違法品壊すのはいいが周りに迷惑をかけるな/23番の家庭訪問①
歴史捏造注意
主は歴史詳しくないし考え無しなので、こんなことしたらこういう問題が起こるだろう!という考えはポイッとしてください。
一時限目が始まる前
「まあ、卒業前の記念にやっておくのもいっか…夜樺くん、家庭訪問の時僕の家おいでよ!」
原石くんから家に招待された。
「あ、お邪魔しまーす。」
放課後、僕も原石くんの家に行く事になった。
「…なんで原石くんの家に最優先で行く事になったんですか?出席番号後半ですし、家の距離とか結構遠いと思うんですけど…?」
菅原くんは、菅原先生にそう聞いた。菅原先生は、忙しいせいか、それとも学級七不思議を聞いたせいなのか、心なしかゲンナリしている気がする。
「何で菅原くんが僕の家把握してるんだよ!?…って、叔父が把握しているから、できないことはないのか…」
「…何でその線思い付いちゃうかな…」
菅原先生は、あっさりと個人情報の漏洩を認めた。終わってやがる。
とはいっても、だいたい想像はついていた。
霊の学校なんて、情報を欠かしたら死ぬだろう。情報共有が当たり前の世界で個人情報漏洩云々とか言っていられない。
そうでなくても、個人情報調べられるくらいの権力とかがなければ霊力を持った家系だって分かりゃしない。そうなると、学園はまともな生徒数集められないだろうからな。
「菅原先生、家庭訪問ってそもそも、今日一日で終わるんですか?」
「普通終わる筈なのに…何だよこの霊力持ちの人数…頭イカれてんのか?」
要するに、一日で終わらせるのは無理らしい。
普通、一つの学校につき一人…多くて三人なんだとか。
菅原先生の口調が若干荒くなった気がする。
「無理だね。これから送る環境が環境なだけに、保護者の説得には骨が折れる。そうなると、私でも一家庭につき一時間半かかるんだ。」
一時間半…それを16…いや、菅原くんは家庭訪問するまでもなく拒否権無いだろうな。
だから…15人か。…半日以上かかるじゃん。いくら受験生で早帰りだからって無理じゃん。無理に決まってるじゃん。
「…まあ、2日で終わらせられるか…」
「菅原先生、正気ですか?15家庭分ですよ?」
「いや…そんなに無い。」
聞けば施設暮らしの子が多くて、施設暮らしの場合は卒業前、そのまま本人確認を取るだけでOKなんだとか。その他にもいろいろ別の事情があって、トータルは8家庭なんだと。
あれ?施設暮らしの人って何人いたっけ?
僕は他人の家覚えてないからな…。
そして、わざわざ確認する事でもないか、と思い直し、追及を止めた。(面倒くさかったとも言う。)
そして放課後
「それじゃ、僕は先に帰ってるね!」
「あ、うん!」
部屋の片付けがまだ残っているらしく、原石くんは先に帰った。
僕は原石くんの家を知らないので、菅原先生についていく。
途中、菅原先生がある一定の方向を向いて立ち止まった。視線の先には、どこかの建物のベランダに面した駐車場に、車が停まっていて、それをバット等でベコベコにしていた人達がいた。
「…夜樺くんは、どこかに隠れてて。見なくていいし、聞かなくてもいいから。」
「いえ、そこまでバット持つ人は怖くないので…」
そういう問題じゃない、と言われて、適当な曲がり角の死角になる所に隠れるか、もう家に帰るかの二択だと迫られれば、死角に隠れる方を選ぶのは当然だった。
下手に抵抗する意味も無かったしな。
「…君たち。」
「あ?何だよ、これは正義だぞ!」
曲がり角から、チラッと菅原先生の方を覗く。
穏やかな声で、菅原先生がバットを持った人たちに話しかけた。
そんな菅原先生に何を思ったのか、車を壊している人達の一人…カッター?
『あれ、彫刻刀だよ。学校の支給品かな?アキラも持ってるやつだ。』
どうやら、彫刻刀を持っていたらしい。彫刻刀の人は、菅原先生に向かって怒鳴り返した。
「うんうん、確かにこの車は現代の法律に違反する二酸化炭素量や、有毒ガスを排出するね。よく知ってたね。」
「小学生じゃねーんだよ!バカにしてんのかテメエ!」
今のは何にキレたんだあの人…バカにしてる?何をどう聞き取ったんだ?
『よく知ってたね、って、タイミングによっては馬鹿にされたように感じる人もいるみたい。学校の支給品の刃物を持ち歩いていたり…今あの人達は、衝動が理性を上回りやすい時期にあるのかもね。』
「高校生に赤ちゃん言葉で話しかけるやつか?」
『うん、多分それに近い。』
…つまりあの人にとっては、車の種類が分かるなんて当然のことらしい。
すごいな。
「…俺の妹が、これのせいで病気が悪化したんでな。」
「バッちゃん…」
かげくんと話している間に、菅原先生が相手を落ち着かせたらしい。バットを持った人…バッちゃんから、事情聴取を始めていた。
「…妹さんが大切なんだね。」
「当たり前だ!…あいつ、漸く退院できる日だったって言うのに…この車が、俺らが通りかかったタイミングで、一気にガスなんか排出するから…!」
纏めると、病院通いの妹さんが、車の排出ガスに耐えられない体質だった上、運悪く直撃を受けたらしい。車高の高い車は、まだ幼い妹さんの顔の高さと同じくらいの位置にマフラーがあった。
「だからこいつは、絶対に、再起不能になるまで…俺が…!」
そう言って、バットの人…バッちゃんが、バットを振り上げて、車目掛けて下ろそうとしたところを菅原先生が片手で軟らかく受け止めた。
「…邪魔する気か?だったらテメエも!」
「落ち着きなさい。止めるつもりはないよ。」
再び激昂して理性を飛ばしそうな相手にも、冷静な声で返答している。
意外だな、止めないのか。
「じゃあ、この手は何だよ!」
「周りをよく見なさい。」
そう言われて、バッちゃんは周りを見回すが、余程イラついているのだろう。僕にも気付かないまま、何だよ、何が言いたいんだよ、と言いたげに、菅原先生を再度見た。
「…ベランダが、面しているじゃないか。」
確かに、ベランダに面した駐車場なのだから、車の側にベランダがあっても、何ら不自然ではない。寧ろ自然なことだ。
しかし、それが破壊行為を一時中断させることに、何の関係があるのだろう?
「…君らが壊した車の破片が、ベランダに入ったら、要らぬ二次被害だぞ。」
「…!」
よく見れば、ベランダには洗濯物も干されている。服に破片が付いているなんて最悪だな。
それを見越して止めたのか…さすが、だな。
「…私だって、法律は確認するようにしているんだ。ざっくりとだけどね…二酸化炭素の排出量や温室効果ガスの出る車の製造廃止が約150年前。製造が禁止になった車の買い取り契約廃止が約120年前…所持禁止になったのが、約80年前だ。所持の禁止に伴い、地球温暖化対策の一貫として、一般人の違法車破壊が認められるようになった。これが丁度75年前のこと。ここまでは知ってるよね?」
「…ああ。」
「でもね、この法律…地球温暖化を加速させる行為での破壊は禁止の他、やり方によっては周りに破片とかが飛び散らないように、袋とかで破片が散らないように覆ってから、壊すようにって定められてるんだよ。」
「…そう、だったのか…」
「バッちゃん、ごめん、俺が壊しても大丈夫な法律があるとか、言ったせいだ…ほんとごめん!」
「いいよ別に、かっちゃんのせいじゃない。」
彫刻刀持ちのあだ名はかっちゃんだったらしい。
「…それじゃ、ベランダの人に謝るんだよ?もうずいぶん破片が入ってるから。苗とかにも。」
「え、うわー、マジだ。」
「…やっちゃんは後ろで壊してたろ。ベランダに入ってんのは俺らが壊した部分だ。袋被せて壊しといてくれ!」
「え、うん…いや、オレも行くから!ちょっと、二人とも!置いてかないでよ~!?」
…三人は、バタバタと足音を立てながら、ベランダの住人に平謝りをしに行った。
「…法律か…覚えてないな…」
車壊していいのは知ってたけど、基準値とかとなるといよいよサッパリだしな。
「…夜樺くん、受験は先延ばしになったけど、定期テストは2月にまだのこってるからね?あと1ヶ月ちょいだよ?」
いつの間にか、隣には菅原先生がいた。スタスタと歩き始めるので急いで追う。
お勉強キライだ~
「…今日はいいじゃないですか!むしろそっちの学園行ったら、怪異探るのが本職なんですよね?だったら、これから行くのも勉強のうちです!試験の五科目よりも、将来に間違いなく使える勉強ですよ!」
とりあえず、それらしく返しておこう。
将来座学の五科目を使うようであれば、かげくんを頼ることにする。
「…うちの学園も、ある程度座学あるからね?」
なるほど、オワッタ。
「…入学諦めた方がいいかもな…」
「待って待って!?せめてもうちょい勉強に対して積極的に……なれないのか。」
教師なのに、頑張れ!とか言わないんだな…まあ、軽率に言ってちゃ精神のスペシャリストとは呼ばれてないか。
僕は別に頑張れ、で傷つくタイプではない。高校行く気あるのか?と聞かれるのは大嫌いだけど。
「なれません。」
「まあ、勉強よりもスマホとかゲームだよな…」
「そうですね。」
そこら辺の感覚も、菅原先生はちゃんと持っているらしい。下手に応援する先生よりも好かれやすそうだ。僕は応援してくれるし慰めてくれるかげくんがいるので、特筆して感動する点は無いのだが。
「まあ、それでも…国語は人心操作に必要だ。英語もまた然り。数学は損得勘定に必要だ。理科は事実の裏付けに役立つ。社会の地理からは適材適所の何たるかを、歴史からは過去の失敗と成功を学べる。それに…」
菅原先生がいきなり五科目の美点みたいなのを語りだして、一拍置いて、続けた。
「この時代に戦争や戦闘を促進させる言葉は御法度だけど…ぶっちゃけ社会科って、戦略とかも学べるから、祓い屋にとっては生存確率を上げる最善手段なのだよね。」
「あー…そういうことですか。やっぱり監視されてようが何だろうが、僕には向いていませんね。」
生き残るために、常人よりも努力しなければならない。それは生きるために自分を追い込むというわけで…
そんなのは、心労苦労苦痛の連続。僕の望む未来ではない。
「本当に勉強が嫌いなんだね…」
菅原先生は、苦笑いした。流石にプライバシーと勉強を天秤に掛けてプライバシーの方が軽んじられる結果になるとは思わなかったのだろうか。
いや、予想はついていたが、呆れを禁じ得ないのか。
「はい。」
「因みにだけれどね、夜樺くん。監視下に置かれたら、多分不定期で怪異の巣窟に放り込まれるからね?」
「なんて?」
今、凄くさらっと据わった目で脅された気がした。
「あ、着いたよ。ここが原石くんの家だ。」
「え、あ…そう…。」
もう話題はそらされてしまったので、ツッコムのは諦めた。
目の前にあるのは、僕の家の四倍ほどの広さがありそうな一軒家だった。三階建てで、その三階にあるベランダには、敷き布団と掛け布団を合わせて四枚ほど干されていた。
その上一階ごとの高さは、僕の家よりも高そうに見える。三角屋根は無いが、三階のベランダから屋上に行けるタイプらしく、壁に梯子がかかっているのが見えた。
菅原先生が一呼吸置いて、チャイムを鳴らす。
「…ごめんくださーい!」
「ごめんください!」
菅原先生に続いて僕も言った。
「………はーい!」
数秒して、原石くんの声が聞こえた。三階に居たら、降りてくるまでに時間がかかるだろうな、なんてことを考えながら、数秒ほど待っていると、意外とすぐに扉は開いた。
「お上がりください!夜樺くんも、こっちこっち!」
なぜか手を引かれて、玄関に引きずり込まれる。
「ちょっと待って、靴脱ぐから、!?」
靴を脱ごうと玄関に少し留まろうとするが、意外と原石くんの力が強く、前のめりに倒れてしまった。
鈍い音と共に、痛みが走ったかと思うと、今度はじんわりと広がる。
「夜樺くん!?大丈夫?ちょっとぶつけたところ見せてね?」
ダボッとしたズボンをたくしあげれば、そこには赤くなった肌が露になった。
玄関と家の廊下で段差があり、思い切りそこの段差に脛をぶつけてしまったようだ。
「…骨に異常があるかも…」
「…!?」
原石くんは真っ青になって、立ち尽くしている。
「僕は大丈夫ですよ菅原先生!ただの痣になるだけ…!」
「いや、普通中学校の三年生ともなれば、もう少し骨密度が無いと成長に支障が出てしまう…触ってみた感じ、少し骨が柔らかすぎる気がするんだ。関節が、じゃないよ?」
外科にも精通しているんだろうか、この教師。
ていうか、触られると不味いな…下手すると隠してること全部バレる…!
「大丈夫ですって!ほら、家庭訪問が本題でしょ?」
「…分かった。先に帰っててもいいけど…心配だから、先生夜樺くんと帰りたいな。」
なるほど、病院に強制連行する気…
「帰る途中で本当に骨がパッキリ逝くと大変だからね。それに、元から君の家にも家庭訪問する予定だったし。」
強制連行する気では無かったらしい。
「ただ、具合が悪くなったら言うんだよ?」
「…はい。」
かげくんいるし、骨がパッキリ逝こうと触覚シャットアウトできるから、大丈夫なんだけどな。
「ご、ごめんね夜樺くん…本当にごめんなさい…ごめんなさい…!」
めちゃくちゃ謝られている。そんなに青ざめなくてもいいのにな…。
「大丈夫だって、三日もすれば治るから。それに、もう痛くないし!」
実際、もう痛くはなかった。打った場所は青くなってきているものの、触らなければ問題ないだろう。
「…階段上がるの大丈夫?」
「あー…この家二階とか三階とかにリビングがある家?」
「いや、リビングは一階だけど、トイレは二階にしか無くて…」
なんてこったい。僕今結構…
「ピンチだ。助けて原石くん…」
足に異常はないが、立てない…!何でよりにもよってこのタイミング何だ!…トイレを意識したせいだろうな!学校を出る前に出して来なかったからだろうな!
「分かった!したくなったら言って…」
「今したい」
「早よいえ!」
原石くんは立ち上がれるか聞いた後、僕は数秒待ってから波が引いたタイミングでオッケーを出した。
「よし、急げ急げ!」
「忙しい奴らだな…先生も手伝うよ」
「菅原先生はいいや。」
「何で!?」
また骨密度とか測ってきそうで不安だからだよ…
結局僕は、二階で用を足した後、トイレのすぐ隣の部屋から原石くんの父親、三階から母親が降りて来たため、すぐに菅原先生と原石一家での面談が行われることになった。
『アキラ、二階に行って待っていよう。』
「うん」
「それでは、面談を始めますね?」
「「「よろしくお願いします」」」
僕は流石に家庭訪問の内容まで聞くわけにはいかないということで、かげくんから言われた通り、その場を離れる事にした。しかし二階に上がったはいいものの…
「俄には信じがたいですな。息子が命の危険のある学園へ、足を運ぶなど…」
「ええ。それは我々も申し訳なく思っております。」
「…これ、脅迫じゃないの?」
「直中くんご本人からの了承は得ています。そうだよね?」
「はい。」
菅原先生、下の名前呼びなんだな…ご両親の前だからかな?
…ていうか床、薄いのか…
「意外と聞こえちゃうな…」
『三階…上がっていいのかな?』
そうだよな…二階に居たってプライバシーはゴリゴリ侵害していくんだ。三階へ上がるか…もしくは、ちょっと寒いが影を屋上まで伸ばして、屋上から影の蔦で体を引っ張り上げるか…
「かげくん、見てきてくれない?」
『いいよ~』
この時僕のたちには、原石一家へ聞くという単純な事さえ頭からすっぽ抜けていた。
行っていいかどうかはかげくんに偵察して危険点数で判断させていたというこれまでの習慣と、友達の家にあがった経験がゼロだったためである。
かげくんならば実体はない。人の痕跡を残さず、その場に行って去るということも容易に可能だ。かげくんに気付かない人の精神衛生面に問題はないため、僕はかげくんに人の部屋を覗かせることに躊躇いを感じてはいなかった。かげくんもそれは同様だ。だからかげくんは、もう一度僕の影に戻った後、三階へ壁の陰を伝って行こうとした、が…
『…あれ?なんか…』
「ん、どした?」
壁の途中で、場所で言えば、二階から三階に上がる階段の二段目で、何か違和感を感じたらしい。
『…壁に、変な窪みが…』
かげくんが壁から出てきて、さすさすと外に面する壁を擦った。僕も同じところを擦ると、かげくんの手をすり抜けて壁の感触が伝わる。
…確かに、凹んでるな。
「…何でこんなところで、壁が凹んでるんだろ…」
大きな荷物を上に運ぶ時、ぶつけたんだろうか?
『…あと、ここ変な空洞になってるんだよね…』
かげくんが壁を軽く叩けば、コンコンと軽い音がした。反対側の壁を叩いてももう少し重たい音がする。いよいよ何が奥に入ってるのか気になってきたな。ヤバい、人ん家なのに…
「気になるな…」
『いけないことだよね…でも、俺も気になる。』
かげくんがこういうことに反対しないのは珍しい。では、僕も折角の機会だし、悪ノリさせてもらうとしよう。いざとなればシラを切る。
それじゃ…
「探索しよ」
『そうしよっか!』
菅原秋雨side
原石くんの母上は、なかなか納得してはくれなかった。当たり前といえばそうなんだが。しかし父上はあまり執着していないらしい。原石くん自身が望むのなら問題ないという。
それでも母上は、未だに抵抗を続けていた。
これは長期戦確定だな…と思った。
少しした後、父上の方が二階に用を足しに行くと言って席を立った。
「…あ、菅原先生。」
「ん、どうかしたかい?」
トイレのドアの音だろう。扉の閉まる音がした直後、原石くんは自然体を装いながらも、待っていましたとばかりにこちらへ話しかけてきた。
「単婚届って…知ってますよね?」
Noside
夜樺と影は、二階から三階の間の階段に、何か仕掛けがしてあることに気がついた。
理由は単純、壁の隙間に影を滑らせ、空洞の正体を突き止めたためである。空洞には奇妙な機械があり、機械は窪んだ壁の裏に向けて振動感知器を差し出していた。
『へー…じゃあ、壁をノックすればいいの?』
「…多分?」
壁を軽くノックしたはいいものの、全くの無反応。
単純に考えれば、ただノックするだけで何かの仕掛けが作動するなんて、日常で誤作動起こしまくるに決まってる。普通に考えれば、決まったリズムで叩くのが正解だろう。
「…リズム…リズムか…」
『ん?何か分かった?』
「…SOSとか出す時さ、トントントンってやるやつあるじゃん。あれでopenとかできないのかなって。」
『やってみるか。』
そして、仕掛けは作動した。それに気付いたのはどちらが先だったか。トイレの隣、原石父が出てきた部屋に、隠し階段が現れた。扉を閉めきっていなかったため、遠目でもすぐに分かったのだった。
階段に近寄り、二人は足音を立てないように上っていく。しかしここで、原石父が階段を一階から上がってくる気配がした。
『やべっ…』
「…しょうがないか。かげくん、先行ってて。」
できれば一緒に行きたかったが…バレるのは避けたい。その上この階段の先には、確実によからぬことがある。やましいことを隠している。そう夜樺に直感させた。そうでないなら別にいい。いつも通り、かげくんが何もなかったと言って、それで終わりだ。しかし、そうでないのなら…
『何もなければすぐ戻る!』
「いってら」
もう頭頂部が見え始めている。時間がないため多少強引にでも階段を閉まった方がよさそうだと判断し、音が立つのも構わず強引に階段を上に投げて元通りにした。
「えっと…夜樺くん、だったっけか?」
「…はい、夜樺明です。突然お邪魔してしまって申し訳ありません。」
「いや、あの子が友達連れてくるなんて嬉しいよ…あの子がはしゃぎすぎて、怪我をしてしまったそうじゃないか。歩けるのかい?」
「はい、問題ありません。」
「そうかそうか、それはよかった。」
原石父は、ゆったりとした口調で、白髪の混じる人、という印象だった。夜樺よりも背が高く、横にもそこそこ幅がある。ほうれい線や皺、シミがくっきりと浮かび上がり、典型的な好好爺といった感じだが、彼は四十代である。
「…しかし、念のため見ておこう。一階に保冷剤あるから、それを使うといいよ。」
「ありがとうございます。」
「ところで、この部屋で何してたんだい?」
原石父は、少し声を厳しめに変えると、夜樺に詰めた。
「ここは、私の趣味に使っている部屋なんだ。あまり壊されたくないから、勝手に入らないでくれ?」
部屋を見渡せば、昆虫や鳥の剥製、大きな宝石、漫画やプラモデル等、様々な物が置かれていた。
「あ、はい…すみません、トイレに行きたくて…間違えてしまって…」
「トイレはここの隣だよ。」
「ありがとうございます!」
夜樺は嘘がバレない内に、さっさとお手洗いへ駆け込んだ。
(ヤバい…間一髪だった…上手く演技できてたか?にやけるかと思った…!)
主はモールス信号できないので、その描写はカットさせて頂きました。




