ちぐはぐな情報の擦り合わせ
玲帑side
起きたらベッドで寝かされていた。
別に初めてのことではない。修練中にヘマして気絶して、運ばれる。よくある事だ。少し違うのは、寝かされている場所が実家では無い事と、なぜか…
「足下から、違う霊力が…」
気を失う直前までは、こんなに強い他者の霊力は感じなかった筈だ。といっても、正確に記憶しているのは、ワゴン室から弾き出されるまでなのだが…確実に異常事態である。本来霊力とは、他者に渡せるものでは無い。霊力とは、生者にとって、失ってはならないものだからだ。
可能性として挙げられるのは、あのぼやけた視界の中に映る、小柄な少年だ。しかし、こちらに霊力を渡せるはずが無いので、即座にこの可能性を否定した。それと同時に脳内を過る、真っ赤に染まった背景と、数多の犠牲者が床に転がっている光景…
おっと、いけないいけない。考えても分からないので、一先ずワゴン室に行ってみようと思った。自分が寝ている場所は保健室だということは分かっているので、階段で二階に上がって、隣の棟に渡っていけばいいことは、すぐに分かった。マップをすぐに頭に入れるのは得意だし、人命救助においても必要な事なので、一昨日にざっと校内の配置を覚えたのだ。記憶力には自信ありだぞ!
「…保健の先生に一言言った方が…でも、先生居ないな…」
保健室どころか、廊下をチラッと覗いたものの、教師は誰も見つからない。職員室とは別棟なので、廊下に誰もいないのは分かるのだが、それにしても…
「何だ、この違和感は…。」
保健の先生が居ないのなら、職員室の先生に伝言を書いておけば大丈夫だろうと思い、職員室へ向かうが、職員室も、もぬけの殻だった。ついでに、隣接している会議室にも、誰も居ない。暖房がつけられっぱなしで、窓は閉まっている。少し書類が床に散らばっていて、誰も書類を拾い上げなかった事が分かる。避難誘導で、焦っていたのだろうか?
…避難誘導?
校庭からは、子供の声が聞こえる。今いる階段のボールで遊ぶ、無邪気な声は、訳も分からず避難誘導をされた者の声では無い。
パニックを避けるため、抜き打ち訓練だと言って誤魔化した?
だとしたら、俺はどのくらい眠っていたことになる?
確か給食の時間のすぐ後、祓霊に行って、気絶したから、だいたい十二時くらいからか?今は十二時…二十五分!?俺そんなに寝てたのか!?
「まずい、昼休み終わる…いや、ずっと気絶してたことにして保健室のベッドに戻って寝転んで、先生が様子を見に来てから、何食わぬ顔してしれっと起きればいいか?あー、でも、祓霊失敗しといてそれはまずい…」
やはり、全力疾走…とまではいかずとも、早歩きで教室に戻った方がよさそうだ。そして、もうすぐ二階に到着する、という直前になって気がついた。
お祓い道具が、無い!
保健室に忘れてきてしまったのだろうかと思い、階段を降りて、保健室のベッド周りを、くまなく探す。十五分程経ち、そこで俺は漸く、ワゴン室に放置されている可能性に思い当たった。
普通に考えれば、そちらの方が可能性が高いだろう。中身も分からないのに、わざわざ荷物まで保健室に運んでおいてくれている筈がない。実家では、気絶してもあの袋は常に枕元に置かれていたのだ。実家での感覚は、完全に捨てた方がいいのだろうが、だからといって、簡単に捨てられるものでもないのだ。
また階段を上がることを思い、少し憂鬱になった。どうせもう授業は始まっているのだから、今更変わらないだろう。そして少しベッドに腰を下ろし、休憩をしていると、保健室の扉が開いた。
「あれっ、何でここに菅原くんが…」
入ってきたのは、鈴城摩耶先生だった。昨日放課後紹介された時と違い、少し髪が崩れている。心なしか息が荒く、少し体力をすり減らしていることが窺える。
「…菅原くん、皆には、まださ、話してないよね?」
「…いきなり何の話です?」
「霊とかの話!あとは…君がさっき、霊と戦う前、君が避難誘導の指示を先生に出したこと…とか。」
「…いえ、僕は…ついさっき、起きたばかりなので。」
しかし、俺を運んで体力を使ったにしては、先程の言葉が引っ掛かる。恐らく、今まで俺がここに運ばれていることさえ、知らなかったのだろう。
あれ?そういえば、誰が俺を運んだのだろう?
先生方は避難誘導で、俺を運ぶ余裕は無かった筈だ。では、善意に駆られた生徒が?後でお礼を言いたいものだ。それ以前に、善人を死なせたくないから、感謝を述べた後で、先生の避難誘導に従うように言い含めなくては…
そこまで考えて、俺は漸く、最悪の可能性に気がついた。
「…鈴城先生?」
「…何かな?」
俺は鈴城先生に、動揺を圧し殺して問う。
生徒の笑い声。もぬけの殻の職員室と会議室は、先生方がいないことを窺わせる。教室に戻っていた?だとしても、非常勤の先生方まで居ないのは、どういうことなのか…
「避難誘導は…無事に済みましたか?」
一縷の望みに賭けて、そう問う。これで、もしも…もしも、俺の不手際で、犠牲者が出てしまったのだとしたら!?ヤバいヤバいヤバい!彼に言われた通り、馬鹿げた方法だ等と一蹴せずに、きちんと実力に見合った祓い屋が派遣されるまで、いくらあの怪異が暴走寸前だったとはいえ、刺激すべきではなかったのだ!!あー!どうしよう…あれ、そういえば彼は?
「えっと、鈴城先生、重ね重ね失礼しますが…夜樺明、という少年は、避難していましたか?」
「さあ…そこまで個別では把握してないから…」
「そ、そうですよね!失礼しました。」
ここには目当ての荷物が無かったようなので、早々に退散することした。
「それでは、失礼しました。」
「…菅原くん、ちょっといい?」
しかし、鈴城先生に呼び止められてしまった。
「えっと、今一組が、何でか分からないけど不穏でさ。これから先生一組に行かなくちゃならないんだけど…助けてくれない?」
こんなことを言われた。一組が荒れている…まさか、本当に犠牲者が出たうえ、生徒たちに包み隠さず話した、もしくは、知れ渡ってしまったのだろうか。
だとしたらそれは、俺の責任だ。
「…もちろんです。被害状況を重く受け止め、誠心誠意、親族やご友人方に謝らせていただきます。」
「え?あ、ああ…うん。」
こうして俺は覚悟を決め、二階に上がり、三年一組の扉を開いた。そこで見たのは…
「警察通報した?」
「スマホ使えねーからwまだだわwww」
「自業自得だし、あのまま飲ましてやりゃよかったんじゃねーの?」
お通夜ムードというよりは、どこか楽しげなクラスメイトたちと、拘束され、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになっている担任の笹堅先生だった。
「…えっと、何をしていらっしゃるので?」
思わず敬語が口から飛び出した。そしてある者は冷徹に、ある者は愉しげに、ある者は無表情で、ある者は怒りを籠めて、ある者は不愉快そうに、クラスメイトたちは一斉にこちらを向き、こう言った。
「「お前にも聞きたいことめっちゃあるからな?」」
人生で五番目くらいに、死にそうだ、と思った瞬間だった。
Noside
三年一組に取り残された少年少女たちは、ムードメーカーの高崎出水と、学級委員の青柳廉夏、片刃里美を中心に、作戦を立てていた。ズバリその名を、《先生一掃大作戦》。因みに名前を考えたのは、海藤蓮間である。
この作戦会議は、教師陣への恨み辛みから、円滑に進んだ。ざっくり説明すると、教師陣の不祥事の証拠を集め、警察へ提出する、というものだった。恨みが大きいだけに過激な発言や提案をする者もいたが、受験期に大きな問題行動は起こしたくないという総意により、結局、過激な案、ほぼ黒のグレーな案は却下された。
しかし最終的に決まったその計画は、思いがけない三年一組の担任、笹堅紀昭の行動により、全て水の泡となった。
それが保健室に鈴城摩耶が戻る、五分前の事であった。
会議の結果が纏まった辺りで丁度、教室の扉が開いた。入ってきたのは、笹堅紀昭である。彼は平静を装い、まるで何事も無かったかのように教卓の前まで来て…
「何をしている。授業は始まっているぞ。」
と宣ったのだ。
因みにこの時、廊下に鈴城摩耶がいたのだが、理由としては、菅原玲帑に報告する際、どう誤魔化せば辻褄が合うか、効率よく情報の擦り合わせを行うためである。
そんな笹堅紀昭の態度にカチンときた少女、つい先程まで過激案を出しまくっていた張本人である中嶋理智が、揺さぶりをかけたのである。といってもそれは、至極当然の疑問なのだが。
「笹堅先生、今は社会の時間なので、三組の山上先生が来るはずでは?」
「え!?あ、ああ…急遽日程変更になったのだ。」
「ワゴン室で起きた爆発は?あの時先生を呼ぼうと思ったのですが、居なかったですよね?」
「ああ、昼を買いに、コンビニにな。」
「何で先生遅れてきたのー?」
そこに、悪ノリした…というより、さっさと教師陣をクビにしたい輝滝心咲が、援護をする。
「コンビニが思った以上に混んで…」
「職員室にも行かずに直行?車の鍵、教室出る前はなかったのに、ズボンにぶら下がってるよ。」
「あ、あー!く、車に、慌てていたせいで、ご飯を置いてきてしまったよ!いたむといけないから、取ってき…」
怪しすぎる担任、決定的証拠に欠ける生徒達。決定打に欠ける情報ばかりかと思っていたが、次の瞬間、均衡は崩れた。
「もう悪足掻きはやめろって」
そう言ったのは、夜樺だった。
「…なんだと?」
「さっきさ、菅原くんから聞いちゃったんだ。先生には、避難誘導をお願いしたんだ…って。」
当然ハッタリである。しかし笹堅は知らなかった。菅原が、未だ起きてから、一度も夜樺たちと、顔を合わせていないことを。
なぜ知らなかったのかというと、まず、学校に戻り、外部から確認したところ、校舎に対した損害は見受けられなかった、そして笹堅がこう考えたためである。難なく菅原が、霊を祓ったのだ、と。しかし中に入ってみれば、教室に菅原は居らず、何やら普段喋らない生徒達まで含めて、全員で話している。これはもう、異常事態が起きたことを生徒達が知っていることを示していた。それに加え、先程の夜樺の発言である。今いない菅原が何をしているのか、皆目検討もつかないが、笹堅の頭の中では、完全に、菅原が、クラスメイト達に向けて、避難誘導のことを話してしまった、というストーリーが完成していたのだ。
「…ハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!?!」
平時通常の大人ならば、ここまで狂気的な笑い声は上げなかっただろう。しかしそれはあくまで、通常の大人ならば、の話だ。この男は、元より通常では無かった。セクハラ然り、パワハラ然り、万引き強要然り…
「こうなってはモウオシマイダァ…!」
…違法薬物摂取然り。笹堅はズボンの横ポケットから緑のチェック柄の財布を取り出し、その財布の中から白い粉末の入った透明な袋を取り出し、開けた。
「おいおい…あの透明なパックに入った粉って、所謂白い粉…だよな?」
「砂糖に一票」
「俺は塩に一票」
「坂原も高橋も現実逃避すんな。ほぼ確でヤクだから。」
「何で廉夏は現実見させんだよバカァ!!」
「バカとは何だよ!?」
その場はちょっとした混乱に陥った。完全に取り乱さなかったのは、かれこれ三年間、彼等が不幸なトラブルに見舞われ続けたせいであろう。
そして、クラスの中でも体格のいい高橋が笹堅の右側から、電車で痴漢を捕まえたことのある須磨由井が左側から、暴走して危険な状態にある笹堅を拘束しようと試みた。しかしそれに気づいた笹堅が、教卓の中からカッターを取り出し、振り回し始めたのだ。不幸なことに、笹堅は左手にカッターを持っていた。利き手は右だが、今は封を切った薬を持っていたためである。利き手である右は、力が強いだろうと考え、気を遣った高橋が須磨を左側に移動させたことが仇となってしまったのだ。このままでは、近くに接近している須磨が切られてしまう。
ざわめく教室。しかしその刃が、須磨に当たることは無かった。
「いや、危ないし、僕を頼れよこういうのは。」
混沌と化した場をおさめたのは、夜樺だった。よく見ると、笹堅の足元、教卓の影から、黒い靄が伸びて、笹堅の拳を覆い、足にも靄を纏わせ、拘束しているのだ。
「な、何だ!?ヒッギャァァァァ!?!!?」
「…できるんだったら、言ってくれても…」
「言っ…てなかった?」
「「ねーよ!」」
助けたのに、なぜかキレられる夜樺であった。
「…だって、二人が笹堅先生に近づくなんて思わなかったし…ちょっとくらい作戦説明してくれても…」
「んな時間無かったんだよ。」
「ていうか、薬を取り出した時点でやってほしかったんだけど…」
「そんな簡単にできるもんじゃ無いんだよ…」
「ふーん…まあいっか。坂原ー!確かロッカーにビニールひもあった筈だから、それ取って!」
そんなこんなで笹堅は拘束された。この直後、菅原が教室に戻ってくる形となった。
「警察通報した?」
「スマホ使えねーからwまだだわwww」
「自業自得だし、あのまま飲ましてやりゃよかったんじゃねーの?」
「…えっと、何をしていらっしゃるので?」
そして、全員が一斉に、この空気に水を差す声の持ち主…菅原玲帑を凝視した。
「「お前にも聞きたいことめっちゃあるからな?」」
当然この時、菅原が人生で五番目に、死にそうだ、などと思ったことは、菅原自身以外、知らないのであった。
そして三年一組のクラスメイトたちは、菅原からこってりと、聞き出せるだけの情報を搾り取ったのであった。
「…他には退魔師とか、派遣されてないのか?」
「…………知らない。」
「ふーん、じゃあ次は…」
明らかに嘘をついている場面もありはしたが、夜樺はそれに気づいているのかいないのか分からない反応を返し、次の質問へ移る。このような事が今後続くが為に、彼が将来、敵も味方も一切の油断ができない切り札として周りから警戒、畏怖、尊敬されることを、彼はまだ知らない。
「…オッケー、お疲れ様。僕から聞きたいことはこのくらいだから。あとは、皆も質問したいだろうし、それに答えて。」
「分かった…」
菅原は、かなりやつれた表情をしながら、自身のクラスメイト達に向き直った。
「…えっと…皆さんには、大変ご迷惑をおかけしましたので…なるだけ、答えられることには、答えたいんで…何か、質問あったら…どうぞ…」
「…じゃあさ…」
そう言って、最初に菅原に質問を投げかけたのは、坂原だ。先程の爆発の原因である怪異とは、どんな姿をしていたのか、その他にも、この学校にはどのくらい怪異がいるのか、一般人でもできる対抗手段は無いのか、避難ルートはあるのか、警察はこのことを認知しているのか、など…
そして、瀬世のした次の質問に、菅原は開いた口が塞がらなくなった。
「…先生達が避難誘導してないってこと…知ってる?」
当然知らない。彼は起きてから、鈴城から得た情報しか持ち合わせていないのだきら。しかもその情報は、偽情報である。
綾香side
「全員が菅原くんを質問責めにするなか、私はどうしても、菅原くんの中にある感情に違和感がありました。というのも、私は霊感こそありませんでしたが、昔から人の感情を察知するのが得意でしたから…。菅原くんの中にある感情は、罪悪感に、困惑と疑問…なぜ、疑問を抱いているのでしょう?疑問を抱える姿がチラつくのは、クラスメイト達が、笹堅先生と菅原くんがグル、共犯であったり、こちらの命はどうでもよかったのかと遠回しに聞くときです。ひょっとしたら彼は、何かを知らなかったのでは無いでしょうか?てっきり彼は、自身のプライドが高いがために、教師達が避難誘導をしないことを承知の上で、生徒達に避難の指示や事前知識を与えなかったのかと思っていましたが、でしたら、感情に困惑が混じるとは考えづらいです。ですので私は、直接聞いてみることにしました。
「…先生達が避難誘導してないってこと…知ってる?」
予想通りといいますか、フラグ回収お疲れ様といいますか…彼はどうやら、本当に安全措置を取った上で、祓霊に挑んだと思っていたわけです。
「…避難誘導、してない?」
「うん。」
「…されてない?」
聞き方を変えても返答は同じでした。
「うん。」
「菅原、もしかしてだけどお前…何も知らなかった感じ…?」
「なにも…とは?」
正座をしている彼は、どんどんと顔色を悪くしていきました。
「例えばほら…ここの学校の評判ー…とかさ。」
「…サイトを見る限り、最悪でした…先生がヒドイ…と。ですがてっきり、最近厳しくなってきた価値観に置いてけぼりにされただけであったり、生徒が普段の鬱憤を晴らしているだけなのだと、ばかり…」
まあ、無理も無いですよね。書いている内容は、どれもこれも突飛し過ぎていますから。その突飛している内容は、全て事実ですけどね。
「校長先生が、騒ぎを大きくして混乱させないように、先生達にだけ情報を伝達しっ、臨機応変に対応してもらうから大丈夫だとッ!」
とうとう俯き、声を震わせ、涙を流し始めてしまいました。
演技では、なさそうですね。
「忙しい兄にも、付き添っていただいていたのに…!」
悲しみと怒り…怒り始めちゃいました。お兄さん居るんですね。私は一人っ子なので、ちょっぴり羨ましかったです。
「全然大丈夫なんかじゃ、ないじゃないですかぁ…!」
ないない言い過ぎてて、何て言ってるのか分かりづらいですね…。顔が整ってるのでいいですけど、身長約170cm台が正座しながら裾で涙拭う姿…道端でこれやられたら、フルシカト決め込むシチュエーション間違い無しですね。
「…っはぁー…後で兄上に報告した後、今回の詳細を纏めなくては…えっと…何か他に質問のある方は?」
若干泣きながらそう聞きましたが、全員今の菅原くんの発言で大体掴めたのか、すぐには思い浮かばないようでした。
「…じゃあ、菅原くんのお兄さんについて、教えて?」
「…君はもう、質問を終えたんじゃなかったのか?」
夜樺くんを除いて。
「だって、家族構成は聞き忘れてたから。」
「家族構成…何かお前に関係あるのか、それ。」
少し、菅原くんの口調がキツくなった気がしました。それに、見ているとこう…ザワザワするというか…家族ぐるみで嫌なことでもあったんでしょうか?
「…いや?ただの興味本位。」
「じゃあ答えない。」
これにて質問は終わり、とでも言いたげに、菅原くんは立ち上がって、帰宅の準備を始めてしまいました。
「…いや、玲帑くんが断れる立場?」
「…中嶋さん、だったよね?僕は確かに、君らが死なないために、必要なことには答えたいとは思うけど、プライベートなことまで話すつもりはないんだよ。必要もないしね。」
さすが中嶋さんだ、直情型なだけあって、言いたいことがそのまま出ていました。ですが菅原くんだって、確かに答えたくないことはありますよね。
「…いや、気づいてないみたいだけどさ、割とあんたのこといろいろ助けてんの、明くんだからね?お兄さんでもなんでもなく。」
…割とキツいこと言いますね…。
「へー…何かふざけてたこと言ってるだけかと思ってましたよ、夜樺くん?」
「サ◯ー·ウォーズのことなら謝るってー、ごめんなさい。」
…一体、何を言ったんでしょう…いえ、予想はつきますが、気にしないでおきましょう。
「で?助けたって、具体的には何を?保健室に連れていった…とかでしょうか。それでしたら確かに感謝します。ありがとうございます。」
「いや、主に保健室に運んだのは、坂原くんと高崎くん…」
「いや、明くん頭しっかり抱えてくれてたからね?」
…少し、助けたというには、根拠が足りない気が…
「あ、そういえばさ、結局誰がその…モヤモヤ?退治したわけ?玲帑くん?気絶してたのに?」
「いや、雰囲気的に明だろ。」
「うん、そうだね。僕が退治したよ。」
…十分な根拠がありましたね。
「ちょっとは恩に報いる気にならないわけ?」
「う、うるさい!こっちだって、話したくないんだよ!」
「家族構成話すだけで、何でそこまで拒むの?両親死んだ?」
「ちょっと、中嶋さん、デリカシーが…ごめんね。」
少しヒートアップしてきてしまったようなので、夜樺くんが止めに入りました。
「そんなに聞かなきゃって程でも無いしさ!」
「…ちぇー、聞きたかったのに…明くんが引き下がるんじゃ、仕方ないか…。」
中嶋さんは謝った方がいいとは思いますが…それが言えないのは、私の悪い所ですね。直すつもりもありませんけど。
それで質問タイムは終わりでした。菅原くんも、これ以上話すつもりはなさそうですしね。
そして、普段よりも早く、笹堅先生を置いてけぼりにして、その日は全員家に帰りました。親には、学校でトラブルが起きて、早く帰れることになった、と伝えるよう、青柳くんが提案しました。
まあ、それが事実ですしね。
私も心咲ちゃんと蓮間くんと一緒に、今日は学校を出ました。
なので、笹堅先生がどこに行ったのか、という質問には答えられないんですよ。夜樺くんが何者なのかも、全く分かりませんしね?」
「それで、はいそうですか、と貴重な情報源を逃す程、我々も馬鹿ではない。」
「デスヨネー…」
私たちは下校中、二人組の…警察とはまた別の制服を着た、怪しい人達に職質(?)された。もっとも、心咲ちゃんと蓮間くんは、今別のところに連れていかれたので、迂闊に動けなかったりする。
…夜樺くんか菅原くん辺りにLINE送りたい…。現状説明求む!コイツら誰だよマジでー!
後半、敬語キャラ登場だと思いました?いえいえ、普通の中3女子ですよ。
瀬世綾香:身長152cm体重50.3kg霊力は無いが感情を色に変換して識別可能で仲良い二人は中学に入ってから仲良くなった。それと同時に家が意外と近いことに気がついた。髪は黒、ロング、ストレート。日除けのため、あとコーディネートが面倒だから、ずっと冬用のフード付きコートを着ている。下は青い化学繊維のズボン。学校の体操着ともいう。