11.友人Aの寝返りなどで天才は動じないのだ!
「とりあえず、文系科目はいけるから、数学と物理を教えてほしくて……」
放課後、私達は教室に残り勉強を開始することになった。
もちろん私は勉強を教える気などない。この勉強中に私の力を見せつけて、明智蒼汰に現実を見せてやるのだ!
そもそもこいつも勉強を教わる気などなく、ハナから私を誑かすのが目的だろう。そのような外道には遠慮なくいかせてもらうぞ!
「ならば数学から行こうじゃないか!テスト範囲はなんだ?東雲秀」
「俺を便利屋のように使うな。はぁ、多項式の計算だろ」
タコウシキ?初めて聞く単語だが、とりあえず問題を見てみる。
「この練習10からわからなくて。(x+2y)²ってどうするんだ?」
「あぁこの問題か、これは(x+2y)²を(x+2y)(x+2y)と考えて……」
「ちょっと待て世名。お前授業寝てたよな、なんで分かるんだよ」
東雲秀、君は天才のことを舐め過ぎじゃないか?
「これくらい問題を見れば何となく分かるだろ?中学までに習ったことの応用なのだからわざわざ説明を受ける必要などない!」
「お前は全国の高校生に土下座しろ!」
今までで一番気合の入った声が聞こえた。なんなら才田知怜が倒れたときより気合が入ってる。まぁ別に東雲秀の反応はどうでもいいのだ。大切なのは明智蒼汰にマウントを取れているかということ……
「あぁなるほどな!こんなにわかりやすく教えてくれるなんて……神谷は本当にすごいな!」
なに!全く悔しがってないだと……
現実を教える→悔しがる→更に現実を教える→崇拝の流れで行く予定だったのに計画が崩れた……。
まさかっ、相手を過剰に褒めることによってたぶらかそうとしているのか!?本当はこんな簡単な問題わかっているが教えさせることによっていい気にさせようと……?
明智蒼汰、なんて強かな相手なんだ。くそっ、こいつがわからないような難易度の問題を探してやる!
「次に行くか!応用1だ。(x+y+z)²これは(x+y+z)²を(x+y+z)(x+y+z)と考えて……」
「おい、ちょっとペースが早すぎないか。応用はもうちょっと練習してから……」
「うるさい、東雲秀!真剣勝負に口を出すんじゃない!あっち行ってろ!」
「真剣勝負ってなんだよ……」
今ので分かった。東雲秀は完全に寝返っている。ここはちょっと退場してもらおう。
次回、やっと知怜が登校します。




