06.弟子の一人や二人いる、私は特別なのだ!
「それじゃあ、明智蒼汰について教えてくれ。彼の行動が目につくようになったのはいつ頃からだい?」
「目に付く……?えっと、気になり始めたのは入学式の後だよ。クラスを間違えて1組の方に行っちゃってさ、あたふたしてたら助けてくれたんだよね。私のクラス探すのも手伝ってくれて教室まで送ってくれたんだよ!これはもう惚れるしかないよね!あとイケメンだし」
なるほどな。
クラスを間違えてしまった彼女のことをクラスメイトの前であげつらい、わざわざ教室を探すなどして恩を着せてきたと。
さらに面がいいのが気に食わないというわけだ。
彼女はなんていい考えを持っているんだ!
一見善意の行動のように見える男子生徒の行動から隠されたゲスい本性を見透かすなんて!
その批判的思考力は私のような天才の域には届かなくとも素晴らしいものだ!
更にそれをまるで男子生徒のことを好意的に感じているかのように言うなんて。
分かる人には分かる皮肉……最高だな!
あぁ、話せば話すほど好感度が上がっていく……。
最近の君とは大違いだな、東雲秀!
「気に入った!特別に君を私の弟子にしてあげよう、墨田るい!」
「え?」
「なんだい?東雲秀」
「いやお前、この子の名前ちゃんと覚えてたんだな」
「はぁ、君は私のことをなんだと思っているんだ。いいか?私は天才なんだ、名前ぐらい全く興味がなくても覚えられる」
「興味は持てよ」
こいつは人に文句を言わなければ満足できないのか?
「弟子……?よくわからないけどありがとう!えっと、じゃあアドバイスとかもらえないかな?」
「あぁいいぞ、と言いたいところだが残念ながら今日は忙しくてね。放課後でもいいかい?」
「あっそうだったの!?ごめんね急いでたのに相談しちゃって。じゃあ、また後で!」
「あぁ」
墨田るいは元気に帰っていった。
「可愛そうだな、あの子も。これから勘違いした世名による頓珍漢な教えを披露されるわけだ」
「頓珍漢とは何だ、頓珍漢とは。それに私は勘違いしてない。私は言葉の表面的な意味ではなく話す人の真意まで読み取れるのだ。勘違いなどありえない」
まぁ一見すれば墨田るいは明智蒼汰に好意を持っているように見えるからな。
説明してもどうせこいつは信じないだろうし、解釈がすれ違ってしまっているのもしょうがないことだ。
「まぁただ今のままだと彼女が少し可哀想なのは事実だ。実績のない師匠に教わるなど嫌だろうしな。弟子のために私もしっかりと才田知怜を落とすことにしよう」
私は後ろの席を見た。
「盗み聞きは感心しないな、才田知怜」