表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/44

第十三話『影の交錯』

裏社会で蠢く“パララックス”の存在が明らかになった。

都市のどこかで、リオナの記憶を狙う者たちが動いている。

日向とリオナは、闇の中へ踏み出す。

 夜。都市の裏通りに雨が降る。街灯がぼやけ、アスファルトを濡らす。


「なあリオナ……腹減ったな。ラーメンとか、どう?」


「敵のアジトを探ってる最中にラーメンって……あんた、緊張感って言葉知らないの?」


 ふたりは、情報屋“カシワギ”の経営するジャンク屋の前にいた。

 そこは違法改造されたガジェットが並ぶ胡散臭い倉庫。公安も見て見ぬふりのグレーゾーンだった。


 扉を開けると、錆とオイルの匂いが襲いかかる。

 カシワギは細身のスーツ姿で、鼻眼鏡をかけた奇人。だが情報の精度は群を抜いていた。


「おぉ〜……リオナちゃんに、日向のおバカ刑事。珍しい組み合わせだねぇ」


「おバカは余計だ」


「ふふん、照れるなって。で、何の用だい? 裏稼業の方が板についたか?」


「“パララックス”について話を聞きたい」


 その名前を出した途端、カシワギの表情が硬直する。

 周囲の監視カメラを切り、シャッターを下ろした。


「……その言葉、軽々しく口に出すんじゃない。今どき、あいつらの影に触れた奴は“記憶”ごと消されるんだ」


「知ってる。けど、関係者が近くにいる。こいつが、狙われた」


 リオナが静かに一歩前に出た。

 カシワギは目を細めた。


「なるほど……この娘が。そうか、なら話は早い。都市東部、“デッドライン”に最近変な動きがある」


「デッドライン……スラムの最下層か」


「あるビルの地下。通信も監視も一切通じない空間だ。旧式のインフラを利用した密室構造……“記憶の交換所”って噂もある。そこにパララックスが拠点を置いてる可能性がある」


「情報の確度は?」


「五分五分だ。でもな、リオナちゃん。あんたが記憶の鍵なら、行けば“開かれちまう”ぞ」


 リオナは黙って頷いた。


「行くしかないでしょ。私の“正体”を確かめるには」


 カシワギが苦笑いを浮かべる。


「ったく、正義感でもなく、真実でもなく……好奇心で死にに行くのは若者の特権かね」


 日向が立ち上がる。


「どっちにしろ、俺が止めても行くんだろ? だったら、バディとして付き合うさ」


「バカのままなのも、また特権だねぇ」


 情報屋の言葉に、ふたりは苦笑いを返す。


 都市の底に、何が潜んでいるのか。

 ただひとつ言えるのは――誰かの記憶を奪えば、世界は簡単に変わってしまうということ。


 日向のジャケットの内ポケットには、小さなICレコーダーが忍ばせてあった。

 真実を、記録するために。

“パララックス”の拠点はスラムの底――“デッドライン”。

次回、第十四話『眠る街、叫ぶ記憶』

ふたりは、都市の深層へ足を踏み入れる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ