表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/6

第1話 プロローグ「謎の黒フード、現る」

【ダンジョン配信】


深層でモンスター暴走!?→現れた謎の黒フードが強すぎた件【ゆなちch】





画面の中、ダンジョンの暗闇を照らすのは、懐中ランプのかすかな光と、探索者スーツに内蔵されたステータス表示のUIだけ。


息を荒げ、壁に背を預けながら、少女がカメラ目線で呟いた。




「……まじでやばい。マジでヤバい。なんで深層7階にAランク級のモンスター湧いてんの……?」




画面右下に設置されたチャット欄が一斉に動き出す。



>

【草】

【これバグ湧きじゃ?】

【管理局何してんの】

【っていうか一人で深層入るなってあれほど】

【新装備見たかっただけやろ?】




「ぐだぐだ言わないで!……あたしだって、深層でS装備拾って見せたかっただけだよ!」



息巻きながらも、少女──人気配信者《神楽ユナ》は、震える手で杖を構える。


通路の奥からは、黒い瘴気をまとった異形の獣がゆっくりと姿を現した。



「……ッ、"深層災害級"……!? ありえない、こんなの……っ」



背筋を凍らせる唸り声。魔力の濁流。

撤退すら間に合わない。


死が、確実に迫っていた──その時。


 


ザシュッ。


重く、鋭い音が響いた。


何かが斬られた音。だが、それはユナのものではなかった。


彼女が振り向くより先に、画面には“何か”が飛び込んでいた。


 



それは、黒いローブに身を包んだ男。


いや──ただの男、ではなかった。


空気が変わる。映像越しにも伝わる“異常さ”に、視聴者たちも凍りつく。


 


「……モンスターが暴走? また管理局はサボってるのか」



男の声は低く、抑揚がない。だが、その足元に倒れる異形の死骸が、彼の“強さ”を何より雄弁に語っていた。


 



ユナが何かを言う前に、男は一歩、前へ進んだ。


そして──ただ、一閃。


 


黒の残像が空を裂く。


次の瞬間、災害級モンスターの首が、宙を舞った。


爆風が吹き荒れる。ユナが吹き飛ばされ、映像がブレる。


ようやく立ち上がった彼女が見たのは、静かに剣を収める黒ローブの背中だった。


 


「……助かった、の?」


彼女の呟きに、男は何も答えず、ただ、闇の中へと消えていった。


 


映像は、そこで途切れた──








【チャット欄 アーカイブ抜粋】


>

【は???】

【なんだ今の】

【エフェクトおかしくね?】

【あれAランクじゃねえぞ】

【いやSでも無理だろ】

【あいつ誰だよ】

【まさか……“黒影の英雄”……?】

【生きてたのか!?】







《神楽ユナch》配信後ツイート:


>

「えっと……今日の配信、ヤバい人に助けられました。誰か知ってる?

#黒フードの人」







そして、その夜──


匿名掲示板《ダンジョン情報共有スレ》に、こんなスレッドが立つ。




【速報】深層で災害級モンスターを一刀両断した謎の黒フード、正体は誰だ? Part1




> 1:名無しの探索者

はい、今日の配信で見た。マジで一撃。ガチでヤバいやつだった。

「動きがあの人に似てる」って言ってる奴がいたけど、誰だかわかる?



> 5:名無しの探索者

黒影の英雄……昔、最強ランカーだったけど、5年前に消息絶ったって噂の?



> 12:名無しの探索者

やっぱりあの人、生きてたのかよ……




 




だが、当の本人──

黒フードの男、黒瀬 くろせ・りくは、アパートのソファで伸びながら、ポテチを食べていた。


 


「……やっべ。つい斬っちゃった。目立ってないといいけど」


 


テレビでは、ユナの配信がニュースに取り上げられている。


彼はリモコンをぽちっと押して、電源を切った。


 


「……明日もバイト、だるいな」


 


──世界最強の男は、今日もただのフリーターを演じている。


だが、彼の静かな日常は、この配信をきっかけに、徐々に崩れ始めていた。



初投稿になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ