表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑う警官と硝煙の街(まち)  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/44

第二十一話『夜を統べる者』

クラウド・ゼロの中枢に通じる“鍵”を手に入れた日向たちは、ついに都市政府第七庁舎へと潜入を図る。

だが、そこに待っていたのは、情報管理庁の最強の警備システム、そして……ある女の影だった。

夜の帳が落ちる中、光なき真実が牙を剥く。

 第七庁舎。

 都市でもっともアクセスが制限された建造物のひとつ。

 ガラスと鉄骨でできた無機質な構造は、まるで巨大な墓標のように夜空にそびえ立っていた。


「……入り口のパス、通ったわ」


 リオナがノートパッドを閉じる。

 侵入ルートの制御は完了した。だが、内部に足を踏み入れるのは初めてだ。


 日向はジャケットの中に拳銃をしまい込みながら、ぼやいた。


「なあリオナ。今から言っても遅いけどさ……ここ、マジでヤバいとこなんじゃねぇの?」


「今さら遅いわ。警告してもあんた聞かないし」


「うん。だよな。俺、バカだし」


「知ってる」


 二人はひっそりと笑い合いながら、重い防火ドアを押し開けた。


 薄暗い廊下。無音。監視カメラの死角を縫って進む。

 だが、異常に気づくのは早かった。


「……静かすぎる。何か、おかしい」


 リオナの目が鋭くなる。

 庁舎の警備は、セキュリティドローンが巡回しているはずだった。だが、ここには一台もいない。


「歓迎されてる、ってわけでもなさそうだな……」


 日向がそう呟いた直後、――空間が歪んだ。


 廊下の先、突如現れた黒い影。人影。それは音もなくこちらへと歩み寄ってくる。


「誰……!?」


 リオナが警戒して後退した。


 影が明かりに照らされる。

 現れたのは、長い黒髪と高級スーツに身を包んだ――一人の女性だった。


「……久しぶりね、日向クン」


 日向の顔色が変わる。


「……あんた、なんで……!」


「覚えてない? 私、国家情報庁第六課・局長代理。名倉マリア。あなたの“かつての上司”よ」


 マリアはにっこりと笑った。その笑顔は美しく、そして底知れなかった。


「君たちが手に入れた“鍵”……あれ、わたしが意図的に流したの。クラウド・ゼロに本気で近づく存在が欲しかったから」


「……利用する気だったのか、俺たちを」


「もちろん」


 あまりにも素直に答えるマリアに、日向は毒気を抜かれたようにため息をついた。


「マジかよ。女の好み、もっと真面目に見直すべきだったかもな……」


「そうしても、あなたはきっと“真実”に惹かれるのよ。危険で、甘くて、毒のような正義に」


 彼女がスーツの内側から取り出したのは、携帯用の神経毒注射器。

 細く、銀色に光るその針先が、リオナの首に向けて放たれ――


 ――だが、銃声がそれを遮った。


 日向が撃ったのは天井の非常警報用センサー。

 スプリンクラーから水が降り注ぎ、警報が鳴り響く。


 その隙に、リオナが飛び出してマリアの腕を払い、注射器を地面に叩きつけた。


「……あら、やるじゃない」


 マリアが楽しそうに微笑む。


「さあ、ここからが本番よ。クラウド・ゼロの中枢、“第七データコア”へようこそ」


 その背後の壁が、音もなく開いていく。


 日向はリオナを見た。

 リオナも頷く。


「行こう。あの笑顔の裏にあるもの、ぶっ壊すまでな」


 その一歩の先に、都市の“真実”が待っていた。

旧知の上司・名倉マリアとの再会。

その裏に見え隠れする陰謀と謎、そして加速する陰謀。

次回――第二十二話『第七コアの扉』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ