07.気迫で人を倒せる、私は特別なのだ!
「世名さん、やっぱり僕のこと……」
「やっぱりってなんだよ、やっぱりって!?お前ちょくちょく怖いぞ」
「秀くんは黙ってて」
「お前ら揃いも揃って俺の扱いが酷いな!というか、いつから聞いてたんだよ?」
東雲秀が不思議そうに聞いてきた。
「いつって、もちろん最初からだけど」
「逆に君は気づいてなかったのかい?」
あんなにわかりやすく視線を向けられて無視するほうが難しかったぞ?
「お前……こんなところでも天才だと言いたいのか?そして知怜、もちろん!?普通に怖い!」
「そんなことより!」
「おい人の話を……はぁ、面倒になってきたな」
東雲秀のため息は無視しつつ大事なことを伝える。
「3週間後に中間テストがあっただろう?そこで勝負だ!」
師匠として才田知怜に現実をわからせて「落とす」ことは大切だからな。
まぁこいつからすれば運よく気づけた首席の座を奪われる可能性があるわけだから断ろうとするはずだが……
「わかったよ!」
え?即答?
どういうことだ、当然勝てるから恐れるに足らないとでも言うつもりか?
舐められたもんだな!
私は席を立ち、才田知怜に近づいた。
言葉でわからないのなら気迫で魅せる!
「その浮かれた面を見せられるのもあと3週間だ、お前は来月には現実を知らな
かった頃の自分を後悔するハメになるんだよ!」
「せせせせ世名さん!?ちょっ、顔、近っ……」
「そういえばアイツ女子の耐性全然ないんだっけ」
才田知怜の顔がどんどん赤くなっていく。
ふっ、やはり私の気迫の前では平然と立ち尽くすなど不可能!
……なぜか東雲秀は平然と喋っているが。
「どうしたんだ?急に怖気づいたのか、せいぜいテスト当日まで……」
「いや!ホントに!む、り……」
バタン
「嘘だろ!?」
東雲秀が叫ぶ。
……気迫が聞きすぎたようだ。
「才田くん!?」
「えっ、才田!大丈夫かよ……」
「急に倒れたな……」
教室は大混乱に陥る直前だ。私に責任がないとも言えないか、しょうがないここはもう一度私が気迫で場を落ち着かせよう……
「なぁここのクラスに墨田るいって人……ってどうしたんだよ!えっおい倒れて、大丈夫か!?」
私が気迫を出す前に廊下から一人の男子生徒が現れた。
いや、ちょっと待てよ。こいつ墨田るいって言わなかったか?それにそのムカつく整った面は……
「お前が諸悪の根源、明智蒼汰か!」
「今それ重要か!?」
「君はこの子の友達か!なんで倒れたか分かるか?」
「えっ、世名が近づいて……いやなんでもない。多分興奮しすぎただけだと思う」
「わかった。とりあえずこっちは動かさずに保健室の先生を呼んでこよう」
明智蒼汰(推定)は東雲秀に質問しながらスムーズに対応を進めていった。
……こうやって人を誑かしていってるのか。外道め……
「明智蒼汰!お前には明日にでも現実を教えてやる!」
「今本当に緊急事態だろ!ちょっと黙れ!」
東雲秀が本気のテンションで言ってきた。
……
知怜は無事だったが、当然昼休みは潰れた。