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『バランスねぇ……』
女神、かなり丸投げを決めてくるな……。結局俺の匙加減かよ。
「どれを選んでもいいのか?なんなら全部の能力が欲しいんだが」
ダメ元で行ってみる。
「流石に全部を一人に授けるわけにはいかんのぅ」
サンタ爺はふかふかの髭を撫でながらつぶやく。顔は笑っているが、目が笑っていない。
あ、もしかして怒った?
「じゃあ、それぞれの種族から1つずつでいいから、力を授けてくれよ。袖振り合うも他生の縁っていうだろ?俺、頑張るからさ」
最高のスマイルを見せる。無料で出来ることはやっておくに越したことはない。
「それでは俺からは魔族の源である魔力を授けよう」
醤油顔の天使長があっさりと答えると、握りこんだ拳から黒い霧を出すと、手の平を俺に向かって翳す。
「受け取るがいい」
黒い霧状の何かは、俺のまわりを漂うと、俺の中に流れ込んでくる。
体の内側から熱い何が、全身に染み渡るような感覚を味わっていると、女神が困った顔をしながら呟く。
「もう、勝手に決めちゃって。じゃあ私はその魔力を使うための魔法を授けましょう」
今度は目の前に大きな魔法書が現れたと思ったら、凄まじいスピードでページが捲れていく。
「じゃあワシは頑強な肉体を授けるとするか。ガハハハハ」
ドラゴンが鼻息荒く笑い声を上げると、突風が俺を体を駆け抜ける。
サンタ爺は俺をジッと見つめながら、何やら考えているようだ。
「これで一通り終わったわ。それで?お主は勇者・魔王・ドラゴンのどれを選ぶ?」
サンタ爺が俺を覗き込んでくる。
その瞳は金色に光り全てを見通す、そんな雰囲気が感じられる。
「今はどれも選ばない」
三人と1匹の片眉がピクリと上に反応する。
「バランスを取れということだった。現地を見てみないと何とも言えない。ここで何れかを選んでしまったら、現地に行ったときに早速バランスが崩れるとも限らない」
社畜は慎重でなければならない。軽々に出来ます、やりますと言って、どんだけ大変な目にあってきたか。言質を取らせてはダメ、絶対。
「んー、確かに一理あるのぅ。ただお主には、ちと力を与えすぎた気もする……。仕方ないのぅ。儂もバランスを取るとするかのぅ」
サンタ爺の一指し指が俺を指すと、空気が割れんばかりの凄まじい波動が俺を襲う。
『凍て〇く波動ってこんな感じか?それって大魔王の力では……』
なんて考えていると、ちょっとした脱力感が残っている。
「いきなり強くては、バランスも取りづらかろう。儂からは、成長する楽しみを与えてやったぞ。厳しい環境に身を置くことを好んでおるようだしのぅ」
なんということでしょう。ここに来て、まさかのデバフ発動ですか?決して好きでいた訳では……。もしかして、懐かしんでいたのを金色の目で読み取られてた?
「それではそろそろ時間のうようじゃ。新しい人生を楽しむがよい。もう後悔はしないようにのぅ」
サンタ爺が声が段々遠くに離れていく。