国だね」


「……うん。重いね」


リトリーが背伸びして、ふっと息を吐く。


「影霊がいないって、もっと“静か”だと思ってたんだけどな」


「静かじゃない」


私が言うと、リトリーは頷いた。


「うん。平和すぎて、元気が余ってる感じ」


元気、という言葉が妙に合う。


元気すぎて、殴り合う。


元気すぎて、尊い。


私は枕に顔を埋めたくなるのを堪えて、手のひらを見た。


冷たさは、まだ残っている。


でも、境界を越えてからずっと、少しずつ薄くなっている。


いつか消えてしまうのか。


それとも、薄まったまま残るのか。


リトリーが、突然、軽い声を出した。


「ねえ」


その声は、いつもの明るい声だった。


「次、どこの国に行こっか?」


「え!?」


「あはは。冗談冗談」


私は枕から顔を上げて、リトリーを見る。


リトリーは笑っている。


でも、目の奥がちゃんとこちらを見ている。


私は、息を吸って――吐いた。


「……明日は、もう少し静かな観光がしたい」


それが答えかどうか分からないのに、リトリーは満足そうに頷いた。


「よし。じゃあ、街の外でも歩いてみよっか」


きっとそれがいい。


この国に慣れるのは、もう少し時間がかかりそうだから。


部屋の外から、遠くで誰かの声がした。


「聖女さま……!」


その声が祈りなのか、愛なのか、執着なのか。


区別がつかないまま、光の粒だけが、静かに降り続けていた。

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