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学級七不思議

アカツキ ヒイロ。

クラスメイトの名前さえ覚えられない僕は、当然ながらその名前を聞いたところでピンと来ない。

ヒイロの噂は火事にまつわるものがほとんどだから、あまりその噂を聞こうとも思わなかった。

しかし教室だけに留まらず、学校中で噂されるためなんとなくだが存在自体は知っていた。

ヒイロは火事の時に助けてくれたヒーロー…らしい。だとしたら僕も感謝すべきなんだろうな。僕も巻き込まれていた訳だし。

それでもやっぱり記憶は無くて…

同年代の火事に巻き込まれた子達が当たり前のように火の話をする時、ヒイロの話題が出てくる。

それは部活や居残りの生徒がよく見る茜色の空の時間帯に、よく話される。

なぜかは知らない。


火の色を連想させるから、僕は夕焼けをあまり見たくないのだけど、その日は学級日誌が書き終わらなくて、居残りをさせられていた。


【オレさ、昔火事に巻き込まれたことあんだけどさ…全然火が怖くねーんだよな。】

【あ、それ俺も!なんだったら火事のすぐ後も怖がってなかったって母ちゃん言ってたぜ。】

【颯爽と助けてくれた、俺たちよりも小柄な少女…その正体は少年!名前はアカツキヒイロ!】

【赤っぽいっていうか…火みたいな名前してるからさー…オレはすぐ後は火が怖かったんだけど、名前言う度に安心していったんだよなー…】


わからない。

誰だ、それ?


【なあなあ、そういえば夜樺って火事現場いたか?】

【え?うん…】

【あー、それで火が怖いのか!大丈夫だぞ!ヒイロヒイロって唱えてみ?】

【ヒーロヒーロヒーロ…】

【ヒ()ロだよ…】


発音だけじゃ分かりづらいものだな…


【安心しなって夜樺くん…僕も覚えてない!!】


…誰だっけ…


【え、お前マジで?】

【うん!大マジ!】

【まあ、3、4歳くらいの話だしな…無理もないか。】


そんなに昔だったっけ。巻き込まれたの…


【あ、そろそろ帰らなきゃ。父さんに怒られちゃう!】

【…】

【お前の父親ってさ…怖ぇの?】


…名前は覚えてないけど、自己紹介カードになんか書いてあった気がする。


【めっちゃ怖いよ】


父親一人とたくさんの母親に育ててもらったって。


【…そっか、じゃあ早く帰んねえとな!】

【うん、バイバイ!】

【じゃあなー】


その時は、そんな感じで会話が終わった気がする。

名前は分からないけど、クラスメイトだ。それに霊力を持っていたから、つい最近リストに記載しといた筈…

「…ああ、原石くんか。」

朝のSHRが始まる前に、前にメモしたリストを確認した。

原石直中くん。かげくんがよく見えていたっぽいから、霊力は多分高いんだろうな。

「呼んだ?」

そんなことを教室で考えていると、後ろから声が聞こえた。

「…いや、そういえば原石くんもヒイロを覚えていないんだなって。」

「うん!だって僕、その時まだ三歳だよ?」

「…それもそっか。」

物心つく前というのは、記憶があやふやなものだ。まあ、僕は物心ついても記憶があやふやなんだが。

「それがどうかしたの?」

「いや、僕だけ覚えてないのかって思ってたから、なんか安心しちゃって…」

そんな感じで一息ついていると、衝撃の爆弾が投下された。

「あー…つっても僕、夜樺くん程酷くはないよ?」

「え?」

『アキラ、原石くんは社会科テスト満点だよ。』

「え?」

なんと原石くん、僕とは違って記憶系のテストの点数がとてもいいらしい。

因みにかげくんはもう三年一組公認の存在なので、遠慮なく出てきている。

「え、裏切られた。えーんえーん」

「協定も結んでないわ!下手くそな泣き真似ヤメロ!」

『アキラ、教科書読むの面倒臭いのは分かるけど、読まないで覚えられるわけないでしょ。』

「これだから面倒臭いんだよ記憶系って!」

数学は授業聞いてりゃ規則性分かるからどうとでもなるのに…

「え、こいつ教科書…」

『読んでない。正確には、授業中しか読んでない。家では英語を勉強しないと赤点スレスレだから、構ってる暇がないんだよね。』

仕方ないじゃん…中1で社会科の教科書読んでたら英語の時間が減って英語40点とか取ったんだから…

「アホ…いや、ある意味天才?」

『アキラ、国語は運ゲー数学は無双英語は無理ゲーっていう感覚だからね…』

「英語は勉強したって64点だったけどな!」

キレるぞ!

………ゲームしたい…

「…何がダメなんだよ…」

「全部イヤ。頑張んなきゃいけないのイヤ。」

「…救いようがねーな。よし、諦めよう!」

『呆れられてるよアキラ?』

「ぴえん」

泣くぞ。失望しないでよ~!

…だからといって期待されるのも嫌だけど…

「…それにしたって、今我が家汚いんだよな…」

「あー…僕の家もなんだよ、それ。」

『アキラはまず雑巾がけよりも先に物を片すことから覚えようね?』

僕の部屋、本とかが棚に入りきらなくて床に置いちゃったり、脱ぎ捨てっぱなしの靴下とか髪拭くタオルとか散乱してるんだよな…

「なあなあ、明?」

「ん?」

「ヒイロは僕ら覚えてないけどさ…なんか、秋ちゃんはヒロって言ってなかった?」

…そういえば、そうだな。

「…僕の記憶違いかと思ってたけど、そうなんだね。ヒロって確かに言ってた…気がする。」

「最後の最後で自信が無くなっていくスタイル。」

『アキラに記憶系を頼っちゃダメだよ。』

と言っても僕は、両方とも知らないのだけれど…

「僕、ヒイロじゃなくてヒロなら、なんか記憶に引っ掛かりそうなんだよね…」

「え、マジで?」

『そっちなら思い出せそうなのか…』

原石くんは、完全に忘れたわけではなく、イントネーションに引っ掛かりを覚えたらしかった。

「うーん…ヒロ……ヒロ…と言っても、やっぱ思い出せないんだけどな!」

「そっか!」

まあ、普通十数年前の事なんか思い出せないよな。

今確定しているのは、アカツキという名字くらいか…そういえば…

「…何でそんなに情報少ないんだ?今更だけど…」

「昔のことだからとかじゃないのか?」

…そうなんだろうか。

「ヒ…ロ?イロ?……アカツキでいっか。アカツキはいつから探されてるんだ?つい最近なのか?」

「……そういえば、いつからだろ?」

『アキラが小学生に入ってからは、アカツキどころか火災ビルさえテレビにも流れなくなったしね…』

そうだったのか。知らなかった。

「かげくん、めっちゃテレビ見てたんだな。」

『アキラがすぐ子供番組に切り替えちゃうから、こっちの情報だって万全じゃないけどね。』

おっと、何か僕が悪い感じになってるけれど、子供が子供番組見るのなんて普通のことだよね!?

「え、マジで!?」

「…いきなり大声を出すな海藤。」

「相変わらずドライだな、直中。」

いきなり会話に乱入してきたのは、海藤蓮間くんだ。

「ていうか明、お前ニュース全然見てねーの!?」

「今は見てるよ。…昔は知らなかったけど。」

「信じらんねー…普通見るだろ!命の恩人の名前が!テレビに!!載ってるんだぞ!!!」

元気だなー…めっちゃ肩掴まれて僕の頭をぐわんぐわんさせてきてるけど。

『…アキラは…火事のあと、暫くテレビ見れなかったからね。』

いまいち思い出せないが、見ていなかったらしい。

『何か記憶に残ってないか、調べてくるよ。』

「うん、いってらっしゃい」

そしてかげくんは、僕の中に入っていった。

「え、どこ行った?」

「多分、記憶保管所。」

かげくんは肉体に縛られない分、脳の容量や人の本来あるリミッターを全て解除しても問題無いため、多くのことを記憶可能だ。その代わり、記憶を引き出すのに時間がかかるため、ちょくちょく物理的に記憶を整理しに行っているらしい。なんでも、記憶保管所なる場所があるらしいが…どうやって行くのかは、僕も知らない。

「多分僕の中にあるんじゃない?」

「それで明くんの中に入ったのか。」

「聞き用によっては前回のラストのせいでだいぶエッチに聞こえたり…」

「飯嶋さん?」

「あっはいごめんなさい…」

飯嶋さんも会話に加わった。原石くんから凄く睨まれている。即謝罪しててウケた。

「前回のラストはおいといて…三人とも、そろそろ秋雨ちゃん来ちゃうよ?」

時計を確認すれば、SHR開始一分前だった。僕は元から自分の席で話していたため問題は無いが、飯嶋さん含め三人とも、そろそろ席に着いた方がいいだろう。そう思ったが、三人とも席に座らない。

「…戻らないの?」

「秋雨先生来るの、もうちょい後だろ。玲帑?」

戻らないのかと聞くと、海藤くんは後ろに座っている菅原くんに向けてそう確認をするように話しかけた。

「うん。今日は一年生の方から行くって言ってたから、俺たちのクラスに来るのは早くても十分後じゃない?」

聞けば、いつも同じ所から行っていると、SHRが早く終わるクラスと遅く終わるクラスが出てしまう。そうすると不満が大きくなる可能性があるため、できるだけ平等にまわるようにしているらしい。

つまりは一番目から最後のクラスをローテーションしているというわけだ。

「なるほど…」

でも、菅原先生自身がすぐに来ないとはいえ、問題あるんだけどな…

「あれ?一年生の方でもクビの先生出たの?」

「らしいよ。一年三組の…誰だっけ。」

「花山先生。私の妹のクラス担当だった人。」

結局何も言い出せないまま、桜音妻まで会話に加わってしまった。

「そっか、咲希さんの妹さん、一年生だもんね。」

婭都(あと)は血気盛んだし、家庭訪問不安だなー…」

婭都さん、というらしい。桜音妻さんとは腹違いの姉妹なんだとか。

「ていうかお前らさ、七不思議確かめねーの?」

「…」

「…」

「………直中と明に言っているんだけど。」

「え、ごめん…」

気づかなかった…

「確かめるわけないだろ。あんなのただの噂だ。」

「やけに自信満々だな、直中。」

「当たり前だろ。」

七不思議?噂?この学校にそんなのあったっけ?

「…二人とも、夜樺くんめっちゃ何も分からなさそうなんだけど。」

何も分からず困惑していると、僕の心を代弁するような声がした。

「「え、待って嘘…えええ!?」」

海藤くんと原石くんの声がきれいにハモリ、クラス中がこちらを注目した。

「秋雨先生、いつの間に…」

桜音妻さんも、困惑を隠せないようだ。

「菅原先生、僕の机の裏にヒトガタの紙を貼って盗聴してたでしょ。」

「ありゃ、バレてた?」

菅原先生は、驚いたとでもいうように、目を見開いておどけた口調でそう言った。

僕の周りに集まっていた生徒たちは、気まずげに視線を菅原先生から逸らしている。

「…おじ…秋雨先生、ヒトガタで盗聴しないで下さい。マナー違反です。」

菅原くんが菅原先生を注意すると、菅原先生はショボンとした様子で両手の人差し指の先を付き合わせながらこう言った。

「だって、菅原くんが心配で…」

「どうせ昨日の階段の踊り場の件で、学校七不思議でも探ってたんでしょ?」

「おっしゃる通りです…」

どうやら、昨日踊り場で何かがあったらしい。菅原先生も七不思議を知らず、気になっていたため、僕の机の裏にヒトガタを貼り付けたんだと。

「で、この学校の七不思議って何?」

ショボン状態から立ち直った菅原先生は、僕の周りに集まっていた生徒たちに聞いた。

最初に口を開いたのは、海藤くんだっだ。

「えっと、学校七不思議っていうか…学()七不思議っていうか…」

海藤くんがそう喋った瞬間、菅原先生と菅原くんが、間違いなく驚愕を顕にした。

「学級…?」

「え、まさか…この学校の一クラスずつに、七不思議がある…なんてこと…」

「そうだね。この七不思議教えてくれた先輩もその先輩から聞いたから、だいぶ昔からあったんじゃない?」

「「うわ゛~~!!!」」

桜音妻さんの言葉に、二人の大絶叫が揃った。

七不思議が多いと、何か問題があるのだろうか?

「え、じゃあ何か?この学校全体の七不思議は、常に七つ以上存在すると?」

「…そうですね。ところで、何でただの噂で大絶叫したんです?」

分からなかったので、率直に聞いてみた。

「学校の七不思議というのは、〈七不思議〉という称号を与えられた瞬間、段違いに強く、厄介になるんだ…」

「祓えてたじゃん、昨日とか、菅原くんが配膳室に行った時とか。」

まあ、配膳室のは僕が祓ったんだが、特段強いとは感じなかった。…いや、配膳室のは…

「配膳室のあれは、七不思議じゃない。そもそもこの学校には、学級単位でしか存在しなかったはずだ。」

七不思議を知る海藤くんが、断言した。あれは七不思議ではなく、給食に対して嫌悪感を抱く子供の拒絶欲求や、ただ残された食材を見る給食のおばちゃんたちの哀しみやら悔しさやらが募っただけのものだったらしい。

「なるほど、どおりで強めの死霊一匹もいなかったわけだ…」

影に吸収した靄を分解して覗いても、おばちゃんたちの苦し気な声や、食事を嫌がる子供たちの声しか聞こえなかった。

「いや、七不思議は強力だけど、死霊変異型よりは全然マシだからね!?それを基準にしないで夜樺くん!」

あれ?どうやら七不思議といっても、死霊変異型…というものよりは弱いらしい。

死霊変異型…文字を見る限り、死霊が何か変わったものだよな?

「…死霊変異型は、死んで身体から抜けた魂が、成仏せずに、何らかの異能を持って現世を彷徨いさ迷い続ける変異した魂のことだよ。下手すると、輪廻の環に戻せなくなるって言われてる。」

菅原くんが解説してくれた。まあそういうことらしい。

「なるほど…異能を持っているから強いってこと?」

「まあ、異能を持っているからっていうのもあるんだけど…だいたいが………」

菅原先生は、そこで言葉を詰まらせた。言ってはいけないことを口にしてこれから口にするような、何か気まずそうな…そんな顔をしている。

「…まあ、必要になったら教えてください。会って危害を加えられそうになったら、普通に祓っていいんですか?」

「いや…報告書を…詳細に書かないといけなくて…」

「あれが結構面倒臭いんですよね…」

菅原先生と菅原くんは、両方揃って溜め息を吐いた。え、まさか厄介な理由ってそれ??

「…まあいいや、海藤くん、七不思議紙に書き出してくれない?多分口頭で言われても忘れちゃうから。」

「あ、うん分かった。」

海藤くんは、こちらに呆れたような、それでも面白いものを見るような顔をして、紙に三年一組の七不思議を書き出してくれた。その他にも、知っている限りの他の学級の七不思議も書き出してくれるというので、お言葉に甘えて書いてもらうことにした。

「っよし、これで全部だな…順番はもう先輩たちも覚えてなかったから、なんとも言えないけど…学級の七不思議で俺が覚えているのは、これで全部だぜ。」

「ありがとう、海藤くん!」

親切に27個程の七不思議を書いてくれたので、お礼を言うと、海藤くんにしては珍しく、はにかむように笑った。

「…どういたしまして!」

いつもは豪快に笑ったり、包帯の腕で片目だけを隠して怪しく笑ったりするので、結構レアだな、と思った。

「ところで君たち、何でSHRの鐘が鳴ったのに座ってないのかな?」

「いいじゃん別に!先生すぐに来なかったんだし!」

静かに注意をする菅原先生に対して、海藤くんは生意気そうに反抗する。そんな面白い光景を横目に、海藤くんの記した七不思議たちを流し読みした。


(三年一組七不思議


·出席番号23番と41番は家庭環境が酷似する。

·夜八時まで居残ると、翌朝全裸で再起不能になって発見される。

·授業中に寝ると、そいつの鞄から身に覚えのない物が出てくる。(使えないスマホとかゲーム機とか、虫とか出てきたらしいぜ。)

·誕生日が早生まれの者は、誰か一人来年までに亡くなる。(去年度も死者が出たらしい。今年度は一人も死んでない。)

·移動教室から帰ると、教卓に知らないやつがいる。(不規則に起こる。いない年もあるらしい。)

·教師の言うことに三回連続で逆らうと受験に落ちる。

·廊下側の先頭の席になると、不登校になる。

·六つ達成されると、教室で沈むか落ちる

あとはLINEで送っておくな!)

遅れてすみませんでした!

なんとかハロウィンの幕間書きたいな…

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